横にポスンと何かが落ちてきた。見ればさっきまでなかった果物がそこにあった。果物といってもその見た目は異質。全体に点線が入り乱れた幾何学模様が入ってるし、どう見てもイチゴな見た目なのにメロンみたいにデカい
「悪魔の実」。これ1つで1億ベリー…だったか?それくらいの金額で取引されるくらい貴重な果実。別にヨダレをダラダラ垂らすほどうまいわけではない。むしろ激マズらしい。だが、相手を殺してでも奪う価値のあるこの悪魔の実、喰うと人間どころか無機物だろうと実に応じて能力を得ることができる
体がゴムになる、バラバラになる、煙になる、砂になるetcetc……それぞれ“ゴムゴムの実”“バラバラの実”“モクモクの実”“スナスナの実”と名前があり、その実の能力を得た人間を総じて“能力者”と呼ぶ
けど悪魔の実にもデメリットはあり、それは海に嫌われる…すなわち泳げなくなるのである。湖の水…オアシスの湖とかもアウトらしい。そして半身浴はセーフらしい。判定が謎だった
あと、海の性質を持った海楼石という石も弱点だ。これを使った武器は能力者に有効だし、海楼石を加工して作った海楼錠を嵌められたら能力者は軒並み無力化されてしまう
これを売って平穏に過ごす…なんてことはできないだろう。何せ
自分の身は自分で守る。ゆえに俺はためらいなく、勢いよく悪魔の実をその口に頬張った
ガブッ
「マズァッ!!!?」
形容できないマズさにためらいなく吐き出した。それから悪魔の実を喰いきったのは1時間後の話だ
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俺はこの世界の住人ではない。意味が分からないと思うだろう。だが事実だ。二次創作などでよくある転生とかトリップとかあるだろ?どういった経緯かは分からないが、いつも間にか俺はONE PIECEの世界にトリップしていたのだ
よくできた夢であって欲しかったのだが、波の音に照りつける太陽の光、夢にしちゃリアリティがあり過ぎる。そして決定的なのが悪魔の実を喰った時のマズさ。あんな衝撃的な味覚破壊を味わってなお意識がしっかり残ってるのだ。とても夢と思えなくなった。というかこんな悪夢があってたまるか
結論を述べると、俺はONE PIECEの世界にやってきたと確信、だから目標を決めた。どうすれば元の世界に帰れるかが最優先の目標、もしダメだと発覚した時の妥協案で命の危機が限りなく低い生活の保持…といったところだった
とりあえず喰った悪魔の実の能力を調べてみた。個人的には
でも現実は非情である。俺が手にした能力は……なんというか、こう、掌から渦というか穴のような空間を生み出す能力だった。系統は
……でもこの能力、なんか既視感があると思ったらマーシャル・D・ティーチのヤミヤミの実の黒渦とまんまそっくりなんだよな、物を飲み込んだり吐き出せたりするあたりが。でもあいつのは
それに比べて俺の能力は掌のふた回り大きい程度だし、出せる場所だって掌からのみだ。吸い寄せることもできないから技量で防ぐしかないし、ハッキリ言って下位互換な能力と思わざるを得なかった
とにかくこの悪魔の実の能力は便宜上アナアナの実……なんかやらしいなこれじゃ。そうだ
とにかく、どんな船でもいいから……いや、海軍はダメだな。もし俺の身分がないと分かれば、一体どんな対応をされるか分からん。あと天竜人も厄介だ。変な対応をしてしまえば即殺されるか奴隷決定だ。俺の目的が大きく遠のく
なら、やっぱり海賊がいいよな。後腐れがないし、身分なんか気にしなくて済むし、それに誠意を持って頼めば意外と受け入れてくれるかもしれない。よし!とりあえず今後の方針は決定だな!
