アルカナは示す   作:ROXAS²

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流石にこれらのイベントはさっさと流せなかった・・・・・・次には絶対!絶対戦闘書くから!許して!(土下座)


死の呪い

時は少し巻き戻り、生徒達で賑わう会場、その観客席を通う通路にて、二人の男女が場に似合わないスーツを着て立っていた。男の足下には口元に微かに血の付いた白いネズミが居た。

 

「グレンとニュクスだな」

「・・・・・・ん。どう見てもグレンとニュクス」

 

二人は精神防御の終わった中央フィールド上で、銀と金の髪色の少女二人と話している黒い髪をした元同僚、その近くで此方を見ている自分達と良くにた髪色をした少年を見ていた。

 

男と共に居た青い髪をした無表情な少女――リィエル=レイフォードはグレンの居る中央フィールドに向かおうと歩き始める。

 

「・・・・・・アルベルト、私、行って来る」

「待て、行って何をする気だ?」

 

鷹のような目をした男――アルベルト=フレイザーはリィエルのボサボサなポニーテールを掴み、歩みを止める。それでもリィエルは無表情のまま、グレンの所に行って戦う。と告げ、だから離して、と感情の籠もっていない様な声でアルベルトに頼み込む。

 

「駄目だ」

「どうして?」

「アイツは確かに魔導士団だった。何の相談も無く勝手に抜けた事には思う所もあるが、今は関係無い」

 

そう説明するも、リィエルはグレンと戦うの一点張りで、アルベルトは頭痛に耐えるような表情でリィエルを抑え、遠見の魔術で異変が起きていないか確認する。

 

「・・・俺達の任務は不穏な動きが確認された王室親衛隊の監視だ。グレンの様子を見ていて分かったが、アイツは俺達の居る地濡れた世界には合わない。暗い場所より、アイツには明るい場所の方が似合っている」

 

アルベルトの話をリィエルは暴れずに対面した状態で聞いた。リィエルは真顔で何も喋らずに聞き、直ぐにアルベルトの方から会場の方へ顔を向け、無表情のまま一言喋る。

 

「つまり私はグレンを倒さないといけない?」

 

アルベルトはその後終始無言で、今にも飛び出しそうなリィエルを抑えていた。

 

「アルベルト、手を離して」

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニュクスが木陰に寄りかかってネズミで監視をしている時、グレンは今ルミアと二人きりで弁当を食べていた。最初はシスティーナも居たのだが、弁当を片手に途中で顔を赤くして何処かへ行ってしまった。風邪でも引いたのか?とグレンは少し心配するも、その後、ルミアから渡されたシスティーナの持っていたとある女の子が作った弁当(ツンデレ猫の作った弁当)を食べて、今に至る。

 

グレンは弁当を食べ終え、美味しかったとルミアに感想を伝えると、よっこらしょっ、と言いながら立ち上がる。

 

「さて、寿命が三日伸びたし、競技場に戻るか・・・・・・」

「・・・・・・?はい、先生」

 

グレンとルミアが歩き出そうとすると、背後からグレンの名前を伺い、近寄って来る女性の姿があった。

グレンはそれに適当に返事をしながら面倒臭そうに振り向き、少し疲れてウトウトとしていたニュクスがはっ!?と起きる位の大きな叫びを上げる。

 

「じょ、じょ、じょじょ、女王、陛下――ッ!?」

「――ッ!?」

 

グレンとルミアは顔を驚愕の色で染め、目を見開いて自分達の前に居る優しげな顔立ちの女性――アリシア七世の姿に、これが現実なのかを疑った。一国の女王がこんな場所へ、ましてや護衛も付けずに訪れるなど、誰が思うものだろうか。アリシア七世はグレンの隣に居る金髪の慈愛に満ちた瞳をした少女へと近寄り、抱きしめる。いきなりの事に、ルミアは状況を上手く理解出来ずに、大人しそうに慌てる。

 

「あぁ、貴女に、貴女に会いたかった、エルミアナ(・・・・・)・・・・・・!」

「――ッ!」

 

その言葉を聞き、ルミアの思考は直ぐに落ち着き、抱きついているアリシア七世の腕を解き、そのまま後退りする。グレンとアリシア七世は、ルミアの不自然な行動に疑念を抱き、ルミアが話すのを静かに聞く。

 

「失礼ですが、女王陛下・・・・・・陛下は、私を亡くなられたエルミアナ第二王女と・・・勘違いを、為されております・・・・・・」

「!・・・・・・そう、でしたね。申し訳・・・御座いません、失礼致しました・・・・・・」

 

そう言って辛そうな表情を浮かべたアリシア七世は、グレンにルミアの事を頼み、背を向けて歩き出す。偶然にもその方向には、先程までウトウトしていた不安そうな顔をしたニュクスが居た。

 

「その、大丈夫ですか?陛下・・・・・・?」

「・・・・・・えぇ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。出来れば、ここに来ていた事は内密にしてくれませんか・・・・・・?」

 

一国の女王が泣きそうな程辛い表情を浮かべているのに、ニュクスは心配して声を掛けた。

この女王陛下は、ニュクスが嘗てのグレンと同じ宮殿魔導士だという事を知らない。ニュクスとアリシア七世は会った事が無いのだから当然だろう。逆にニュクスは、アリシア七世の事を任務上他よりも良く知っているが。

 

アリシア七世は自分の娘に拒絶された事に動揺を隠しきれていないのに気付き、ニュクスの自分を心配する言葉にしばらく間を置いて、落ち着いてから自分にも言い聞かせるように返答した。本人が教えてくれたのだが、どうやら人除けの魔術が掛かっていたらしく、人除けの魔術が聞かなかったのはきっとグレン先生の大声で気付いたのかと、と気付かれた事を不思議に思っていたアリシア七世に説明し、自分が勝手に外に出ていたのを秘密にして欲しいとの要望に勿論ニュクスは口外しないと約束した。

