魔法科高校の劣等生<The Legend of Amazons>   作:kakki-az

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大変長らくお待たせしてすみません。第二十六話です。
話が少々短めになっております。



第二十六話《強襲》

討論会 当日―

 

会場である講堂には、全校生徒の半分が集まった状態で討論会が始まった。

 

「二科生はあらゆる面で一科生より差別的な取扱いを受けている。生徒会はその事実を誤魔化そうとしているだけではないか!」

「ただ今、あらゆる、とのご指摘がありましたが、具体的にはどのようなことを指しているのでしょうか。既にご説明したとおり、施設の利用や備品の配布はA組からH組まで等しく行われていますが」

 

討論は同盟側が必然的な質問と要求に対して、真由美が生徒会代表として反論するという流れを辿っていた。しかし、具体的な事例と曲解の余地がない数字で反論を繰り出す真由美に、同盟の実質のないスローガンは徐々に対抗できなくなっていく。

その状況を千翼、達也、深雪、摩利、鈴音が舞台袖で見ていた。

 

「もはや討論会ではなくて、真由美の演説会になりつつあるな」

「そうですね」

「それにしても……」

 

摩利と千翼は会場内を見渡す。会場内にいる生徒の中に同盟メンバーと判明している生徒は八名。今のところ動く気配はなかった。

 

「何をするつもりなのか分からないが……こちらから手出しできんからな。専守防衛と言えば聞こえはいいが」

「渡辺委員長。実力行使を前提に考えないでください」

「分かってる、心配するなって」

「お願いします」

 

鈴音から注意され、摩利は渋々了承する。

 

「……生徒の間に、皆さんが指摘したような差別の意識が存在するのは否定しません……」

 

真由美が次の言葉を発するのに少しの間があいた。

 

「『ブルーム』と『ウィード』」

 

真由美の口からその言葉が出た時、千翼と達也は驚いた。二人だけではない、摩利も、鈴音も、そして講堂内の生徒たちも驚いていた。

 

「学校も生徒会も風紀委員も禁止している言葉ですが、残念ながら多くの生徒がこの言葉を使用しています」

 

講堂内がざわついていく、そんな中でも真由美はしゃべり続ける。

 

「しかし、一科生だけでなく、二科生の中にも自らを『ウィード』と(さげす)み、諦めと共に受容する。そんな悲しむべき風潮が、確かに存在します。この意識の壁こそが問題なのです」

 

いくつかの野次が飛んできたが表立った反論は無かった。真由美は蠱惑的(コケティッシュ)な小悪魔スマイルを封印して凛々しい表情と堂々とした態度で熱弁する。同盟の反論はすでに尽きていた。

 

「私は当校の生徒会長として、この意識の壁を何とか解消したいと考えてきました。……ですがそれは、新たな差別を作り出すことによる解決であってはならないのです。一科生も二科生も一人一人が当校の生徒であり、当校の生徒である期間はその生徒にとって唯一無二の三年間なのですから」

 

講堂内に拍手が湧いた。満場の、と言うわけではなかったが、その拍手に一科と二科の区別はなかった。

 

「制度上の差別をなくすこと、逆差別しないこと、私たちに許されるのはこの二つだけだと思っています。……ですが、生徒会にも、一科生と二科生を差別する制度が一つ残っています。それは、生徒会長以外の役員の指名に関する制限です。現在の制度では生徒会役員は一科生から指名する事になっています。この規則は、生徒会長改選時に開催される生徒総会においてのみ改定可能です。私はこの規定を、退任時の総会で撤廃することで、生徒会長としての最後の仕事にするつもりです」

 

どよめきが起き、生徒同士で囁きを交わした。これには千翼も達也も驚いていた。真由美は生徒たちのざわめきが収まるのを無言で待っていた。

 

「……私の任期はまだ半分が過ぎたばかりですので、少々気の早い公約になってしまいますが、人の心を力づくで変えることはできないし、してはならない以上、それ以外のことで、できる限りの改善策に取り組んでいくつもりです」

 

満場の拍手が起こった。アイドルに対する声援に似た浮ついた雰囲気が漂っていたが、一科生だけでなく二科生も、同盟の主張ではなく真由美を指示したことが明らかだった。舞台袖にいる千翼たちも拍手をしていた、

 

その時、

 

ドオンッ、と轟音が突如鳴り響く。

 

 

 

 

 

数分前―

 

「討論会どうなったかな?」

「気になる?」

 

ほのかと雫はバイアスロン部の練習に参加していた。

 

「うん…私たち、行かなくてよかったの…かな」

「千翼くんは行かなくていいって言ってるからいいんだよ、それに他人の愚直なんて付き合うだけ無駄だよ、行こうほのか」

 

そう言って雫はさっさと行ってしまう。

 

(あれ?雫、千翼くんに影響されてる……?)

