アルカナは示す   作:ROXAS²

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すみません!毎回遅くてすみません!言い訳させてもらうとリアルでちょっと辛い事がありまして・・・・・・少々精神的にヤバかったんです・・・・・・。


仮面の舞踏会

薄暗い会場のとある場所にて、ニュクスは青い髪の二人の下へ向かい、深刻な顔で話をしていた。

 

「それで俺の所に来たのか・・・・・・」

「はい」

 

ニュクスはアルベルトへ自分が今出来ない事を呪いがアリシアに掛かっていると伝えずに説明した。

 

アルベルトは賢い。宮廷魔導士の中でも高い部類に入る。ニュクスは呪いの情報について話さず、今自分はアリシア王女を助けたくても助けられない。何故かは言えない。けれど助けようとする者の助けは出来る。と伝えただけで現状の殆どを理解してみせた。

 

「・・・・・・成る程、王室親衛隊が不穏な動きを見せたのもそれが原因か・・・・・・この事はグレンには?」

「言っていません」

 

そうか、とアルベルトは短く答え、片手で顎下に手を添える。

 

「ところで師匠」

「ん?どうした?」

「その片手で抑えてる幼兵はもしかしなくても戦車ですよね?」

「アルベルト、離して、グレンと戦いに行けない」

 

ニュクスはアルベルトの片手で抑えつけられている自分よりも小さな青髪の少女――リィエル=レイフォードを目にして、信じられないといった顔で震え始める。過去にリィエルのせいで大変な目にあったり、その評判を聞いた事のあるニュクスにはこの状況が理解出来なかった。

 

アルベルトは片手でリィエルのボサボサの髪を掴み、普通の事のように喋り始める。

 

「グレンが居なくなり、近距離戦を行える奴が少なくなったからな。隠者の翁も居るが、今回は別の任務で代わりにリィエルを連れている」

「あー、成る程。確かに少なくなりましたね・・・・・・けど師匠の性格からすると――」

「最悪だ。悪くない筈が無い、足を引っ張られるのはどうにかしてほしい」

「足を引っ張らないでアルベルト。グレンを倒したいのに邪魔」

 

感覚としてはきのこの山派とたけのこの里派のような物だろうか。リィエルの発言にもアルベルトは冷静差を保ち、やがてその髪を引っ張りながら付いて来いと出入り口まで歩き始める。

 

「女王とルミア=ティンジェルの殺害を阻止し、今回の騒動の元凶を探し出す。お前は衛兵の妨害を担当しろ、周辺の衛兵を駆除した後連絡を寄越せ。俺はリィエルと共に別行動をし、グレンと接触を図る。その後の動きは随時連絡する」

 

分かりましたと告げ、ニュクスは認識阻害魔術を掛け、フィジテの街へとフィジカルブーストを掛け急ぎ向かう。既にグレンとルミアが会場の外へ出て行ってしまったのは確認済み、後はその付近へ群がる衛兵を相手するだけだ。

 

やがてニュクスの視界からアルベルトとリィエルの姿が見えなくなり、無人の建物の屋上で立ち止まり、遠見の魔術をフル活用する。

 

「大勢居るな・・・ペルソナを使うか・・・・・・グレンは・・・・・・・・・・・・居た」

 

グレンとルミアの姿を確認し、魔導器を手に取りアルベルトへと連絡を入れる。場所はフェジテの西地区、住宅街付近の路地裏ですと伝えると、アルベルトから了解したと返答が来る。それを確認し、ニュクスは少し遠い場所から追って来ている衛兵を倒しに向かう。

 

認識阻害魔術を掛けているため、そう簡単には気付かれ無い。ニュクスは不意打ちを狙い、特殊な錬成詠唱を静かに始める。

 

『アルカナは示す・心の声聞く・その意義を』

 

詠唱が終わり、ニュクスの片手にまるで最初からあったかの用に銀色の拳銃が出現する。感覚で成功した事を確認すると、ニュクスは屋上から衛兵達の居る場所へ落下し、それを自分の顳顬(・・・・・)へと向け――

 

「――アプサラス」

 

引き金を引くと同時に現れた青い衣装の女神らしき者は、ニュクスの着地と共に周囲に居た衛兵の腰から足を凍らせる。突然の事に衛兵達は驚き剣を抜こうとするが、腰ごと剣が凍らされており、目の前のニュクスを襲うことが出来ない。

 

「しばらくじっとしていて下さい。少ししたら解決する筈なので」

「ふ、ふざけr――」

 

衛兵が何かを喋ろうとするも、ニュクスの背後に居るアプサラスが前進し、衛兵達を恐怖で黙らせる。ニュクスは目立つアプサラスを消す為に持っていた拳銃を捨てると、持ち主から離された拳銃は光り輝きながら粉々に散り、同時に出現していたアプサラスも青く儚い光を放ち消え去った。

 

「すみませんが、それではもうしばらくお待ち下さい」

 

ニュクスはそう言って衛兵達へ背を向け、次の衛兵達を探しに向かう。蟻のようにゾロゾロワラワラと現れる衛兵達には、王女を守るという強い意思を感じると同時にとても面倒だなと感じた。

 

「ホント多いな・・・・・・これは骨が折れる・・・」

 

数は30近く。

そう言いながらもニュクスは未だに続いているフィジカルブーストの身体強化を利用し建物の屋上へ跳び、先程と同じように建物の屋上を次々と移動する。

 

