ビビリ成り代わり八敷(通称ビビリ八敷)の心の叫びがうるさいです。
多分今後もこの調子で続けます。
心の叫び書くの楽しいもので…つい…
- ようこそ九条館へ──ビビリ八敷様
九条サヤの部屋で、あの異様な匂いを嗅ぎすぎたせいか、頭がふらふらして、己の足取りも頼りなく感じる。ふわふわとする意識をなんとか保ち、まるで浮いてるような
……我ながらやばいな、こんな調子じゃ怪異とご対面になると厄介だぞ。よろめいた瞬間にガーッ!と飛びついてきたら一発ゲームオーバーじゃないか!無理、絶対無理。頭がぼーっとするし、足もふらふらとか、厄介だ。むしろ考える時間もなしで速攻死ぬ、どうやって回復すればいいんだ!!!
「…明るい、さっきとは大違いだ」
茫然と灯りに満ちたホールを眺め、自分に言い聞かせるように呟く。さっきは暗くてなにも見えなかったが、明るくなった今は、館の内部がはっきりと見える。アンティーク揃いのこの館に、言葉では言い表せない、やけに古めかしく、懐かしい気配を漂わせている。心なしか、ざわつく心を癒してくれてる気がする。この場所が安全なのか、それとも灯りがついてほっとしたのか。個人的には後者のほうだ、なにせこの世界のどこも絶対に安全と呼べる場所なんて数少ないからな。
未だはっきりしてない頭を動かし、
その時だった、人形特有の軋む音が小さく響き、彼女の頭は小さくではあれど動き出し、少しだけ見上げた姿勢で俺の目を真っ直ぐ見つめてきた。心臓の動きが一瞬止まった気がした、絶対に気のせいじゃない、もしかしたら息を呑んだのかもしれない。だが彼女は気にもせず、ゆっくりと小さな口を動かす。
「ようこそ、九条館へ」
「…!?」
きっと俺は血の気が引いたような顔をして、後ずさっていただろう。そんなことはどうでもいい。どうでもいいのだ。なぜなら目の前に喋る人形がいて、それがのちに己を追い詰める存在であることに、今更ながら、確かに、実感したのだから。この感覚、生きていながら、死を間近で感じ取った感覚は、間違いなく彼女から感じ取ったものだ。靄がかかった意識が、さらに酷くなる。
「驚かせてしまい、申し訳ございません」
淡々という風に、感情と声色の起伏もなく、機械のような口調で話し出す彼女はペコッと頭を少し下げ、両手を膝の上に組んだ。彼女が動く度に、軋む音が鳴る、それが反って恐ろしく感じる。
うっ…あの音無理。なんで?なんでよりによって人形?しかもなんで球体関節?作ったやつ出てこいてめーなんでわざわざこんなでかい球体関節した人形作ったんだ!!!きれいだけどさ!もうちょっとこう、小さいのを作れよ怖いわまじで!ギシギシ鳴ってて怖いんだよ!夜中に出会ったらデッドエンドするやつだろーが!!!
「しゃ、喋れる…のか?」
暴れまわってる内心を隠し、平静を装った様子を見せて、警戒しながら彼女との距離を保つ。一歩でも動いたら、きっと俺はその場でバタンと盛大に倒れるだろう。この館に入ってから、目撃した異変の数々、苦手な暗闇で行動、衝撃すぎる女性の死とこの世ではない存在との遭遇。むしろここまで辿り着き、狂わなかったほうがありがたいほどだ。ソファで手を組む彼女を見定め、次の言葉をじっと待つ。
「はい。サヤ様のお言葉に従い、普段は人形のふりをしているようにと仰られましたので」
翡翠色のガラス球、無機質を越えたソレは遠慮もなしに、視線を逸らす事を知らぬように、俺を見上げる。
『ああ、なんと甘美なのでしょう』と。
無意識に眉を顰め、いかにも警戒をむき出しにした状態で目を細め、彼女を睨みつける。だが所詮彼女は人形だ、感情を理解し、表に現す術など持たない。果たして彼女は喜んでるのか、悲しんでるのか、落ち込んでるかなんて、知る由などない。唯一分かる事は、彼女は今、どうやって俺を
意識が段々と朦朧となっていく中、俺は気づかなかった。彼女の会話が、原作になかったことを。九条サヤの死について話し、彼女が研究してる呪いの印と、自分に刻まれたシルシについて述べてる最中、ショックと、現実を受け止めきれずに、頭を空白にしてなにも頭の中に入らなかったことを。気を取り戻した…もとい、目を覚ませば、すでに九条館にある客室にいた。
- いざ!序の口を突破せよッ!
