ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子──   作:GIOGIO

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前回までのジョジョの奇妙な冒険ッ!

承一郎は万里花と共に街を騒がせる連続殺人鬼のスタンド使いを逮捕する任務につく。一向に手がかりを残さない犯人。

ところが足取りがつかめずに数日が経ち、民営ホールで犯行を行うという予告状が届く。急いで向かうと、そこでは犯行の『作品』が並んでいた。

残虐な殺害現場に唖然としていた二人は、犯人のスタンド能力であるカメラで撮られてしまう。承一郎達はどうなってしまうのか⁉︎

それでは、どうぞ!


第74話 ステファノのオブスキュラその①

パシャッ!

 

世界が動きを止める。それは承一郎と万里花、二人を取り囲むような空間の歪みのフレームとして収まっている。だがその歪みの外側は正常に時が動いている。

 

承一郎(これはッ…!この能力(・・)はッ…‼︎)

 

写真を撮った男はカメラ──確か『VERITAS(真実)』というブランドの物──を顔からゆっくり下ろす。右目を黒髪で隠している。青色のスーツに赤いスカーフと黒革の手袋、そしてドレスシューズと中世的で華やかなイタリアンスタイルだ。おそらく顔からしてもイタリア人だろう。

 

?「ずっと僕を探していたね、来てあげたよ。嬉しいねぇ」

 

男は緩やかな足取りで承一郎に接近してくる。

 

?「僕もね、君を探していたんだ。いや、正確には君の()にあるものかな。彼はね、僕がこの街で創作活動を続けるだけで君が迫って来ると言っていた。全くその通りで驚いたよ」

 

承一郎(なんだと…僕を探していただと…⁉︎)

 

?「何としても手に入れようとする人がいる。想像をはるかに超える報酬を用意してね」

 

男は手に持ったナイフを承一郎の目に向かって振り下ろす!

 

ピタッ…!とナイフが承一郎の目の前で止まる。

 

?「恐怖を…君から感じる」

 

男はナイフの先端をそのまま承一郎の頰に走らせる。皮膚が薄く裂かれ赤い血が見える。急いで万里花に骨の鎧を纏わせたので自分に纏わせる時間がなかったのだ。

 

承一郎(やはり、この能力は…父と、DIOと酷似しているッ…‼︎)

 

?「美しい…だが未完成だ」

 

男はナイフを承一郎の頰から離す。

 

ステファノ 「僕はステファノ …君達は僕の作品だ」

 

男──ステファノは扉へ向かっていく。承一郎と万里花は必死に体を動かそうとするが、能力の拘束がやっと解かれた時は、ステファノは閉じた扉の向こう側に消えていた。

 

万里花「承一郎様、お怪我は⁉︎」

 

承一郎「大丈夫、頰をなぞっただけだ…野郎、明らかに楽しんでいる。殺人に何のためらいもないサイコパスだ!」

 

サイコパス──良心や罪悪感などといった人としての当たり前の感情が欠如した人間を差す言葉だ。犯罪心理学者のロバート・D・ヘアは次のように定義している。

 

・良心が異常に欠如している

・他者に冷淡で共感しない

・慢性的に平然と嘘をつく

・行動に対する責任が全く取れない

・罪悪感が皆無

・自尊心が過大で自己中心的

・口が達者で表面は魅力的

 

などといった事が挙げられる。サイコパスは、極端な冷酷さ・無慈悲・エゴイズム・感情の欠如・結果至上主義などが主な特徴である。また、街中に潜む事から高い知性を有している事が多いと推察される。

 

承一郎「奴をこのまま見逃すわけにはいかない!奴を逃したら関係のない人間が何人も殺されるッ!」

 

承一郎はジョルノに連絡をかける。

 

ジョルノ『…もしもし?』

 

承一郎「ジョルノ兄さん、ステファノという男の情報を集められますか⁉︎」

 

ジョルノ『…大体状況は理解したよ。すぐに情報を集めよう!』ブツッ

 

承一郎「橘さん、奴を追おう!」

 

万里花「分かりましたわ!」

 