「しばらく女教皇は使用不可か・・・・・・」

 

ペルソナ召喚には制限があり、女教皇は使えなくなったニュクスは第二の衛兵達へと向かい、次の詠唱を始める。

 

『アルカナは示す・全てが不確か故・答えを間違えてはならぬ事を――エンジェル』

 

再び出現する拳銃により召喚されたのは、白き翼を持つ汚れを感じさせない女性。エンジェルは屋上を走っているニュクスを抜き、衛兵達の下へ目視出来るレベルの速さで近づき風を凝縮した玉を両手から撃ち続ける。

 

「コイツはいっt――」

 

とある衛兵が何か喋ろうとするが、凝縮された風の玉は勢い良く大量に撃ち出される為、ニュクスの耳には全く届かない。ニュクスに分かるのは衛兵が現状を理解出来ず、酷く混乱している様だけだ。

 

やがてエンジェルが撃つのを止め、構えていた両手を下げると、アプサラスの時と同じように、ニュクスの持っていた拳銃と共にエンジェルは消えていった。

 

「少しやり過ぎたか・・・・・・?生きてる・・・よね?」

 

ニュクスは心配そうに地面に伸びている衛兵達の顔を見るが、誰もが白目を向いて倒れており、何人かは泡を吹いていた。ニュクスは人気の無い路地裏まで移動し、衛兵達を日陰の方へと運ぶ。流石にこの強い日差しの中ままでは不味いだろう。

 

「次探すか・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェジテ西地区の路地裏にて、グレンはルミアを連れたまま焦りを隠せない様子で、自分達の前にいる知り合いをじっと見る。その様子にルミアは不安に似た何かを感じ、隣に居るグレンへと声を掛ける。何故彼らが此処に居るのか分からないグレンは、最悪の事態を想像し、青髪の少女へと話し掛ける。

 

「先生、この人達は・・・・・・?」

「おい、これはどういう事だ・・・・・・まさか宮廷魔導士団も――」

 

動いているのか。と言う暇も無く、グレンの下へ物凄い速さでリィエルが迫る。リィエルは詠唱をしながら大きく跳躍し、その手に自分と同じ位の大剣を錬成する。高速武器錬成、形質変化法と元素配列変換を応用したもの、それがリィエルの十八番である。

 

魔導士団の頃にも何度か見た事のあるそれに、グレンは舌打ちをしながら背後へジャンプし、リィエルの一撃を辛うじて回避する。だがリィエルは止まらない。餌を見つけた野獣のようにしつこくグレンへ接近戦を仕掛ける。

 

――糞っ、このままだと俺とルミアが・・・・・・

 

グレンは躊躇していた魔術による攻撃をリィエルへと開始する。元同僚を攻撃するのは嫌だが、仕方が無い。

 

『白銀の氷狼よ・吹雪纏いて・疾駆け抜けよ!』

 

アイス・ブリザード、グレンは左拳から冷気を纏った風を放つ。圧倒的な凍気により、空気中の水分が凍り、大量の氷礫がリィエルを襲う。

が、リィエルはそれを物ともせず、グレンへと一直線に移動し、剣撃を上空から食らわせる。グレンはそれをとっさにウェポン・エンチャントで強化した拳で交錯し、身を守る。とは言え、接近戦となればリィエルが圧倒的有利となる。リィエルはグレンを叩きのめし、余波によりグレンの周囲の地面が砕ける。

 

「いいいいやぁああああ――ッ!」

「がはっ――!?」

 

しかし流石に戦車と呼ばれるだけの事はあり、リィエルはそれでもグレンへと手を緩めず、二閃、三閃と打ち込む。その様子は正に戦車そのもの。守りに徹しているグレンは必死にその身を守りながら、リィエルの背後でこちらをじっと見ている狙撃手に焦りを感じていた。

 

まだグレンが宮廷魔導士だったころ、アルベルトは天才的なその狙撃テクニックにより、同僚であったグレンの手助けをしていた。だからこそグレンにはアルベルトが外す事など微塵も考えはしなかった。

 

――駄目だ、避けれねぇっ!糞っ、此処までかっ!

 

アルベルトが手を拳銃の形にすると、指先に稲妻が集まり、戦っている二人の方へライトニング・スピアを撃つ。

この状況で避ければリィエルに殺される。そう判断したグレンは覚悟を決め、身を固める。

 

放たれた稲妻は真っ直ぐにグレンの方向へと迫り――

 

「きゃん!?」

 

リィエルの後頭部に綺麗に刺さった。突然の奇襲、それも身内からの後頭部への殺傷力Aランクの術での狙撃、流石のリィエルでも立ってはいれなかった。リィエルは地面へと倒れ、ぴくぴくと痙攣を始める。

 

「・・・・・・は?」

「・・・久し振りだなグレン、場所を変える。衛兵の駆除は粗方終わった、着いて来い。」

 

アルベルトはグレンの状況を理解出来ていない呆けた顔に冷たい声色で挨拶を済ませ、伸びているリィエルの髪を掴み、ずるずると引きずりながら路地裏の奥へと歩いて行く。全く持って意味の分からない状況に、グレンとルミアは素直にアルベルトの後ろを着いて行くのだった。




ペルソナ能力についてはまたどこかで説明します。

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