アルカナは示す   作:ROXAS²

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ペルソナシリーズの主人公は大抵変な奴。そして、この二次小説の主人公も・・・?

コメントを受けてグレンとニュクスの出会った期間について書き加えました。グレンとニュクスが出会ったのは、一年と1ヶ月前、グレン退職の1ヶ月前としました。


ワイルド持ちは大抵変な奴

「どういう事ですか学院長!」

「まぁまぁ落ち着いてグレン君。」

 

強い風の中で揺れる木々の音で騒がしい朝、まだ学生が来る少し前、グレン=レーダスは何時もよりも早く学院に来ていた。同じ部屋に居た美しい美貌を持つ女性――セリカ=アルフォネアはグレンに質問をする。

 

「グレン、ソイツは確かに『力』のニュクスだったんだな?」

「たぶんそうだ・・・俺がまだ宮廷魔導士の時、俺が辞めたせいで1ヶ月ぐらいしか面識は無かったが、その頃のアイツは仕事を淡々とこなしていた・・・・・・それに、アイツが動く時は、大抵後ろにイヴがいた。今回の件も、天の智恵研究会の調査と、ルミアの監視と言った所だろうさ・・・!」

 

グレンは顔を歪め、強い眼光で握り締めた自分の拳を睨む。軍が動くのはまだ良い。イヴの差し金と言うのが不安で仕方ないのだ。

ニュクスは拾われて間もなく、軍に混じって人を殺した。その力は抜きん出ており、必ず人を殺す前に、誰かに教わったという方法で十字を切っていた。その様子から当初は死神、もしくは正義となる所だったのだが、本人が自分は本当の死神では無いと言い断った。

 

タロットカードには三種類あり、3つある内の一つはマルセイユ版、更に一つはウェイト版と言う。

マルセイユ版とウェイト版、この二つの違いは、正義と力にある。

マルセイユ版には正義が、ウェイト版には正義の代わりに力がある。正義=力、コレ程タロットカードで分かりやすい意味は無いだろう。

断ったニュクスのコードネームは正義となったのだが、犯罪者となった元・正義、ジャスティス=ロウファンの存在もあり、もう一つの正義として『力』のコードネームとなった。力のイメージが自分に全く無い、と本人は嫌っているが。

 

「学院長、ニュクスは俺の所に来るんですよね?」

「そうだ。ルミアちゃんがアルザーノ帝国女王の娘だと言うことがバレないよう、学生としての入学だ。頼んだよ、グレン君。」

 

学院長――リック=ウォーケンはグレンの瞳に訴える。私の学院の生徒を、どうか危険な事から守ってくれと。

グレンはその言葉に当たり前です。と答え、部屋を後にする。

 

「グレンの奴、立派な先生だな。」

 

そんなグレンの背中を安心した顔で見るセリカは、母親の様な暖かい表情で優しく見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁダルい・・・イヴの奴、グレンの褒め言葉録音してやるから帰らせてくんないかなぁ・・・」

 

学院の階段にて、ニュクスは残業にウンザリした社会人の様な表情で一人座っていた。どうやら少しすると、この学院は魔術競技祭をするらしく、俺もそれに巻き込まれる可能性が少々あるらしい。この学院では何時も成績上位者を競技に連続して出す傾向があるらしく、少しでも優秀な結果や行動を取れば、とても危ないのだ。

 

「俺、動きたく無いなぁ・・・」

 

もし選ばれたとしたら、それはもう大変だ。ルミア=ティンジェルの監視をしながら競技に出、更には天の智恵研究会まで気にしなければいけない。HARDモード等生温い、MANIACSモードだ。

 

因みに俺の魔術適正は反映である。何かをし、何かを残す。そういった物で、行使した魔術が長く維持出来るらしい。まぁ、人との絆がペルソナを生むのだから、反映になるのは当然と言ったら当然なのだが。

 

