IS DESTINY ~蒼白の騎士~ 作:ELS@花園メルン
「よし!そろそろいっくんの存在を世界に明かそう!」
「漸くですか…。
もう、入学一週間前ですよ?」
「それが狙いなんだよね。
遅ければ遅いほど、学園も貴重な男性操縦者を保護するために動かなくちゃいけなくなる。
余計な手が入る前に学園に入ることができるってことだよ!
早ければ、その分いっくんのことを探られる可能性があるからね!
まぁ、束さんに掛かればそんなことは無い……と思いたいけど、世の中何があるか分からないからね~。
だからこそ面白いんだけどさ!」
そう言って、束さんは俺に変装の為の装備を手渡してきた。
「いっくんの変装する相手のデータはその中にインプットしてあるから、それを使うんだよ?」
と、言われたので俺は鏡の前でその装置を使い、自分の見た目を変えてみた。
髪の毛は焦げた茶色へ変わり、目は少し薄めの茶色に変わる。
日本人だった俺の見た目はすっかり変わってしまい、コズミック・イラでいそうな青年の姿に変わっていた。
変声機を付け、声を出してみると、自分の声に多少は似ていたが、どこか前より凛々しい感じの声色だった。
「うんうん!いっくんってことは全くバレない完璧な変装だね!
流石は束さんっ!!
あ、これ身分証明書ね?
さて、今日から君はカムイ。【カムイ・リンクス】だ。
血縁関係は心配しなくてもいいよ。
数年前に起きたテロで両親を亡くし、束さんが偶然見つけて拾ったって設定だから!
それにその時の記録も改竄してあるから、怪しまれることも殆ど無いだろうし!
後は…いっくん!じゃないや—――カー君のプロフィールを頭に叩き込んでおいてね、誰に聞かれても答えられるように!」
「分かりました」
束さんに身分証明書などを受け取り、それらをカバンへと閉まった。
「さて、それじゃあハッキングして国際チャンネルでお披露目としますか!」
そうして束さんは自室に引きこもっていった。
俺はラボのロビーで実際に束さんの放送を見ようと端末を起動させ、国際チャンネルを開いた。
『やあやあ!全世界の皆?
篠ノ之 束だよ~!!
今日は、巷で男性IS操縦者が見つかったって喚いてる君たちに束さんからビッグなお知らせをプレゼントしちゃおうと思うんだよね!!
なんと!束さんが保護していた男の子がISを動かしちゃったんだよ~!ビックリビックリ!
その子は数年前に何処だったかな…?まあ、どっかの国で起きてたISテロの被害者でね?
世界を転々としてた束さんが偶然拾っちゃったんだよ。
な~んか、ビビッと来たからこの子は何かとんでもないことをする子だと思ってね!
結局、束さんもビックリなISを動かす男の子だったわけだけど。
この子はIS学園に入学させちゃおうと思いま~す!
束さんも拾ったとはいえ、親だし?子供にはちゃんと学校に通ってほしいわけなんだよね?
でも、最近物騒じゃん?ISを兵器と勘違いしてる奴らのお陰でさ!
だから、IS学園に送って保護してもらおうって考えてるんだよ!
IS学園だったらさ?どの国にも属さないってことを国際規約で決められてるじゃん?
だったら彼を狙おうとしてくる輩もいないんじゃないかって思う訳!
まあ、そんな施設に部隊を送ろうとか考えてる奴らもいないと思うけどさ、もしそんなのがいたらお前らの権力の為の大事な大事なISコアを潰すからな?
まあ、そんなことをする輩がいないことを願ってるよ、束さんは。
それじゃあ、ビッグニュースはこの辺でね~
束さんは愛すべき息子との最後の交流が残ってるので!!』
そう言って、束さんは通信を終えた。
矢継ぎ早に言いたいことを言って、通信を終えたけど、世界中は大混乱だろうなぁ…。
試しに俺の端末からSNSを確認してみると、当然荒れていた。
【#天災の隠し子】なんてタグが存在するほどに…。
「さあ!いっくん!これでようやく我らのスタートラインに立った訳だけども!!」
「はぁ」
俺は軽く流し、その次の言葉を待った。
「行く前にくーちゃんと三人で写真撮ろっ!!」
なんか凄い大事なことを言うのだと思っていたが、一人暮らしを始める家族に対して接する親と同じような感じでなんか新鮮な感じだった。
一人暮らしを始める家族の気持ちってこんな感じなんだろうか?