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男は自分の能力をアナアナやウズウズと評した。しかし、実際はそんな生ぬるい能力ではなかった
喰った悪魔の実の名はディメディメの実。
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海賊たちは困惑する。なんなのだこの男は、と
海軍に追われて逃げた先の無人島に到着したら、突如現れた男が「無一文なのですが、船に乗せてくれませんか?」と言ってきたのだ。それは海賊たちのプライドを大きく刺激した。舐められていると
真っ先に1人の海賊がサーベルを持って男を殺すべく斬りかかった。無一文というならば反撃することなどできない。ましてやこの人数だ、勝てるわけがない。サーベルが男を肉薄する……
「オープン」
ーー低く太い声が聞こえたその瞬間、男が突き出した右掌から渦が現れ、斬撃を防いだ。それどころか持っていたサーベルを渦が飲み込み始めた。根源的恐怖を感じた男はサーベルを手放すと、ずるりとすべてを飲み込まれた。斬りかかった海賊は唖然とする
その事態をきっかけに大勢の海賊がたった1人の男に集中攻撃を行う。剣の斬撃、槍の突撃、銃の狙撃、あらゆる攻撃が男を襲うが、すべて男が生み出す渦に飲み込まれ無と化した。四方から狙おうにも、男の上手い立ち回りで一方向からしか攻撃できない
「クローズ」
どれだけ攻撃しても届かず、どれだけ攻撃しても途絶えず……やがて渦が消えた時には、海賊たちの武器と弾薬はすべて尽きていた。化け物を見るような目で海賊たちは後ずさる
その海賊たちの船長は改めて男の姿を見る。黒いGパンのようなズボンを履いて白いTシャツに青いジャケットを羽織っており、Tシャツにはデカデカと「二次元」と書かれていた。海賊たちは理解できなかった
「あなた方が海賊だというのは重々理解しています。その上でお願いします。俺をあなた方の船に乗せてくれませんか?」
男は腰を曲げ、頭を下げて懇願する。海賊たちは困惑した。この隙を狙って殺すべきなのだが誰もそれを実行できない。もし襲いかかって、その時にあの渦が今度は自分を飲み込んだら…?男が生み出した渦…否、異質な穴に誰もかれもが恐れを抱いていたからだ。あれに飲み込まれればもう2度生きて戻れない。そんな確信があった
船長は考える。海賊にとって船に乗せてくれと言うのは、仲間に入れてくれと言うようなものである。明らかに自分たちの総戦力を遥かに上回るこの男がなぜ海軍に追われてボロボロの海賊を狙うのか。遭難したならば海軍などの方が確実に安心である。少なくとも襲われることは絶対ない
なぜ、なぜ、なぜ……船長の推測を繰り返し、船長が出した結論は
「………いいだろう」
「キャプテン!?」
「ただし、ウチの団員たちには一切手を出すな!!それと、俺たちは海軍に襲われてもうおしまいなんだ……乗るのは勝手だが、それで死んでも文句は言うなよ」
どちらにせよ海軍に狙われている今、この海賊団が消えるのは確定していた。己への自嘲と自棄がこの判断を下した
………だが、この海賊団員たち全員が、のちにこの出会いに全身全霊の感謝を述べる
「海軍ですか……ならば、やることは1つだと思います」
男が左掌から渦を出す。すると、先ほど渦に飲み込まれ消えたはずの武器や弾がそこから出てきた
「なっ…!」
「俺が海軍の砲撃等を凌ぎます。あなた方は海軍を攻撃して撃退するだけの、簡単なお仕事です」
「なんだと!!?」
「俺は生きたい……安心して生きるためにも、こんなところでつまずくわけにはいかないのですよ」
船長の前に立つ男
「お前は……お前はいったい、何者だ…?」
「俺ですか?」
男は右手を差し出して獰猛に笑みを浮かべ、自分の名を告げた
「俺の名前は
急にビビって思いついたので書きました
ディメディメの実
異次元を引き出し、操り、支配するチート悪魔の実。異次元ゲートを開いて防御、カウンター、瞬間移動をそれぞれ行える。異次元の壁を殴って揺らすことでグラグラの実の能力をも擬似的に再現できるチートっぷり。右掌で飲み込む渦、左掌で吐き出す渦を出すなどの制限はある