ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子──   作:GIOGIO

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第84話 母と似た女性

華「へぇ、なかなか様になってるじゃあない」

 

華は秘書用の服を着た承一郎へ言った。

 

承一郎「あの…本当にやるんですか?いきなり秘書なんて…」

 

華「もちろん。安心なさい、あなたは私に言われた事を言われた通りやればいいだけだから。とりあえずコレに目を通して。今日の日程(スケジュール)と私の秘書を務めるにあたってのマニュアルよ」ドサッ‼︎

 

書類の山を承一郎へ押しつける。

 

承一郎「え…あの…」

 

華「5分で覚えてね♡」

 

キング・クリムゾン‼︎

 

車内───

 

華「…ええ、分かったわ。EU5社による新市場開拓案の構想はそちらでまとめておいて。リサーチの結果はどうなったの?」

 

承一郎「………(…スゴい‼︎この大量の資料本当に今日だけの日程(スケジュール)なのか…‼︎分刻みのスケジュールなんて初めて見た…‼︎それにさっきからやってるパソコン越しの会議、分かるだけでも5カ国語以上は使って喋ってる‼︎どれだけハイスペックなんだこの母さん…‼︎)」

 

余談だが承一郎は英語、ロシア語、中国語、キコンゴ語、他には某国の言語も習得している。最近はジョルノにイタリア語、ポルナレフにフランス語を習っている。

 

華「…さて、今日最初のお仕事は何かしら坊や」

 

承一郎「はい、○○社の社長と赤字回復のための相談会を…(物凄く聞いた事ある社名なんですけど…⁉︎?)」

 

華「あーそうだったわね。あら、ちょうど着いたわよ」

 

承一郎(会社デカッ‼︎)

 

華「何やってるの、早く来なさい」

 

自分がミジンコくらいに見えてしまう程の巨大なビルに驚く承一郎を尻目に華はビルに入っていく。その先では…、

 

社長が秘書と共に土下座していた。

 

社長「…この度は私共の失態でお呼び立てして大変申し訳なく…踏んで下さい」

 

華「嫌よ汚らわしい」

 

承一郎(大企業の社長土下座してるーーー‼︎!)

 

華「自分のミスでこの私の手を煩わせるなんて、良い度胸をしてるじゃあない」ぐりっ‼︎

 

社長「はぐっ…‼︎誠に申し訳…」

 

承一郎(結局踏んだ‼︎どれだけ偉いんだこの人…‼︎)

 

もはや社長がマゾと言わざるを得ない耐え忍びっぷりである。

 

承一郎「あの…お母…様…?」

 

華「あら、あなたにはまだお母様と呼ばれる筋合いはないと思うのだけれど…」

 

承一郎「では…なんて呼べば…?」

 

華「そうね、あなたには特別に『華さん』と呼ばせてあげるわ」

 

承一郎「じゃあ華さん、僕は一体何をすれば…」

 

華「…そうね、じゃあ坊やの最初のお仕事は…その辺でコーラ買って来なさい。3時間以内に」

 

承一郎「…え?コーラ…ですか…?」

 

華「ええ、他に欲しい物があったら追って連絡するから」

 

ガコッ、コン‼︎

 

自動販売機でコーラを買う承一郎。

 

承一郎(案外楽な仕事…なのか?いや、何人も倒れてるって事は…)

 

そこに電話が鳴った着信先は華からだ。

 

華『もしもし私よ、追加で買って来て欲しい物があるんだけどいいかしら?』

 

承一郎「華さん、はい何を買えば…」

 

華『カナダの取り引き先のお嬢さんがね、日本のディズ○ーランドにしか売ってないぬいぐるみがどうしても欲しいと言っててね、手に入れて来てくれる?』

 

承一郎「……は?」

 

華『それとシャネ○の日本限定モデルのバッグ全種もお願い。それから…』

 

承一郎「ちょちょっ…‼︎ちょっと待って下さい…‼︎○ィズニー…‼︎?そんなもの往復するだけでどれだけかかるか…‼︎」

 

華『そんなの知らないわ、なんとかしなさい。私のカードはいくら使ってもいいから最善を尽くす事ね』

 

承一郎「なんとかって…」

 

華『言っておくけど時間は厳守よ。もしも遅れたら…殺すだけじゃあ済まないわよ』

 

承一郎(…何人も倒れる理由が分かったよ)

 

華『それからロスの知人が気に入った和菓子があってそれもお願い。あとパリの○○のせがれがアキバのフィギュアを…』

 

承一郎(な…なんだとォーーーーッ‼︎?)

