魔法科高校の劣等生<The Legend of Amazons>   作:kakki-az

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お待たせしました。二十一話です。

もう間もなくジオウが放送されますね。
とても楽しみですね!


第二十一話《診断》

翌日―

 

千翼は達也、深雪、真由美、摩利、あずさと生徒会室で昼食をとっていた。

昼休み、今日もほのか達と一緒にと思っていたが深雪から誘われたのだ。

千翼とあずさはダイニングサーバーで、達也と深雪、摩利、真由美は弁当を広げていた。

 

「達也くん、千翼くん」

 

と、摩利が然り気無く二人に話しかける。

本人はうまく切り出したつもりだろうが、野次馬丸出しの笑みは隠しきれていなかった。

 

「昨日、二年の壬生をカフェで言葉攻めしたというのは本当かい?」

 

食べ終わっていて良かった、と二人は思った。

何か口に含んでいたなら粗相(そそう)しているところであった。

 

「・・・・・委員長も年頃の淑女なんですから、『言葉責め』とか使わない方がいいと思います」

「ハハハ、ありがとう。あたしのことを淑女扱いしてくれるのは達也くんくらいだよ」

「そうなんですか?自分の恋人をレディとして扱わないなんて、先輩の彼氏はあまり紳士的な方ではないようですね」

「そんなことはない!シュウは・・・・・」

 

そこまで言いかけて、摩利はしまったという顔で口をつぐんだ。

 

「・・・・・委員長。彼氏いるんですか?」

「・・・・・ま、まあ・・・な///」

 

摩利は顔を赤らめ、恥ずかしそうに答える、その横で真由美がプルプルと震えていた。摩利は達也の方を見る。

 

「・・・・・」

 

達也は無表情、という名の表情で見つめていた。

 

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・なぜ何も言わない?」

「・・・・・千翼みたいにコメントした方がいいですか?」

「プッ」

 

真由美は笑いをこらえられず、つい声を漏らした。

摩利は視線を横に向けると、真由美が背中を向けて肩を震わせていた。その背中を半眼で見るが、すぐに目を逸らし千翼たちの方を見直す。

 

「・・・・・それで壬生を言葉責めにしたというのは本当かい?」

(無かった事にした・・・)

「・・・・・そんな事実はありませんよ」

「おや、そうかい?壬生が顔を真っ赤にして恥じらっているところを目撃した者がいるんだが」

「お兄様・・・・・?」

 

気の所為(せい)か深雪の方から冷気が漂ってきたのを千翼は感じていた。

 

「一体何をされていらっしゃたのかしら?」

 

千翼の気の所為ではなかった、物理的に深雪から冷気を出していた。

その影響でお茶に氷が張り、弁当の中身やダイニングサーバーも凍り付いていた。

 

「ま、魔法・・・・・?」

「深雪さんは、事象干渉力がよっぽど強いのね・・・・・」

「落ち着け、深雪。ちゃんと説明するから」

「あ・・・・・っ」

 

達也の言葉に、深雪は恥ずかしげにを伏せると、冷気も収まった。

 

「申し訳ありません。千翼くんも・・・・・」

「気にするな」

 

千翼は内心恐怖心を覚えた。魔法の暴走は未熟の証であると共に卓越(たくえつ)した才能の証でもある。

もし深雪が千翼の敵なら、アマゾンの力を使っても勝てるかどうかといったところだ。

 

「・・・委員長。昨日の壬生先輩についてなんですが・・・・・、どうやら風紀委員の活動は生徒の反感を買っているところがあるみたいです」

 

千翼は紗耶香との会話を全員に聞かせた。

 

 

 

 

 

「それは壬生の勘違いだ。風紀委員は全くの名誉職で、メリットはほとんどない」

「だけど・・・・・、校内で高い権力を持っているのも事実。特に学校の現体制に不満を持っている生徒には、権力を(かさ)に着た走狗(そうく)に見られることもあるの。正確にはそういう風に印象を操作している何者かがいるんだけど・・・・・」

 

思いの(ほか)の深い話だったのか、真由美の回答に以外にも達也が驚いた。

 

