魔法科高校の劣等生<The Legend of Amazons>   作:kakki-az

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大変お待たせしました。第十九話です。
結構長めに書いて大変でした。
オメガやアルファの登場はまだまだ先になりますが、気長に待ってください。
それではどうぞ!!


第十九話《論説》

色々あったがバイアスロン部に入部した千翼たち。そこへ千翼の携帯端末から着信音が鳴り響く、千翼は確認すると委員会用の通信コードからで千翼はすぐにでる。

 

「はい。・・・・・わかりました、すぐ向かいます。」

 

千翼は通信を切り、ほのかと雫に報告する。

 

「ごめん、二人共」

「委員会の仕事?」

「ああ、近くでもみ合いが始まったらしい。このままだったら魔法で乱闘になるかもしれないからすぐに行かないと」

「わかった、千翼くんがんばって!」

「ああ、行ってくる」

 

千翼は二人を置いて、すぐさま現場に向かっていった。ほのかはその後ろ姿を見えなくなるまで見守っていた。

 

「光井さん」

「はい?」

「もしかして光井さん、鷹山くんと付き合っているんですか?」

「え?えええ!ち、違いますよ!私と千翼くんは・・・・・」

「ほのか、慌てすぎ」

「な、何かごめんなさい・・・・・」

 

亜実は申し訳なさそうな気持ちになってしまった。

 

 

 

 

 

「おはようございます」

 

今日の巡回を終えた千翼は風紀委員会本部室に入る。そこには、辰巳と沢木の二人がいた。

 

「よう。いきなり散々だったな」

「・・・見ていたんですか?」

「姐さんがいきなり走り出したから、何事かと思ったら、その先を見たらお前がいたというわけだ」

「そういうことでしたか。・・・・・ところで、委員長は?」

「今、部活連本部で司波君の報告を受けているよ」

「何かあったんですか?」

「いや、私たちは何も聞かされていない」

「そうですか…」

 

とりあえず、達也については本人に聞くことにして、千翼は報告を済ませて、本部室から出る。

 

 

 

 

 

千翼は教室に戻り、帰宅の準備をしていると、ほのかと雫も戻ってきた。

 

「千翼くん。風紀委員の方は終わったの?」

「ああ、今帰る準備をしていたんだ。そっちはどう?バイアスロン部の方は」

「うん。断然やる気が出た」

 

雫がグッと拳を握り、燃えていた。

 

「そ、そっか・・・、じゃあその話は帰りながらで」

「「うん!」」

 

ほのかと雫も帰る準備を済ませて、、一緒に教室を出る。

 

 

 

 

 

千翼たちが校庭に出ると、そこに見知った顔が並んでいた。

 

「あっ、お疲れ~」

 

エリカが千翼たちに気付き、手を振っていた。

 

「お疲れ様です」

「お疲れさん」

「千翼くんたちも、今帰りですか?」

「ああ。深雪たちは達也を待っているのか?」

「ええ」

 

深雪はニコッと笑顔を見せた。心なしかいつもより眩しく見えた。

 

「司波さん、良かったら私たちも一緒にいいですか?」

「いいの?」

「大丈夫だ。ちょうど達也に聞きたかった事があるから」

「私も大丈夫」

「わかりました、それなら一緒に」

 

千翼たちは、達也が来るまでお互いの部活の話をした。

 

「レオたちはどこに入ったんだ」

「俺は山岳部だ」

「私は美術部です。ついさっきクラブのオリエンテーションが終わったところです」

「あたしはまだ。千翼くんたちは?」

「俺達三人ともバイアスロン部だ」

 

千翼が答えると同時に、雫がガッツポーズしながら燃えていた。

 

「バイアスロン部?何か非常識なアクシデントに巻き込まれたと聞いたのだけど・・・」

 

深雪は既に知っていたようだが、聞いていたほのかはその時の事を走馬燈のように思い出していた。

 

「ま、まあ、部長は常識的な人だったし、現役の先輩たちも親切そうな人たちだったから・・・」

「とにかくそういうことだから」

 

盛り上がって来たところで、達也が現れる。

 

「お兄様」

 

千翼たちが気付いた時には、深雪が真っ先に駆け寄っていた。思いがけない機敏さに、千翼たちは目を丸くしていた。

 

「お疲れ様です、お兄様。本日はご活躍でしたね」

「大した事はしてないさ。深雪の方こそ、ご苦労様」

 

そう言って達也は深雪の髪を二、三度とゆっくり撫でる。深雪は気持ち良さそうに目を細めながら、兄を見つめる、その瞳を逸らさない。

 

「兄妹だと分かっちゃいるんだどなぁ・・・・・」

「何だか、すごく絵になってますよね・・・・・」

 

