【創造と破壊】の力で暴れまくる〜リメイク版すげ替え進行中〜   作:しのしのおしるこ

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遅くなりすみません。

台本形式という物を調べてみました。

今回からセリフの頭にキャラの名前を付けることをやめてみようと思います。

なので文章を一から書き直しており遅くなりました。

このパターンでも内容がちゃんと伝わるようでしたら、コメント下さると助かります。
問題ないようでしたら次回からもこの様に致します。

では、お楽しみ下さい。



第14話〜〜女狐と100億の薔薇〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、起きろプロフェッショナル」

 

 

此処はラトゥール島にある花嫁レースの会場。

関係者席、実況席が設けられたスタジアム上部だ。

スタート地点であるグラウンドがよく見える特等席でもある。

四年に一度、普段であれば賑わいを見せて居るはずの会場も今は静かなものだ。

先程炸裂した覇王色の覇気……原因は明らかだが。

 

 

「……………」

 

「あー、クソ。司会進行が寝てんじゃねーよ」

 

 

ナツメは気絶した司会進行のバツニーを何とか起こそうと頬をビンタする。

自分の仲間がやらかした事なので少しだけ罪悪感も感じていた。

 

 

 

 

 

スタジアム〜グラウンド〜

 

 

現在グラウンドにて、ドミノ倒しで気絶中の大会参加者。

総勢1万人以上が地に伏せている。ある数人を除いて…

少し離れた場所で、蹴りと刀が激しくぶつかり合う音だけがその場に響き渡る。

生身と斬撃。その衝撃は地面を、スタジアムを揺らすほどであったが…

 

 

「ふん。流石は副船長じゃ……随分と腕を上げた様じゃの」

 

「当然です。私は2年間血反吐を吐いて強くなりました…全ては…この想いの為に!」

 

「そなたのナツメへの想いは相当なものじゃ…しかし…それは妾も同じ事!」

 

 

ハンコックとたしぎ。互いに目立った外傷はない。

2人の武装色は正に拮抗していた。

両者が再度攻撃に転じようと動き出した。その時。

 

 

「…ハンコック……たしぎ…やってくれましたね」

 

 

凄まじい破壊音と共に吹き飛ぶ瓦礫の山。

瓦礫が衝撃により撒き散らされ、土煙が晴れていく。

無表情で佇む1人の女性。初撃にて二人に吹き飛ばされたアインだった。

 

 

「「アイン!」」

 

 

「ふふふ…あの程度で…私が倒れるとでも?…2人共、覚悟はいいですか?」

 

 

額に一筋の血を滲ませるアイン。両手両足を武装色が染め上げる。

同時に途轍もない氣を練り上げ、殺気を込めた視線を2人に目配せる。

そして、右脚を軸に大地を踏み込んだ。

衝撃で地面を螺旋状に陥没させ、低い体勢を取る。

 

 

「……棗流:演武・龍天陣」

 

「アイン…貴女本気ですか?………はぁ…聞いても無駄な様ですね……いいでしょう。受けて立ちます!」

 

 

アインから放たれるソレは仲間に向ける殺気ではない。

完全にキレている様子だ。

どうやら私から片付ける様ですね…

たしぎは時雨を納刀。柄巻に左手を充て、半身になる。

 

 

「ハンコック、巻き込まれます。下がってて下さい」

 

 

ハンコックを下がらせるたしぎ。その構えも独特であった。

左手を添えた柄頭は下を向き、同時に鞘尻は肩の辺りまで上を向く。

一瞬、口角を上げると…アインに対して殺気を飛ばした。

 

 

「……棗流:金剛八式・華華羅閻魔」

 

「くっ……やめい!そなた達、殺し合いをするつもりか!?」

 

 

船医でもあるハンコックは逸早く冷静さを取り戻した。

2人に矛を収めるように説得しようとするも

 

 

「「問答無用!!!」」

 

 

"拳と剣"その道は違えど、同じ師を持つ2人。

大切なものを守る為にと身に付け、己を極めんと日々高めて来た"棗流"。

奇しくもその初撃が向けられたのは同じ一味の"仲間"だった。

 

 

 

 

 

 

