アルカナは示す   作:ROXAS²

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FGOで福袋の為に課金しました。
最近引き運が凄くて、ホームズが呼符で1発、福袋はスーパーケルトビッチとクレオパトラ。水着復刻で十練2回で弓王と水着マルタ、槍きよひーと弓メアリーアンが出てます。
この小説もお気に入りが一気に増えて・・・来年の運が心配だなぁ・・・


察しの悪いヒロイン

「ようこそベルベットルームへ。」

 

一面青い光に彩られたエレベーターの中の様な幻想的な部屋。自分の目の前に居座る何処か現実からかけ離れた様な、鼻の長い老人。その隣には、本を持った青い服装をした女性が立っている。

 

「ここは・・・」

「私はこのベルベットルームの管理者、イゴールと申します。」

「エレベーターガールの、エリザベスでございます。」

 

どちらも知っている。ペルソナのストーリーテラーと、ペルソナ3のペルソナ全書の管理人だ。

イゴールは机に両肘を立てて寄りかかりながら客人(ニュクス)へと話し始める。

 

「ここは意識と無意識の狭間をたゆたう部屋。感性豊かな者のみが、ここへの扉を見出すのです・・・さて、御用を伺いましょうかな。」

 

御用と言われても全く俺には心覚えが無い。今日もイヴとの連絡を取り終えて、さぁ寝ようと思って寝たのだが・・・何が起きたのか、どうやら、ベルベットルームに来てしまったらしい。

 

「御用が無い・・・成る程。まだ貴方自身はこの部屋を必要とはしないのかも知れませぬ。しかし、運命は確かに此処へと貴方を呼んだのです。きっと、これも何かの縁なのでしょう。」

 

ニュクスの心を呼んだかの様に老人――イゴールは自分の座っているソファの前に置いてある机にタロットカードと思わしき物を並べて行く。

 

愚者のアルカナ、星のアルカナ、戦車のアルカナ、そして、女帝のアルカナ。

 

4枚のカードが机を離れ宙に舞い、それぞれが裏表と回転しながら光っている。青白い儚い光は、まるで蛍の光の様にも見えた。

 

「・・・・・・あぁ、そういう事か。」

「おや?何かお気付きになされましたか?」

 

今まで俺は軍での活動でペルソナを使って来た。しかし、どうしても前世で使っていたペルソナの殆どが使え無かったのだ。レベル20ぐらいまでが今の限界だ。何故使え無いのか、それがとても不思議に思っていたのだが・・・

 

「うん。・・・成る程、確かに此処に来た意味はあった。明日は魔術競技祭の日程を決める大事な日なんだ。だからここら辺で戻ろうと思う。」

 

今所持ペルソナを合成しても良いのだが、どうせならその愚者、星、戦車、女帝をどうにかしてからにしてみたい。

 

「そうですか。では、またお会いしましょう。」

 

イゴールがそう言うと、俺の意識は朦朧として来た。きっと目が覚めるのだろう。周りの家具、部屋全体に靄が掛かり、ついにイゴールとエリザベスの姿もはっきりと見えなくなる。

 

「貴方の旅路はとても面白い物です。どうか、その旅路に幸がありますよう、私達は貴方をいつでも見ております。」

 

またお会いしましょう。

エリザベスの言葉を聞き届け、俺はベルベットルームを去って行った。またいつか来ると伝えて――

 

 

 

 

 

 

 

放課後のアルザーノ帝国魔術学院、東館二階。

 

「じゃあこの競技出たい人?」

 

教室内ではシスティーナとルミアが前に出て、チョークを持ちながら黒板の前に立っている。魔術競技祭で誰が何に出るかを聞いているようだ。

 

「・・・はぁ、困ったなぁ・・・・・・来週には競技祭なのに全然決まらない・・・」

「ねぇ皆、せっかくグレン先生が今回の競技祭は好きにして良いって言ったんだから、思い切って皆で頑張ってみない?」

 