二人へ歩み寄りながら、気恥ずかしげな表情で、微妙に視線を外しながらレオが呟くと、その隣で美月が赤らめながらも、食い入るように二人を見ていた。

 

「君たち・・・あの二人に何を期待しているのかな?」

「まあ、気持ちは分からなくもないけど・・・」

 

エリカが大袈裟に肩をすくめ、ヤレヤレとしていて、千翼もそれに続いて答える。

 

「すまんな、待っていてくれたのか」

 

微妙な空気が払拭され、千翼が笑顔で首を横に振った。

 

「水くさいな、達也。ここは謝るところじゃないだろ」

「そうですよ、達也さん」

「気にしなくていいから」

「・・・わかった。こんな時間だし何処かで軽く食べていかないか?」

「あっ、それ賛成~」

 

達也が提案し、エリカが賛成した。

 

「私もかまいません」

「じゃ、えんりょなく」

 

続いて美月、レオも賛成した。

 

「千翼くんたちもどうですか?」

「もちろん、いいよな?」

「うん!」

「私も」

「わかりました。それでは参りましょうか」

 

 

 

 

 

学校から少し離れたところにあるカフェ《Einebrice》で八人は今日一日で起きた色々な体験談に花を咲かせていた。その中で最も関心を引いたのは達也の捕物劇であった。

達也はエリカと一緒に剣道部の新勧演武を見ていた時、突如、剣術部が乱入してきて、剣道部の壬生 紗耶香と剣術部の《桐原 武明(きりはら たけあき)》の口論が始まり、そこから二人の私闘に繋がった。

結果は紗耶香が勝ったが、桐原が振動系・近接戦闘魔法《高周波ブレード》を使用したため、達也はすぐに取り押さえたが、今度は剣術部が達也に襲いかかった。

達也はその全ての攻撃を見切り、躱し、あしらい続けた結果、「乱闘()()」に至ったのだ。

 

「―――その桐原って二年生、殺傷性ランクBの魔法を使ったんだろ?よく怪我しなかったな」

「あれは有効範囲が狭い魔法だ。よく切れる刀と対処は変わらないさ」

「そ、それって真剣の対処は簡単って言ってますが・・・」

「大丈夫よ、美月。お兄様なら心配要らないわ」

「随分余裕ね、深雪?」

「ええ。お兄様に勝てる者などいるはずがないもの」

「・・・少しも躊躇しないんだな」

 

一分一厘の躊躇もない断言だっため、千翼は少し絶句していた。

 

「でも、高周波ブレードはずっと超音波を出しているんでしょう」

「耳栓をしていないと酔っちゃうらしいし」

「単に体術が優れているというだけではないの。魔法式の無効化はお兄様の十八番(おはこ)なの」

 

「「「「「「魔法の無効化?」」」」」」

 

「エリカ。お兄様が飛び出した直後、乗り物酔いみたいな感覚になったでしょ?」

「!そういえば乱闘中も頻繫に揺らぎを感じたような・・・」

「それ、お兄様の仕業よ。お兄様、《キャスト・ジャミング》をお使いになったでしょう?」

 

ニッコリと作り笑いを向けてくる深雪に、達也はため息の白旗を掲げた。

 

「深雪には敵わないな」

「それはもう。お兄様のことなら何でもお見通しですよ」

 

笑顔を見合わせる二人の空間はまたしても恋人同士いやそれ以上の雰囲気を出していた。

 

「それって、兄妹の会話じゃないぜ!!」

「恋人同士ってレベル超えてるから!!」

「そうか?(そうかしら?)」

 

ぴったりハーモニーを奏でた達也と深雪に、ツッコんだ千翼とレオは力尽きたようにテーブルに突っ伏した。

 

「このラブラブ兄妹にツッコミ入れようってのが大それてるのよ・・・」

「ああ、俺が間違ってたよ・・・」

「レオに同意・・・」

 

しみじみ語るエリカに身体を起こしながら、やはり二人が応える。

 

「その言われ様は著しく不本意なんだが」

「いいじゃありませんか。わたしとお兄様が強い兄妹愛で結ばれているのは事実ですし」

 

そう言いながら、友人たちに見せつけるように、わざわざ達也に身を寄せる。

 

「「「ぐはっ!」」」

 

直後、エリカとレオと千翼が、同時に突っ伏した。血でも吐き出しそうなセルフ効果音まで付けて。

 

「深雪、悪ノリも程ほどにな?冗談だって分かってないのも約二名いるようだから」

「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

 

達也が苦笑しながら深雪をたしなめると、深雪、エリカ、レオ、千翼、雫の視線が残る二人に集まった。

 

「・・・・えっ?」

「えっ?冗談?」

「まっ、これが美月の持ち味よね」

「そういうところもほのからしい」

「あぅ・・・・・」

「うう・・・・・」

 

