魔法科高校の劣等生<The Legend of Amazons>   作:kakki-az

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お待たせしました!更新が遅くなってすいません!
今回は説明会みたいな感じです
それではどうぞ!


第十五話《風紀》

摩利の勝利宣言を聞いた達也は気を失っている服部に軽く一礼してCADケースを置いてある机に向かう。

その際、千翼は服部を壁際に運び、壁にもたれかけさせる。

 

「待ってくれ、達也」

 

千翼は達也を呼び止める。

 

「達也の今の動き...あれは魔法による動きなのか?」

「魔法じゃない。正真正銘、身体的な技術だ」

「それであれだけの動きができるなんて·····」

 

千翼は驚きを隠せなかった。そこへ深雪が寄ってくる。

 

「それは当たり前ですよ千翼君。お兄様は忍術使い《九重 八雲(ここのえ やくも)》先生の指導を受けているのですから」

「九重 八雲?」

 

千翼は時代が時代なので名前を聞いてもピンと来ていなかったが、その後ろにいた摩利は驚いた。

 

「あの九重 八雲か!?」

 

摩利が大層驚いている様なので、それほど有名な人物なんだろうなと千翼は思った。

 

「じゃあ、あの攻撃魔法も忍術ですか?私にはサイオンの波動そのものを放ったようにしか見えなかったけど」

「その通りです。あれは忍術ではなくサイオンの波動です。振動の基礎単一系魔法でサイオンの波を作り出しただけです」

「でもそれだけじゃ、はんぞーくんが倒れた理由が分かりません...」

「酔ったんですよ」

「酔った?一体何に?」

 

首を傾げた真由美に、達也は淡々と説明を続けた。

 

「魔法師はサイオンを光や音と同じ様に知覚します。それは魔法師には必須の技術です。しかし、予期せぬサイオン波に晒された魔法師は揺さぶられたように錯覚し、激しい船酔いのような状態になるんです」

「信じられない...私たち魔法師は普段からサイオン波に慣れています。そんな魔法師が倒れるほど強力な波動なんて一体どうやって...」

「波の合成、ですね」

 

真由美の疑問に答えたのは鈴音だった。

 

「振動数の異なるサイオン波を三連続で作り出し、三つの波が丁度服部君と重なるよう調整し、三角波のような強い波動を作り出したのでしょう」

「お見事です、市原先輩」

「それにしてもあの短時間で三回の振動魔法、その処理速度で実技の評価が低いのはおかしいですね」

 

正面から成績が悪いと言われ、達也は苦笑する。すると

 

「あのぅ~」

「!?中条先輩!いつの間にそこに!?」

 

いつの間にかあずさが達也に近づいていて、達也のCADに触れながら見ていた。

 

「もしかして司波くんのCADは《シルバー・ホーン》じゃありませんか?」

「《シルバー・ホーン》?あの謎の天才魔工師トーラス・シルバーの?」

「へぇ、達也のCADはそんなにスゴいんですか?」

「そうなんですよ!」

 

あずさの表情がパァっと明るくなり、千翼に詰め寄り嬉々として語りだした。

 

「フォア・リーブス・テクノロジー、通称:F.L.T専属、その本名、姿、プロフィールのすべてが謎に包まれた奇跡のCADエンジニア!世界で初めてループ・キャスト・システムを実現した天才プログラマー!《シルバー・ホーン》はそんな彼がフルカスタマイズした特化型CADのモデル名でループ・キャストに最適化されているんですよ!あ、言い忘れていましたが、ループ・キャスト・システムとは一回の展開で同じ魔法を、連続して何度でも、連続発動できる起動式のことで―」

「わ、分かりました。分かりましたから少し落ち着いてください」

 

千翼にズイズイ寄って来るあずさは落ち着きを取り戻すが、その目はまだ輝いていて、達也のCADを見ようと達也に迫っていた。

 

