魔王様はダラダラしたい!   作:おもちさん

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第45話  お手本のような決定打

オレは宿の一室に居る。

蒼白な顔でへたりこんで、壁によりかかっていた。

服はもともと汚ならしかったこともあるが、血や隠した果実の汁でひどく汚れている。

その辺の浮浪者の方がまだ上等だ。

 

 

「コイツもうダメかもしれないですよー。受け答えもできないし、目線も不安定だし。」

「魔法でどうにか治せぬか?」

「魔法はあくまで外傷だけですからー。大司祭レベルなら病に効く魔法も使えるかもですけどね。」

「そんな大層な所に相談する話ではないな。」

「そうですよねー。つうか何ですかこの服の色!血の色にしちゃ妙な染まりかたしてるし、ほんっと気持ち悪い男ですね!」

「10日を待たずにくたばる根性ナシめ。まぁ、死んだらその時考えるのである。」

「そうですよねー、早いとこもう飲みにいきますか。」

「おいゴミ屑、ベッドには指一本触れるな。寝たければ床に転がっていろ。」

「あ、僕のもねー。」

 

 

一体なにがそんなに面白いのか、例によって二人の高笑いがあがって、

 

 

遠ざかっていく。

 

 

遠ざかって・・・

 

 

とおざかっ て・・・

 

 

 

 

 

行きやがったーー!!

こんの大陸屈指のバカどもが!

オレはもうボロボロだから動けないって思った?

絶対逃げたりしないって思っちゃった?

 

 

ずぁーんねん!!

逃げちゃうんですーほんともう満面の笑みでー!

 

 

あああ、口から変な声が漏れ出る漏れ出る。

早くささやかな復讐をさせろと指がざわめき踊る。

そんな慌てんな相棒、キッチリ落とし前つけるからよ。

 

 

あいつら荷物になるからって酒代だけもって行ったようだ。

全力でオレのことを見くびってんだろうな、そのお陰でチャンスが来たわけだがな。

今回ばかりは感謝するぜ?

 

 

まずは荷物だな。

中はえっと、まずは身分証に通行許可証、国の指令書か。

なんかオレの事が書いてあるな。

えっと、アルフレッド、討伐基金、日毎に銀10枚支給。

 

 

10枚!?

 

 

あいつら2枚って言ってたぞ!

「あなたにはその2枚ももったいないんですがにぇえ?にええー?」とまで言ってたぞ!?

 

 

あーそうですか、デフォルトで8枚もピンはねしてましたか。

その8枚があればこうして恨まれることも少なかっただろうにな。

自分の欲の深さを悔やめ。

 

 

オレは手近な灯りを使って重要書類を、皿に乗せて全部焼いた。

びっくりするほど良く燃えんのねえ。

こういう重要アイテムって魔力コートとかで守らないの?

まぁその金をケチッたっていうのは・・・、有りうるな。  

 

 

これでこの街で、あの二人の身分を証明するものは何もない。

こうして武装した身元不明の男二人が誕生した。

 

 

次は金だな。

逃走資金や当座の生活費が欲しいが・・・、えぇ?

 

なんだこの額!!

 

 

クソおっもい!

中は金貨ばっかだし、何枚つまってんだよ?

富豪ですかコノヤロー?!

二人分の財布で相当な額になるな。

二袋の金を別の袋に全部移し変えて、それを腰にくくりつけた。

ピンはねの銀貨を返してもらうぞ、ちょっと多目にな。

へっへっへ。

 

 

こうして実質無一文の、身元不明の上に武装した二人の男が誕生した。

 

 

そして・・・

 

 

そして!

 

本日のメインイベントはこちらぁ!

 

 

この旅の象徴と言えるゥー!

 

 

これまでの出来事を記録したァー!

 

 

超絶貴重で傷一つ付けちゃいけないィー!

 

 

元凶とも言えるクソゴミ水晶ゥーー!!

 

 

オレはコイツを・・・!

 

 

 

 

 

ブォン

 

 

 

 

 

綺麗な弧を描いて・・・

 

 

 

パリン

 

 

 

 

ゴォォオオオーーーール!!!

 

ゴルゴルゴルゴルゴォォオオオールーー!!!

 

 

やりましたアルフレッドー!!

それ一つで王都の一等地に豪邸が建つと言われるその水晶を!

見事ゴールに叩き込んだァー!

粉々です、まるでお手本のような粉砕っぷりです!

会場はヒートアップして一千人のオレがシュプレヒコールで応えていますーー!!

 

 

 

ワァー!ワァー!

 

 

やったった、やったったど!

金貨ウン万枚?くらいの価値を一瞬でゼロにしてやった。

ここでオレは雲隠れするわけだから、この負債は誰にいくかな?かなかな?

十中八九あいつらだよな。

あの皇帝は部下の不手際を笑って許すようなタイプじゃないだろうしな、管理責任を問うことになるはずだ。

オレが背負うはずの借金を肩代わりしてもらう形になるだろう。

まぁオレは捕まる気はないがな。

 

 

はっ、ざまぁみろ。

無一文のまま借金奴隷にでもなりやがれ!

 

 

無一文のまま莫大な借金を背負った、身元不明の武装した二人の男  爆 誕 !

 

 

ハー、ちょっとだけスッとしたかな。

ほんとは直接ぶん殴りたいけど、逆立ちしても敵わないからな。

何年もかけて復讐待つよりは、早め早めで最大値を取った方が精神的にも楽だからな。

 

 

さぁて、仕上げに入るか。

オマケとばかりに二人には「共犯者」の称号も付けてあげようウェッヘッヘ。

周りの目に気を付けながら、オレは宿を出た。

 

 

ちなみな残りのあいつらのゴミみてぇな所持品だけど、全部肥溜めに沈めておいた。

近くには入れてた道具袋を置いておいたから、中身がどこにいったかすぐわかるだろう。

 

 

こんな細やかな対応ができるなんて、オレってば気配りさんだね。


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