第一コース〜中間地点〜

 

 

スタジアムから約3キロ地点。街の大通りを、並走して走る二つの影。

1人は手配書によく見る顔。ウロボロス海賊団のロビン。

もう1人はナツメ一味では無いようだ。

紫色が特徴的な髪色に、スタイルはロビンにも負けず劣らずといった様子。

何処ぞのコックが目視すれば即座に跪きそうな美少女である。

 

 

「どうやら追っ手は来てないみたいね……………っ…!!」

 

 

青ざめた顔で、走って来た方角を振り返るロビン。

少女は相棒の異変に、周囲を警戒しながら質問する。

 

 

「どうしたの?ロビン…顔色悪いわよ?」

 

「わ、私…戻らないと!!

(この殺気…本気で殺し合いを…仲間同士で何を考えているの!?)」

 

「え!?ロビン!そっちはスタジアムだよ!?」

 

 

此処まで来たのに戻ると言い出すロビンに、少女は理由を言って!と強く迫る。

先程の殺気を説明するロビン。一味の仲間同士で殺し合いをしているかもしれない。

手遅れになる前に止めなければと説明した。

 

 

「そんなのダメよ!私は青薔薇を手に入れる為に貴女と組んだのよ?」

 

少女は改めて"契約"の内容を確認する様にロビンを説得する。

 

「私の目的は青薔薇のブーケ。私が薔薇の麓にある"石の塊"まで案内する。代わりに護衛してもらう契約だったでしょ?」

 

「自分の夢よりも大切な家族なの。どうやら敵は見当たらないし、契約は此処でお終いね。カリーナ、此処からは1人でお願い。」

 

 

どうやらロビンの決意は固い様だ。

しょうがないな〜とカリーナと呼ばれた少女はゴールへ足を進めようとした。

その時。

 

 

「ロビンさん?」

 

「ビビ?それに、リーシャとナミまで。そう、貴女達チームで動いていたのね」

 

 

ビビに声を掛けられ振り向くと、リーシャとナミも後方に続くのを確認した。

自分達より先に進んでいたロビンを見て、三人とも驚いた様子だ。

 

 

「おっどろいた!ロビンこんな所まで来てたのね〜」

 

「まさか先を越されていたとは…流石ですね」

 

「と、ところでそこの人は…」

 

 

ビビの言葉にリーシャとナミの目線がカリーナへと動く。

カリーナはロビンの反応を見て、同じウロボロスの一味だと確認。

警戒もそこそこに自己紹介しようと振り向くが…

 

 

「私はカリーナ。今回ロビンとパートナーに……ってナミ!?」

 

「カリーナじゃない!あ、あんた!何でこんな所に!?」

 

思わぬ再会に驚きを見せるカリーナとナミ。

どうやらただの知り合いというわけでは無いらしい。

 

「あら、貴女達知り合いだっだの?」

 

「ええ、泥棒時代に組んでた時期があったの。この島に居たのは驚いたけど…まっさかロビンがこんな女狐と組んでたなんてねぇー、やめときなさいよ。裏切られるのがオチなんだから」

 

「言ってくれるじゃないの、この泥棒猫!海賊嫌いのアンタが海賊団なんて意外ね〜」

 

「何ですってぇ!?誰が泥棒猫よ!!」

 

 

ムムムと睨み合う泥棒二人。どうやら因縁のライバルといった様子だ。

収拾がつかなそうだと判断したロビンは割って入る。

 

 

「ごめんなさい。急いでるの。久し振りの友達との再会に水を差す様で悪いのだけれど…」

 

「「友達じゃない!!」」と声を揃えて反論するナミとカリーナ。

「ふふっ。息ぴったりじゃないですか」と突っ込むビビ。

 

此処でリーシャはロビンの正面へ立ち、彼女の表情をじっと見つめると

 

「ロビン…何かあったんですね?話して下さい」

 

リーシャは即座にロビンの様子に異変を見抜く。

表情に出していないように見えるが、一味の船医である彼女から見れば明らかに焦った様子だ。顔色も非常に悪い。

 

 

「船医さんには敵わないわね…」

 

 