「おはようございます、八敷様」
状況整理もできず、頭をパンク状態にしたままホールへと戻ると、彼女はすでに自分に向かって挨拶の言葉を投げた。こんな状況でも驚かなかった自分を褒めたい。頭を抑えたまま、眼鏡越しに彼女のほうを見て「……今は夜中だぞ?」と少々皮肉めいた返事を返した。だが、反応なし。予想通りと言えばそうだが、彼女相手にそんなことが通じるわけがないと、頭では分かりきってるはずが、なぜ言ってしまったのか。余裕を無くすとこんな状態になるのか、と自分が出した結論に心の中で頷きながら、頭を横に振り、まどろみにあるような意識をはっきりさせようとする。
ん?待てよ?俺いつの間に
「ご気分を損ねたのなら、誠に申し訳ございません」
同じ姿勢、感情の揺らめきなどなく、淡々と言葉を並べる姿はやはりというべきか、彼女が人形である何よりの証拠。しかしまあ、彼女にも人並みの感情があるのだ、きっと皮肉めいた言葉に叩かれて、少なからず落ち込んでいるだろう。
「…いや、こっちこそすまなかった。少し、頭が混乱してるようだ」
「いえ、構いません。あなた様にとって、衝撃的だったのですから」
それを意味するのは、果てしない恐怖と、死と直面する戦慄を止め処なく感じなければいけないことだ。
もしかして
「メリィ、だったか?おまえが言った、印人の運命が真実なら…俺は…」
怯えた顔をしたくない、だが、抑えられない。体の奥から湧き上がる恐怖が、暗闇のように心を染め上げる、絶望の深淵まで引きずられていきそうだ。それでも、俺は向かわなければならない、抗わなければいけない。メリィは、この返答を待っているに違いない。
「八敷様、私から提示できる道は2つ……座して死を待つ道と、シルシに抗う道です」
彼女が提示する道の中で、俺は間違いなく、後者を選ぶだろう。だがしかし、それを選んだからといって、助かる希望はあるだろうか?
メリィは深く考える俺を見て、続きを述べる。もし抗う道を選べば、助かる望みはある。亡き九条館の主人である九条サヤはシルシについて研究しており、死の数日前に「逃れる方法がある」と話していた。惜しい事に彼女から詳しい事情を聞く前に、亡くなったことが残念とも言っていた。
「夜明けまで時間はあります。天から垂れる蜘蛛の糸のような、か細い可能性ではございますが……もし、あなた様がそれに懸けるならば、私めも協力いたしましょう」
「……」
「さて、どういたしますか?」
これは生と死の懸かった選択だ…慎重に考えなければ……って格好つけてる場合じゃない!これデッドリーチョイスじゃねーか!!!むごいゲームシステムきたーッ!霊魂減るのが滅茶苦茶速いデッドリーセンパイきたよッ!えっ、生身でも霊魂システムありますかこれ!?滅茶苦茶だぞおい!うわっ、心なしかあの文字が浮かんでくる気が…
- Live or Die -
まじで浮かんだーッ!!!はぁ!?心霊現象!?怪異ですかー!?どういうこと?メリィ見えてないのか!?え、えええええ!?待って、待て待てm……いや待てよ霊魂感じ取れるんですけどまじでリアル霊魂システムかよ!!!なんか視界の隅に『霊魂1000』って見えるのも心霊現象か!?
「では、八敷様にお尋ねします……」
「大人しく死を待ちますか?それともシルシに抗いますか?」
急速に白く塗りつぶされる感覚に襲われ、霊魂が減ってるのだとすぐに意識した。霊魂が減るということはつまり、死と直面している何よりの証拠だ。もたもたしてるとぽっかり死んでしまう、はやく、はやくこたえなければ…!
「……おまえの言葉を信じよう」
「かしこまりました、八敷様」
あ……あっぶねー!!!死ぬところだったわ!なんだ今の、視界がぼやけるし、意識は段々と朦朧となっていくし、おまけに答えたあとに正常になるってどういうこと?そうかッ!これが、おなじみの『デッドリーチョイス』かッ……知ってるわボケ!おらさっさと生き残った合図を浮かべ心臓が死にそうなんだよ!!!
- Survived -
そのあとメリィがなにを言っていたのか全く耳に入らなかった、心臓が落ち着くのを待ち、シルシに抗う決心をもう一度身に着けるのにそんな余裕はなかったらしい。だが、改めて考えると、一体なにをすればいいのだろう?なんて考えているが、もし間違っていなければ、このあとすぐに館の扉はノックされるはず。
『ドンドン』
ノックじゃなくて叩くのか。思わずツッコミを入れそうになったが、なんとか心の中に留め、メリィの方に向く。記憶通りに、人形が出迎えてしまえば逆に驚かしてしまう、自力では動けませんのでお願いします、という類の話をされた。
「外の客人もどうやら、あなた様と同じ印人のようです」
そう付け加えるように、メリィはじっと俺を見つめる。どうやら、こちらの気を察したらしい。迎えたくない、という俺の気持ちを汲み取った上で言ったのだろうが、さすがに怖すぎる。仕方なく、大きなため息を吐き、強張った体を解したあと、入り口の扉まで近付き、こんな夜更けに館を訪れた非常識の客を迎えた。
ギィーっと木製の扉特有の軋む音のあと、玄関の扉から姿を現したのは、深夜の時間帯にそぐわない顔ぶれの訪問客……女子高生と、小さな男の子だった。
現在ビビリ八敷の人間関係:
メリィ→警戒(…指示は信じる)
九条サヤ→ご冥福を申し上げます(うえっ、死体が酷い…)
他の印人→まだ出会ってない(真下…)
次回で萌ちゃんとつかさ君が出てきます。
そしてお待ちかねの……みんな大好き『懐中電灯探索』ッ!!!
ビビリ八敷の反応&心の叫びに期待。wktk。
そして作者は絶賛執筆中、書くの楽しいェ…