「はーいみんな!今日は演習林が使える貴重な日だからガッツリ練習するわよ」

 

亜美が部員たちに号令を掛けたので、ほのかは雫の後を追いかけようとしたその時、突如、ドオンッと轟音が鳴り響く。音のした方を見ると実技棟から煙が上がっていた、それを見た部員たちが慌て始めた。

 

「みんなむやみに動いちゃダメ!いま端末で情報を調べるから待機!!」

 

亜実は部員たちを落ち着かせ、端末を操作する、すると今度は亜実が慌て始めた。

 

「みんな、おおおお落ち着いて聞いてね?当校は今武装テロリストに襲われているわ!」

「「!!」」

 

それを聞いたほのかと雫はお互い顔を合わせる。

 

「マジですか部長!?」

「こんなこと冗談で言わないわよ!みんな、護身のために一時的に部活用CADの使用が許可されてるわ。でもあくまで身を守るためだからね」

 

その時、茂みから音が響き部員たちがその茂みに視線がいくと作業員らしき人物が現れた。だが、それは人間ではなくほのかたちには見覚えのある姿だった。

 

『アマゾン!』

 

そのアマゾンが近くにいた部員の一人に襲いかかった。

 

「危ない!!」

 

とっさにほのかは部活用CADをアマゾンにかざし、放った。見事命中しアマゾンはいきよいよく吹き飛ばされ地面に転がる。っと、

 

「このバケモノ!!ウチの部員に何するのよ!!」

 

亜実が続けて魔法を放ちアマゾンは空高く打ち上げられいきよいよく地面に叩き落とすように降下した。

 

「フー…光井さん、ありがとう。ウチの部員を守ってくれて」

「いえ、とっさの事でしたけどよかったです。……ところで、あれってやりすぎなんじゃ?」

 

ほのかの視線の先にはクレーターが出来上がった地面の中心にいるまるでマリオネットのような見るも無残なアマゾンの姿があった。亜美はアマゾンに近づきツンツンっと、つついていた。

 

「息はしてるから大丈夫よー。それにさっきのは正当防衛よ、正・当・防・衛☆」

 

まんべんな笑顔でそう答えた。ほのかはホッとすると、突然地面に座り込んだ。雫が駆け寄る。

 

「ほのか!」

「大丈夫、ちょっと力が抜けちゃって」

「……頑張ったね」

「……うん!……でも、怖かった〜〜」

 

少し涙目になりながら一安心するほのかを雫がなだめる。

 

 

 

 

 

突如鳴り響く轟音に講堂内は混乱し始めた。それを合図に会場にいた同盟メンバーが動いた。

だが、彼らを千翼と達也は見逃さなかった。

 

「「委員長!!」」

「各員、マークしているメンバーを取り押さえろ!!」

 

動員されていた風紀委員が一斉に動いた。

普段、まともに訓練など行っていないとは思えないほど統率の取れた動きで、各々マークしていた同盟メンバーを拘束していく。同盟メンバー全員の拘束が完了した時、

 

「いけない!みんな窓から離れて!」

 

真由美が窓に指をさしながら声を上げた。その近くにいた千翼と達也は指さした窓に視線を向けた瞬間、パリィンッと窓ガラスが破られ、紡錘形の物体が飛び込んできた。床に落ちると同時に白い煙を吹き出し始めた。

 

(ガス弾!?)「煙を吸い込まないように!」

 

千翼がガス弾だと認識したとき、服部が声を出した。すると、吹き出していた白煙はまるでガス弾を包み込むように集まった。

 

「よし」

 

それを確認した服部はかざした手を上げると、ガス弾はそのまま煙ごと窓の外へ移動した。服部が即座に気体の収束と移動の魔法を発動していて一瞬で煙ごと隔離したのだった。すると、今度はガスマスクを被った新手が侵入して来た。しかし、侵入して来た者たちは、突然苦しみだし、一斉に倒れていった。よく見ると摩利が侵入者に向けて手をかざしていた。≪MIDフィールド≫でガスマスク内の密閉空間を窒素で満たし、呼吸できなくさせた。倒れた侵入者もすぐに拘束したが、千翼は感じた事がある気配を察知した。

 

「侵入者!?そっちもか!」

 

摩利は他からの通信を聞いていた。千翼は察知した気配がアマゾンのものでそれが侵入者からであると確信した。

 

「委員長。俺は、爆発が起きた実技棟の様子を見て来ます」

「千翼くん……」

「千翼。俺も同行する」

「わたしもお供します」

「……わかった、気を付けろよ!」

 

摩利の声に送り出されて、千翼たちは爆発があった実技棟に向かった。

 

 

 

 

 

See you the

NEXT TARGET




数ヶ月のブランクがありましたが、何とか投稿できました。

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