ルミアが提案を出すが、誰一人としてやりたいと言う人は居なかった。システィーナは肩を落とし、落胆の表情を見せる。

 

やりたい人は挙手、とは言ったものの、誰一人として手を挙げようとはしない。それもそうだろう、毎年この魔術競技祭には魔導省に勤める官僚や帝国宮廷魔導士団の団員等、数多くの人々が足を運ぶのだ。何よりも今回はこの帝国の女王陛下――アリシア七世が見に来るのだ。誰も自分の無様な姿は見せたいとは思わないだろう。

 

「困ったなぁ・・・この競技も居ないの?」

「全く、無駄な事を・・・・・・」

 

静寂が支配する中、突然眼鏡の少年が席を立った。

少年の名前はギイブル=ウィズダン。皆からは皮肉屋な事で知られている。

 

ギイブルは立ちながら、システィーナを見下ろす形で持論を喋り出した。ギイブルの持論は少々嫌味な物言いであったが、この場にいるクラス全員の心情を的確に突いており、それをあまり良いと思わなかったシスティーナと遂に口論を始めようとした。その時だった、廊下からドタタタタと足音が聞こえて来た。

 

「お前らぁぁ!」

 

バンッと勢い良くドアが開き、このクラスの担任であるグレンが現れる。これに生徒達は、好きにして良いと言っていたグレンが現れた事に驚きを隠せない者と、面倒なのが来た、と呆れている者で反応が別れていた。約一名、どうでも良すぎて疲労回復の為に寝ている者も居るが・・・・・・。

 

「話しは聞いた。喧嘩なんて止めろお前ら、俺達は、勝利という一つの目標を目指して戦う仲間じゃないか!」

 

グレンの死んだ目は何時もの数十億倍以上に輝き、その時考えていた事と全く似合わない爽やかな表情で笑みを浮かべていた。――キモい、そう思った読者様はこのクラスにきっと馴染めるだろう。彼らもそう思っていたのだから。

 

システィーナはこの場に現れたグレンに何しに来たのかを問う。隣にいるルミアも興味深々と言った感じで近くへと寄る。

 

「あの・・・・・・先生何しに来たんですか?今言われた通りに自分達で決めている所何ですけど。」

「え?誰に言われたんだ?」

 

思わずシスティーナとルミアだけでなく、クラスの全員がは?と思った。自分の言った事を速攻で忘れる。というか、面倒な事は好い加減に決める、それがグレンスペックである。・・・・・・駄目だコイツ、早く何とかしないと・・・・・・

 

グレンはそんな全員の反応を見て、あ、あぁ思い出した思い出したぁ!等と言い、次の瞬間には野心と熱情に煌々と燃えた瞳で、偉そうに宣言する。

 

「俺が指揮を執る!全力で勝ちに行くぞ?俺がお前らに優勝をプレゼントしてやる。だから、遊びは無しだ。俺の編成で行く。心しておけ。」

 

これを聞いたクラスの全員は嘘・・・だろ?と心中が一致した。何時ものグレンの低温生物度からは予想も出来ない熱血ぶりに、生徒達はどよめきながら顔を見合わせる。

 

「五月蝿いなぁ・・・・・・ん?決まったの?もう授業終わった?」

 

グレンの登場とどよめきにより、夢の中から帰還したニュクスは、現在の状況を隣の席の紫色の髪をしたおっとりとした女生徒――テレサ=レイディに聞く。

 

「良く寝るのですね?今グレン先生が競技祭の編成をすると仰ったのですが・・・・・・」

「あ、『決闘戦』は白猫、ギイブル、カッシュだな。『暗号早解き』はウェンディで確定・・・『飛行競争』はロッドかな?もう一人はカイだとして・・・」

 

怒涛なる速さで決まって行く競技の数々。どうやらグレンはちゃんと生徒の事を見ていたらしい。質問を受けても理由を答えてくれて、それが全て納得の出来る物だと言うのだから恐ろしい。

 

