ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子──   作:GIOGIO

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第87話 聖なる日(クリスマス)(DIO)の子に救いはもたらされるか?その②

承一郎「『愛国者達(ザ・パトリオッツ)』…‼︎」

 

華「ええ、あなたの母ザ・ボスこと理那を殺した組織。私は末端の人間だけどね」

 

承一郎「…ならあなたは知っているハズだ。僕がどんな怪物(ビースト)で、組織をどれだけ憎んでいるのか…!」メリメリ…!

 

僕の額から怒りに呼応するように白い角が生える。その形相は、まるで鬼だった。千棘さんからは見えない角度だったのがせめてもの救いだ。

 

華「…知っているわ。だからこそ私は組織に入り込んだの」

 

承一郎「…なんだって?」

 

華「まぁ、その存在には理那自身から聞いたくらいだし、組織が接触してきたのは何年か前よ。しかも末端の人間には真偽を巧みに織り交ぜた嘘の情報(カバーストーリー)を流して、少数の人間にしか真実を悟らせないようにしていたしね」

 

承一郎「…つまりあなたは、あえて『愛国者達』に…?」

 

華「そうよ、私はらりるれろ…もとい『愛国者達』にわざと入ったの。理由はあなたと同じよ」

 

らりるれろとは、軍用ナノマシンを体内に入れられている『愛国者達』の手下達が『愛国者達』と言う時に変換させる言葉だ。オセロット曰く組織の誕生以来にある男が言った合言葉らしい。

 

承一郎「…母を殺した人間を探すため…」

 

華「そうね、そして『愛国者達』を止めるためにかしらね。彼女の遺言よ。「組織は暴走している。中身がない、まるで亡霊(ゴースト)のようだ」ってね」

 

僕の角はゆっくりと収まっていく。

 

承一郎「……そうですか。あなたと母さんは知り合いだったのですか?」

 

華「ええ、高校時代の親友よ?」

 

承一郎「なっ…」

 

華「あなた達が通っている凡矢理高校…あそこにね。楽しかったわ…」

 

承一郎「…すみません、ついカッとなってしまい…」

 

華「いいのよ、あなたはそれほど辛い思いをしたのよ。怒って、憎んで当然よ。…コレを渡すわ、あなたには必要なものよ」スッ…

 

華さんは僕へあるDISCを渡した。

 

承一郎「これは…?」

 

華「私と協力者達が今まで集めた組織のデータよ。嘘の情報も混ざっているかもしれないから気をつけてね」

 

承一郎「協力者達の名は?」

 

華「ADAM(アダム)EVA(イヴ)と言っていたわ。理那のかつての部下で、あなたの今の部下とも」

 

ADAMとEVA、それはオセロットとエヴァの事だ。オセロットは本名のアダムスカから取った暗号名(コードネーム)だ。

 

承一郎「…その二人、味方ですね。わかりました、協力ありがとうございます」

 

華「また何かあったら連絡してちょうだい、力になるわ。……ああ、あとコレもあげるわ」

 

僕が千棘の元に戻ろうとするちょうどのタイミングに華さんは僕へあるものを投げ渡す。

 

承一郎「?これは…?カセットテープみたいですけど…」

 

華「あなたの母が生前私にくれたテープよ、『大きくなった息子に会った時に渡してくれ』って」

 

承一郎「母さんが…」

 

華「後で聞くといいわ。それじゃーね、娘をよろしく♡」

 

そう言って、華さんは去っていった。

 

千棘「……ねぇ、何を話してたの?あんたのお母さんの話?」

 

承一郎「……ああ、いい事を聞けたよ」

 

その後、集から一本の電話が入った。どうやら僕と千棘さんがホテルのスイートルームで一夜を過ごした(大人の階段を登った)と勘違いしていたらしく、二人で何をしていたのか問い詰められた。

 

誤解は解けたものの、散々なクリスマスだった。

 

キング・クリムゾン‼︎

 

クリスマスパーティー会場───

 

承一郎「…ふぅ、疲れた…」

 

小咲「お疲れ様、一条君。千棘ちゃんのお母さんの会社で働いてたんだよね?」

 

承一郎「ああ、あの人スペックが人外だよ。ありゃ秘書が何人も倒れるのも頷ける…」

 

小咲「あはは、大げさだよ」

 

承一郎「いや、あながち間違いではないよきっと。…ちょっと、トイレ行って来るね」

 

僕はゆっくりとパーティー会場を後にした。

 

小咲(…あれ?トイレは反対側だったけど…)

 

 

店の外───

 

承一郎「…ここでいいか」

 

僕は店を出て、裏側にいた。華さんからもらった母のテープの内容を聞くためだ。

 

承一郎「iDROIDは…あった、テープを…」

 

僕はiDROIDにテープを入れて、カチッ!と再生ボタンを押した。

 

理那『──承一郎、聴いているかしら?』

 

テープが入り、音声が流れた…。

 

 

『承一郎、聞いているかしら?このテープを聞いてるという事は、もう私がこの世にいないのでしょう。ごめんなさい、あなたと一緒にいられなくて。

 

あなたと一緒にいるっていう約束を守れない事が、私にとって一番辛い事だった。これからもあなたの成長を見守りたかった。でも私にはそれすらも許されなかった…。

 

あなたはきっと、私を恨んでいるのでしょうね。私だけじゃあなく、この世界も。でもこれだけは信じてほしいの、私はあなたを愛しているって。

 

もう私の事は忘れて、新しい未来を、あなたのために生きて。それが私の、あなたへの願いよ。どうか、人としての人生を生きて』

 

 

ポロ…ポロポロ…

 

承一郎「……おかしいな、涙はもう枯れたハズなのにな…」ポロポロ…

 

僕の目から溢れ出たのは、涙だった。

 

承一郎(謝るのは僕の方なのに…僕はあなたが守れなかった。他の誰よりもこの(怪物)を愛してくれた母を守れなかった…)

 

承一郎「ううっ…!」

 

母は知っていたんだ。自分が死んだら、僕が復讐に走るだろうという事を。

 

だけど、僕の脳内に浮かぶのは過去だけだった。敵味方問わず積み上げられた骸の丘と、戦場で銃を構える自分だった。

 

承一郎(──でも、もう止まらない、止められない。僕がこの手を血に染めた時から、もう止まる事すら許されない。ましてや母や、今まで僕のために散っていった仲間の命を無駄にして過ごす生き方なんてまっぴらごめんだ‼︎)

 

承一郎「……僕が、終わらせる。母の汚名を注ぎ、この腐った因縁を終わらせるッ‼︎」

 

しかし僕は見えていなかった。その近くに置いてあったガラスに──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──一部が深い皺で覆われ、白髪になった僕の顔が映っていた事を。

 

 

<=to be continued=




クリスマス編は終わりですね、いやぁ結構大変だった汗

最近はMGS1の『The Beat Is Yet To Come』を聞いてみたり。胸に沁み渡るような良い曲です。

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