魔法科高校の劣等生<The Legend of Amazons> 作:kakki-az
投稿が遅くなってしまいました!
楽しみにしていた方々本当に申し訳ない!
帰り道、千翼達は他愛のない話をしていた。そして今は千翼がエリカに質問攻めをされている。
「え、じゃあ千翼くんほのかの隣に住んでるの?」
「まあな、たまに家に泊まったりするし...何ニヤついてるんだ、エリカ」
「べっつに~(ニヤニヤ)」
何かを勘違いしているエリカの隣で、ほのかは深雪と会話をしている。
「...じゃあ、深雪さんのアシスタンスを調整してるのは達也さん何ですか?」
「ええ、お兄様にお任せするのが一番安心ですから」
「少しアレンジしているだけなんだけどね。深雪は処理能力が高いからCADのメンテに手間が掛からない」
「それだってデバイスのOSを理解できるだけの知識が無いとできませんよね」
「CADの基礎システムにアクセスできるスキルもないとな。大したもんだ」
深雪の隣から美月が覗き込むように会話に参加し、レオも感心した様な顔で会話に参加する。
「達也くん、あたしの
そう言いながらエリカは柄の長さに縮めた警棒のストラップを達也に見せた。
「無理だ、そんな特殊な形状のCADをいじる自信はないよ」
「あはっ、やっぱりすごいね達也くんは」
「何が?」
「これがCADだって分かっちゃうんだから」
ストラップをクルクル回しながら笑うエリカだったが、千翼はその目の奥に笑み以外の光もあったよな気がした。
「「えっ?その警棒、CADなの?」」
美月と千翼は目を丸くしながら同じセリフを言った。
「普通の反応をありがとうお二人さん。みんなが気づいていたんだったら、滑っちゃうところだったわ」
注文通りの反応が返ってきたため、満足げにうなずきながらエリカの隣でやり取りを聞いていたレオが、訝しげに問う。
「それ、何処にシステムを組み込んでるんだ?さっきの感じじゃ、全部空洞ってわけじゃないんだろ?」
「ブーッ。柄以外は全部空洞よ。刻印式の術式で強度を上げてるの。硬化魔法は得意分野なんでしょ?」
「術式を幾何学紋様化して、感応性の合金に刻み、サイオンを注入することで発動するってアレか?そんなもん使ってたら並みのサイオン量じゃ済まないぜ?よくガス欠にならねえな?そもそも刻印型自体、燃費が悪すぎってんで今じゃああんまり使われてねえ術式のはずだぜ」
「おっ、さすがに得意分野。でも残念もう一歩ね。強度が必要になるのは振出しと打ち込みの瞬間だけ。その刹那を捉まえてサイオンを流してやればそんなに消耗しないわ。ま、兜割りの原理と同じよ。......って、みんなどうしたの?」
「エリカ.....兜割りって、それこそ秘伝とか奥義とかに分類される技術だと思うのだけれど。単純にサイオン量が多いより、余程すごいわよ」
千翼はエリカの顔が焦りを含んだ強張りを見せていることに気付いた。
「そういや千翼、さっきの物凄い跳び方してたよな。あれも魔法か?」
ここでレオが気になっていたのか千翼に話を振った。
「あ、それあたしも気になってたんだ」
エリカもさっきのをごまかすように話に乗ってきた。
「えっ?あ、ああ、そうだよ」
「それにしては起動式の展開が視えなかったがどういった魔法だ?」
「それはこのCADが関係あるんだ」
そう言って千翼は左手首に着けてる鳥の翼のようなCADをみんなに見せる。
「これはあらかじめ掛けてる身体強化魔法をどの部位にどれだけの強化をかけるかを選択するためのデバイスなんだ。さっきは下半身に強化をかけて跳んでたんだよ」
「成程、本来全身に掛けて使う魔法を必要な部位にだけ掛け、サイオンの消費量を大幅に削減しているのか。理に適ってるな」
「千翼くん、そのCADは自分で?」
「いや、雫の親父さんの知り合いからこのCADのデータを収集する代わりにもらったんだ、でも自分じゃメンテナンス出来ないんだ。かなり特殊な構造をしてるらしいからね」
「そうなのか?」
「達也ってCADのメンテナンス得意なんだよね?」
「ああ」
「もしよかったら、基本的なことだけでいいから俺に教えてくれないか?」
「俺にか?」
「こういうのは、ちゃんとした技術を持ってる人に教えてもらう方が覚えやすいからね」
「...分かった、教えるだけだぞ」
「ありがとう!.....よし!」
まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のように喜ぶ千翼をほのかは笑顔で見つめていた。
「光井さん、千翼くんを見つめてるばかりじゃなくてこちらももっとお話ししましょう」
「えっ!?し、司波さん!........そ、そんなに見てた?」
「「「「うん(はい)」」」」
その場の女性陣全員が一斉に頷き、それを見たほのかの顔が真っ赤になる。
「どうしたほのか?顔真っ赤だぞ、大丈夫か?」
「ち、千翼くん!?だ、だだだ大丈夫だよ!///」
