IS DESTINY ~蒼白の騎士~   作:ELS@花園メルン

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今回、書いてて自分少し涙が出てきました。

やっぱり人が死ぬのって心に来ますんで・・・


失ったもの

SIDE イチカ

 

 

単純に言えば、戦争はやはり起こってしまった。

Z.A.F.T.軍が人型機動兵器【モビルスーツ】通称MSを開発したことにより両軍の力は拮抗するようになってしまった。

片方は核兵器という大量破壊兵器、もう片方はMSという量産可能な機動兵器。

どちらも危険な代物だった。

でも、そんなときに地球軍がヘリオポリスにて5機の新型機動兵器を秘密裏に製造、それがZ.A.F.T.に奪取され戦火はさらに肥大化してしまっていた。

 

一時は地球軍の新造艦【アークエンジェル】がオーブ領海付近でザフトと戦闘を行っており、オーブ軍も防衛の為に軍隊を配備していた。

そのときは、ここも戦場になってしまうのだと、恐れていたがザフトは撤退、アークエンジェルがオーブヘ入港したそうだ。

 

そんな騒動を耳にしてから数週間が経過した後、本当に恐るべきことが起きてしまった。

 

地球軍がオーブにあるマスドライバー施設とモルゲンレーテを狙って無条件降伏を要求し、ウズミ代表がそれを拒否したことで、オーブも戦争に巻き込まれることになってしまった。

 

 

 

俺たちは急いで避難の準備を始めている。

地球軍の宣戦布告から総攻撃までの猶予が殆どなく、港にある避難船の前は大勢の人だかりができているみたいだ。

でも今は、俺たちが無事に避難船に着くまで攻撃が行われないかが不安だった。

 

 

車で向かおうと父さんは考えていたが、道路は渋滞によりとても進める状況ではなかった。

なので、走って向かうことになったのだが、その途中、爆発音が聞こえた。

 

地球軍がオーブヘ総攻撃を仕掛けた際の爆撃音だと思われる。

俺たちは近道をしようと、裏の山からすぐ下にある港を目指し走り出した。

 

 

「急げ、母さん、マユ!」

 

「マユ!頑張って!もう少しだから!!」

 

「うん!」

 

 

俺とシンを先頭に走り、後ろに義父さん、義母さん、マユが走っている。

 

 

「!?伏せて!!」

 

 

遠くの空から何かが接近してくるのが見えた俺はみんなにそう忠告した。

 

ドスン!

という、音と共に赤と黒の戦闘機のような機体の上から青っぽい装甲に二門の砲塔を搭載しているモビルスーツが俺たちよりそう遠くないところに着地した。

 

 

「急いで!いつこっちに気づくか分からない!!」

 

 

俺たちは再び港へ向けて走り出す。

そして港が見えてきたところで

 

 

あと一息だ・・・!

 

と思ったその矢先に近くで爆風が起こった。

 

 

「皆、大丈夫か!?」

 

「父さん、母さん、マユ、平気か!?」

 

「あ、ああ、俺たちは・・・」

 

 

「あっ!マユの携帯が・・・!」

 

 

さっきの爆風でマユの携帯電話が俺たちとは全く違う方向へと転がって行ってしまっていた。

 

 

「そんなものいいでしょ!?

今は兎に角逃げないと!!」

 

「いやぁ!?だってアレ、お兄ちゃんたちからのプレゼントだもん!!」

 

 

と、マユは携帯を拾いに行こうとしていた。

 

あの携帯電話は本体を俺とシンが小遣いを出し合って、マユの誕生日に買ってあげた物で、その時のマユはとても喜んでいたのを今も覚えてる。

 

 

マユが進もうとしなかったの見て、

 

 

「俺が取って来る!

皆、先に行っててくれ!」

 

 

と、シンが携帯を取りに道の無い斜面を滑り降りていく。

 

と、その時マユも義母さんの手を振り払い、シンについて行ってしまった。

 

 

「マユっ!くっ!」

 

 

俺はマユを捕まえようとマユの後を急いで追いかけた。

 

その瞬間、

 

 

(!?何か、来る!?)

 

 

と、咄嗟に感じた俺はマユを無理矢理抱えて、地面に転がるように飛び込んだ。

 

 

 

ドォォォン!!!

 

という、凄まじい爆音とともにマユを抱え転がった俺の上に大量の砂が積もってきた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

SIDE シン

 

 

マユが携帯を落としてしまい、それを取りに俺は斜面を滑り降りていった。

 

幸い、携帯は斜面途中の木にぶつかり、何とか拾えそうだった。

 

 

「よし・・・!」

 

 

俺は携帯の近くまで来て、携帯を拾った。

 

 

ドォォォン!!!

