では、続きをどうぞ
真姫とあのまま別れてから、自宅のあるアパートに帰る昂。玄関に入ると、溜め息と共に疲労感が襲う。昂はベッドに向かう気力もない。そのまま、床で寝ていた。
数時間後
携帯の着信音で目を覚ます昂。ディスプレイには、侑の名が出て、昂は脱力した手で、携帯を取り、電話に出た。
侑『昂』
昂「……何?」
侑『お前、寝てたのか』
昂「ああ、んで?何?用件は?」
昂の対応が冷たく感じたのか、侑の声のトーンが一つ下がる。
侑『お前、絵里の友達泣かせたろ』
昂「泣かせてないよ。何?彼女が言ってきたの?」
侑『いや、絵里も友達も何も言ってきてないが』
昂「んじゃ、何?」
侑『……いなくなったんだよ』
侑の言葉に、一瞬思考が止まる昂。
昂「……は?え?いなくなったって、誰が?」
電話の向こうでは、侑が溜め息を付いている。
侑『真姫ちゃんだよ。家に帰ってないって、絵里の友達が、絵里に連絡してきたんだ。最後に会ったのお前だろ』
その後の侑の言葉が、頭に入ってこない。昂は、無意識に携帯片手に外に出た。闇雲に探したところで、見つかる訳がないのに、昂はがむしゃらに走り探す。
ふと、街外れに見える小高い丘が目に入った。昂はその丘へ向かう。標高は数百メートル位か、小さな丘。昂はその丘の頂上へ続く道を歩く。丘の頂上には、街並みが一望出来る場所がポツリとあり、ベンチが一つあった。そこに一人の女性が座っている。街の灯りが逆光になって、顔がよく見えない。それでも、昂はその女性が誰なのか分かっている。ゆっくりと近付く昂。気配を感じて、女性は少し振り返った。その女性は、目尻に涙を浮かべた真姫だった。昂は息を飲む。
真姫「……何しに来たのよ」
昂「…………」
上手く言葉が出ない昂。真姫は視線を街並みに向けた。ただその場に立ち尽くす昂に、真姫は背を向けたまま話す。
真姫「綺麗でしょ。」
昂「……え?」
真姫「ここの景色、綺麗でしょ。私のお気に入りの場所なの。誰にも教えた事ないの」
昂「……あぁ…」
真姫「どうして、ここだって分かったの?」
言われて、昂は困惑する。昂自身も、何故ここに来たのか分からない。
昂「……正直、俺にも分からないんだ。ただ、何となく君がいるんじゃないかって」
それを言って、初めて昂は自分の気持ちに気付く。真姫の側に歩み寄り、真姫の横に座った。真姫はゆっくりと昂の方へ視線を向ける。昂は真っ直ぐ街並みを見つめ。
昂「俺、怖かったんだ」
真姫「怖い?」
昂「……あぁ、人を好きになる事が」
無言で昂を見つめる真姫。
昂「俺と侑は、普通の人間とは違うから」
昂(組織の人間を殺して、好きな人の為に手を汚す侑を見て。その事を侑は死ぬまで隠す覚悟も出来ているのに。俺は……)
昂「……俺はなんて小さい」
手に力が入る昂。
真姫「別に、そんな事ないんじゃない」
真姫が昂の手を取り、血が滲んでいるその手をハンカチで覆う。
真姫「普通の人間でも、人を好きになるのが怖いって思う人はいるわ。貴方が、何に悩んで、怯えているのかは、分からないけど」
微笑む真姫。その微笑みが綺麗だった。昂の手が、真姫の頬に添えられる。真姫は狼狽えた。その姿に昂の心がざわつく。顔をゆっくり近付け、唇を塞いだ。真姫の身体がピクリと動き、固まる。昂はすぐに唇を離すと、今度は真姫を抱き締めた。
昂「俺、君の事が好きだ」
そう昂は告げたのだった。
ようやく、本心が言えました!良かった、良かった!
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