「そ、そうか?ならいいんだけど.....」
「ああ~成程ね~」
「何が?」
「いや、ほのか苦労してるなってね」
「??」
千翼はエリカの言葉の意味が分からず、家に帰るまでずっと頭を捻っていた。
翌日―
千翼はいつも通り二人と通学していた。そして駅前で司波兄妹とエリカ達と会い、一緒に行くことになり歩き出すとした時だった。
「達也くーん!!千翼くーん!!」
後ろから真由美が手を振りながらこちらに駆け寄ってきていた。
「七草会長...だよね」
「いつの間にか下の名前で...」
「いや達也は分かるけどなんで俺まで?」
ほのか達と話してるうちに、真由美が合流した。
「おはようございます会長...それで一体どんなご用件でしょうか?」
「おはよう深雪さん。別に大したことじゃないわ、達也くんと深雪さんと千翼くんを生徒会室でのランチに招待しようと思って」
「え?...俺もですか?」
「ええ、あ、あなたたちもどうですか?」
真由美は他のメンバーに声をかけるが、
「「いえ、結構です」」
「「「私たちは大丈夫です」」」
レオとエリカが食い気味に、美月とほのかと雫はやんわりと断りを入れた。その一方で、
「お兄様、私たちはどうしましょう?」
「深雪の好きにしていいぞ」
「では、わたしはお兄様に従います 」
「深雪はもっと我儘を言っていいんだぞ?」
司波兄妹は恋人同士のような空間を作り上げていた。
「なっ!?二人だけの空間が形成されてる...!」
「司波さん!私応援してますから!」
「.....何を?」
昼休み 生徒会室前―
千翼と司波兄妹は真由美に誘いを受け、現在生徒会室前に来ていた。
「失礼します」
『どうぞ』
(ほのか達も来ればよかったのにな...)
その廊下の手前で千翼達が生徒会室に入っていくのを誰かが見ていた。
「...ええ、そうです。セキュリティが厳しくこれ以上は無理ですが、生徒会室に入った者の中から三人を特定しました。司波深雪、司波達也、そして鷹山千翼です。...はい、妹の方は恐らく生徒会に入るかと...了解です。監視を続けます」
その者は誰かに報告し、その場を去った。
生徒会室内―
「ようこそ生徒会室へ。どうぞ掛けてください」
「「「失礼します」」」
深雪は一礼して席に掛ける。その動作はとても美しく見え、思わず見とれてしまうほどだった。
(成程、ほのかが惚れ込む訳だ)
「えーっと、ご丁寧にどうも。ランチは
千翼達は各々注文の品を受け取り席に着く。
「さて、まずは紹介しますね。手前から会計の《
「...会長、私の事をリンちゃんと呼ぶのは会長だけです」
鈴音は溜息をしながらそう言った。どうやら真由美は稀に通称を付けることがあるらしい。
「会長、私にも立場がありますから下級生の前であーちゃんはやめてください」
「...先輩に悪いけど、こっちのあーちゃんは似合ってるよな」
「...ええ、私も似合ってると思います」
「俺も同感だ」
あずさに聞こえないように会話する三人。そしてふと千翼は摩利の方を見た。
「あれ?渡辺先輩もしかして手作りの弁当ですか?」
「そうだが。...意外か?」
「いえ、俺料理できないんで、すごく上手だなって思って」
「そうですね、普段から料理しているかは――その手を見れば分かりますよ」
それを聞いた千翼は摩利の手を見る。摩利の指には絆創膏が所々に巻いてあった。
「そ、そうか...そんな真正面から褒められると照れるな」
摩利はそう言いながら恥ずかしそうに手をさすっていた。
「...それはそうと千翼くん、君はそれで大丈夫なのか?主に肉料理ばかりじゃないか」
摩利は話を反らすために千翼に話を振ってきた。摩利の言う通り、千翼の前にはハンバーグから始まり、豚の生姜焼き、鶏のから揚げなど、野菜類が見当たらず肉オンリーだった。
「ちなみに、その水筒には何が?」
「生卵です」
「...本当に大丈夫なの?」
「...これでも昔に比べたら食べれるようになった方ですよ」
「...これ以上聞くのは野暮だな、すまない」
「いえ、気にしないでください」
少し空気が重くなったのを感じた深雪が言葉を続けた。
「そうだお兄様。わたしたちも明日からお弁当にしましょうか」
「とても魅力的だがふたりになれる場所がね...」
「兄妹と言うより恋人同士の会話ですね」
「市原先輩、それ言っちゃ...!」
千翼が止めようとしたが手遅れだった。
「ええ。血が繋がってなければ恋人にしたいと思ったことはあります」
「...あちゃ~」
「?どうしたんだ千翼」
「いや、何でもない」
そう言いながら周りを見ると、言った本人と千翼以外が恥ずかしいのか顔が赤かった。
「もちろん冗談ですよ」
「「えっ!?」」
「...中条先輩は分かるけど何で深雪も驚いてるんだ?」
「えっ!?ち、千翼くん!?わたしは、別に。そんな...」
(ええ、分かってます...お兄様は悪くありません...!)
