ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子── 作:GIOGIO
勝利の女神が微笑むのは、一体どちらか⁉︎
では、どうぞ!
仗助「ちく…しょ…う…」
静「兄さん!」
億泰さんに続いて仗助さんまでコインに変えられてしまい、静さんは取り乱した。
この場において、機転も度胸も演技力も頼りになる静さんの唯一の欠点。
それは仗助さんの事になると周りが見えなく成ってしまうこと。
とそんな時に、僕の耳に何か聞こえてきた。
ジョルノ『ミスタ、大丈夫ですか?』
ミスタ『ああ、俺のピストルズならイカサマなんてちょろいもんだぜ』
成る程、そういう事か。確かにピストルズは弾丸をパス回しが出来る程のスピードなら、イカサマなんて簡単に出来るだろう。
後は、どうピストルズをダービーに近づけるかだ。
八幡少年は論外だ。万が一を考えると簡単に出る訳にはいかない。
敵の狙いは八幡少年の魂とスタンドだからだ。
ここで八幡少年が負けたりして魂をコインに変えられてしまっては元も子もない。
どうやらいろはも無理なようだ。
勝負事には向いていない性格なのかもしれない。
いろはと僕の目が合う。ここでアイコンタクト。
いろは『承一郎先輩、お願いできますか?』
承一郎『わかった。でも、僕よりも適任は…』
僕はJOJOに入れ替わった。
JOJO『こういうのはむしろ俺の方が適任だ。承一郎でも構わないのだがな』
いろは『お願いしますね?』
俺なら力押しだけで無く、機転もきいて、手先も器用だ。
ダービー相手にも、引けを取らないだろう。
JOJO『兄さん、ミスタさん』
俺はブラッディ・シャドウの空間を繋いで二人に話しかける。
ジョルノ『承一郎、君は話を聞いていたのかい?』
JOJO『耳が良いからな。それより、ピストルズのイカサマ、俺がダービーに近づけよう』
ミスタ『出来るのか?』
JOJO『可能だ。勝負を上手く持ち込めばな』
ジョルノ『…それじゃあ、頼むよ』
JOJO『承った』
俺は空間をしまい、ダービーの前に立つ。
JOJO「今度は俺が相手になろう」
ダービー「裏切り者のあなたですか。勝負内容はどうしますか?」
JOJO「ポーカーだ。結構得意な方でな」
ダービー「正気ですか?私はトランプの賭け事…とりわけポーカーは得意中の得意なのですよ?…と、以前なら言っていたでしょう。ですが、20年前の承太郎との勝負の時にはその驕りが敗北の原因でした。ですから私は得意なポーカーでも全力であなたに挑みます」
承一郎「良い心掛けだ。20年前の復讐者共が八幡誘拐の任務を担っているようだが、どうも間抜けばかりで同じ手段が通用すると思っている奴ばかりだ。少しでも頭を使った奴等と言えば『太陽』のアラビア・ファッツくらいじゃあないか?運がなかっただけで、上手くいっていれば八幡達はやられていた可能性が高かったんだからな」
ダービー「20年前の復讐者達…ですか。確かにそうでしょうね。私もその内の一人になりますか…。私も20年前の敗北以来、どんな勝負に勝っても満たされる事はありませんでしたから。あなた方に勝つことで、初めて私は満たされる。そう思い、私は神父やあのシスターの誘いに乗ったわけです」
ダービーは未開封のトランプを取りだし、テーブルに置いて未使用のトランプであることを示した。
ダービー「20年。今この時の為に私は技を磨き、この場にいる。承太郎との敗北で身を崩してきた私は病魔に冒され、もう残り命も僅かだ。私は今この時の為に残り人生を賭けている!さぁ、一条承一郎!あなたはこの私を相手に、魂を賭ける覚悟がありますか!もう後がない、ここで命を尽き果てる覚悟がある私に対して、覚悟があるのですか!」
ものすごい気迫と覚悟だ。
これまで八幡一行を邪魔してきた人達とは一味も二味も違う。
JOJO「覚悟する者は美しい…か。あんたの覚悟、確かに受け取った。ならばチップを使った通常ルールなどいらない。たったワンゲーム…互いのイカサマを使った勝負でケリをつけよう。ノールックでノーチェンジ。それがあんたとの覚悟を受け止めるに相応しいゲームだ。その勝負に俺と承一郎、俺達二人の魂を賭けよう!」
八幡「俺もここで承一郎に魂を賭ける。ここまでの覚悟を出されたら、後ろで見ているだけだなんて俺には出来ない。承一郎が負けたら俺達の負け、あんたらプッチの勝利だ」
俺はダービーの覚悟を受け止め、勝負に出る。そして、八幡少年も…。
イカサマ同士の勝負なんて、普通ではあり得ない。