その様子に、ギイブルとニュクスは歯軋りする。

ギイブルは成績上位層で固めれば良いのにふざけているのか、と。

ニュクスは俺の任務の難易度を上げるな、給料全部俺が引ったくるぞ、と。

 

「『変身』は・・・ニュクスかリンだな・・・」

「!?」

 

グレンからしたら全員出なくちゃいけないのなら、任務の妨害にならない用、一番簡単なのにしてやろう。と気遣いしているのだろうが、本人からしたら、上位層で固めて!お願いだから!?といった感じである。

グレンは顎に手を添え考える素振りをし、やがて――

 

「良し、『変身』はニュクスに――」

「ぇ・・・」

「」

 

編成が決まった。と思い、口に出した時、小柄で気弱な少女――リン=ティティスが絶望したかの様な声を出し、ニュクスは決定に絶望し、白目を向いて口から魂が出かけていた。

黒板に文字を書いていたグレンは、その小さな声を聞き、決定と言わず、改めて『変身』の発表をする。

 

「・・・・・・良し。変身はリンにしよう。ニュクスは器用だから残った『魔法瓶一気飲み』で良いよ・・・・・・な?」

 

グレンは黒板から目を背け、ニュクスの方を見ると、気絶しているニュクスが目に入った。何で?と思ったその時、ギイブルが再び立ち上がり訴えた。

 

「先生、ふざけているんですか?こんなの全て成績上位層で固めれば良いでしょう?」

「・・・・・・え?」

 

グレンの動きが止まり、思考が真っ白になる。

え?何?そんなんいいの?硬直状態のまま、グレンの脳にとめどない思考が流れて行く。グレンは自分が勘違いしていた事に気づき、内心でガッツポーズを取っていた。

 

――これでニュクスも任務が楽になり、俺も何とか賞金が貰えそうだ・・・!

 

グレンが正に編成を変えようとした時、悲劇は起きた。

 

「何を言ってるの!ギイブル、貴方、せっかく先生が皆が活躍出来る用に考えてくれた編成にケチつける気!?大体、成績上位層だけで競いあっての勝利なんて、何の意味があるの!?そもそも――」

 

――ちょ、止めてぇぇぇ!?

 

システィーナがギイブルへと反論する。ギイブルの案に乗ろうと思っていたグレンからすれば本当に勘弁して欲しい所だ。システィーナはクラスの全員へと出たくないのかと訴え、長い長い話し合いの末、ギイブルは、ふん、君は相変わらずだね。まぁ、それがクラスの総意なら好きにすれば良い。と言い、クラス全員での参加を渋々認めた。

 

――てめぇ押し弱すぎだろ草食系男子がぁぁ――ッ!

――死んで詫びろこの中二病こじらせ野郎がぁぁ――ッ!

 

クズ二人の心の声等つゆ知らず、ギイブルはスッと席に座り、システィーナは良かったですね!先生!とグレンの前でニコリと笑った。他から見れば可愛らしく見えるのだろうその笑顔は、ニュクスとグレン、双方にクリティカルヒットを食らわせた。

 

「も、もしもイヴに監視対象を見失ったなんて知れたら・・・・・処刑される・・・・・・!?」

「ま、せっかく先生が珍しくやる気出して、一生懸命考えてくれたみたいですし?私達も頑張ってあげるわ。期待しててね、先生。」

「お、おう・・・・・・任せたぞ・・・・・・」

 

待っているのは日常か、それとも地獄か。ニュクスは顔を青ざめ、グレンは自分を追い詰めたシスティーナ(悪魔)に顔を引きつる。

 

「な、何だろうなぁ・・・この噛み合っていない感じ・・・」

 

ルミアは混沌とした教室を眺め、苦笑いしながら呟く。

こうして、アルザーノ帝国魔術学院、二年二組の苛烈な魔術競技祭練習は始まった。全ては優勝と(まともな食事)の為に、安全(処刑回避)の為に――




イヴ「悪口を言ってる時点で処刑は確定、慈悲は無い。」

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