魔法科高校の劣等生<The Legend of Amazons> 作:kakki-az
千翼にとって初めての学校生活が始まります。
第一高校でどのような展開が千翼に起こるのか!?
それではどうぞ!
第九話《学舎》
千翼は白い霧の中をただ真っ直ぐに歩いていた。
しばらく歩いていると急に霧が晴れる。霧が晴れたその場所は、かつて千翼がイユと来たあの遊園地跡だった。
そして近くのベンチに
「...イユ?」
声に反応した少女が顔を上げる。その少女がイユだと分かると千翼は顔を綻ばせながら言葉を続けた。
「...そっか、ずっと俺の事待っててくれたのか...イユ」
イユはただ微笑み千翼を見つめるだけだった。
「...イユ。俺、イユと同じくらい大切な人が出来たんだ。そいつの笑顔を見ているのが好きなんだ。だから...!」
千翼が言葉を続けようとした時、イユは立ち上がりそっと千翼を抱きしめた。
『...千翼。.....私は千翼を見守ってる。...だから守ってあげて』
「ッ!...あぁ。...もちろんだ」
千翼がイユにそう告げると、イユは千翼から少し離れ手を差し出す。
千翼はその手を握ると、イユの温かさを感じながら段々意識が薄れていった。
「...ん、んんぅ...」
目覚めた千翼がゆっくり目を開け辺りを見渡す。そこは自分の寝室だった。
「...夢か」
体を起こし、軽くストレッチをした後、リビングに行きカレンダーを見る。
「...いよいよか」
4月1日の今日は、魔法科高校の入学式が行われる日。
千翼は壁にかけてある制服を取り、それに着替える。制服には八枚花弁のエンブレムがついていた。
「ほのか達と同じクラスになれるといいけどなぁ」
簡単に朝食を済ませ、片づけをしていると。
インターホンが鳴り、玄関に向かい扉を開ける。
「はい」
「お、おはよう千翼くん」
そこには第一高校の制服を着たほのかが立っていた。
「おはよう。...よく似合っているよほのか」
「えっ、あ、う、うん!千翼くんも似合ってるよ」
「ありがとう。でも、やっぱり
そういって千翼は
「もう千翼くん!私たちが何度も確認したから大丈夫だよ!」
「...そうだよな、ごめん。...それで今日はどうしたんだ?」
「うん。千翼くん早く行くって言ってたから、サンドイッチ作ってきたの。千翼くんの事だから簡単に済ませちゃうでしょ?朝はしっかり食べないとだよ」
「お見通しだな...ありがとう、今度何かお返しするよ。よし、それじゃあ俺はそろそろ...」
「うん、また後でね!あ、千翼くん!」
「ん?」
戻ろうとした千翼をほのかが呼び止める。
「クラス一緒になれるといいね!」
「!あ、あぁ///そうだな!!ほのかもそろそろ準備しなよ?」
「分かってるよ千翼くん。それじゃあ学校で」
「あぁ」
ほのかを見送り、部屋に戻り出る準備をする千翼の顔は身を見張るほど赤かった。
「...あれは反則だよな。...フーッ...よし、行くか」
気持ちを落ち着かせた千翼は、ベルトが入ったリュックを背負うと、第一高校へと向かった。
キャビネットに乗ってその中でほのかに貰ったサンドイッチを食べ、八王子まで行き、そこから少し歩くと第一高校に着いた。千翼は見て回れるだけ見て回っていたが、それでも待ち合わせの時間までかなりの余裕があった。
「うーん、さすがに早く来すぎたかな?...どっかで時間を潰すか『納得いきません!』(うん?)」
移動しようとした時、どこかで聞いたことのある声がしたのでそちらに向かうと、あの火災事件の司波兄弟がいた。
「何故お兄様が補欠なのですか!?入試の成績もお兄様がトップだったじゃありませんか!!」
千翼は二人を見ていて、達也の制服にはエンブレムがついてない事に気付いた。
「本来は私ではなくお兄様が...」
「深雪、