「三連続発動の秘密はそれか」

「でもリンちゃん。それっておかしくない?」

「ええ、おかしいですね」

 

真由美と鈴音は新たな疑問に首を傾げた。

 

「ループ・キャストはあくまで()()()()()()()を連続発動するためのもの。波の合成に必要な振動数の異なる複数の波動を作り出すことはできないはずです。振動数を定義する部分を変数にしておけば可能でしょうけど、座標・強度・持続時間に加えて、振動数まで変数化するとなると.....まさか、それを実行しているというのですか?」

「...多変数化は、処理速度としても演算規模としても干渉強度としても、この学校では評価されない項目ですからね」

 

千翼達が見つめるその先で、達也は変わらない醒めた口調でそう答えた。

 

「...実技試験における魔法の評価は...」

 

そこに、意識を取り戻した服部が起き上がりながら答えた。

 

「魔法を発動する速度、魔法式の規模、対象物の情報を書き換える強度で決まる。なるほど、テストが本当の能力を示していないとはこういうことか...」

「はんぞー君、大丈夫ですか?」

「大丈夫です!」

 

服部は顔を赤くしながら即座に立ち上がり、深雪の方へと歩き出す。

 

「司波さん」

「はい」

「目が曇っていたのは私の方でした。許してほしい」

「わたしの方こそ生意気を申しました。お許しください」

 

お互いに謝罪をすると服部は達也の方を見るが何も言わず出ていった。

深雪はムッとしていたがすぐに落ち着いた。

 

「これで決まりだな」

「それじゃあ、生徒会室に戻りましょうか」

 

真由美の一声で全員が移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

「では二人とも、ようこそ風紀委員会本部へ」

 

千翼達は摩利と共に本部室に来ていたのだが、部屋のいたる所が様々な物で埋め尽くされていた。

 

「少し散らかってるが、まあ適当に掛けてくれ」

「...え?...これで少し...ですか?」

 

千翼が唖然としている横で、達也は溜息をついていた。

 

「委員長、ここを片付けてもいいですか?」

「なに.....?」

 

唐突な達也の申し出に、摩利は意外そうな顔をしていた。

 

「魔工技師志望としては、耐え難いものがあるんですよ」

「魔工技師?あれだけの対人戦闘スキルがあるのに?」

「俺の才能じゃどう足掻いてもC級までのライセンスしか取れませんから」

「...すまない...」

 

達也は気にしていないと首を横に振る。

 

「...達也、俺も手伝うよ」

「ああ、すまない」

 

達也は書類の整理を千翼は散乱している本などを棚に戻していった。

 

 

 

ある程度片付いて来た時、摩利が話を切り出した。

 

「さて、そろそろ本題に入ろうか、作業しながらで構わない。まず達也君をスカウトした理由は―そういえば理由はほとんど説明してしまったな。未遂犯に対する罰則の適正化と二科生に対するイメージ対策だ」

「憶えていますが、イメージ対策の方はむしろ逆効果ではないかと」

「俺もそう思います。...委員長、この端末の中、見てもいいですか?」

「ああ、大丈夫だ。...どうしてそう思う?」

「自分達は今まで口出しできなかったのに、同じ立場の下級生にいきなり取り締まられる事になれば、面白くないと感じるのが普通でしょう」

「だが同じ一年は歓迎すると思うが?」

「それはどうでしょう?...達也、こっちのCADはこれでいいか?」

「...なかなかだな」

「達也ほどじゃないけどね...それでさっきの続きなんですけど、昨日いきなり〔お前達は認めないぞ〕宣言を投げつけられましたし...」

「ああ、森崎のことか」

「彼を知ってるんですか?」

「教職員推薦枠でうちに入ることになっている」

「「えっ?」」

 

二人は思わず手にしていたCADを落としそうになり、慌てて持ち直した。

 

「達也くんでも慌てることがあるんだな(ニヤニヤ)」

「...そりゃそうですよ」

 

