IS DESTINY ~蒼白の騎士~ 作:ELS@花園メルン
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SIDE イチカ
核攻撃を阻止した俺たちザフト軍は何部隊かを残し警戒態勢を敷いたが、後に警戒を解除し何とかプラントを守り切ることができた。
MSデッキにマユと共に機体を移動させた後、一息つくためにプラント本国を二人でブラブラすることにした。
「あ!イチカ、次はあのお店見てみよっ!」
「はいはい、分かったよ」
…訂正、俺は荷物持ちに徹していた。
まあ、折角できた暇な時間だしマユも買い物とかしたかったんだろう。
かくいう俺も出かけることができて良い気晴らしになっているし。
買い物を終えた俺とマユはプラントシャトル発着ターミナルにあるカフェにて休憩を取ることにした。
「結構、買い込んだな」
「そうかな?服、化粧品とかだけど?」
「服って着る機会なんて、早々無いんじゃないか?」
「分からないじゃん!
今日みたいに出かける時とか...そのデ、デートした時とか...」
デート...だと!?
あのマユがデート!?
誰だ!一体誰なんだ!?
レイ?ヴィーノ?ま、まさか、ヨウランじゃないだろうな!?
...これは、1度シンと話し合って協議する必要があるか...?
「話変わるけどさ...。
イチカ、ジャスティスに乗ってみてどう感じた?」
「ジャスティスに乗って?
新しい機体が貰えて自分が認められたって嬉しく思った反面、怖いなって思った...。
あんな、強力な機体を扱うってことは、それだけ俺たちに大きな責任が伴うって事だしな」
「責任?」
「敵だったとしても、地球軍のパイロットの命を奪うってことは、結局のところ、人殺しと何ら変わりないんじゃないかと思うんだ」
「でも、それは私たちが殺らなきゃ多くの人が死んでしまうからっ...」
「ああ、その通りだ。
俺たち軍人が戦わないと関係ない人が大勢死んでしまう。
でも、戦って勝ち取った平和は多くの人の死の上に築かれたものなんだ。
だからこそ、撃った俺たち自身が撃った相手のことを決して忘れちゃいけないんだと思うんだ。
それは、俺たちパイロットの責任だと俺は思う」
「撃った相手のことを決して忘れてはいけない...」
「ああ。
だから、さ、平和になってもその事を忘れずに慰霊碑に祈りにいこう。
撃った相手に対してできるせめてもの償いのためにさ」
「うん、そうだね」
と、マユは言うとしばらく俯いていた。
でも、パッと顔を上げて
「よし!しんみりした話はここまでっ!」
と、いつもの調子で言った。
「あれ?あそこにいるのって...?」
マユがカフェの外を見て呟いた。
俺もつられてそちらを見ると、ミネルバと共にオーブへ戻ったはずのアスラン・ザラさんがラクスもといミーアと話をしていた。
ミーアは護衛の人と何処かへ行って、アスランさんは俺の事に気づいてこっちに来た。
「イチカ、君もプラントへ来てたのか」
「ええ、ユニウスセブンの時に議長をプラントへ護衛していたので。
アスランさんは?オーブへと戻ったのではないんですか?」
「そうだったんだがな...。
君もいたのか、マユ・アスカ。
君に話したいことがあったんだ」
「私もです。
先に言わせてもらいます。
あの時はカッとなって無礼な言葉を言ってしまってすみませんでした。
アスハ代表の話を聞いていたら許せなくて...」
「家族を失っている君たちには当然ながら思うとこもあるだろう。
だが、覚えておいて欲しい。
カガリだってあの時、父親を失っている。
自ら死を選んだウズミ様をな。
だからこそ、家族を亡くした時の悲しみは彼女だって、無論、俺だって分かっているさ。
そんな中でも彼女は亡くなった父の意思を受け継ぎ、国を護っている。
弱音を表に出さずに自分の理想を追い求めてな。
だから、あまりカガリのことを悪く言わないで欲しい。
...それと、俺もすまなかった。
さっきも言ったが家族を失ったのは俺だって同じだ。
失った時の悲しみが大きいことだって当然、分かる。