 

承一郎はひたすら、走った。

 

キング・クリムゾン‼︎

 

承一郎「…買って来ました〜‼︎(な…なんとか間に合った…)」

 

華に言われた通りの物を全部買って帰還した承一郎。

 

華「…ご苦労様坊や、よく戻って来たわね。でも残念…あなた30秒の遅刻よ…?」

 

承一郎「え…」

 

華「あなたが約束に30秒遅れると言う事はね、私の日程が30秒遅れるという事よ?30秒あれば成立したハズの商談が成立しなくなるという事なの。おわかり?私のモットーは『タイム・イズ・ノット(・・・)・マネー』時間はお金じゃあ買えないわ、そうでしょう?」

 

承一郎「…は、はい…(怖っ…‼︎)」

 

華「分かればいいのよ、さぁ次の予定は何かしら?」

 

承一郎「は…はい!AB社での新商品の打ち合わせを…」

 

華「あら、ウチの子会社じゃあない。隣のビルよ」

 

承一郎「じゃあすぐに下に車を…」

 

華「それじゃあロスが多いわ。少し待ってなさい。『ピッ!』私よ、そちらに行くからいつもの準備を」

 

役員『了解しました』

 

華はどこかに連絡すると、会社のビルの壁にあるボタンを押す。すると壁が隣のビルが見えるように開いた!

 

ガチャリ…と華は大きな銃器のようなものを取り出す。

 

承一郎「⁇あの…華さん何を…」

 

バシュッ‼︎

 

華「うわっ‼︎」

 

華が持っていたものから放たれたワイヤーは

 

ヒュルルルルル…バスン‼︎バシシ‼︎

 

と音を立てていつの間にか開かれていた隣のビルの的に見事に命中、アンカーが固定された。

 

承一郎(あれは…フックショットか!)

 

そう、華が持っていたものとはフックショットだ。しかもこの準備の仕様からいつもこの方法で移動しているようだ。

 

承一郎「え…華さんまさか…『ガシィッ‼︎』わっ‼︎?うおぁあああぁあーーー‼︎」

 

華は承一郎の胸倉を掴み、

 

ギャギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアッ‼︎!

 

ワイヤーの滑車を掴んで移動する!

 

承一郎「うおぉおおおおぉおおおおぉおおおッ」

 

ドサァッ‼︎

 

承一郎「タコスッ‼︎」ゴロゴロ

 

承一郎はいきなりの事で対応出来ずに転がってしまう。しかし華は、

 

クルクル…カッ‼︎と会議室の長テーブルの上に着地した。

 

役員達「「お待ちしておりました、社長」」

 

華「会議を始める」

 

承一郎(…これ倒れるよ、秘書)

 

 

千棘(今…空から承一郎の声が聞こえたような…。……しっかし、街はすっかりクリスマスムード一色ね…)

 

ピロリロリ♪

 

千棘「(え…承一郎から…?なんだろ…)もしもし」

 

承一郎『あ…ああ、千棘さんかい?』

 

千棘「わっ!何よあんたその声…」

 

承一郎『…今ようやく少し休憩をもらえてね。しかしアレだね、君の母さん鬼にも程があるね』

 

千棘「ハハ…よく言われるわ…。それで?どうしたの?」

 

承一郎『いや別に?君がヘコんでるんじゃあないかと思ってさ』

 

千棘「はぁ?なんで私が…」

 