扉を開けるが、ステファノの姿は見当たらない。すでに暗闇に潜んだのだ。

 

承一郎「カズ、急いでステファノの携帯のGPSを辿ってくれッ!」

 

カズ『了解だ、ボス!』

 

ジョルノ『承一郎、調べてみたよ。本名ステファノ・ヴァレンティー二、フィレンツェ出身の32歳。戦場カメラマンとして活躍してたようだけど、戦場で右目を負傷してからはアメリカで写真家として活躍したらしい』

 

承一郎「アメリカか…ありがとうございます『ブツッ、ピッ!』カステヤノスさん、昔の刑事のツテでステファノ・ヴァレンティーニの情報を集められますか⁉︎」

 

セバスチャン『…それは事件に関係あるんだな?』

 

承一郎「はい、何か分かったら連絡をお願いします!」

 

カズ『ボス、奴は街の劇場だ!』

 

 

劇場入り口───

 

万里花「承一郎様、この劇場のポスター…」

 

承一郎「ああ、奴の撮った写真だろう。クソッ、一体何人もの人間を殺してきたんだ…?」

 

劇場のポスターは全部グロテスクな死体をツギハギして作られた作品の写真がかけられていた。

 

セバスチャン『一条警部、ステファノの周りでは不審死が多発していた。友人のモデルも切断遺体として発見されている。どれもまだ未解決の事件だ』

 

承一郎(スタンド能力が発現する前から殺人を犯していたのか…だとしたら生まれついてのスタンド使いではない…?ならいつ、どこで能力を発現した(・・・・・・・)んだ…⁉︎)

 

承一郎「…ありがとうございます」ブツッ

 

カズ『ボス、奴はその奥だ』

 

ギィィィィィィ……

 

重苦しい音を立てる扉を開ける。中は足元にある少しのライトだけで全体を見渡せない。

 

承一郎と万里花はお互い背中合わせでゆっくりと移動する。銃を構え、周囲を警戒しながら進む。

 

承一郎「一体何のつもりだ?」

 

ステージを鑑賞する観客席には、白いスーツを着た人達が両手両足を縛られて座らされていた。頭には黒い袋で被せられて顔が見えない。承一郎は顔に耳を近づけると…

 

男「ううっ…ううぅ…」

 

承一郎「まだ生きている…?」

 

ビーッ!

 

突然音が鳴ってライトが消灯する。そして

 

パッ!

 

とステージに光があたり、ステファノの姿が照らされた。

 

ステファノ「楽しい鬼ごっこだったよ…だが最高のエンターテイメントにも終わりはくる」

 

万里花「追い詰めましたわ、これであなたは終わりですわ!」

 

ステファノ「ここまでよく頑張ったな。忍耐という名の芸術があるのなら、君達は巨匠だ。ミケランジェロほどではないが、ファン・ゴッホ級ではある」

 

承一郎「下らない美術の授業はいらない。大人しく投降するんだ!」

 

ステファノ「それは無理な話だね、せっかく能力を授かったんだ。これからもっと創作の幅が広がるというものだ。僕がやっている事は個人的な利益より重要だ。()には決して理解出来ないだろう」

 

承一郎「『彼』?誰の事だ。そいつがあんたにスタンド能力を?」

 

ステファノ「ああ、そうだとも。だが気にしなくてもいい。君達はこれから死んで僕の作品になるのだから。…とはいえ、僕の創作は続く」グッ!

 

ステファノが手の平を握った途端、

 

ピピッ!ピッ!ピッ!ピッ!

 

突然袋を被せられた人達の首元が音を立てながら赤く点滅する。しかも全員にだ。

 

ステファノ「ピカソに青の時代があったように、僕は真紅の時代に入ったんだ」

 

承一郎「クソッ、よせ!」パァン!

