ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子──   作:GIOGIO

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第85話 似た者親子

クリスマスイブ、夕刻───

 

ババンッ‼︎

 

華の前には大量の資料と高級ブランドの袋が置かれていた。

 

承一郎「…今月やるハズだった仕事分、キッチリ揃えてあります。…そして、今までの傾向から取り引き先で入り用になりそうな物は全て買い揃えておきました」

 

華「……恐れ入るわね」

 

承一郎「……やれるだけの事はやったつもりです、華さん。お願いします、千棘さんに会いに行ってやって下さい…‼︎」

 

華「……行かないわよ、私は」

 

承一郎「…なんでですか‼︎時間ならあるハズですよ⁉︎…ならせめて一瞬だけでも、これを渡すくらい…‼︎」ガサ…

 

承一郎は包装された袋を取り出す。

 

華「…何よソレ?」

 

承一郎「…プレゼントですよ、僕が買って来たんです。マフラーが入っています、彼女に渡して下さい!」

 

華「またそんな物、必要ないと言ったでしょう?」

 

承一郎「そんな事、華さんが決める事じゃあないでしょう⁉︎」

 

華「大きなお世話だと言ってるの。あなた、人の家の事情に首を突っ込み過ぎよ?」

 

承一郎「………華さんは彼女に会いたくないんですか⁉︎」

 

華「……別に、そういうわけではないのだけど…」

 

承一郎(──…!……そうか…そういう事か…。最初から、千棘さん(彼女)に興味なんてなんてさらさらなかったって事か──…!)ギュッ…!

 

承一郎は自分の拳をひたすらに握りしめていた。信じていたものが裏切られたように思った。

 

華「…時間が出来たのなら都合が良いわ。また別の仕事を入れれば済む話…」

 

承一郎(このッ…‼︎)

 

ジョニィ『待て、承一郎!』

 

承一郎が華へ物申す前に、以外にもジョニィがストップをかけた。

 

承一郎(ジョニィ?)

 

ジョニィ『承一郎、承太郎さんが言っていた事を思い出せ。「注意深く観察して行動しろ」だ』

 

承一郎(…?それは一体…?)

 

カラ…と華が自分の机の中から取り出したのは、承一郎のより豪華に包装された袋だった。

 

華「…用意してはみたものの、今年もまた渡せそうにないわね…」

 

承一郎「………あの…華さん、それは…?」

 

華「ん?クリスマスプレゼントよ」

 

ドサドサドサッ‼︎

 

袋はその後から9個も出て来た。計10個もある。

 

華「……溜まりも溜まったり10年分(・・・)。毎年毎年用意はすれど、結局…渡せないのよね」パキッ!

 

華は自分の口にしていた煙草──もとい、ココアシガレットをヘシ折った。

 

承一郎「…それ、もしかして…ココアシガレット…?」

 

華「そうよ、小さい頃食べなかった?本物のタバコなら千棘を授かった時にスッパリと止めたわ」

 

承一郎「あの……華さんは千棘さんに興味がないのでは…」

 

華「はぁ?なぜそうなるの?」

 

承一郎「いやだって…!千棘さんのリボンの事忘れてたり、年も忘れてたりとか…!」

 

華「忘れるわけないじゃあない、私があげたリボンなのよ?」

 

承一郎(な…何ィーーーーッ⁉︎)

 

華「だってあの子、私が10年前にあげた安物のリボンを未だに着けてるのよ?あの子にならもっと他にいくらでも似合う物があるハズなのに…。年だって当然覚えているわよ。ただ…あの子の前だと緊張しちゃって、つい年の話から…」

 

承一郎「いやいやいやいや‼︎逆効果ですから‼︎」

 

華「…あの子は凄い子でしょ?」

 

承一郎「…え?」

 

華「前に話したわね。『能力ある者はそれを行使する義務を持つ』──あの子は素晴らしい才能を持ってるわ、その気になれば私やアーデルなんて及ばないくらいに。それに私によく似て美人、私によく似て」

 

承一郎「………」

 

承一郎は理解した。この人はかなりの親バカなのだと。

 

華「私はあの子を厳しく育てたわ、でもきっと厳しくし過ぎた。いつしかあの子は、私を『ママ』と呼んでくれなくなってしまった──…きっとさぞ、嫌われている事でしょうね」

 

承一郎「………だからイブに僕達をホテルにって提案を…?」

 

華「え…?………だってその方が嬉しいかと思って…」

 

ジョニィ『しっかりと物事を捉えていれば分かった事だ。ココアシガレットも見切れないとはな』

 

承一郎(…電子タバコと思ってたんだ。僕達も吸うだろう?でも、ようやく分かった…‼︎)

 

承一郎「……華さん…!」

 

華「ん?」

 

承一郎「アホーーーーーー‼︎」ビシッ!

