魔法科高校の劣等生<The Legend of Amazons>   作:kakki-az

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今回はあのおじ様が登場!
あんな人が上司なら仕事も楽しそう...


第六話《転機》

千翼の話が終わり、静寂が続く。

ふと千翼は二人を見る。

雫の表情は読み取れないが、横で両目に涙を浮かべているほのかにハンカチを渡している手は微かに震えていた。

 

「千翼くん、つらいはずなのに話してくれてありがとう」

 

ほのかは雫から受け取ったハンカチで涙を拭きながらそう言った。

 

「うん。千翼くんの事ちょっぴり解った気がする」

「千翼くん!」

 

いきなり大きな声で呼ばれた千翼は驚いてそちらを向くと、

 

「私、千翼くんの力になりたい!」

「私たちにできることなら何でも言って」

とほのかと雫は決意を千翼に打ち明ける。

 

「...二人共、いいのか?俺のそばにいたら危険な事に巻き込まれるかもしれないのに」

 

昨日の事があったためふたりを心配する千翼だったが、

 

「確かにあの時、すごく怖かったよ。でも千翼くんが助けてくれた」

「だから今度は私たちが貴方を助ける番」

 

二人の覚悟を感じた千翼はそれ以上は何も言わなかった。

 

「...分かった、それじゃあ頼りにするよ。ほのか、雫」

「「うん!」」

 

ふたりの気持ちのいい返事を聞いて千翼は微笑んだ。丁度その時だった。

 

 

「ただいま」

 

 

扉が開いて食堂に入って来たのは()()()()()()()()()()

 

「...え?」

「.....」

 

千翼は驚き、ほのかは呆気に取られていた。そして雫はと言うと。

 

「おかえりなさい、お父さん」

 

驚くどころか、慣れている様子で軍服の人を迎え入れた。

 

「...え?...雫の...お父さん!?」

「うん。そうだよ。」

 

何で軍服を着ているのかなど千翼が不思議に思っていると、男性は笑みを浮かべながら千翼に声をかけた。

 

「いやぁ、すまない驚かせてしまったね。私は《北山(きたやま) (うしお)》、雫の父親だ。話は聞いているよ、娘たちを救ってくれてありがとう。感謝するよ、千翼君。」

「あ、ど、どういたしまして...って何で俺の名前を?」

「...それを話す前に君にこれを返さなければ」

 

そう言って潮は持っていたジェラルミンケースを机に置く。

鍵を開け開くと中にはベルトとインジェクターが入っていた。

 

「それは!俺の...!」

「君が家に運ばれて来た時、このベルトを見てもしやと思い、私の親友に頼んでベルトと君のDNAを調べてもらった、その結果このベルトが数十年前に作られた物であり、君が今は存在していない製薬会社の4Cという組織がかつて保護した少年であることも分かった」

 

そう言いながら潮は千翼にベルトとインジェクターを返し、千翼もそれを受け取る。

 

「...俺の事はどれくらい知っているんですか?」

「...君が普通の人間ではない事と少なからずアマゾンと呼ばれる存在の事もね」

「...そうですか」

「だからと言って君をどうこうしようという訳ではないよ。君は娘たちを助けてくれたそれだけで十分だ。」

 

それを聞いて千翼は嬉しくてたまらなかった。千翼は自分より年上の人に感謝されたことがないのでとても嬉しくなっていた。

 

「もし君が良ければ、君が何をしたいのか言ってごらん。できることなら私と親友が協力しよう。訳あって親友はまだ顔を出すことができないらしいけどね」

 

潮は千翼にそう提案する、そう言われた千翼は少し考え、ゆっくりと口を開く。

 

「できるなら、ほのかと雫と一緒にいさせてください。二人と一緒にいると何故か落ち着くんです。まるでイユと一緒にいるみたいで」

 

千翼は素直に真っ直ぐ潮の眼を見て答えた。しかし、潮は少し難しい顔をしていた。

 