 

 

「う、うわぁぁぁぁ!?」

 

 

その瞬間に斜面の上の方で爆発が起こり、俺はそれによって港のすぐ近くまで吹き飛ばされてしまった。

 

 

「う、うう・・・」

 

 

コンクリートにぶつかって背中が痛かった。

 

 

「君!大丈夫か!?」

 

 

近くに軍人が来てくれたので、立ち上がるために肩を貸してもらった。

 

 

「歩けるね?なら急いで避難するんだ!

幸い、まだ船の空きは残っているから!」

 

 

そっか・・・。ならみんな乗れるかな?

あれ?そういえば、みんなは・・・?

 

 

「どこへ行くんだ!?」

 

「父さんや母さんたちがまだ上に――――――!?」

 

 

斜面の方に振り向くと、そこは斜面なんて無かったかのようにえぐれてしまっていた。

 

 

「嘘・・・だろ・・・?

父さん、母さん、イチカ、マユ・・・?」

 

 

俺はみんなを探すために痛みが走る体を引きずりながら歩いた。

 

そして少し歩いた先で俺は見たくない光景を目の当たりにしてしまった。

 

 

父さんが横たわっていた。

でも、その手は体から大分遠いところまで吹き飛んでいて、血が散っていた。

母さんもその近くに倒れていた。

でも、その体は爆発で飛んでた大木に押しつぶされていて無残な姿だった。

 

 

「ぁ・・・うぁ・・・」

 

 

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

父さんや母さんが死んでしまってるなんて嘘だ!

 

マユは?イチカは?

 

父さんの体の少し離れたところにマユの鞄らしきものが見えた。

 

 

「!マ、マユ!」

 

 

マユはきっと無事だ!

そう思い、鞄の近くへ向かい、埋もれていた鞄をひっぱりだそうとした。

きっと生きてて生き埋めになっているだけだ!

 

そう思いながら、精一杯引っ張ると、そこには誰の体も見当たらなかった。

 

 

「そ、そんな・・・!

う、うあああああああ!!!!」

 

 

俺は叫んだ。

喉が壊れるくらいにめちゃくちゃに。

そして、睨んだ。

空で戦っている青い翼のモビルスーツ、緑色のモビルスーツ、さっき見た青いモビルスーツを。

アイツらがこんなところで戦争なんかするから父さんや母さんやイチカやマユやもっと大勢の人が死んでしまったんだ。

 

ただ、許せなかった。

自分の大切なものを奪っていったあいつ等が。

 

 

 

すると、近くの地面がモゾっと動いた。

 

!?まさか!!

 

俺はすぐにその場所へ行き、動いた場所をかき分けた。

そこには白い布が見えた。

イチカが今日、避難するときに着ていたジャケットだ。

 

 

「イチカ!おい!イチカ!!」

 

 

俺は返事が返ってくるまで呼び続け、地面をかき分ける。

 

 

「っぷはぁ!!!」

 

 

ある程度土が退くと、イチカが地面から勢いよく体を持ち上げた。

その腕の中にはマユの姿もあった。

 

 

「ぁぁ、イチカ、マユ!!

良かった!!」

 

 

てっきり二人とも死んだかと思っていた。

 

 

「良かった、本当に!!」

 

 

俺は二人をぎゅっと抱きしめた。力強く精一杯。

 

 

「シン?良かった無事だったのか!

マユ、大丈夫か?シンも大丈夫だったぞ!」

 

「お兄、ちゃん?

ああ、よかった!お兄ちゃん!!」

 

「ほら、マユ携帯。

今度は手放すなよ?」

 

「うん!ねぇ、お父さんとお母さんは?」

 

 

マユがそういった瞬間に俺はマユにその光景を見せないように深くさらに抱きしめた。

 

 

「ね、ねぇ、お兄ちゃん?痛いよ?

そ、それに、お父さんやお母さんは大丈夫なの?」

 

 

マユのそんな問いかけを聞くと俺の目から涙があふれてきた。

 

 

「うっ、うう」

 

「嘘・・・だろ?」

 

「・・・嘘だよね?お父さんとお母さんが、そんな・・・い、いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

マユの悲鳴が響き渡った。




いかがでしたか?

要望にあったようにマユはイチカがそばにいたことで生き延びることができました。

これから三人はどんな道へと進むのか・・・・


まだ、きちんと本編に入らないのでアンケートは続けます。
殆ど決まりつつあるんですけどね

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