ロビンはこのまま一人で現場へ向かうつもりだった。

しかし、リーシャの全てを見透かしたような双眸に、表情に笑みを浮かべ観念した。

先程自分が"見聞色"で感じ取った殺気から、恐らく戦いがエスカレート。

殺し合いの域に達し、非常に危険な状態であると。

 

 

「私達も戻りましょう!!」

 

 

ビビは即座にスタジアムへ戻ろうと決意する。

ナミもリーシャも同じ気持ちだった。ロビンは三人を巻き込みたくはなかったが。

特にリーシャはこの事態を招いてしまったのは自分の所為だと責任を感じていた。

 

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

 

結果一味全員で止めに行く決断をし、スタジアムへと掛けようとした時だった。

其処にカリーナからの待ったが入る。

 

 

「ナミ、本当にお宝を諦めるの?あの泥棒猫のナミが?」

 

「何?アンタに構ってる暇なんてないの!ブーケが欲しいなら好きにすればいいでしょ」

 

「あの青薔薇がどういう物かあんた知らないのね。いいわ、教えてあげる。あの青薔薇は四年に一度、この島にしか咲かない超希少な花なの。養殖も不可能。それに加えて成るのはほんの数十本だけ。青薔薇のブーケは贅沢にも全ての青薔薇を束ねた物なのよ」

 

 

ある"特殊な技法"を使ってね!とカリーナは得意げに話を続ける。

ただの花束ではない様子に、ナミも少し興味を示した。

 

「……特殊な技法?」

 

「そして…その技法で束ねられた花束を絞ると出てくる一滴の雫。それが青薔薇の本当の価値なのよ」

 

ロビンはその噂を聴いたことがあった。

"ある花"から採れる一滴の雫。其れは空気に触れると即座に結晶化を始める。

一粒の宝石が誕生するのだ。無論、唯の宝石ではない。

手にした者を未来永劫幸せにすると言われてきた伝説の宝石。

記憶にあるその名を口にするロビン。

 

 

「聴いたことがあるわ……確か…【ブルーローズ・ムーン】」

 

「流石ロビンね。ウシシ!その価値は売れば100億ベリー!あの天竜人でさえ一粒しか持ってない!ナミ、これを聴いても諦めるっていうの?」

 

「ひゃ!100億ベリーですってぇ!!!?」

 

 

これから生涯目にする事の無いかもしれない金額に、ナミの目がベリーに変わった。

青薔薇の本当の価値を知る者は少ない。

だが、100億の価値がある物が簡単に手に入るとは思えなかったカリーナ。

用心を重ね、昔組んだ事のあるナミを仲間に引き込みたかったのだ。

 

 

「取り分は半々!どお?悪く無いでしょ?」

 

「50億……くうっ!悪いわね!魅力的だとは思うわ。でもお金で買えない物を私は手に入れたの。悪いけどあんた一人で行って」

 

 

あのナミが大金を諦めた!?

一味の驚きは驚愕するものであったが、同時にナミの言葉は嬉しくもあった。

 

 

「行くわよ皆!あのバカ達止めるんでしょ!?」

 

「ナミさん!私感動しました!」

 

「仕方ありません、勝負はまた次回に持ち越しましょう」

 

「ナツメは大丈夫かしら…彼が居るのに何故……」

 

 

各々の想いを胸にスタジアムへと駆け出した四人。

カリーナは固まっていた。何がナミを変えたのか気になった。

お金で買えないもの。そんな物あるわけ無い。

 

「待って!私も行くわ!そっちの用事が済んだらでいいから私と組みなさい!」

 

カリーナの発言にナミはビックリするも思考する。

 

「はあ!?アンタ一人で行けばいいでしょ?何でそんなに組みたがるのよ!………カリーナ、アンタ、他に隠してる事あるでしょ」

 

「ギクッ!……そ、そうよ!悪い?一人じゃ難しいのよ!だから協力しなさい!」

 

 

ギクって本当に言う人初めて見ました。と驚くビビ。

ロビンとリーシャは皆の少し前を走っている。

ナミは足元を見たのか不敵な笑みを浮かべ……

 

「ふーん……取り分は私が8、アンタが2」

 