 

承一郎は見事なツッコミで華へ平手打ちをした。

 

華「痛ぁ‼︎?なっ…痛ぁ…⁉︎あなた…この私に向かってよくも…「根本的に間違ってる‼︎」」

 

承一郎「彼女は‼︎嫌ってなんかいませんよ華さんの事…‼︎ずっと必要としてる…!今だって…‼︎一緒にクリスマスを過ごせる事を楽しみにしてたんです‼︎今でも彼女は華さんの前以外じゃあ華さんの事を『ママ』って呼ぶんです…‼︎」

 

承一郎「…会いに行ってあげて下さい‼︎まだ間に合いますから…‼︎」

 

華「………でも…私、今日この後アメリカに発たなきゃいけないんだけど」

 

承一郎「な、なんだってーーーーーーッ‼︎?」

 

華「だって…もう千棘に会えないと思ってたからこのまま帰っちゃおうかと…」

 

ジョニィ『確かに日本で仕事するとは言ってなかったが…これはマズいぞ‼︎』

 

承一郎「じゃあ…時間は…」

 

華「飛行機が出るまで3時間…」

 

承一郎「くそっ…ギリギリか…‼︎華さんは移動の準備を済ませたら例の高級スイートで待ってて下さい‼︎僕が千棘さんを連れて来ます…‼︎」

 

華「え…でも…」

 

承一郎(クソッ…華さん、仕事が人外並みに出来る人だと思ったら、それ以外はただの天然じゃあないか…‼︎結局、似た者親子だな…‼︎)

 

承一郎はただ駆ける。お互いすれ違って歪んでしまった親子の絆を繋ぎ止めるために。

 

 

パーティー会場───

 

小咲「…わー!見て見て外!雪降ってる!」

 

集「へぇ〜、ホワイトクリスマスたぁ今年は良い事ありそうだね」

 

鶫「お嬢、そこ寒くありませんか?」

 

万里花「ところで承一郎様はいつご到着なさるのですかー⁉︎」

 

集「あー、もうすぐ来ると思うよ〜(ウソ)」

 

 

千棘『ねぇねぇママ、私こんなリボンが欲しい!』

 

華『ええいいわよ、大事になさいね?』

 

 

千棘が思い出すのは、幼い頃の母との会話。

 

千棘(…いつから、こんな風になっちゃったんだろ…。昔はあんなに、普通に話せてたハズなのに…。もうずっとこのままなのかな…。ママとは…もう…)

 

承一郎「千棘さぁ〜〜〜〜〜〜ん‼︎!」

 

ドギャギャギャギャギャギャ‼︎

 

いきなり黒塗りの高級車が見事なドリフトをかましてきた。

 

千棘「うわぁ‼︎?なっ…何何何…⁉︎?」

 

承一郎「千棘さん…‼︎そこにいるかい⁉︎」

 

そしてその高級車から顔を出したのは自分の恋人である承一郎だった。

 

千棘「承一郎…⁉︎」

 

万里花「キャーー‼︎承一郎様ーー‼︎」

 

千棘「あんた…どうしてここに…」

 

承一郎「……説明してるヒマがない‼︎とにかく一緒に来てくれ‼︎」ガシッ‼︎

 

承一郎はいきなり千棘の手を取り、そのまま華の場所へ連れて行こうとする。

 

千棘「は⁉︎ちょっと……」

 

万里花「キャ〜〜‼︎二人でイブにどこへ行こうと言うのですか⁉︎どうせ連れて行くのでしたらこの私を‼︎この万里花を‼︎」

 

鶫「おい一条承一郎、何をするつもりだ⁉︎」

 

承一郎「あーー‼︎時間がないって言ってるのに‼︎」

 

