IS DESTINY ~蒼白の騎士~   作:ELS@花園メルン

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選んだ道

SIDE イチカ 

 

 

俺とシンとマユは無事とは言いづらいけど、何とかオーブの避難船に乗ることができた。

 

マユは泣き疲れてしまったのか、今は軍人に背負われて運ばれている。

俺も、まだショックでポッカリ穴が開いたかのように感じている。

 

俺たちを助けてくれた【トダカ】という軍人は俺たちに応急処置をしてくれながらこれからの話をしてくれた。

 

 

「君たちはこれからどうするのか、決まっているのか?」

 

「どうって、いえ、まだ何も・・・」

 

「一気に色々と起こって心の整理がまだついてなくって」

 

 

自分たちの国が戦争に巻き込まれ、目の前で親が死んだ。

それなのに今後のことなんてまだ判断を付けられない。

 

 

「君たちはそこで寝ている子も含めてコーディネーターかい?」

 

「ええ、そうです」

 

「それなら私は君たちはプラントへ行くことを薦めよう」

 

 

と、トダカさんは提案してくれた。

 

 

「プラントへ?」

 

「【ブルーコスモス】は知っているね?」

 

「たしか、反コーディネーター団体でしたっけ?」

 

「そうだ。連中の動きが地球にて活発化してきているらしいからな。

コーディネーターである君たちに危険が及ぶ可能性がある」

 

「で、でも俺たち、プラントへ行っても生活費とか大した額無いですし・・・」

 

「大丈夫、とは言い難いが国から国民に対してある程度の補助金や生活必需品の提供がある。

それに、わたしからもいくらか君たちに渡そう」

 

「そ、そんな、悪いですよ!?」

 

「そ、そうですって!」

 

 

俺とシンはいくら助けてもらったとしても生活費なんかの面倒も見てもらうなんて、申し訳なかった。

 

 

「だが、君たち三人は子供だ。

まだ働くのに必要な年齢にも達していない。

それとも盗みでも働くつもりか?それなら軍人としては看過できないが」

 

 

そう、俺もシンもまだ13と14だ。本来働くにしても、15からなので俺たちでは働くことはできなかった。

 

 

「それにプラント本国ではあと少ししたら士官学校の応募があったはずだ。

パイロットになれとは言わないが、整備士やオペレーターなどの専攻もあったはずだ。

それに、士官学校は生徒の生活保障なども完備しているらしい。

君たちの生活もなんとかなるはずだ」

 

 

確かにそれだったら俺たちの今後もなんとかなるかもしれない。

 

 

「でも、なんでそこまでしてくれるんですか?」

 

 

ただ助けた避難民の子供たちのはずだ。

他にも大勢の避難民がいたのになぜ俺たちだったのか、という疑問があった。

 

 

「君を、君たちを助けたときの眼だ」

 

「「眼?」」

 

「ああ。

他の避難民たちの多くは悲劇を目の当たりにしたことにより、目が死んだようになっていた。

だが、君たちの眼はまだしっかりと生きていた。

そんな子供たちに賭けてみたくなった、というおじさんの願望・・・だな」

 

「トダカさん、ありがとうございました!」

 

「ありがとうございました!!」

 

 

俺とシンは精一杯の感謝を込めて頭を下げた。

 

 

「君たちにハウメアの加護があらんことを」

 

 

そう言ってトダカさんは部屋を出ていった。

 

 

「なあ、イチカ。

プラントへの移住の話、受けてみないか?」

 

「ああ、そうだよな。

学校に通えて生活も保障されているんだしさ、俺は受けてもいいと思う」

 

「ただ、マユも一緒に士官学校へなんてのは、ちょっとな・・・」

 

 

シンは実の妹が軍に関係する仕事に、というのを心配しているのだと思う。

 

 

「マユも、行く」

 

「マユ!?」

 

「起きてたのか!」

 

「マユだけ置いてけぼりなんて嫌だもん。

別にパイロットになるなんて言ってる訳じゃないから。

でも、お兄ちゃんたちと離れ離れになっちゃうかもしれないのが、マユは嫌なの!」

 

 

と、マユは必死に訴えてきた。

 

 

「どうするんだよ、シン」

 