「はぁ!?欲張りすぎでしょ!半々で十分じゃない!」

 

「こっちは充分な戦力提供するのよ?アンタこそ50億何て欲張りすぎだわ」

 

「私は情報提供と入手方法を知ってるのよ?せめて6・4!これ以上はまかんないわ」

 

「7・3。此処で手を打ちなさい。イレギュラーが出たって助けてあげないわよ?」

 

「……このっ!泥棒猫!!」

 

「うふふっ。毎度割りっ♪宜しくね、女狐♪」

 

意地悪な表情で共闘の握手を差し出すナミ。

カリーナはベー!と、舌を出し可愛らしく威嚇して返すのだった。

そしてスタジアムに到着し、一同が見たものは……

 

 

「師匠!!!」

 

「ナツメ!動いてはならぬ!今止血を!!」

 

「あ……ああ…あ………」

 

 

時雨を落とし膝をつくたしぎ。

向かい合うように両膝をつき放心状態のアイン。その右手は真っ赤な血で染まっていた。

慌てふためき目に涙を浮かべながらナツメの傷口を両手で塞ぐハンコック。

そして……

口からは血を吐きながらも笑顔を浮かべ、胡座をかいてその場に腰を落とす男。

左胸に空いた穴から血を流すナツメの姿だった。

 

 

「お…お兄様ぁ!!!!」

 

「嘘でしょ?……ナツメ……ナツメ!!」

 

 

リーシャとナミは即座にナツメの元へ駆け寄る。

 

 

「ロ、ロビンさん……これって…」

 

「ええ。嫌な予感が当たったみたいね……私達も行きましょう」

 

 

涙を浮かべ、震えながらも、目の前の状況が信じられないと行った様子のビビを引き連れてロビンはナツメの元へゆっくりと歩みを進める。

 

 

「あ、あいつ船長でしょ?何があったのよ……」

 

 

カリーナはその場の雰囲気に呑まれ、静かにその場に佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

スタジアム〜〜皆が到着する数分前〜〜

 

 

 

「ぐっ!……此奴ら……いつの間にこんな……」

 

たしぎとアインが起こす闘いの余波で飛来してくる大量の瓦礫。

それを見聞色で交わしながらも二人の様子を。成長を驚くハンコック。

 

 

「あいつら……此処までする理由は何だ……たしかリーシャがあの時…」

 

ナツメは二人のガチバトルをその目に映しながらも、あの夜リーシャに言われた言葉を思い出していた。

 

 

『お、お兄ちゃんそれ…本気で言ってるのかな……』

 

 

あの時、妹が浮かべた不安げな…呆れたような表情。

皆の居場所として、家族として海賊旗を挙げた。

だが…本当に皆と向き合っていたか?

考えろ考えろ!リーシャはあの時何を伝えたかった?

裏で何かを決め、話し合っていたことは知っている。

この島に来た時の皆の表情。何か伝えたい様なそんな顔をしていた。

 

「しっかりしろよ…俺は船長だろう……」

 

俺は…居場所を造っただけで満足して…それで完結してたんじゃ無いか?

家族がコレだけ争う原因を知らねばならない。もう隠し事は無しだ。

 

 

 

「くくくっ!流石ですね。私も大層努力しましたが…」

 

「くくくって、笑い方が先生になってます…よっ!!」

 

 

常人では目視するのも難しい速度で打ち合う二人。

互いに氣を、覇気を纏わせた"刀と拳"。

アインは身体能力を極限まで高めた四肢を使い、八方から攻め立てる。

氣の回転を加えた拳は着撃点に螺旋の跡を刻みこむ。

その動きは"舞"を思わせ、美しく洗練された動きであった。

 

「私の斬撃で傷もつかないとは…ですが!!」

 

たしぎも負けてはいない。納刀時に鞘に込めた氣を刀身に即座に纏わせる。

そして神速の抜刀と同時に"物打ち"から鋒へと凝縮させた氣を礫として打ち出す。

一点に絞られた力はアインの身体を徐々に傷つけていった。

 

 

「「いい加減に……倒れろ!!」」

 

 