千棘「ちょっ…ちょっと待ってよ!そんな急に…どこに行くのかくらい…!」

 

承一郎「ああ⁉︎ええい、だからぁ…‼︎」

 

詳しく話せば皆納得してくれたであろう。しかし承一郎にはそう時間はなく、そんな余裕がなかった。故に、

 

承一郎「高級ホテルのスイートルームだよ‼︎!」

 

爆弾発言をこうも容易く言ってしまった。いや、これは素なのかもしれない。

 

一同「「え…え…?ええええーー〜〜〜〜‼︎?」」

 

ジョニィ『…ハハッ』

 

そして承一郎は千棘(+一同)が呆気に取られている間に千棘の手を掴んで連れ出した。

 

万里花「どーゆう事ですか‼︎?今の発言は一体どーゆー…」

 

集「オレは知らなあばば」

 

集は万里花に肩を揺さぶられる。

 

男子達「うお⁉︎なんか小野寺が倒れてるぞー⁉︎」「一体どうしたんだー⁉︎」

 

千棘「………」

 

承一郎(頼む…‼︎間に合ってくれ…‼︎)

 

 

その頃、華には降雪によるチャーター便の搭乗時間が早くなるという連絡を受けた。

 

 

黒服「ダメだ一条君…‼︎北部の降雪でこの辺で大渋滞だ、車はもう動かせない…‼︎」

 

承一郎「クソッ、こんな時に…⁉︎」

 

千棘「…ねぇ、ちょっと待ってよ…!ちゃんと説明して…‼︎」

 

承一郎「…すみません、後で必ず返しますんで…‼︎」

 

承一郎は近くの自転車を無断で拝借、後ろに千棘を乗せてペダルを思い切り踏んだ!

 

千棘「………ねぇ…!さっき言ってたホテルってママが言ってた奴の事でしょ⁉︎行かないわよ私…!どうしてあんたなんかと…」

 

承一郎「そこで華さんが君を待ってるんだ‼︎合わせてあげるから大人しく座ってくれ‼︎」

 

千棘「⁉︎…ママが…⁉︎どう…して…」

 

承一郎「…華さんは‼︎誤解するような事をいっぱい言ってたし信じられないかもしれないけど…本当は君の事を大切に想ってたんだよ…!」

 

千棘「……そんな…そんな事あるわけ…そんなの信じられるわけないでしょ…⁉︎」

 

承一郎「…信じてくれ‼︎たまには少しくらい僕の事…信用してくれ…‼︎」

 

千棘は承一郎の言葉を聞き、ギュッ…!と一層抱きしめた。

 

 

黒服「…華様、出発の準備は整っております。お早く」

 

華「……ええ」

 

 

承一郎『嫌ってなんかいませんよ‼︎彼女は…‼︎今でも彼女は華さんの事…「ママ」って呼ぶんです…‼︎』

 

 

華(…私は、なんにも分かってなかったっていう事…?本当にあの子は今も『ママ」と呼んでくれる?でも…私は……)

 

黒服「…雪が強くなります、お急ぎ下さい。この会議にもし出席して損ねるような事があれば、我が社は数十億円の損失ですよ?」

 

 

承一郎「なっ!いない⁉︎」

 

受付嬢「はい…雪で飛行機が早まったとかで…」

 

承一郎「…なら空港だ‼︎急ぐよ‼︎」

 

千棘「うん…!」

 

 

承一郎「うおおおおおおッ、りゃああああああああああッ‼︎!‼︎」

 

ベキィンッ!ガシャンッ‼︎

 

承一郎は自転車で施錠された鎖を壊し、飛行場に突入した。しかし、

 

ギィイイイイイイイイイイイイイッ‼︎

 

エンジンの音を出しながら、飛行機が出発を開始していた。

 

千棘「……間に合わ…」

 

承一郎「…まだだ‼︎まだ終わってないッ‼︎」チャッ…!

