Fate/curious tale 緑の勇者と白い魔王 作:天々
2017/7/30ステータス欄追加、誤字脱字修正
8/26 改行等変更
一話 勇者
小野正裕は魔術師としては傍流である。
彼の父は魔術刻印を継ぐことはできず、その兄が継いだからだ。
そして、正裕もまた刻印を継ぐことはできなかった。
彼にも兄がおり兄がすべてを継ぐことが決まっていたから。
傍流の、そのまた傍流。
それが小野正裕という魔術師であり、彼のコンプレックスであった。
日本の風宮市において行われる聖杯戦争の話を聞いたとき、正裕はそれを自分の名を上げるチャンスだと考えた。
聖杯戦争とは願いを叶える聖杯と呼ばれる呪具を生み出すための魔術儀式であり、そしてそれを奪い合う魔術師同士の殺し合いである。
それを勝ち抜き、聖杯を勝ち取ることはは己という魔術師の存在を世界に示す何よりの名誉となる。
彼は参加を決めると、すぐさま準備に取りかかった。
過去の聖杯戦争の情報をかき集め、必要な薬品や触媒などを調達する。
父に聖杯戦争への参加を告げると父は快く協力を申し出てくれた。
用意した品々の一部は父が家の蔵から供出してくれたものであるし、かつて使っていたという礼装も譲ってくれたのだった。
父にしてみれば後継者に選ばなかった息子へのせめてもの援助と後継者に選ばれなかった者同士としての同情の念もあったのだろう。
思わぬ助けを得た正裕は準備を万端に整え、聖杯戦争が行われる地へと向かったのであった。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
室内に魔術の詠唱が朗々と響く。
「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
呪文を唱える正裕は怜俐な眼差しで目の前で淡く光る魔法陣を見つめていた。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
呪文と共に魔方陣は益々輝きをましていく。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」
それは只人にはなしえぬ大魔術、抑止力の一端を地に降ろし使役する決戦術式。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ」
それによって喚び出されるモノ、その名前は―――
「天秤の守り手よ―――!」
術が完成すると同時、魔法陣から溢れ出た光が周囲を飲み込んだ。
正裕が眩しさに閉じた目を再び開いたとき、目の前には一つのヒトガタがあった。
「問おう、君が僕のマスターか――」
召喚の儀式を行った正裕の目の前に現れたのは背に剣を背負い、異国風の緑の衣服を身に纏った金髪碧眼の青年だ。
一見人間に見える彼は、サーヴァントと言われる高位の使い魔である。
英霊、世に名をとどろかせたことで英霊の座と呼ばれる場所へと召しあげられたかつての英雄たち。
サーヴァントとは英霊をクラスと言う名の役割に当てはめることで、その霊格の一部を再現し使役することを可能とした使い魔なのだ。
一部とはいえその力は強力無比であり、余程の事がなければ人間では彼らに敵わない。
本来ならば魔術師であってもその様な存在は召喚も使役もできない。
聖杯と呼ばれる超常の呪具なくしては叶わぬ奇跡なのだ。
そしてその聖杯は聖杯戦争を制した者のみが手にすることができ、持ち主の願いを叶えると言う。
聖杯戦争とはサーヴァントの主であるマスター達とサーヴァント達七組による、聖杯争奪戦なのである。
正裕は目の前のサーヴァントを見て固唾を飲んだ。
少し見ただけでわかる圧倒的な魔力と存在感。
それは、魔術師として神秘に親しんできた正裕ですら畏怖を覚えるものであった。
「そうだ」
内心気圧されながらも正裕がうろたええること無く返答できたのは、事前の下調べがあってこそだ。
もしも大した下調べも無く召喚に望んでいたら惨めにも狼狽し、腰を抜かしていたかもしれない。
「これがその証だ」
そう言うと正裕は袖をまくり、右腕に刻まれた紋様をさらした。
赤く鈍く輝く紋様は令呪と呼ばれるものだ。
聖杯戦争に参加するマスターに与えられるものであり、これがなければサーヴァントの使役はできない。
「確かに拝見いたしました。サーヴァントキャスター、これよりマスターの杖・マスターの剣としてあなたを勝利に導きましょう」
そう言って跪くサーヴァント、キャスターを眺めながら彼はたった今浮かんだ疑問を口にした。
「キャスター?セイバーとかじゃなくて?」
そう、確かに彼はキャスターと名乗った。
英霊という規格外の存在をそのままの形で使役することはできない。
