雪音クリス(偽)は今日も死に場所を求める   作:ネメシス・アンブレラ

2 / 2
一話をちょっと修正しました


消え去ったあの日常

 魔法少女事変から一週間、オレ達はあの戦いの労いとして前にも来た事のあるビーチへとやって来ていた。

オレはビーチでの遊びなんて飽きてるからビーチパラソルの下で本を読んでいる。

 

 

 

「クリスちゃーん!ビーチバレーしよーよー!」

 

「ちゃん付けするんじゃねぇ!」

 

 

 あのバカ()、いつもちゃん付けするなと言っているのになんでいつもちゃん付けしてくるんだ!

 本に栞を挟んでバカ()の元へと思い切り走り、奴の顎へアッパーカットをぶち込む。

 

「げぼはぁっ!」

 

「響っ!?」

 

「クリス先輩のアッパーカットをモロにくらったデスよ!?」

 

「響さんは死んだかもしれない」

 

 

 外野が煩いがそれを無視する。

 

 

「バレーがしたいんだろ?いいぜやってやるよ、ただしお前がボールな!」

 

「待って待ってクリスちゃん!ボールになったら死ぬ!死んじゃうから!」

 

「だったら的になりなッ!」

 

「何その究極選択肢!?」

 

 

 響の首に腕を回し、こめかみを拳でグリグリする。

響はオレの体をタップしてギブアップを示してくるが、そのタップしてくる場所が問題だった。

 

 

「おい、何処タップしてんだ!」

 

「ふっふっふ、これ以上続けるならこっちもタップし続けるだけだよ」

 

 

 結局、これ以上変なところをタップされるのも嫌なので響を放す。

その後はビーチバレーの人数が足りないからS.O.N.G.の潜水艦からエルフナイン達を連れて来てビーチバレーをする。

 

 

「オイ、何故オレまでビーチバレーの審判なぞしなければならん」

 

「しょうがねぇだろ。何対何でやっても審判が必要なんだし」

 

「オレは暇じゃないんだ!」

 

「それじゃ審判お願いね!キャロルちゃん(・・・・・・・)!」

 

 

 キャロルは溜め息を吐きつつ、ホイッスルを口に咥えて鳴らす。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 キャロル・マールス・ディーンハイム。

彼女は本来エルフナインに自分の体を渡し、彼女自身は消えてしまった。

しかし、この世界において彼女は消えることなく、S.O.N.G.の職員として存在している。

 何故、消えるはずの彼女が存在しているのか?

その理由は三つある。

 一つ目の理由はエルフナインの怪我が無かった事

エルフナインが怪我を負うところをクリスが庇ったため、エルフナインが怪我を負うことが無かった。

 二つ目の理由は響がキャロルを気絶しても離さなかった事

キャロルは気絶した響から離れ、暫くの間行方不明となっていた。

しかし響は彼女を離さなかった。

 三つ目の理由はキャロルが全ての記憶を焼却しなかった事

本来、彼女はすべての記憶を失い、自分が何者か分からずエルフナインに自分の体を与え消えたが、彼女は膨大な記憶を全て焼却する事が出来なかった。

 これらがキャロルがこの世界で生きている理由だった。

風鳴弦十郎は行き場の無い彼女をS.O.N.G.へと招き入れた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ビーチでの休暇も終わり、今日も今日とて訓練だ。

あの戦いから皆のギアの調子が悪く、ギアを纏っている間は自分の体重の何倍もの重みを感じる。

もちろんオレのイチイバルも例に漏れず、暫くの間は不調であったが訓練を重ねる度に調子が戻っていった。

 

 

『オイ、そろそろ訓練をやめろ。これ以上は体に何が起こるかわからんぞ』

 

「……ふぅ、わかった」

 

 

 訓練室の外からキャロルの忠告を受け、素直に訓練室から出て行く。

訓練室を出たところでキャロルに呼び止められた。

訓練後の身体検査だそうだ。

 今までそんな事はしなかったが、今回はギリギリまで訓練をしていたので体に異常が無いかを調べるそうだ。

検査室で検査を受け、出て行こうとするがキャロルの顔が曇っているため出て行くのをやめる。

 

 

「なぁ、そんな顔してどうした?」

 

 

 椅子に座りキャロルに話しかける。

キャロルは自分は上手くやっていけるだろうか、自分は許されない事をしたのにのうのうとしていていいのか、といった悩みを吐き出してくれた。

 恐らく精神的に参っていたのだろう、簡単に話してくれた。

 

 

「別に、ここに居てもいいだろ」

 

「……」

 

「オレも、同じ経験したんだ」

 

「……クリス、も?」

 

「まぁな……」

 

 

 オレはフィーネに言われるがまま、ソロモンの杖を起動させノイズ達を操った。

 響達の友情に罅を入れた。

 フロンティア事変で一時的とはいえ、先輩達を裏切った。

 あの戦いで後輩達に怪我をさせるところだった。

 

 

「オレは、お前みたいに色んな悪ぃ事をやってきた。それでもあいつ等はオレの事を笑って許してくれて、受け入れてくれたんだ。だからお前の事もきっと、いや絶対受け入れてくれるさ」

 

「オレの事を……」

 

「オレが言えるような事はコレくらいだ。まぁ、お前にとっては解決になっちゃいねぇと思うが……」

 

「いや、相談を聞いてくれて感謝する」

 

 

 オレは立ち上がり検査室から出て家に帰った。

翌日からキャロルは少しずつではあるが皆と仲良くなっていった。

 

 

 

 この時オレは、オレ達は知らなかった。

この日常が一ヵ月後に崩れ去り、世界が滅ぶのを。

 





キャロルちゃんはダウルダブラのファウストローブを持っています
てかこれ日常じゃないような気がする



活動報告にてアンケート開始しました

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。