 

承一郎はステファノに発砲するが、ステファノはまるでシャッターのフラッシュのように消え、隣に現れる。どうやら能力の応用で瞬間移動紛いの事が可能のようだ。

 

ステファノ「見ろ、僕の最新作を…!」

 

承一郎「やめろォッ!」

 

承一郎の声を無視し、ステファノの手が開かれた。承一郎と万里花は床に伏せる。瞬間ステファノの右目が青く輝き、

 

ドンッ!ドドドドドドドドッ‼︎

 

全員の首が吹っ飛ばされた。そしてそのタイミングに『弦楽セレナーデ』が流され、脳漿と血が噴水の如く飛び散る瞬間が停止される。

 

ステファノ「スゥーーー、ハァ〜〜〜〜」

 

ステファノは思い切り息を吸う。作品の匂いに酔いしれているかのように。

 

万里花「くっ…こ、これは…」

 

承一郎「見るな橘さん、君は見ない方がいい」

 

そう言う承一郎の手は皮膚が突き破る程に握られている。

 

予想は出来た、だけど防げなかった。その悔恨が承一郎の背にのしかかる。

 

ステファノ「美しい、血と肉のブーケだ」

 

承一郎「イカれた野郎め…ッ!」

 

ステファノ「これ以上の作品が作れるだろうか。だが僕には出来る」

 

ステファノは嬉しそうに話しかける。まるで百点を取った子供が親に褒められたかのように。承一郎と万里花は直感で理解した。こいつは絶対に止めなければならないと。

 

ステファノ「とはいえ、展示場で戦闘など愚の骨頂だ。場所を変えよう」スッ…

 

ステファノは一枚の写真を手に取り、空中に舞わせると次の瞬間、空間が捻じ曲がり博物館のような場所にいた。

 

ステファノ「僕の美しき『オブスキュラ』を紹介しよう」ズギュン‼︎

 

ステファノの背後から現れた(ヴィジョン)は、異形の姿だった。

 

スプリングカメラに三本の脚立がついているのだが、その脚立が全て人の肉(・・・)で出来ているのだ。女性の体にトゥシューズを履いた三本の足がついている。

 

この異形の姿が、この男の歪んだ精神の形なのだ。

 

承一郎「あんたは完全に!この一条承一郎と!」

 

万里花「橘万里花を怒らせましたわ!」

 

殺人鬼との死闘が、始まる。

 

 

<=to be continued=




スタンドプロフィール

オブスキュラ

本体:ステファノ・ヴァレンティーニ

ステータス
【破壊力-C/スピード-B/射程距離-A/持続力-A/精密動作性-D/成長性-B】

本体であるステファノお気に入りのスプリングカメラを二つの腕で支え、三本の女性の人肉の脚立を組み合わせたような外見。小型の金属の槍のようなもので攻撃する。

カメラで撮られた空間は時が停止される。中に閉じ込められたのが死体や物であったら永遠と死の刹那を繰り返すかそのまま停止される。生きた人間なら停止されるか動きがスローになってしまう。

しかしその停止時間は短く、オブスキュラ自身のカメラを攻撃して怯ませれば停止は解除される。もしくはその空間から脱出出来ればいい。

また肉体だけではなく魂も囚われてしまうので写真にも死者の(パワー)がこもっている場合もある。

実はこのスプリングカメラはステファノがかつて負傷した右目に直結されており、この傷は彼の隠されていたサイコパス的要素を開花させたものと推測される。

ちなみにオブスキュラは実際にステファノ自身が創作した『作品』の一つでもある。

本体とスタンドの元ネタはサバイバルホラーゲーム『サイコブレイク2』に登場する人物とクリーチャー。またドイツのバンド『オブスキュラ』。

オブスキュラはラテン語で『暗い』といい、カメラ・オブスキュラは同じくラテン語で『暗い部屋』と呼ばれていた(当時のカメラは部屋と同じくらいのサイズの大きな箱に被写体の光を集めたものを写し取るもので、画家がこの箱の中に入って壁に紙を貼り、映っている像を描き移す事で実際の光景とそっくりの下絵をつくるという使い方なのだが、その中が暗幕で覆われて暗かったからである)。


…はい、登場しましたステファノ!セバスチャンは『サイコブレイク2』の主人公で娘・リリーを巡ってステファノと戦っていたりと因縁があったりしますね!

次回、『ステファノのオブスキュラその②』

その瞳は、あらゆる生命の刹那を保存する。

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