「うーん…一緒にか。幸い千翼君の戸籍と住む場所は何とかできるが…。学校まではどうかなぁ?あそこは魔法師達しか通えないところだからなぁ」

「…魔法師?」

 

聞きなれない言葉に首をかしげる千翼に、ほのかと雫が答える。

 

「えっと、魔法師っていうのは、簡単に言うと、魔法を使う人の事だよ」

「私たちは、その魔法師でもあるの」

「魔法かー。へー、そうだったんだ」

 

千翼は驚くことなくすんなり受け入れた。

 

「…千翼くん、そこは驚かないんだね」

「うん。ふたりから、普通の人とは違う気配を感じたんだ。あの闘いの最中に強い光を放ったのが魔法なら納得だよ」

「そこ納得するんだ…」

 

少し呆れ気味に溜息をつく雫に対してほのかはあの日の事を思い出し、千翼に()()()を伝える。

 

「あ、でも千翼くんもしかしたら、魔法使えるかも!」

「?どういう事?」

 

ほのかが言ったことがわからない千翼はほのかに質問を返す。

 

「実は昨日、千翼くんがアマゾンと闘っている時、少しだけど《サイオン》の光が見えたの」

「《サイオン》?」

「魔法を発動させる際に、発生する粒子をサイオンと呼ぶの。ほのかは光に対して人より過敏に反応するの」

「そうなんだ。それでそのサイオンが発生していたから、魔法が使えるってこと?」

「んーまだそうとは言い切れないから。今から千翼君に実際にやってもらおうと思って」

 

そう言ってほのかは自分の手首に着けている《腕輪》を外し、千翼の手首に取り付ける。

 

「これは?」

「これは《CAD》っていってね、魔法を発動させるために必要なものなの」

「へぇ~、魔法って呪文を唱えるイメージがあったけど、これだけでいいんだ!すごいな~」

 

そう言いながら興味津々にCADを見つめる千翼は、年相応な子供っぽさが垣間見えた。

 

「千翼くん、そろそろ始めよう」

「おっと!そうだった。まずは…えっとこれどうやるの?」

「ちゃんと教えるから。まずは…」

 

ほのかと雫がCADの使い方と魔法を発動させる際のやり方を千翼に教えた。千翼はふたりのおかげで原理を理解することができた。

 

「ふたりとも離れて。…よし!行くぞ!」

 

ふたりを離れさせると千翼は意識を集中し、先程見たほのかの光魔法をどのように発動するかをイメージすると、体からサイオンが発生した。

それをCADに注入し、CADから出てきた魔法の設計図である《起動式》が千翼の肉体に取り込まれ無意識下に送られる。

そして、自分の前に座標を固定し、自分の無意識下に存在する《魔法演算領域》にて《起動式》《座標》《出力》《時間》を入力し、事象に付随する《情報体(エイドス)》へと魔法式を投射する。

すると、千翼の前で強い光が放たれた。それは数秒で収まる。

 

「で…出来た」

「…うん、出来てたね」

「すごい…すごいよ千翼くん!初めてで、しかも見ただけであの精度で魔法式を展開できるなんて!!」

 

千翼自身もとても驚いていた。本当にふたりに教えられたとおりにやったら、あっさり出来てしまったのだ。

 

「これが...魔法」

 

しばらくの間千翼は感動の余韻に浸っていたが潮の発言で我に返る事となった

 

「初めてでこれほどとは…。とてつもない逸材だ。これなら編入試験を受けることができる」

「…試験?…あ、そっか!学校に行くってことは勉強できなきゃいけないのか。」

 

千翼は4Cにいた頃から学問に触れてこなかったため、勉強がからっきしだったのだ。だが

 