二人の怒号が重なり合う。

ハンコックは大事にならないでくれと苦味を潰した表情で見守っていた。

だが、このままでは拉致があかない様に見える戦いも変化を見せる。

 

 

「……貴女の想いは充分に分かりました…ですが、そろそろ終わりにしませんか?」

 

 

たしぎは終わりの言葉と同時に腰から鞘を外し、くるりと回転させると

 

キイィィィィィィィィィン…

 

切羽と鯉口が鳴りあう音がその場に響いた。

 

「決着を。奥義・篠の五月雨」

 

ハンコックにはたしぎが初めて構えた様に見えた。

半身に腰を落とし、右手は刀身と同じ様に前方へ。鎬地辺りに手を添えている。

左手は掌を裏返し、潜り込ませる様に柄頭を乗せているだけだ。

ナツメの世界風に言うならば少し変わったビリヤードの構えに似ていた。

 

 

「賛成です」

 

 

アインは一言だけ言うと瓦礫の上からストンと地に落ちる。

そして地に足が触れた時、破壊音と共に直径3メートルのクレーターをつくった。

此方は構えという構えはとらない。だが…

 

 

「この技は絶対に防げません……【ドラゴン・ドレス】」

 

 

アインの身体を凄まじい氣が駆け巡る。

彼女の指先は黒鉄の様に黒く染まり、キリキリと音を立てていた。

互いに譲る気は無いらしい。

その様子を上から見ていたナツメ。

 

 

「不味いな……彼奴ら本気で…」

 

 

あの奥義を二人に教えたのはナツメ自身。

大切なモノを守る為の力。

その守るモノの為に二人はぶつかり合っているのか?

最初はそう感じた。だから止めはしなかったが……

今はそれを微塵も感じさせない。

 

 

「まだまだ未熟だな……馬鹿弟子どもが!」

 

 

一触即発の刹那。

 

 

「そこまでだお前ら」

 

 

コンマ数秒、アインの初動が速かった。

ビキビキッ。鈍い音と共にアインの右手がナツメの左胸に食い込む。

皮膚、神経、筋肉、血管をズタズタに進ませ、指先は肺を貫通していた。

 

 

「し、師匠……?」

 

「え……?私…今何を……せ…先生……あ…ああ……ああぁ」

 

 

二人ともが正気を失っていたのだろう。

たしぎは地に膝をつくと同時に時雨を落とす。

アインは目の前の状況が受け入れられず軽いショック状態だった。

 

 

「ナツメ!動いてはならぬ!今止血を!!」

 

 

ハンコックは慌てながらもナツメの体を支え、その場に座らせた。

血反吐を吐き、溜息を一つ。胡座をかいてタバコに火を付けるナツメ。

何かを言おうと口を開きかけたその時。

 

 

「お兄様ぁ!!!!!」

 

「ナツメ!!」

 

 

リーシャとナミが駆け寄ってきた。

後ろを見てみるとロビンとビビの姿も確認出来る。

その更に奥に見かけない顔の少女も居たが。

 

 

「何だお前ら…戻ってきたのかよ」

 

「ええ。こうなる事が何となくだけど予想出来たから」

 

 

そう言って心配そうな顔を見せるロビン。

リーシャはナツメに泣きながらしがみつき何があったのかを聞いてきた。

 

 

「全員揃ってるのか。良い機会だからお前らに話がある」

 

「あ…ああ……先生……」

 

 

未だ放心状態のアイン。ナツメは彼女の頬を平手打ちした。

 

「っ!!先生!!」

 

「しっかりしろよ!俺は大丈夫だ。あれくらいで死ぬか!撃ち込まれた氣が若干暴れて、治りが少し遅ぇだけだ」

 

 

リーシャの心配は杞憂に終わった様だ。

兄の龍掌はこの程度の怪我であれば瞬時に回復させる。

そうならない原因が不明だった為の心配だった。

 

 

「さて……たしぎ!アイン!ハンコック!そこに直れ」

 

 

一味はナツメを囲む様に立って居たが、呼ばれた三名はナツメの前に正座した。

これからお説教タイムだ。

三人の頭に一発づつ拳骨が落とされた。

ぐぅ!と唸る三人。既に左胸は完治してした様だ。

 