承一郎『昨日君本当は、母さんに『そのリボンまだ着けてくれて嬉しい』って言って欲しかったんだろう?』

 

千棘「…あんたには関係ない!」

 

承一郎『あるだろう、大アリだ。…華さんが僕を認めたらイブに二人で一泊させるていうのがどこまで本気か分からないけど、君…本当は母さんとイブを過ごしたいんだろう?』

 

千棘「………不安なのよ。ママが本当は、私の事なんてちっとも興味なんてないんじゃあないかって…」

 

承一郎『……は?』

 

千棘「…ママね、私に会う時は必ず言うの。『今いくつになった?』って…。何回言っても覚えてくれないし、会っても怒られてばっかでちっとも褒めてくれないし。いつも……私にだけは冷たくて…。今回の事だって、本当は私とイブを過ごしたくないからあんな事…」

 

承一郎『そんなわけないだろう!実の娘に会いたくないわけがないよ。大丈夫だって、あのクソ忙しい人が今までクリスマスだけは必ず帰って来てくれたんだろう?…今度は君から誘ってみなよ、イブを一緒に過ごしたいって。素直な気持ちを伝えたら応えてくれるかもしれないだろう?』

 

千棘「……そう…かな…」

 

承一郎『大丈夫だよ!君の母さんだろう?』

 

千棘「…分かった、やってみる」

 

承一郎『ああ!頑張ってね!』

 

千棘「……あ…あり…」

 

承一郎『うおっ‼︎?悪い千棘さん、華さんからキャッチ入った!すぐ行かなきゃ!じゃあ頑張れ‼︎』

 

千棘「あぁ、うんじゃあ…」

 

千棘「…素直に、か…」

 

キング・クリムゾン‼︎

 

とぉるるるるるるるん、プッ!

 

華『もしもし?』

 

千棘「あ…えーと、お母様…?私…」

 

華『…千棘?珍しいわね』

 

千棘「あ…あのね…」

 

華『……要件は何?今仕事中で忙しいからなんなら後で』

 

千棘「あっ、ごめん…!すぐ済むから…!………あ…あの………承一郎の事を認めたらイブに二人で泊まるって話、あれ取り止めて欲しいの…」

 

華『…あら、なぜ?』

 

千棘「お…お母様…私…イブは…その…お母様と…」

 

華『あらいいのよ、私に気なんか遣わなくて。あなたも彼とイブを過ごせた方が嬉しいでしょう?』

 

千棘「いや…私は…」

 

華『それにイブは代わりに仕事を入れてしまったし、どの道ムリね』

 

千棘「えっ…」

 

華『他に要件はある?』

 

千棘「………」

 

華『そう…じゃあ切るわね』

 

プッ、ツーー、ツーー、ツーー

 

千棘が勇気を出してかけた電話は、無情にも途切れた。

 

 

承一郎「…どうして断ったんですか‼︎」

 

華「…なんの話よ」

 

承一郎「今の話千棘さんからでしょ…⁉︎なんで…‼︎」

 

華「仕事があるからよ、あの子とはもうイブの夜は過ごさないと思っていたから」

 

承一郎「……ならせめてクリスマスプレゼントくらい…‼︎僕…なんでも買って来ますから…!」

 

華「……必要ないわ、それより早くこの仕事を片付けないと。次があるんだから」

 

承一郎「…………そんなに仕事が大事なんですか…どうしてそこまで…‼︎」

 

華「……私にしか出来ないからよ。私にしか出来なくて、必要とされるから。能力のある者はそれを行使する義務があると私は考えているわ。私が必要とされ続けている限り、私は自分の能力を行使しつづける…。さぁ手が止まってるわ坊や、さっさとその資料を整理してちょうだい」

 

承一郎「…分かりました」

 

承一郎(…なんだそれは。『私にしか出来ないから』?『必要とされているから』?一番身近に、一番あなたを必要としてる人間がいるっていうのにッ…‼︎悪い…千棘さん…‼︎)

 

その頃、千棘はいつも着けていた赤いリボンを、外した。

 

キング・クリムゾン‼︎

 

バリバリバリバリバリバリッ‼︎!