俺には千冬姉とコズミック・イラの世界でシンとマユという、兄弟関係の家族しかいないから、良く分からない。もし、義父さんと義母さんが生きてて、向こうで普通に進学したらそんな気持ちになるんだろうか?
そんなことを考えていると、束さんがカメラと三脚を持ってきて、俺の前に設置する。
そしてクロエと一緒に三人並んでカメラに向かって笑顔を向けた。
新しい家族との一枚を残すことができた。
写真をカバンへ入れ、俺はクロエの方を向いた。
「それじゃあクロエ。
短い間だったけど、楽しかったよ。
次はいつ会うか分からないけど元気でな?」
「はい。
いっくんさんもお元気で。
束様の食生活の管理はおまかせください」
「そして、束さん。
これからもご協力をよろしくお願いします。
フリーダムの方も何か分かったなら連絡をお願いします」
「了解だよ!じゃあ、近くの国の空港まで送るよ!」
束さんお手製のステルス機能付きニンジンロケットで近くの国の空港のある都市の外れに運んでもらった。
「それと、いっくんと箒ちゃんのISだよ。
ちゃんと箒ちゃんに渡しておいてね?
それでこれは箒ちゃんといっくんのISのカタログスペックをまとめた資料。
こっちは学校でちーちゃんに渡しておいてね」
「了解です」
「書類上とはいえ、今の束さんといっくんは親子だから、ね。
身体には気を付けて何か困ったことがあったら連絡してね?」
「はい。
では、いってきます、義母さん」
「!?うん!!いってらっしゃい!!」
こうして、俺と束さんは別れを告げ、俺は空港へ向かって日本行きの便に乗り、母国へと帰国した。
随分と遠回りになったが、これで晴れて本当に帰国できた。
一時的なものとは言っても、嬉しいものは嬉しいな。
しかし、帰ってきた母国はあまり居心地の良いものとは言えなかった。
空港のゲート付近で男性が女性警備員に連れられて奥へと消えていくのが見えたが、近くの人に尋ねると痴漢容疑で捕まったらしい。
でも、そんな様子は一切無かったと、近くにいた人は言っていたのに、女性警備員はそれを聞き入れず、問答無用で男性を連れて行ったそうだ。
空港には監視カメラを設置しているはずなのに、それすら確認せずに逮捕していた。
不当な行いだと思ったが、恐らく俺がいくら訴えたとしても、聞き入れてはもらえないだろう。
【女尊男卑】という風潮のせいで、痴漢冤罪や男性の不当逮捕、生まれた子が男の子というだけで捨てられる、などといった行いが増えているらしい。
そしてその行いを権力を持っている【女性権利団体】が正当化しており、日本における出生率は低下、男性失業者も増えているらしい。
まるで、【ブルーコスモス】によるコーディネーターの弾圧を目の前で見ているかのようだった…。
今の俺ではどうすることも出来ないし、やらねばならないことがあるので、IS学園行きのモノレールへ乗り、目的地へと目指した。
IS学園はその所在地は日本にあるが、あらゆる国、組織、企業が介入することを許さないという、規約が存在している。
故に、束さんは俺をここへ入れたのだと思うが、実際のところその規約すらも怪しいと俺は思う。
が、あらゆる国の人間が集うこの学園だからこそ、俺や束さんの目的を果たす上での情報を集めることが可能なはずだ。
モノレールがIS学園のある人工島へと到着し、俺は荷物を持って、IS学園へと向かった。
束さんが事前に連絡を入れてくれたお陰で、校門前で教員が待っているそうだ。
で、校門前に着いたら、そこには俺の姉【織斑 千冬】の姿があった。
……千冬姉。
これでIS編の本編まであと1、2話になりました。
次回は、千冬姉と一夏【カムイ】の再会になります。
ちなみに、イチカの変装後の見た目はバナージ・リンクスと思ってください。
名前はカムイってしてますけど
それと、アンケートの結果からイチカの専用機を決めさせていただきました。
一応、今作は種死とISが舞台ということなので、ジン・ハイマニューバにしようと思います。
武装については後々…