してやったりといった笑顔を浮かべた摩利に、達也は溜息交じりに答えた。

 

「昨日の乱闘騒ぎを理由に推薦を取り消すことはできる。...だが()()()()()()()()だしなぁ~」

「いっそ、千翼だけを残して、二人は入れないというのはどうです?」

「嫌なのか達也?」

 

千翼がそう尋ねる。達也は持っていたCADをケースにしまい千翼の方を見る。

 

「...正直、面倒だと思ってる。だが、今更引き下がれないと思ってる」

 

それを聞いた摩利がにんまりと人の悪そうな笑みを浮かべていた。

 

「(フフッ)屈折しているな、君は」

 

残念ながら一本取られたと認めざるを得ない、と達也は思っていた。そこに委員会本部に二人の男子生徒が入ってきた。

 

「ハヨースッ」

「オハヨーございまス!」

 

威勢の良い掛け声が部屋に響く。

 

「お、姐さん。いらしたんですかい」

「委員長、本日の巡回、終了しました!逮捕者、ありません!」

 

威勢の良い男が報告をしているさなか、摩利が二人に近づく。

 

「報告ご苦労。それから.....」

 

摩利は何処から出したのか、丸めたノートをごつい体系の男の頭をスパァン!と叩いた。

 

「姐さんって呼ぶな!何度言ったら分かるんだ!お前の頭は飾りか!」

「そんなポンポン叩かねえでくださいよ、あ.....いえ、委員長」

 

ごつい体系の男は姐さんと言いかけ、訂正する。そしてふと千翼達を見る。

 

「ところでそいつらは?新入りですかい?」

「...お前の言う通り新入りだ。1-Aの鷹山 千翼と1-Eの司波 達也。二人共生徒会推薦枠で風紀委員(ウチ)に入ることになった」

「...へぇ....一人は紋無しですかい」

辰巳(たつみ)先輩、その表現は禁止用語に抵触する恐れがあります!この場合、二科生と言うべきかと思われます!」

「お前達、そんな単純な了見だと足元を掬われるぞ?ここだけの話だが、さっき服部が達也君に足元を掬われたばかりだ(ニヤニヤ)」

「.....そいつが、あの服部に勝ったってことですかい?」

「ああ、正式な試合でな」

「何と!入学以来負け知らずの服部が、新入生に敗れたと?」

 

二人は驚きながら達也を見ていた。そして、

 

「そいつは心強ぇ」

「逸材ですね、委員長」

 

拍子抜けするほど、達也を高く評価していた。これには千翼達の方が驚いていた。

 

「意外だろ?これが千翼くんをスカウトした最大の理由だ」

「え?」

 

いきなりすぎて何を問われたのかを千翼は理解できなかった。

 

「この学校はブルームだ、ウィードだとつまらない肩書きで優越感に浸り、劣等感に溺れる奴らばかりだ。正直、この状況に私はうんざりしていたんだ。幸い、真由美達も私がこんな性格だって知ってるからな。生徒会と部活連の枠はそういった意識の薄い奴を選んでくれてる。ここは君達にとって居心地の悪くない場所だと思うよ」

「3-Cの《辰巳 鋼太郎(たつみ こうたろう)》だ。よろしくな司波、鷹山。腕の立つ奴は大歓迎だ」

「2-Dの《沢木 碧(さわき みどり)》だ。君たちを歓迎するよ。司波君、鷹山君」

 

二人が次々に握手を求めてくる。摩利の言う通り悪くない空気だと千翼は思った。

 

「い、1-Aの鷹山 千翼です」

「1-Eの司波 達也です」

「「よろしくお願いします」」

 

千翼達はそれぞれ挨拶と握手をした。千翼はこの先輩たちなら上手くやっていけそうな気がしていた。

 

See You The

NEXT TARGET




第十五話いかがだったでしょうか?

早く千翼の活躍を書きたいです。

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