「正体は分かっているんですか?」

 

達也は、突然の質問をして来た。

 

「えっ?ううん、噂の出所なんて、そう簡単に特定できるものじゃないから・・・・・」

「張本人が分かれば止めさせるがな」

「俺が訊いているのはデマを流して印象を操作している輩ではなく、その背後で操っている連中のことです」

「お兄様・・・・・」

 

深雪が止めようとしたが、達也は引き下がらなかった。

 

「例えば、反魔法国際政治団体『ブランシュ』とか」

「ブランシュ?」

「な・・・・・!?」

「何故その名前を!?情報規制されているのに・・・・・」

「規制が掛かっているようですが、噂の出所を全て塞ぐのは無理でしょう。こういうことは寧了明らかにしておくべきだと思います。この件に関する政府のやり方は拙劣(せつれつ)です」

「そうね・・・・・。魔法を敵視する集団がいるのは事実なのに、その存在を隠して正面から対決することを避けて―――いえ、逃げてしまっているわ」

 

真由美は自分を責めてしまっていた。そこへ、

 

「仕方がないですよ」

「えっ?」

 

達也の話にあっけを取られていた千翼が、口を動かし真由美をフォローする。

 

「ここは学校の施設で、会長は一般の生徒と変わらないですよ。規制を掛けて隠しておくものがあるのは当然です」

「千翼の言う通り、会長の立場なら仕方がないことです。だから、気にすることではありません」

 

達也も千翼に続いてフォローする。

 

「・・・・・二人共、慰めてくれているの?」

「でっ、でも会長、鷹山くんがフォローするのは分かりますけど、追い詰めたのは司波くんですよね・・・・・」

 

ぼそっとあずさが呟く。すかさず摩利の追撃が入る。

 

「達也くんが追い込んで、千翼くんがフォローするとは凄腕のジゴロだね君たちは。真由美もすっかり籠絡(ろうらく)されているようだしな」

「ちょ、ちょっと、摩利、変なことを言わないで!」

(・・・・・俺は思ったことを言っただけなのに・・・・・)

 

じゃれ合いを始めた生徒会長と風紀委員長をみて千翼は苦笑いをしていた。そんな中、またしても冷気が漂って来た。

 

「ジゴロ・・・・・凄腕の・・・・・」

「お、おい、達也!深雪がまた・・・!」

「落ち着け、深雪!あの人たちの冗談だから!」

 

 

 

 

 

しばらくして、昼休みは終わりまじかになり、千翼たちは席を立つ。

 

「ああ、待ち給え二人共。壬生の例の組織作りの協力要請の件、返事はどうするつもりだ?」

「返事を待って聞くのは千翼です。それを聞いてから決めます」

 

昨日カフェテリアで千翼が投げ掛けた質問に、紗耶香は答えることができなかった。そこで紗耶香の考えがまとまったら、また話を聞くことにした。

 

「壬生先輩の話を聞いて放っておけないことだと分かりましたし」

「―――頼んだぞ」

「できる範囲のことはやります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後―

 

「あとは・・・、この報告書を仕上げれば終わりだな」

 

千翼は風紀委員会本部で事務作業をしていた。

風紀委員は性質上、本部に毎日顔を出す必要はないが、修羅場を極めた新人部員勧誘週間の活動をが全く整理されていないということで摩利からヘルプの要請が入った。実は達也にも要請があったが、予定があるらしいので千翼に任せる形になった。

 

(・・・達也め、俺が断らないのを分かってて押し付けたな・・・)

 

脳内に達也の笑みが浮かんだが、いつかお返ししようと心に決め作業を続けるうちに、

もうすでに作業は終わりに近づいていた。

 

「・・・・・よし。終わった!!」

 

千翼は報告書を終わらせてディスプレイを切ろうとした時、着信の通知が表示された。

 

「学校のサインだ・・・・・一体誰から」

 

千翼は受信メールを開いた。送信欄には《小野 遥(おの はるか)》と表示されていた。

 

 

 

 

 

「失礼します」

「鷹山君。急に呼び出してごめんね」

「いえ、用は済ませましたし、大丈夫ですよ」

 

