では、続きをどうぞ
多くの人通りの中、俺はいきなり腕を掴まれた。掴んだ相手は、最近、俺にしつこく付きまとう絢瀬絵里という女だ。彼女は、俺の変幻した姿しか知らない筈なのに、俺だと気付いたようだ。
絵里「……貴方」
彼女の口がそう告げる。俺は、平静を装いながら、辺りを見渡した。どうやら、組織のメンバーは近くにいない。そして、彼女の手を振りほどく。
侑「人違いではないですか?」
内心、ドキドキだが、至って冷静にそう答えた。それでも、彼女は首を横に振り、雑音で聞こえないが、口の形は。
絵里『人違いじゃないわ。』
そう言っていた。目の下にクマを作り、虚ろな目で、はっきりと。俺は、ドキリとした。
侑(……この女、一体何者なんだ)
俺の心は荒れた。すると、彼女の友人達であろう。数人の女性達が、彼女を囲む。
???「絵里、いきなりどうしたのです?」
???「もう、何してるのよ。絵里は」
???「絵里ちゃん、ナンパかにゃ~?」
???「いきなり引き留めて、ごめんなさい。」
立て続けに友人達は言う。俺は、あまりの事に、少し圧倒してしまった。
侑「気にしていませんので、それでは」
軽く会釈して、俺はその場を後にしようとしたが、彼女が再び俺の手を掴んだ。
絵里「待って!……貴方よね?名前知らないから、呼べないけど、絶対」
揺るぎ無いその目で俺を見る。俺を、何も言わず、逃げるようにその場を後にした。
とある田舎の山奥
俺は、洞窟の中にいた。目の前にそびえ立つ扉を、俺は開ける。中は、ここが洞窟だと分からない程、周りをコンクリートで固められ、所々に監視カメラやガラス張りの部屋が幾つもあり、俺はその中を歩く。数ヵ所には、セキュリティチェックの為に、指紋や声帯認証、手の静脈認証をし、ようやく最深部であるフロアーにたどり着いた。
???「よう、堕天使。遅い出勤だね~」
組織メンバーの一人が声を掛けてきた。
侑「サンダー、五月蝿い」
サンダー「ちぇ、ノリが悪いな」
拗ねたサンダーを尻目に、俺は自分の席に着く。ここは、俺が所属する組織の一室である。組織のメンバーは、普段外の世界に出てこない。もちろん、俺も本来は外に出る事は禁止されているが、そんな事、俺にはどうでもいい。上層部は、俺が外の世界に出ている事はすでに知っているようだ。しかし、特に何も言って来ない。俺は、ただ夜の散歩を楽しんでいるだけ。それだけだ。
サンダー「ところで、例の彼女、まだお前の事待ってんの?」
彼女とは、あの絢瀬絵里の事だ。俺は溜め息を付いた。
侑「今日、街中で俺に気付いた。」
サンダー「それって、変幻してないお前が分かってるって事か?」
侑「ああ、はっきりそう言われたよ。」
それを聞いて、口笛を吹くサンダー。
サンダー「よっぽど、お前にご執心って事だよな」
その言葉に、俺は顔を伏せた。俺の唯一の楽しみである夜の散歩を、絢瀬絵里は邪魔をする。俺にとっては、夜の散歩は、大事な日課だ。それはどうしてか?
……すぐに分かる。
とにかく、夜の散歩が絢瀬絵里のお陰で、ここ数日、満足に出来ていないのだ。そして、今日も絢瀬絵里に邪魔をされるのであろう。俺は、深い、深い溜め息を付いた。
侑(着地地点を変えるか?)
そう考えたが、やっぱりあの場所がしっくり来る。俺は、またあの女に邪魔される事を考え、痛む頭を押さえた。
ああ、やっぱり短い文章になってしまう~!っと言うことで、侑視点でした。今後も、侑視点がありますので、宜しくお願いします。
あぁ、どなたか上手く長い文章を書く方法を教えて下さい……(切望)