 

「大丈夫な訳無いだろ、アレは・・・・・・」

 

アリシア七世の後ろ姿を見ながら、ニュクスは誰に言う訳でも無く、一人小さな声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――一方その頃、競技祭会場の貴賓席にて、セリカは珍しくとても焦っていた。

 

「糞っ・・・・・・!」

 

たった今判明した事件に、自分の親友が死ぬかもしれないと言うのに動けないという自分の状況に苛立ちを隠せず、セリカはヤケクソに、凝縮された風の玉を自分の座っている席の隣の壁にぶつける。

 

「セリカ様、落ち着いて下さい。我々の総力を持って女王陛下は必ず御守り致します。」

 

壁は一部が粉々になり、荒れるセリカに汚れの無い銀色の騎士の鎧を纏った屈強な大男――ゼーロスが強い語気を持って真剣な顔の状態で諭す。自分も本当はセリカの様に内心では荒れ狂う嵐の様に焦りと心配が入り乱れているというのに。

 

「・・・・・・だが、お前らの方法ではアリスが・・・!」

「女王陛下の為なのです。私は女王陛下の為ならば、女王陛下に何を言われようと、思われようと構いませぬ。それが私のあの御方への忠義です」

 

ゼーロスの目は真剣そのものであり、嘘などは見受けられ無い。忠義の騎士ゼーロス、その姿を目にしたセリカは自分と同じ位、嫌、もしかしたら自分以上にこの男はアリシアの事を思っているのだと気付く。

 

セリカはゼーロスの親友(アリシア)への忠誠心を知り、その身を挺してでも守ろうとする姿勢に嬉しさを感じると同時に、それでも自分の大切な親友の宝物を壊さない道を選ぼうとする。

 

「・・・・・・勝手にしろ。止めはしない、お前の忠誠に私が口出ししても仕方が無いからな。私は私で、最善だと思ったやり方を選ぶ」

「・・・・・・分かりました。ならば私も貴女の意思を否定しない。陛下を救いましょう。セリカ殿」

 

そう言い残すと、ゼーロスは騎士を連れて貴賓室から出て行く。セリカは貴賓席からグレンが担当している生徒達を眺め、ゼーロスが探しに行った為に人除けを解いてしまったアリシアをどうしたら守り通せるか、腕を組みながらただそれだけを考えていた。

 

「・・・・・・・・・・・・そうか・・・その手が・・・・・・!」

 

長い思考の末、ただ一つだけ、親友の大切なものを傷つけずに親友を救う方法を思いついたセリカはその可能性を信じ、自分の着ている黒いドレスに付いているポケットの中の通信魔導器を手で握り締める。

 

セリカは祈る様に通信魔導器を両手で挟み、目を瞑って自分の弟子に願いを託す。

 

「頼む、グレン。お前だけが・・・・・・お前だけがアリスを救えるんだ・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・!これはっ!?」

 

ニュクスはグレンとルミアが会場に戻った後も木陰から動かず、しばらく――30分ぐらい――ネズミによる監視をしていたのだが、ニュクスはそこでとある異変に気付く。

 

薄暗い会場の小道で、騎士達が王女を囲んでいるのだ。

単なる護衛では無く、まるで連行している警官の様に。

 

ニュクスはネズミの耳を使って、話し声を聞こうと精神を集中する。

 

『女王陛下、大変申し憎い事なのですが、今、陛下には呪い(・・)が掛けられております』

「んなっ!?」

 

呪い、それは発動のトリガーさえ引いてしまえばどんな魔導士にも止められないと言われる古典的な魔術。

 

そしてどんな呪いも大抵は面倒な制限が課せられる。

 

『それは、勝手に外す、装着から一定時間経過、呪いに関する情報の開示を意図的に第三者にする、この三つの条件を達すると装着者が・・・・・・陛下が呪殺されるとの事です。』

 

ニュクスはゼーロスの口から語られる真実に驚愕を隠せず、口を開けたまましばらくの間思考が停止する。

この時点でニュクスは呪いの存在を明かせなくなってしまった。

 

『そして、その呪いを解呪する唯一の方法、それは――』

 

ゼーロスの口から放たれた悲報に、アリシアは数歩後退り、ニュクスは嘘だろ・・・・・・と漏らす。

 

『ルミア=ティンジェルの殺害です。』

 

 

 

 

 

 

 

「・・・糞っ!」

 

ニュクスはネズミとの接続を切り、立ち上がって木に向かって思い切り拳をぶつける。

 

天の智恵研究会の仕業だと、直感的に直ぐに分かったニュクスは、直ぐに頭の中で女王の救出方法を模索する。が――

 

「・・・・・・駄目だ。この事態にあのセリカ=アルフォネアが気付いていないとは思えない。何より、まだ事件が解決していないならばセリカ=アルフォネアは今俺と同じ状況と考えるのが妥当か・・・・・・」

 

ニュクスは世界最高峰の魔導士がこの事態に気付いていないとは思えず、どうにかしてセリカに頼ると言う方法が採れない事に気付く。

 

「・・・なら俺がすべき事は・・・・・・」

 

可能性は低い、部の悪い掛けだろう。それでもルミア=ティンジェルが死なずに、グレンが生徒を失うという辛い思いをせずに問題を解決するにはこれしか無い。

 

「・・・・・・師匠に会いに行こう」

 

ニュクスは会場の観客席の通う場所へと足を進めた。




久し振りに書いたら前より更に超駄目文になってました・・・・・・
次回は衛士達が悲惨な目に遭う模様

文化祭もその準備ももう直ぐ終わる・・・!早く終われぇぇ・・・・・・

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