「やってらんねぇ・・・俺の分までグレン、お前が頑張ってくれ・・・」

「なーにが俺の分までだ。コイツめ。」

 

声のした方向に顔を向けると、後ろにグレンが居た。ここから上の階層だと学院長室がある。イヴが俺を寄越して来た事についてを学院長と話していたのだろう。

グレンは俺の隣に座ると、白い手袋の付いた手でニュクスの青い髪を雑に撫でる。

 

「俺だって好き好んで働いてる訳じゃねぇんだよ。」

 

グレンはそう言うが、学院長から聞いた話だと、生徒を大切にしている良い先生だという。グレンが素直じゃ無いのは相変わらずか、とグレンのそういった所が変わっていない事に安心したニュクスは良かったと言いながら笑う。昔、俺が軍に入ったばかりの頃、グレンは大切な人を失った。その日の事からグレンは軍を抜けたのだが、養ってくれていたらしいセリカのおかげで、腐らずにいれたのだろうか。グレンの目は、前より大分良くなり、死んで一日経った魚の目をしている。

 

「例えそうでも俺は働きたく無いよ。だからグレン、お前に凄い期待してるからな。本当に。」

「それ、イヴの奴が聞いたら殺されるぞ?」

 

止めてくれ、本当に聞いて無いか心配になるだろうが。

グレンはイヴの事が嫌いだ。大切な人――セラ=シルヴァースが亡くなったのは、元・正義、ジャスティスの他にイヴが関わっていたからだ。イヴは作戦の為に、セラとグレンを囮として使った。もし囮で無かったら、作戦中にグレンを庇ってセラが死んだ事も無かっただろう。俺は当然イヴに聞いた。何故グレンとセラを囮にした、と。そう言ったらイヴは、仕方のない事だった、と返して来た。その日の俺は、まぁ、凄い荒れたよ。しばらくイヴとは顔を合わせられ無かった。本当の理由を知るまでは・・・

俺の前でイヴとちゃんと名前で呼ぶのは、俺を養ってくれていたのがイヴだからだろうか。

 

ニュクスが思い出に浸っている隣で、グレンは立ち上がり、先程髪を撫でて来た方の手を差し伸べて来た。

 

「さて、もうそろそろホームルームの時間だ。行こうぜ。転校生?」

「仕事、気に入ってるじゃ無いか・・・ハイハイ、分かりましたよ、先生。」

 

ニュクスは差し出された手を掴み、階段から腰を上げる。どうやら来てからかなり時間が経っていたらしい。グレンの行く道に従って移動すると、自分がこれから学生として生活する場所、2年2組の教室の入り口に着いた。学生の賑やかな声が聞こえてくる。その楽しそうな声を聞き、もしかしたらと、ふとニュクスは思った。

セリカだけじゃない。グレンは此処で生活する事で、今の様な明るい表情になれたのかもな、と。

 

――この体で学院生活、か。まさかなるこんな事になるとはね・・・

 

グレンの手によって扉が開かれる。眩しい日光が差す中、グレンを先頭にニュクスは教室の中へと歩を進める。足進める事に男女の口から歓迎の言葉が聞こえてくる。どうにも新鮮な感じで、思わず生徒達を見るのを止め、グレンの方を向く。

 

「何だ?恥ずかしいのか?良~し!お前ら!コイツが今日から此処に転校して来た、ニュクス=アバターだ!」

 

グレンがニュクスの背中をその大きな手で叩き、ほら、自己紹介して来い。と笑顔で告げた。ニュクスは叩かれて少し前に出され、沢山の人の目の中、自己紹介を始める。

 

「ニュクス=アバターです。・・・宜しくお願いします。」

 

ガクッ

思わずそんな効果音が付きそうな位に、グレンとクラスの生徒はずっこけた。

ニュクスは極度の恥ずかしがりやで、こういった事は苦手なのだ。前世でも高校生になって直ぐの自己紹介の時、何を言えば良いのか四六時中考え、友人に相談までして、挙げ句の果てに名前を言って宜しくで終わりとなった。情けない。