エリカと雫の微笑ましい呟きに、美月とほのかは別の意味で顔を赤くした。

 

「そういや、キャスト・ジャミングとか言ってなかったか?」

 

ここでレオが強引に話題を戻した。

 

「キャスト・ジャミングって、魔法の妨害電波のことだっけ?」

「電波じゃないけどな」

 

キャスト・ジャミングは、魔法式がエイドスに働きかけるのを妨害する魔法の一種。分類的に無系統魔法に入る。

無意味なサイオン波を大量に散布することで魔法式がエイドスに働きかけるプロセスを阻害する技術である。

しかし、キャスト・ジャミングを使うには四系統八種類全ての魔法を妨害できるほどの特別なサイオンノイズが必要である。

 

「あれって、特殊な石が要るんじゃなかったっけ?アンティ・・・何とか」

「《アンティナイト》よ、エリカちゃん。確か高価なものだったと思うんですけど」

「いや、俺は持ってないよ。そもそもあれは軍事物資だからね。一民間人が手に入れられる物じゃない」

「えっ?でも達也さん・・・」

「あー、この話はオフレコで頼みたいんだが」

 

困惑した表情でテーブルに身を乗り出して声を潜めた達也に、千翼たちはつられたように身体を乗り出して真剣な面持ちで頷いた。

 

「正確には、俺が使ったのは、キャスト・ジャミングの理論を応用した『特定魔法のジャミング』なんだ」

 

達也の囁きを聞いて、千翼たちはキョトンとしていた。

 

「・・・・・そんな魔法、あったっけ?」

「ないと思うけど」

 

ほのかの質問に直接答えたのは雫だった。

 

「それって、新しい魔法を達也が理論的に編み出したてことか?」

「偶然発見したと言い方が正確かな」

 

千翼の疑問に達也が笑いながら答えた。

 

「二つのCADを同時に使うとサイオン波の干渉で魔法が発動しないことは知っているな?」

「ああ、俺も経験したことがあるぜ」

「うわっ、身の程知らず」

 

レオのセリフにエリカが呆声を漏らす。

 

「何だと!」

「そんな高等テク、あんたができる訳ないじゃない」

「うるせーな。できると思ったんだよ」

「・・・達也。悪いけど続けてくれ」

「俺としては、ここで止めてもいいんだが・・・・・まあ、いい・・・・・。それでだ、二つのCADを同時に使用する際に発生するサイオンの干渉波をキャスト・ジャミングと同じように放つ。一方のCADを妨害する魔法の起動式展開し、もう一方のCADでその逆方向の起動式を展開する。そのサイオン信号を無系統魔法として放つ。すると、本来構築すべき二種類の魔法式と同種類の魔法発動をある程度妨害できるんだ」

 

達也の説明を聞いた千翼たちはしばらく無言になっていた。

 

「・・・・・おおよその理屈は理解できたぜ。だがよ、何でオフレコなんだ?特許取ったら儲かりそうなのに」

 

レオが、真っ先に腑に落ちないという顔で達也にそう訊ねた。

 

「一つはこの技術はまだ未完成だということだ。それ以上に、アンティナイトを使わずに魔法を妨害できる仕組みそのものが問題だ」

「・・・それの何処に問題があるんだよ」

「バカね、大有りじゃない。お手軽に魔法無効化の技術が広まったりしたら、社会の基盤が揺るぎかねないんだから」

「アンティナイトは産出量が少ないから、現実的な脅威にならずに済んでいる。対抗手段が見つかるまでは公表する気になれないな」

「すごいですね・・・・・そんなことまで考えているなんて」

「俺なら、名声に飛び付いちまうだろうなぁ」

「お兄様は少し考え過ぎだと思います。そもそも、相手が展開中の起動式を読み取ることも、CADの干渉波を投射することも、誰でもできることではありません。ですが、それでこそお兄様というべきでしょうか」

「それは暗に、俺が優柔不断のヘタレだと言っているのか?」

 

妹の指摘に達也は心底、情け無さそうな表情を()()()

 

「さあ?千翼くんはどう思うかしら?」

 

素っ気ない態度を()()()、深雪が千翼に球を投げる。

 

「俺?俺よりもほのかの意見を聞きたいけど」

 

千翼はそれを受け取らず、ほのかに球を渡す。

 

「私!?その、ええっと・・・・・」

 

少し困惑しだしたほのかを見て、思わず千翼は可愛らしいと思った。

 

「誰も否定してくれないんだな・・・・・」

 

達也から恨めしそうな目を向けられたが、結局、助けは何処からも現れなかった。

 

 

 

 

 

See You The

NEXT TARGET




いかがでしょうか。
この話は自分がやりたかった事の一つです。
皆さん、次の話もよろしくお願います。

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