だが、この勝負はそれでこそ相応しい。何故かそう思えてしまえるから不思議だ。
ダービー「良いでしょう。ここまで堂々とイカサマ宣言されれば逆に清々しい。この勝負、あなたのイカサマを私が見破れるか否か…という訳ですね。わかりました。私の命を賭けた勝っても負けても最後の勝負、受けましょう。オープン・ザ・ゲーム!」
俺は会話の中で空間をダービーの腕の近くに広げ、ピストルズをダービーの腕の近くに張り付かせる。
ダービーはカードを配り始めた。
流れるような手つきでカードを配る。普通ならイカサマが行われているなんて思わない。
しかし、俺は見破ることに成功した。
JOJO「古い手では有るが、確実な手段、セカンドディールだな」
小町「セカンドディール?」
小町が頭の上に疑問符を浮かべる。
八幡「通常、カードを配るとき、一番上のカードを配る物だが、セカンドディールは配っている途中で素早く二枚目のカードを相手に配り、自分の手元に置きたい上のカードを持ってくるイカサマだ。こんな高度なレベルの物を見るのは初めてだがな」
八幡少年はセカンドディールと言うものを知らない皆に説明をした。
ダービー「グッド!よく見破りました。卑怯とは言いませんよね?」
JOJO「そもそもこの勝負はイカサマを使うことが前提の勝負だろ?むしろ使わなくてどうするんだ?」
八幡「一条はあんたの覚悟を尊重して勝負を受けた。むしろ使わない方が怒るまである」
普通ならイカサマはバレた段階で負けだが、この勝負はむしろ使わない方が失礼だ。
JOJO「さあ、俺の方のイカサマは見破られたか?その上で封殺できたか?」
ピストルズは仕事を充分果たしてくれた。後は、ダービーがイカサマを見破ったかどうかだ。
ダービー「…………」
ダービーは黙った。
いろは「皆さんは見破れました?」
小町「………多分、自信は無いけど」
陽乃「私は見破れなかったかな?悔しいけど」
静「私も見破れませんでした」
八幡「使った。俺には見えた」
ダービー「ブラフを使うのも1つのイカサマですから、それもありですね。20年前も私は承太郎にブラフで敗れました」
確かに20年前、ダービーは承太郎さんに仲間の魂、終いには自分の母の魂をレイズさせたブラフに敗北した。
JOJO「俺がイカサマを使ったか使わなかったか、確かめる方法は簡単だ。カードをめくれば良いんだからな。もしも俺のイカサマがブラフならば、コールした段階であんたの勝ちだ。俺のイカサマはブラフ。それがあんたのコールで良いのか?」
ダービー「私のセカンドディールのままならば、あなたの手元にあるのはダイヤとクラブのAのワンペア。一方私の手元にはスペードのロイヤルストレートフラッシュです」
JOJO「さて、本当に『ブラフ』がコールで良いのか?それとも、何かのイカサマを使用したかを当てるか?」
ダービーは汗をかきながら黙った。ダービーは見破れなかったようだ。
ダービー「参りました。『ブラフ』でコールするしか無さそうですね。私にはわかりませんでした」
JOJO「その潔さ、あんたはかつて承太郎さんと戦った時よりも確実に強くなっている。俺はあなたの覚悟を尊敬する」
ダービー「最後ですから開き直っているだけですよ。それでは、そちらからお願い出来ますか?」
JOJO「ああ」
俺は1枚ずつめくっていく。
ハートの4、ダイヤの2、スペードの4、ハートのA、クラブのA。
ダービー「やれやれ。本当にイカサマを使われていたようですね。ワンペアだったはずがツーペアになっているではありませんか。それでは私の方の確認をしましょう」
ダービーも俺と同じように1枚ずつめくっていく。
スペードの10、スペードのJ、スペードのQ、スペードのK…。
ダービー「ここまではロイヤルストレートフラッシュの手札ですね。仕込んだのがあるとすればこの最後の1枚…ですか」
JOJO「あんたの言うとおり、ブラフならスペードのAだ。さあ、見てみるが良い」
ダービーは最後の1枚をめくった。
中はスペードの9…。
ロイヤルストレートフラッシュではないが、スペードのストレートフラッシュでダービーの勝ちだ。
JOJO「チッ…最後の最後で運に負けたか。俺達の負けだな」
八幡「どこまでもギャンブルの神に愛された男だ。まさかこんな結果に終わるとはな」
俺達の魂が抜かれ、コインにされてしまった。
ダービー「本来ならば、ここで私はこのコインを持ち帰り、任務を達成。私は満足して逝けば良いのでしょうが…」