 

「何が理由であれ、あの技は家族に向けるもんじゃねぇ!2度とあんな真似すんじゃねぇ!いいな!!!アインとたしぎは許しが出るまで棗流禁止!」

 

「しゅ、修行もですか?「ったりまえだ!!」ひぇっ」

 

 

説教もソコソコに終わらせると、ナツメは今回の事を皆に謝罪した。

その行動が意外過ぎたのか、皆が驚愕といった様子だ。

 

「今回の件は俺が原因なんだろ?こんな事態になったのもちゃんと皆んなの話を聞いてやらなかったからだ。すまんかったな……んで、考えた訳だ。船に戻ったら一人一人と話がしたい。ちゃんと聴くから話せよ。いいな」

 

 

この言葉には皆が言い淀む。正直困ってしまう。

何せ船長は皆に告白しろ!と言っているのだから。

そして暫しの沈黙の後、リーシャが口を開いた。

 

 

「分かったよ、お兄ちゃん。船に戻ったら皆から重大な発表があります。心して聞いて下さいね」

 

「ちょ!リーシャ!?本気で言ってんの!?」

 

 

ナミは顔を赤くして焦りだした。ビビも俯いて耳まで真っ赤だ。

 

 

「そんな…先生に怪我をさせた後にですか?」

 

「そうですよ!(これじゃ私達が圧倒的に不利です!」

 

「いいんですか?此処でハッキリさせないとお兄ちゃん一生気付いてくれませんよ?」

 

 

アワアワするたしぎとアインにあっけらかんと進言するリーシャ。

リーシャの言葉に二人は観念した。

 

 

「ひでぇなリーシャ、一生は言い過ぎだろ…お兄ちゃんそこまで鈍く無いと思うけど」

 

「はぁ…本当に困った船長さんね……私も乗ったわ。一生何て待ってられないもの」

 

「ロビンまで!!……まぁいい。んで、レースはどうすんだよ」

 

 

そう忘れがちだが今はレース中なのだ。

すると其処に…

 

「あー、話終わったー?初めまして船長さん♪私カリーナ!ヨロシク」

 

 

自己紹介もソコソコに、カリーナは先程のナミとの会話をかいつまんで説明した。

 

 

「て事だからさ!どお?私と手を組まない??」

 

「ナツメ!これはチャンスよ!!船につぎ込んだ貯金も全部返ってくるんだから!70億よ!70億!!」

 

「ナ、ナミ……うーん、分かったよ。どうやらレースは機能してねぇし。俺たちは海賊だからな!お宝目の前に帰る選択肢はねぇ!行くか!」

 

「決まりね!ルートは私とロビンが知ってるから!ウシシ!ヨロシクね!ナツメ!」

 

 

カリーナに差し出された手を取るナツメ。

なんだかんだで一味初めての冒険である。

ナツメは気合いを込めて宣言した。

 

 

「どの道俺らの誰かがゴールしてただろ、貰えるもんは貰っちまおう!タイムリミットは周りが眼を覚ますまでだな!行くぞ野郎『野郎共はお兄様だけです』えぇ……」

 

 

こうしてカリーナという美少女を含めた一同はスタジアムを後にした。

目指すは巨大な青い薔薇の麓。100億ベリーの宝石。

【ブルーローズ・ムーン】を求めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラトゥール島〜〜ドラゴン・ゲート号近海〜〜

 

 

 

ナツメ達の船に寄り添い隠れるように停泊する一隻の船。

船体には所々宝石が埋め込まれている。

甲板には今まで奪ってきたであろう財宝が無造作に散らばっていた。

其処に島を見つめる一人の男。

鎖を掌から放出し自分の腕に巻きつけると、周りを囲む部下に指示を出した。

 

 

「ジャララララ!いいか!あの女が例の物を持ってる所を確認次第、奪い取れ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒント:中の人(○栗旬)

 

 

 

 

 

 

 

 




たしぎが最初に放った棗流は(カカラエンマ)と読みます。
そして、ココでカリーナが登場です。
仲間になるかは次回をお楽しみに。

バカラの登場はもう少し先になります。

此処まで読んで頂きありがとうございました。

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