深雪は何処か残念そうな顔をしていた。
「では、本題に入ります」
昼食を食べ終え、真由美から生徒会と風紀委員会の説明が始まった。
生徒会は伝統的に生徒会長に権限が集められ、会長だけが選挙によって選ばれるが他の役員は会長が選任できる。各委員会の委員長も一部を除いて任免権がある。
続いて摩利が務めている風紀委員会の説明に入った。
風紀委員会は生徒会、部活連、教職員会の三つの組織から三名ずつ計九名が風紀委員として推薦され、風紀委員長がその九名から選挙を行う。
つまり風紀委員長はある意味で生徒会長と同等の権限を持つことが分かる。
風紀委員会の職務は魔法使用に関する校則違反者の摘発と魔法を使用した騒乱行為の取り締まりで、簡単に言うなら警察のようなものである。
「...説明は以上です、深雪さん私たちは貴女が生徒会に入って下さることを希望します。どうでしょう?」
深雪は一拍置くと、
「...会長は兄の成績をご存知でしょうか?」
「ええ、すごい成績でしたね、先生方も驚いていました」
「成績優秀者や有能な人材を生徒会に入れるなら兄の方が相応しいと思います!ですから生徒会に入るなら兄も一緒にというわけにはいきませんでしょうか?」
「!......」
深雪がこのような提案をしたことに達也は驚いている様だった。千翼も驚いていたが深雪は達也の事を思ってこのような提案した深雪の思いを千翼は感じていた。
だが、
「残念ながらそれはできません。生徒会役員は一科から選ばれます、これは不文律では無く記載されている規則です」
鈴音がきっぱりと答えた。
「...すいません、出過ぎたことを申しました」
「いえ、では深雪さんは書記として今期生徒会に参加していただきます」
「はい、よろしくお願いします」
「それでは―」
「ちょっといいか?」
突如、摩利が手を上げて話に割って入って来た。
「確か風紀委員の生徒会推薦枠がまだ決まってなかったな?」
「
「さっきの話だが【生徒会の役員は一科の生徒から選ばれる】だったな?」
「そうよ?」
摩利の顔が確信を得た顔つきになる。
「つまり、一科の縛りがあるのは〝生徒会"メンバーだけであって...風紀委員はニ科の生徒を選んでも規則違反にはならない」
摩利の一言に深雪はパアッと明るい笑顔になり、達也と千翼は驚いていた。
「摩利...そんな突拍子もないアイデア...ナイスよ!!そうよ風紀委員なら問題ないわ!」
「はあっ?」
「ええっ!?」
達也と千翼の二人を置いて話が進んでいく。
「生徒会は司波 達也くんを風紀委員に指名します」
そして達也が風紀委員に指名された。
「ちょっと待ってください」
達也は慌てた様子で立ち上がる。
「渡辺委員長、確認させてください」
「何だ?」
「風紀委員は喧嘩が起こったらそれを力づくで止めなければならないんですよね」
「そうだな」
「そして魔法が使用された場合も止めさせなければならないと」
「出来れば使用前に止めさせるのが望ましい」
「あのですね!俺は実技の成績が悪かったから二科生なんです!!実技で劣る二科生に一科生の魔法使用を止められると思いますか!?」
達也が珍しく声を荒げて意見を述べている。
「構わんよ。力比べなら私がいる」
摩利が自信満々にそう言ったため、達也はそれ以上言葉を続けることが出来なかった。
「おっと、そろそろ昼休みが終わるな。ではこの続きは放課後にここでしようか」
「...分かりました」
達也の受け答えに哀愁を感じた千翼は励ましの言葉をかけた。
「達也、まあ、何とかなるさ、とりあえず...」
「ん?何他人事の様に言ってるんだ?君も来るんだぞ?風紀委員の詳しい説明をまだしてないだろう?」
「.......え?」
「ああ、そう言えば言ってなかったな。君はすでに生徒会推薦枠で風紀委員に指名してるぞ?」
「え.....えええええええええーーっ!!!」
昼休みの終了を告げるチャイムをかき消すかのように千翼の驚きの声が辺りに響き渡った。
See You The
NEXT TARGET
第十三話、いかがだったでしょうか。
千翼の活躍の場はまだ先にあります。
亀も驚くほどの更新速度になってますが
ペースを上げていけたらと思っている所存です。
それでは、次回をお楽しみに!