 

「えっと、もうちょっと無いの?」

「え・・・、!寝る事とダラダラする事が好きです。嫌いなものはダラダラする時間を奪って行く赤髪の高慢な女です。宜しくお願いします。」

 

自己紹介に突っ込みを入れて来た銀髪の猫の様な女生徒――システィーナ=フィーベルを見て、ニュクスはとても驚いた。あまりにもそっくり過ぎるのだ、セラに。見ているとセラとの思い出を思わず思い出してしまいそうだ。

 

――たぶんグレンも、この子にセラの面影を感じているんだろうな・・・

 

「んじゃ、ニュクスはあのルミアの後ろの席に座ってくれ。」

 

ニュクスは全員の視線が少しずつ無くなっていく事で緊張がほどけて行くのを感じながら、グレンに言われた通りに自分の席へ移動する。ルミアの後ろの席にしてくれたのは、ルミアの監視がしやすい用にだろう。ルミアの安全の為とも言える。

 

「えっと、宜しくね。」

「ん?あぁ、宜しく。」

 

自分とは反対の明るい人だな、と笑顔で挨拶をしてきたルミアに対してニュクスは思った。ペルソナ3のキャラクターだと何だろ?等ふざけた事を考えながら、適当に挨拶を済ます。

 

ニュクスはルミアに挨拶を済ますと、隣に居たシスティーナに名前を聞く。これで――有り得ないとは思うが――セラの血族だったなら、俺はコイツを特に守るべきなんだろうとニュクスは思った。セラとグレンには短い間だったが、良くして貰っていた。その恩をいつか返したいと、ニュクスは今でも心の底から思っていた。

 

「私?私はシスティーナ=フィーベル。宜しく。」

「うん、宜しく。」

 

どうやら違ったらしい。少し期待していたが、最初から有り得ないと思っていた為、落胆は小さかった。それにしても良く似ている。特に猫耳の様になっている部分等、セラの犬耳に似せているのかと思ってしまう。

 

「よーし、お前ら!何か質問あるか?無いならこのまま終わりにするが――」

「はい!ニュクス君は何処から転校してきたの?」

 

質問して来たのは、元気が人になった様なツインテールの女生徒―― ウェンディ=ナーブレス。転校前の学院は何処って設定だったっけ・・・

 

「・・・・・・・・・あ、東の国にある月光館学園と言う所に居ました。」

「今の間は・・・・・・えぇっと、じゃあ好きな食べ物は!」

「謎のたこ焼きとはがくれカップ麺です。」

「謎?はがくれ?・・・えぇっと、じゃあ、嫌いな食べ物は・・・?」

「メギドラオンです。」

「メギ・・・ドラオン?」

 

この意味不明な返答に、クラス中が混乱した。グレンに至っては思考を放棄してボーっとしている。余程の事が無い限り考え続けるシスティーナを持ってしても、思考を放棄する他無かった。

 

「えぇっと、変わってる・・・ね?」

「そう見える?」

 

こうしてニュクスは入学早々に印象に残る挨拶を残し、クラスの空気に溶け込んでいった。

 

しめしめ、これだけ変な奴を演じれば、競技祭に選ばれる事も無いだろう・・・グヘヘヘヘ。

等と腐った考えを持っている等誰も気付かず、ニュクスは翌日からは面白い奴、としてクラスに受け入れられた。そんなニュクスにイヴは毎晩連絡を取って来るが、好い加減、さり気なくグレンの様子を聞いて来るのはどうにかしてほしい。本当にグレンの誉め言葉を録音して送ってやろうか、そう思うニュクスであった。




十字については原作にて羊太郎さんが女性だったら、と言っていたキャラクターです。
最近、ペルソナ3始めました。一日でタルタロス一気に登ったら(キャラクターが)風邪になりました・・・

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