カウンセリング室に入った千翼を、遥は少しも済まなそうには見えない笑顔で謝罪を行った。

 

「まあ、座って」

 

千翼は遥に言われた通りに、椅子に座る。

 

「どう?高校生活には慣れたかしら?」

「・・・・・結構、想定外のことが色々ありましたが、楽しくやっています」

「ふーん。そうなの」

 

遥は苦笑と微笑の中間のような曖昧な笑みを浮かべて、これ見よがしに足を組み替えた。―――のだが、千翼はなぜか不思議そうな顔で見ていた。

 

「・・・・・どうしたの?」

 

遥は悪戯っぽく問い掛けた。千翼は―――

 

「・・・・・小野先生っていつもその服装なんですか?」

 

思っていた事をきっぱりと答えた。

 

「///!?い、いつもじゃないわよ!」

 

遥は慌てて脚を揃え、椅子に深く座り直した。

 

「ご、ごめんなさい」

「・・・・・なんだか、すいません。・・・それで俺が呼ばれたのは?」

「コホン。今日は私たちの業務(カウンセリング部)への協力をお願いしたくて来てもらいました」

「協力・・・・・ですか?」

「ええ、生徒の皆さんの精神的傾向は毎年変化しています。例えば『自分』という一人称を使っている人がいます。元々軍務志願者の多い魔法科学生の間では珍しくありませんでしたが、それでも『自分』の一人称が一般化したのは三年前の沖縄防衛戦の小売り以来です。社会情勢の変化は生徒のメンタリティにも変化をもたらします」

 

一旦言葉を切って、遥は千翼の表情を(うかが)った。

千翼は少しも戸惑った様子はなく、むしろ遥の話を熱心に聞いているように見えた。

 

「・・・・・だから毎年度、新入生の一割前後の生徒にカウンセリングを受けてもらっているんです」

「そういう事なら協力しますが、他に何かあるんじゃないですか?」

 

一瞬、遥は動揺した素振りを見せたが、すぐに元に戻る。

 

「・・・・・そんなものある訳ないじゃない」

「それなら俺はかなり特殊な気がするんですが」

「だからこそ協力して欲しいのよ。あなたのように一科生と二科生の壁を乗り越える生徒が出て来た時のためにも」

「・・・・・そういう事にしましょう」

「ありがとう。じゃあ、いくつか質問させてもらっても良いかしら」

「わかりました」

 

 

 

 

 

遥の質問は、入学してから今日までの学校で起きたことについてであった。千翼は今までに起きた出来事を掻い摘んで話した。

 

「―――協力ありがとう。今日訊きたかったことは以上です」

 

遥の質問が終わり、千翼は一息ついた。

 

「・・・・・ところで鷹山君。カウンセリングとは直接関係無いんだけど・・・・・」

「なんですか?」

「鷹山君って、二年の壬生さんに交際を申し込まれてるって本当なの?」

「・・・・・本当に関係ないですね」

 

昼休みに摩利から口説いた事を言われたのに、一体どうしたら交際の申し込みにまで変化するのだろうかと、

千翼はそう考えながら呆れていた。

 

「一体何処からそんなデマを聞き付けたんですか?」

「デマ・・・・なの?」

「はい」

「・・・・・もし、鷹山君に壬生さんと交際する気があるならお願いしたいことがあったの。でも鷹山君にその気持ちが無いならいいわ」

「その話自体デマだって言ってるんですが。・・・それで、その話は何処から?」

「ごめんなさい。守秘義務なの」

 

千翼はそれ以上は追及しなかった。―――というか聞く気にならなかった。

 

「もう無いなら、俺はこれで失礼します」

 

千翼は立ち上がり、返事を待たずに出口に向かう。

 

「壬生さんのことで困ったことがあったら、いつでも相談してね」

 

その背中に掛けられた遥の声には、どこか確信のようなものが感じられた。

 

 

 

 

 

See You The

NEXT TARGET




第二十一話、いかがだったでしょうか。
やっと遥ちゃんが出てきましたね。
戦闘シーンはまだまだ先ですが、もうしばらくお待ちください。

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