「分かってるだろ?マユがここまで言い出したら聞かないことくらい」

 

「・・・そうだな、じゃあマユも一緒に行こう」

 

「うん!」

 

 

と、マユの表情はさっきより明るくなってきていた。

 

 

「そして、ちゃんと父さんや母さんのお墓をたててあげよう、な?」

 

「ああ」

 

「うん」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

俺たちはオーブの避難船がプラントへ向けたシャトルがある港で降ろしてもらい、トダカさんにお礼を言ってからプラントへと向かった。

 

行き先はプラント【ディセンベル市】。

ここに士官学校があるのでそこへと俺たちは向かった。

 

 

「シンはどの兵科へ進むのか決めたのか?」

 

「俺、さ。

パイロットになろうと思うんだ」

 

「は・・・?」

 

「あの日、二人が死んだのを目の当たりにしてさ、悲しみとか怒りよりも悔しさが一番最初にこみ上げたんだよ。

もし俺にも力があったら二人は死なずに済んだんじゃないかってさ。

だから俺さ、そんな思いをする人を減らすためにそんな思いを生み出す元凶を絶てる力が欲しいんだ。

これ以上、今ある花を散らさないようにさ」

 

 

シンは手にぐっと力を込めながらそう、話してくれた。

 

 

「俺も、俺も、パイロットになろうって思ってた」

 

「でも、イチカは技士志望じゃなかったか?」

 

「そうなんだけどさ。

俺もシンみたいに、無力な自分がちょっと悔しくってさ。

少しでも強く、守れる力が欲しいなって思っちゃってさ。

それに、お前がパイロットになるんだったらお前を制御する奴がいないとダメだろ?

お前っていつも喧嘩っ早いしさ」

 

「な!?そんなことないだろ!?」

 

「いやいや、結構喧嘩っ早いからな?」

 

 

シンは否定しているが実際のところ学校でも相手に突っかかっていくことが結構あった。

 

 

「はぁ、わかったよ。

これから気を付けるさ。これからもよろしくな、相棒(イチカ)

 

「おう、こっちこそな」

 

「マユをそっちのけで二人で仲良くしてるなんてずるいな~」

 

 

と、プラントへ向かうシャトルの後ろの座席からマユが話しかけてきた。

 

 

「悪い悪い、じゃあマユはどの科を志望するんだ?」

 

「志望はオペレーターだけど、ここって試験の結果でその後の進路も判定されちゃうじゃん?

だから結局どうなるのか分からないかな」

 

 

俺たちが入るのは士官学校。

Z.A.F.T.軍に入るための優秀な人材を育成するのが目的の学校である。

そして、俺たちが入るころからその仕組みが少し変わっており、地球軍との戦争ということもあり、MSパイロットが不足しているのが現状である今の世の中で実力が高い訓練生が技士やオペレーターになってしまうのは軍からしたら宝の持ち腐れであるので、全科の試験に格闘術、射撃技術なんかの試験を追加し、他の科でも実力の高い訓練生はパイロット科へと異動することになる。

しかも、パイロットになりたくないからと実技試験で手を抜くと、それらは必修項目なので留年、退学などという処置をとられてしまう。

 

 

「まあ、そこはなるようにしかならないだろ?

それにマユって格闘術とか苦手そうだし」

 

「あれ?シン、知らないのか?」

 

「?何をだよ」

 

「マユって実は護身術を習ってたんだぞ」

 

「は!?そんなの知らないぞ!」

 

「だってお兄ちゃんには言ってなかったし」

 

 

と、マユが言うと、シンは一人知らなかったことにガックシと肩を落とした。

 

 

「あ、見えてきたよ!あれがそうじゃない?」

 

 

と、マユが窓の方を見たので俺たちも続いて外を見た。

 

 

「おお!本当だ!」

 

「でっかいな~」

 

 

前の世界じゃ自分が宇宙に行くことなんてないと思ってたけど、まさかこんな形で宇宙に来れるなんてな・・・

俺はプラントや無限に広がる宇宙を眺め、そう思った。




まだ、本編には入りません。
少し訓練生時代を掻こうと思っています。

そして、それが終ればアンケートも終了しようと思います



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