「そんな覇気のないことでどうするんですか!勉学も体術もお兄様に勝る者などおりません!魔法だって本当なら-」「深雪!」
「ッ!」
「それは口にしても仕方がない事なんだ。分かっているだろう?」
「...申し訳ございません...」
達也の言葉にしゅんとしていた深雪に、達也はそっと深雪の頭を優しく撫でた。
「深雪は俺の代わりに怒ってくれる。俺はいつも深雪に救われているんだ」
「...嘘です。お兄様は...いつも私を叱ってばかり...」
「嘘じゃない。深雪が俺の事を考えているように、俺も深雪の事を
「お兄様...そんな急に―
深雪はサッと後ろに振り向き顔を赤くさせた。
それを聞いた達也と千翼は首をかしげる。
(あの子、絶対に誤解している気がする)
千翼がそう考えていると達也は深雪に近づき、肩にそっと手を置き言葉を続ける。
「それにな深雪...俺は楽しみなんだ。可愛い妹の晴れ姿をダメ兄貴に見せてくれないか?」
それを聞いた深雪はさらに顔を赤くさせながら、達也に振り返る。
「お兄様はダメ兄貴なんかじゃありません!-ですが分かりました」
「そろそろ答辞の打ち合わせの時間だろ?行っておいで」
「はい!行って参ります!見ていて下さいお兄様」
深雪は笑顔で手を振りながら駆けていく。達也も手を振りながら深雪を見送る。
「.....さて、そろそろ話しかけてきてもいいんじゃないか?」
達也はそう言いながら、千翼がいる方に振り向く。
「...なんだ気づいてたのか?あぁ、立ち聞きしていたのは悪かった」
「...いや、あれだけ騒いでいたら誰でも気になる」
「それもそうか、...おっと。まずは自己紹介だな。俺は鷹山 千翼だ、気軽に名前で呼んでくれ」
「司波達也だ。俺の事も名前で呼んでくれ千翼」
「分かった。それで達也、さっきの子はもしかして妹?」
「あぁそうだ。名前は深雪。今日から一高に入学するんだ」
「ん?一緒にって事はふたりは双子なのか?」
「よく言われるけどそうじゃない。俺は4月生まれで、深雪は3月生まれだ、だから同じ学年なんだ」
「なるほど、そういうことなのか」
ふたりが兄弟ということはこの前の一件で知ってはいたが、達也は大人びて見えるため同い年だとは思わなかった。ふと千翼は時計を確認して待ち合わせの時間が近いことに気が付いた。
「―やば、ごめん達也、待ち合わせがあるから俺はもう行くよ」
「そうなのか、引き留めてすまない」
「大丈夫だよ、それじゃ!」
千翼は達也と別れ、校門前まで走った。校門についたと同時に丁度ふたりも校門前に来ていた。
「あ、千翼くん!」
「おはよう千翼くん」
「おはよう、二人共ごめん!俺が約束しておきながら二人を待たせちゃって」
「ううん、大丈夫だよ。私達も今来た所」
「それに千翼くん楽しみにしてたから待ちきれなかったんでしょ?」
「確かにそれもある...けど...こうやって誰かと待ち合わせして一緒に見て回るってのをしてみたかったんだ」
千翼がそう述べると、ほのかは顔を赤くした。
「ち、千翼くん!そそそ、それって///」
「デートの待ち合わせみたいだね」
「?俺たちは親友だろ?親友でも待ち合わせしたりするだろ」
「そ、そうだけど...」
「?」
千翼はほのかがなぜ顔を赤くしているのか分からず、首をかしげていた。
「ほら、二人共時間がないから早く行くよ」
「え!?あ、う、うん」
「そうだった。早く行こう...っとそうだ、ほのか」
「?」
「サンドイッチありがとう。おいしかった」
ほのかはさらに顔を赤くしてしまった。
こうして三人は、いつものやり取りをしながら入学式が行われる講堂へと向かった。
See You The
NEXT TARGET
第九話いかがだったでしょうか?
今回は短めになりましたが、自分で書いてて思ったのが
自分が書く千翼は少し鈍感な気がします。
第十話でお会いしましょう!
今年中に投稿します。