「大丈夫。千翼くんなら合格できるよ」

「私たちも手伝うから一緒に頑張ろ!」

「...そうだな。こうなったらとことんやるだけだ。二人共よろしく!」

「「うん!」」

「では戸籍の手配と編入の手続きは私がしておこう。入学式に間に合うように一週間後にしてもらうように頼んでおこう」

「あ、その事なんですが」

「ん?どうしたんだ?」

「俺、名字が二つ…あるんです」

「ほう」

「それだけの事何ですが…えっと…」

「成程、どちらの名字も使える様にして欲しいんだね?」

「はい、流石に出来ない-」

「分かった、そちらも何とかしよう」

「!潮さん…ありがとうございます!」

 

こうして千翼は、ほのか達と同じ第一高校の編入試験に合格するため、雫の家で猛勉強と魔法の訓練を開始した。

 

編入試験は筆記試験と実技試験の二つがあるが、主に実技試験が評価されるため、実技で良い成績を取れば編入できる。

しかも千翼はとてつもない吸収力と戦いで培ったセンスで教えたことを模倣する事ができたので、たった二日で問題なくクリアできるレベルになった。

 

筆記試験の方は中学までの学問と魔法に関する事を短期間で覚えないといけなかったため、千翼でもなかなか覚えられなかったがふたりに丁寧に教えてもらいながら少しづつ進めていった。

 

四日目の夜、返ってきた潮に千翼は住む場所について提案した。

潮や雫は家に居ていいと言っていたが、いつまでも厄介になるわけにはいかない事を二人に伝え、話し合った結果、雫の提案によりほのかの住んでいるマンションに部屋を借りることになった。

 

しかも千翼の部屋は光井家のお隣なので、ほのかは試験前日まで千翼の部屋に様子をうかがいに来る事になる。

 

それを聞いた雫に『まるで通い妻みたい』と言われて、千翼は少し照れて、ほのかは顔を真っ赤にしていた。

 

 

 

翌日、ついに第一高校の編入試験を迎え、三人は第一高校の校門に立っていた。

 

 

「…いよいよか。今更なんだけどすっごく緊張してきた」

 

千翼はそう言いながら、両手を強く握りしめる。

 

「大丈夫、千翼くんなら絶対に合格できる」

「そうだよ!千翼くんがどれだけ頑張っていたかは私たちが一番分かっているよ!だから頑張って!」

 

二人の応援が緊張が解け、自信が湧いてくるのを感じていた。

 

「二人共ありがとう。…それじゃあ、行ってくる」

「「行ってらっしゃい!!」」

 

千翼はふたりに見送られながら校門をくぐり、己との戦いに挑むのであった。

 

 

 

 

「これでよかったかな?」

『あぁ、色々あんがと』

「急に連絡が来たからどうしたかと思えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()驚いたよ。それでこれで貸し1だね?」

『ちゃっかりしてんな~、()()()()、試験運用っていう形で何体か融通きかせてやるよそれで貸し借り無しだ』

「いいのか?渡りに船だが」

『頼んだのはこっちだからな。それに無理して動いてくれた友達にはそれ相応の敬意と対価がないとね』

「…結局彼との関係は教えてくれないんだね?」

『それについてはしかるべき時にちゃんと話すよ、潮』

「君がそういうならいまは聞かないよ……。でも雫に何かあったら…『大丈夫』っ」

『俺達が守り抜く、()()に』

「………、分かった。君を信じるよ、

 

 

 

 

 

 

【来人】」

「お待たせしました!」

『時間だな、千翼の事気に掛けてやってくれ』

「任せてくれ(ボソッ)……二人ともおかえり」

「誰と電話してたの?」

「あぁ、取引先からの連絡だよ―」

 

潮は真面目な顔から朗らかな顔に戻ると、二人の娘の元へ歩いていった。

 

See You The

NEXT TARGET




ついに千翼を魔法に触れさせることが出来ました!!
自分で書いてて思ったのは、見た魔法の再現ってなかなかチートですね(笑)

そして千翼に執着する【来人】とは何者なのか?

次回!あの兄妹再臨!早く千翼と合わせてあげたいです!

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