ダービーさんは指をパチンと鳴らした。
すると、コインは八幡少年、仗助さん、億泰さん、そして俺達の魂となって体に帰っていきました。
仗助「あれ?俺は…」
億泰「助かった…のか」
八幡「だがなぜ?」
ダービー「確かにポーカーとしてのゲームでは私の勝ちでした。ですが、この勝負はポーカーとしてのゲームではなく、私とあなたのイカサマを見破るゲームでした。私は一条承一郎。あなたのイカサマを見破る事は出来ませんでした。ただ運に助けられただけです。こんな勝ち方で勝負に勝ったなどと言ってしまっては、私のギャンブラーとしての誇りに傷が付いてしまう…誇りを傷付けてしまってまで勝ちを誇るくらいなら、誇りを持った敗北を私は望む。ただそれだけです…最期に聞かせて欲しい。一条承一郎。あなたのイカサマとはなんだったのですか?」
JOJO「あなたの手を見てください」
私達とダービーさんは彼の手を見ました。
No.6「オレタチノ事ヲワスレテモラッチャコマルゼ」
彼の腕にはミスタさんのスタンドが張り付いていた。
JOJO「セカンドディールをやったとき、ピストルズが一枚目と二枚目のカードも細工していたのさ。だから、俺の手元には三枚目のハートの4が、あんたの手元には二枚目のスペードの9がカードが行っていた。まさか二枚目のカードがスペードの9で、ストレートフラッシュが完成するとは思わなかったがな」
ミスタ「あの場面で俺達の企みに気付き、信用してくれるとはやるな、一条」
出ていっていたはずのミスタさんが再度入店してきました。
JOJO「耳が良いので、ピストルズに取り付くように指示を出していたのに気づいてました。ピストルズならば、ノールックでカードを配るダービーさんの一瞬の隙を突いてくれると信じてました。弾丸をパス回しできるならば、セカンドディールの隙を突いてくれると」
ダービー「仲間の絆にやられた…ということですか…」
JOJO「万全のあなたならば、カードがずらされていた事に気付かれていたのかもしれない。病魔で指先の感覚が鈍っていなければ、感覚の鋭いあなたには通用する手ではありませんでした。本当にあなたは誇り高い強敵でした」
ダービー「最高の勝負だった。これで思い残すことはない。負けて清々しいと思えたのは最期のこの今だけだった。一条承一郎、そしてジョースター達よ…感謝する」
ダービーからの死の気配が強くなる。
だが、聖女は敵であるこの男にも情けをかける。
いろは「ナイチンゲール・エメラルド!エメラルドヒーリング」
ダービーの血の気が失せた身体が、生気を取り戻した。
ダービー「私を蝕んでいた病が…何をしたんです?」
いろは「私のエメラルドヒーリングは病気とかの能力にも効果がある治療能力です。勝手で失礼ですが、あなたの病気を治療させて頂きました。後は栄養を蓄え、ゆっくり休養すれば、あなたは助かると思います」
ダービー「何故、私を治療したのです?私はあなた方の敵ですよ?」
そう、彼は俺達の敵だ。だが…、
いろは「あなたの誇り高いギャンブルへの精神に、何故か敬意を払いたくなりました。ただ、それだけです」
これが聖女。父の記憶で見た慈愛の女神像そのものに思えた。
ダービー「…完敗だ。私は君達の絆と誇り高い精神に心から敗北を認めよう」
ダービーはカードを片付け、そのカードを自らのポケットにしまった。
ダービー「このカードは君達の誇り高い精神に敬意を表し、私の今後の誇りとして宝にする。もう私はスタンドでチップをコレクションにすることもない。ただのギャンブラーとして、渡り歩こう。そして、一色いろは。君には大きな借りが出来た。もし君が窮地に困ることがあれば、私は私の出来る範囲で、君の助けになると誓おう、私の魂を賭けて」
ダービーは荷物を持って立ち上がった。
ダービー「また会いましょう。誇り高きジョースター達よ。私が言える事ではないが、いつかまた、ただの純粋な勝負を楽しみたいものだ。君達の旅が無事に終わることを願っている。さらばだ」
ダービーは、そういって晴れ晴れとした表情で去っていった。
誇り高きギャンブラーに幸があらんことを…。
こうして波乱に満ちた昼食は終わりを告げ、俺達はフロリダへの旅を続ける事になった。
ダニエル・J・ダービー『オシリス神』
自らの誇りを貫き、敗北を認め、旅に出る。
<=to be continued=
前回と今回のサブタイトルは、ダービーの誇り高き覚悟にちなんでつけました。
承一郎が活躍出来たので、嬉しい限りです!
それでは、また次回!