故にサーヴァントは召喚された際に七つのクラスのどれかに当てはめられ、そのクラスに沿う形に格を落として召喚されるのだ。
七つのクラス。
全体的に高い能力と対魔力を誇る剣士のクラス、セイバー。
高い敏捷性を誇る槍兵のクラス、ランサー。
遠距離攻撃を得意とする射手のクラスアーチャー。
騎乗を得意とし、乗騎や乗り物を駆って戦う騎手のクラス、ライダー。
魔術を得意とする魔術師のクラス、キャスター。
闇に潜み、暗殺を得意とする暗殺者のクラス、アサシン。
そして理性と引き換えに高い戦闘力を持って召喚される狂戦士のクラス、バーサーカー。
とくにセイバー、アーチャー、ランサーのクラスは三騎士と呼ばれ、優秀な能力やスキルが揃っているクラスとして有名である。
正裕はこの中からセイバーのクラスのサーヴァントを喚ぶつもりだった。
英霊を喚ぶ際には英霊に縁のある品を触媒として用いることで狙った英霊を呼び出せる。
今回、正裕が用意したのはある国で剣士として名を馳せた勇者に縁のある触媒であった。
召喚されるとしたらセイバーか、もしくは弓の名手でもあったためにアーチャーのクラスで召喚されると予想していた。
どちらにしろ三騎士のクラスで呼び出せると考えたのだが……
「生前は魔法の品を多く使ったからね」
キャスターの返答を聞いて正裕は得心した。
確かにかの英雄が主に使用したのは剣であるが、それ以外にも非常に多彩な武器を用いている。
そのなかには魔法の杖なんて言うものもあった。
「その背中の剣は?」
キャスターはその背に剣を背負っていた。
サーヴァントはクラスにそぐわない武器は再現されないものであるらしい。
ならば、セイバーではない以上剣は持っていないはずなのだが……
「ああ、なるほどこれか。生前はこれを魔術を使うときにも使ってたからじゃないかな?」
「なるほど」
そう言って頷きながら正裕は内心で「ほっ」と胸を撫で下ろしていた。
かの英雄が用いた物で最も格の高いものは彼の使用した聖剣である。
背負った鞘の中身を十全に扱えるのならばそれは大きな戦力になるだろう。
「ところで、真名は――でいいのか?」
自分が用意した触媒に縁のある英雄の名前を告げる。
伝承通りの出で立ちや風貌から確信はしているが、確認のためである。
「そうだ、僕は――。この名に懸けてあなたに聖杯を捧げよう」
キャスターは頷くと、正裕の瞳を見つめて力強く宣言した。
こうして彼らの聖杯戦争は始まった。
【CLASS】キャスター
【マスター】小野正裕
【真名】?
【身長・体重】172㎝・75kg
【イメージカラー】緑
【属性】秩序・善
【性別】男性
【特技】剣術、射撃
【好きなもの】平和
【嫌いなもの】邪悪
【天敵】?
【ステータス】 筋力B 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具A
『保有スキル』
<クラス保有スキル>
・道具作成(C)
・陣地作成(-)
<固有スキル>
・陣地踏破(A)
・妖精の加護(B)
・魔獣殺し(B)
・???
【解説】
・道具作成
キャスターのクラススキル。
生前使用していた道具をもとにした様々な道具を作成する。
・陣地作成
彼は魔術師では無いので工房は作成できない。
彼にとって陣地は作るものではなく攻めるものである。
・陣地踏破
数多の迷宮や敵陣に突入・踏破した経歴がスキルとなり、陣地作成と混じったもの。
敵陣に挑む際に様々なボーナスが与えられる。
・妖精の加護
精霊の加護の互換スキル。
妖精からの祝福により、危機的な局面において優先的に幸運を呼び寄せる能力。
・魔獣殺し
魔獣の殺し方や対処法。
幻想種を相手にした際に様々なボーナスを得る。
生前数多くの魔獣を相手にしたキャスターにとって魔獣の相手はお手の物である。
・???
キャスターの持つ特殊スキル。
詳細不明。
<所有宝具>
不明
ランク:?
種別:?
レンジ:?
最大補足:?
由来:?
彼の持つ聖剣。彼の伝説の象徴とも言えるもの。
『氷炎と守護の赤青(ツインレッド・ツインブルー)』
ランク:C
種別:対人宝具
レンジ:―
最大補足:1人
由来:?
彼の持つ赤と青のスタッフと赤と青のロッド二組、計四本の魔杖。
能力は以下の通り。
・赤のロッド:炎を放つ。
・青のロッド:氷や凍気を放つ。
・赤のスタッフ:魔力によるブロックの作成。
・青のスタッフ:使用者を守護する光弾を生み出す。
ひとつひとつは大した能力ではなく、真名の解放も必要としない。
不明
ランク:?
種別:?
レンジ:?
最大補足:?
由来:?
詳細不明。聖剣と合わせて使用するものであるらしい。
不明
ランク:?
種別:?
レンジ:?
最大補足:?
由来:?
詳細不明