 

承一郎は携帯を取り出す。

 

承一郎(ここまできたんだ!今この機会を逃したら、二人の仲は永遠に修復出来ないかもしれない!そんなのは絶対あってはならないッ!僕は親の愛を…信じるッ‼︎)

 

承一郎「その仕事スッポかして下さい‼︎華さん…‼︎!」

 

承一郎は華へ電話をかけた。

 

華『………坊や…。……ありがとう、坊や。でも、もういいのよ。千棘の気持ちを知れて嬉しかったけど、私は…行かなくては。あの子にもどうかよろしく言っておいて』

 

承一郎「………そうやって仕事のせいにして、ホントはビビってるだけなんだろう‼︎いい年こいて逃げてるんじゃあないッ‼︎」

 

承一郎「仕事とどっちが大切か…よ〜く考えて下っ」

 

承一郎は千棘に振り返り、

 

承一郎「さいッ‼︎」

 

携帯を投げ渡した。

 

千棘「………ママ…。…お願い、ママ…!」

 

千棘の切実な願いは叶わない、そう思われた。

 

承一郎「…ん…?」

 

千棘「あれってまさか…」

 

しかし待て、どんどんと小さくなっていた飛行機の影が今度はだんだんと大きくなっているのだ。

 

承一郎「ッ!千棘さんッ!ごめんよ!」ガシッ!

 

千棘「えっ⁉︎ちょっと⁉︎」

 

承一郎は千棘をお姫様抱っこして全力疾走する。

 

ドギャアアアアアアアアアアアアッ‼︎

 

承一郎・千棘「「ギャアァアアーーーー‼︎!」」

 

先程承一郎達がいた場所に飛行機は着陸した。この飛行機のパイロット、正気じゃあない。社長の娘と恋人(ニセ)を殺すつもりなのか?

 

バン‼︎

 

飛行機の扉が開かれ、中から華が出て来た。

 

千棘「……!ママ…!」

 

華「………千棘…!わ……わたし…」

 

華「………わ……たし…は………私を、ママの事をまだ、好き…?」

 

千棘「!……」

 

承一郎(………やれやれ、どこまで不器用なんだこの人は…)

 

千棘「…………………好き、だよ…。怖いけど…!全然会ってくれないし、会っても怒ってばっかだけど…!全然私の事見てくれないし…!何考えてるか全然分かんないし…!ついでに言えば超怖いけど…‼︎」ポロポロ…

 

千棘は大粒の涙を流しながらも、

 

千棘「でも、好きだよ…‼︎」

 

母への愛を告げた。

 

次の瞬間、華からも大粒の涙を流した。

 

華「……千棘…!」

 

華「千棘〜〜〜〜‼︎! 」

 

千棘「ママァーーーーーーー‼︎! 」

 

二人はお互いを抱きしめて、この10年間のわだかまりを解くかのように泣いた。

 

承一郎(…なんだ、やっぱり似た者親子じゃあないか…)

 

承一郎「…華さん!」

 

パシッ!と華の手を投げ渡されたのは承一郎に渡していた高級ホテルのスイートルームの鍵だった。

 

華「え…」

 

承一郎「長話をするにはここは冷えます。僕はこのまま会社に戻って、出来る限りの後始末をしておきますから。華さんは彼女とホテルでゆっくりイブを過ごして下さいね」

 

華「…カッコつけが過ぎるわよ?坊や」

 

承一郎「いいでしょこのくらい、今日は…メリークリスマスって事で」

 

 

承一郎「さて、さっさと終わらせようか…おっと」

 

社内に戻った承一郎はデスクに座ろうとするが、ふらついてしまう。

 

ジョニィ『お前、一体何日不眠不休で働いた?いくら体の半分が睡眠が不要な吸血鬼だとしても半分は人間だ。何より精神が持たないぞ』

 

承一郎「ごめん、ちょっと無理し過ぎた…。前は何日も戦場を走り回ってたのにな…」

 

ジョニィ『お前は寝てろ。後は俺がやっておくさ』

 

承一郎「ありがとう、助かるよ」

 

ジョニィ『なに、どうって事はない』

 

ジョニィ「そういう事だカズ、すまないが頼めるか?」

 

カズ『了解したボス』

 

ジョニィ「誰か知らないが言ったらしい。『日経平均株価はその日の彼女の機嫌で決まる』ってな。なら今日は()が決めさせてもらおう」

 

後始末どころか、損失をチャラにしてやろう。そうジョニィは動いた。

 

 

<=to be continued=




次回、『第86話 聖なる日(クリスマス)(DIO)の子に救いはもたらされるか?その①』

ニセモノは、影の苦悩を垣間見る。

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