だが、今君たちは生きているんだ。
今のことにしっかりと目を向けないと、その内、大事なものを失うことに繋がってしまうぞ」
「...はい、肝に銘じておきます」
「ならいいさ。
アスラン・ザラだ、よろしく頼むよ、マユ・アスカ」
「はい、アスランさん」
マユとアスランさんの誤解は解けたみたいで俺としては嬉しかった。
二人は握手を交わし、仲直りの意思を示した。
「それで、アスランさんはなんでプラントに?」
「すまない、イチカ。
その質問に答えていなくて。
...俺は、ザフトに戻ろうと決めたんだ」
「ザフトへ?でも、代表の護衛はどうするんですか?」
「今、彼女に俺は必要ないさ。
だから、俺は俺に出来ることをやろうと思って、前々から議長にアポを取っていたんだ。
それで今日ようやく会うことができるのさ。
...そろそろ時間だ、失礼する」
アスランさんはその場を立ち去っていった。
「あの人も私たちと一緒に戦うってことなんだよね...?」
「そうだな。
俺たちも戻ろうか、マユ。
議長に次の指示を仰がないと」
俺とマユもシャトルターミナルを出て、ザフト本部へ向かった。
議長の執務室へ向かい、俺たちは中へ入った。
そこには先ほど別れたアスランとミーア、それに議長がいた。
「やあ、イチカ、マユ。
丁度、君たちを呼ぼうと思っていたんだ」
と、部屋へ入ると議長がそう俺たちに話した。
「と言うことは、議長?
俺、いえ自分の下に就く二人というのはやはり?」
「そうだ、アスラン。
彼らが君の隊に参加する二人だ」
アスランさんが議長に尋ね、議長は俺たちがアスランさんの部下だと答えた。
て、ことは俺たちはこれからアスランさんの隊へ入るのか?
「ず、随分と急ですね、議長?」
と、状況を上手く飲み込めていないマユが議長へ尋ねた。
「以前も言ったが、今後のための対策だよマユ。
地球で、活動が活発化しているブルーコスモスやオーブの急な動きに対して、ね」
「オーブの?」
「大西洋連邦との同盟を引き受けたそうだ。
直にメディアでも話題になるだろう」
「待ってください!そんなことになったら今オーブにいるミネルバは!?お兄ちゃんはどうなるんですか!?」
と、マユは声を荒げ、議長へ尋ねた。
「ミネルバは既にオーブを出たよ。
ただ、オーブと地球軍に挟撃に合い、被害を負ったみたいだが。
しかし、多少の被害は受けたが無事だという報告も受けている」
「よ、良かったぁ」
「そしてアスラン、君にはミネルバの方へ向かってもらう。
それと、これを」
議長は一つの羽型のバッジをアスランさんに渡した。
あれは!Faithの勲章!
「これを君に託そう。
これを持つ意味は君ならば分かるね?」
Faithは特務隊として独自の権限を持っている。
言うなれば、戦場でも通常の指揮官の命令では無く自分の命令で部隊を動かせる...はずだ。
「イチカ、マユ。
二人はアスランの隊に入るのは少しあとになる。
先に再び護衛の仕事を頼みたい」
「議長のでしょうか?」
「私もだが、彼女の護衛もだ」
議長はミーアを示した。
「ミーアの?
あ、そう言えばライブを行うって話を......あ」
マユがしまった、というような顔をした。
アスランさんの目の前でミーアの名前を出してしまったからだ。
アスランさんは彼女のことをまだラクスだと思っているはずだ...。
「あ、心配しなくてもアスランには既に話してあるわ」
と、ミーアがそう言った。
それを、聞きマユは安堵する。アスランさんは苦笑いをしていた。
「そういう訳だ。
君たちが士官学校で友人だったことも聞いている。
それと、これからは俺のことはアスランと呼び捨てで構わない。
いくら部隊だと言っても堅苦しいのは俺はあまり好きじゃない」
「「分かりました、アスラン」」
「出来れば敬語もやめてもらえないか?」
と、アスランは少し困った顔をしていた。
「アスランはすぐに出立してくれ。
二人も我々の準備ができ次第、出撃を頼むよ」
「「「了解」」」
ここに、アスランを隊長とした俺たち【ザラ隊】が発足した。