 

華「…ねぇ坊や、昨日頼んでたあの──…」

 

承一郎「アキバの限定生産フィギュアと増屋の羊羹ですね、もう買ってありますよ!」

 

華「あら、なかなかやるわね」

 

承一郎(くそっ…!華さんがあんな薄情な親だとは思わなかった。見てろよ、絶対に見返してやるッ…‼︎)

 

 

小咲「…千棘ちゃん!こっちこっち〜」

 

千棘「お待たせ二人とも〜」

 

小咲「今日も寒いねー、今日はどこで買い物…あれ?今日はいつものリボン着けてないの?イメチェン?」

 

千棘「ああ…うん、まぁそんなとこ」

 

小咲「ふ〜ん!それも良く似合ってると思うよ!」

 

千棘「ねぇ、ところで結局あのクリスマスパーティーってどうなったの?舞子君の…」

 

小咲「あー明日ちゃんとやるみたいだよ?クラスの人も呼んで私達も参加する予定なの」

 

千棘「…それ、私も行っていい?」

 

 

承一郎「…ハイ‼︎会食用の店の予約とスケジュールの調整終わりました‼︎…次の仕事下さい‼︎」

 

華「あら、案外早く終わったわね。…一体どうしたの?この数日随分と殊勝な様だけど。ま、私は助かってるけどね?」

 

承一郎(…僕の方こそ、この数日ずっと側で働いてたのにこの人が休んだり寝てる所を一度も見ていない。どんなスタミナしてるんだ…?)

 

ジョニィ『俺達が言うのも大概だが…化け物じみた人だな』

 

華「…これはお給料の方もオマケした方が良さそうね」

 

承一郎「え?給料出るんですか?」

 

華「当然よ。働いた者には報酬を、社会のルールよ。それと、例のホテルの予約はもう取ってあるわよ?」

 

承一郎「え?」

 

華「合格よ、坊やにならあの子を任せても大丈夫そうね。母親が言うのもなんだけど、高校生の範囲で楽しんで来なさいな」

 

承一郎「……給料なんていりません、もちろんホテルも。ただ…一つお願いがあります」

 

華「……?」

 

承一郎「僕が働く事で、もし明日のイブ華さん余った時間が出来たなら、千棘さんに会いに行く事は出来ますか?」

 

華「…は?あなた、何…言って…」

 

承一郎「出来るハズです‼︎今のペースで死ぬ気で働けば華さんにかなり余裕が作れる、そうでしょう⁉︎」

 

華「それは…まぁ…」

 

承一郎「…行けるのか行けないのか、どっちですか‼︎」

 

華「………そりゃ可能は可能でしょうけど、でも……」

 

承一郎「それが聞ければ十分です、仕事に戻ります‼︎」

 

華「あっ…ちょっと…」

 

承一郎(……もしかしたら、僕は余計な事をしているのかもしれない。この前だって、僕のせいで千棘さんを傷つけてしまったようなものだ。でも…‼︎このままじゃあ千棘さんが報われないだろうッ‼︎)

 

バッ‼︎と承一郎は書類を並べ、恐るべき速度で書類を処理していく。

 

承一郎(親が子と会って起こる悲劇は知っている(・・・・・)。自分自身が一番良く知っている(・・・・・)。でも何も起こさないで後悔するのは間違ってる!二人が会って良い方向に転がるかは分からないけど、せめて出来るだけの事はしてあげたい…‼︎)

 

そんな中、華は陰から承一郎を見ていた。

 

華(自分は独り、何も要らないと言ってまで誰かのために力の限りを尽くす…。でも忘れてはいない?その在り方はまるで──…)

 

華(──理那(あなたの母)と同じだっていう事を…)

 

華は、自分のかつての学生時代の親友を思い出しながら、ゆっくりと自分のオフィスへ戻った。

 

 

<=to be continued=


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