アルカナは示す   作:ROXAS²

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思い付きで書いてみました。ちょっと小説書きの練習をしようと思います。書き続けるかは未定。


原作
タナトス最高、格好良い


「なんつーかさ。俺、つくづく思うんだよ。働いたら負けだなって」

 

それは、とある早朝の一風景。長き修行の果てに悟りを開いた聖者のような表情で男――ニュクス=アバターは言った。気だるげに頬杖をつきながら、テーブルの先にいる偉そうな赤い髪をした女に、死んで1年経った魚の様な目で視線を送る。

 

「ふーん、じゃあ私に養われるの、止める?」

 

ニュクスのその視線を受け、女は優雅な振る舞いで組んでいた足を組み替える。

 

「いやいや、そんな事したら俺、死んじゃうよ・・・?」

 

既に限度を超した死んだ目をしている奴が死んじゃうよ?と言うと、本当にヤバそうな気がするのだが、女――イヴ=イグナイトはその程度では心配等微塵も湧かなかった。

 

「そう、なら死ねば良いんじゃない?」

「だが断る。」

 

イヴはサッと席を立ち、自分の言った事へ即答したニュクスへ少しイラついた表情で首を絞める。ニュクス=アバターはニートであると同時に、この世界に転生してきた存在である。これは誰にも話しておらず、気付いたらこの世界にいたのだ。そんな状況でいきなり衣食住を確保する事等出来ず、偶然拾ってくれたイヴの世話になっており、それから約1年が経ち現在に至る。

 

「あんたねぇ・・・いい加減働いたらどうなのっ!?」

「ぐ・・・ぐるしぃ・・・息、息がぁ・・・」

 

もがき苦しむニュクスを見て、イヴはため息をつきながら、ニュクスの首に巻いていた腕を放す。

 

「痛たたた・・・・・・全く、この暴力泥酔女め!」

「はぁっ!?誰が暴力泥酔女だって?!」

「ちょ、首駄目!暴力反対っ!?あ!駄目!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「失礼します。・・・・・・失礼しました。」

 

またもや腕でニュクスの首を絞めているイヴ。そんな上司の姿を見た小柄な少年は、まーた何時ものか、と判断し、自分も巻き込まれ無い様にとそっと開けかけたドアを閉めようとする。

 

「待ちなさい・・・・・・報告でしょ?」

 

イヴはニュクスの首を締め落として、ふぅと溜め息を尽きながら扉から覗いている小柄な少年――クリストフ=フラウルを中に入れる。入って来たクリストフは報告書を持ち、イヴへとその報告書を受け渡す。

 

「・・・はい、アルザーノ帝国魔術学院に、テロリストが侵入した件なのですが、どうも、天の智慧研究会が関係していたそうです。」

「へぇ・・・グレンの居る所ね・・・目的は何か分かっているの?」

「はい、テロリストの仲間であったヒューイ=ルイセンが、学生であるルミア=テンジェルを攫い出せと命令されたと述べたそうです。」

 

イヴは渡された報告書に目を向けながら、しばらくの間思考に没頭する。あの憎たらしい正義の味方願望が居るのなら、一応は攫われる事はないだろう。しかしアイツが此方へ連絡を取って来るとは思えない。ならば連絡が取れる様に此方から誰か送った方が良いだろう。

 

「起きなさいニート。アナタの仕事が決まったわよ?」

 

イヴは白目を向いて寝ているニュクスの頭部に手刀を入れる。ニュクスは痛みによって目を覚まし、イタタタタ・・・アレ?法王君だ?久し振り~、と呑気に手を振って来た。クリストフはそれに変わらないですね、と答えた。

イヴは、ニュクス、と真剣な声で呼ぶ。ニュクスは変わらない眠たげな表情で自分を呼んだイヴの目を見る。

 

「アナタに、アルザーノ帝国魔術学院へ学生として、ルミア=テンジェルの監視、及び、天の智慧研究会の調査を命じます。拒否権はありません。良いですね?」

「・・・・・・・・・助けて法王君、僕、魔女に殺されちゃう。」

「いえ、(ニートへの)正しい判断だと思います。」

 

イヴの視線から逃げる様にクリストフに顔を向け、助けを乞うが、此処で助けると自分の明日(未来)は無いと判断したクリストフは、残酷にも切り捨てる。ニュクスは魔力欠乏症になったかの様に顔色を悪くすると、机に顔を打ち付け、イヴへ呪いを掛けるかの様に呟き始める。

 

「この鬼、魔女、赤い悪魔、泥酔暴力女、変態天才女。」

「・・・・・・これは後でどういう事かみっちり聞くとしましょう。クリストフ、もう良いわよ。」

 

クリストフは扉を開け、お邪魔しましたと言い出て行った。部屋に残された二人の内一人は未だに机に突っ伏している。イヴはどうするべきか困った様に顔を歪める。

 

「・・・好い加減、認めたら?アナタは私達帝国宮廷魔導士団と同じ位に強い。アナタなら任務を簡単に攻略出来るでしょう?それに――」

「分かったよ。受ける受ける。だからそれ以上は言わないでねっ、と。」

 

イヴの言葉を遮る様に、ニュクスは突っ伏していた机から勢い良く顔を上げ、 座っていた椅子から立ち上がる。とやかく言われたく無いのか、顔は勉強から逃げる子供のそれだった。

 

「んじゃ、自分の部屋に戻りますか!んじゃね~。」

 

ニュクスは笑いながら手を振り、退散退散っ、と言いながらドアから出て行く。

 

「・・・はぁ、こんな殺伐とした場所で、心の底から笑えるなんて、本当に変わってる・・・」

 

イヴは逃げて行くニュクスを追うことも引き止める事もせず、ただ眺めていた。

 

思えば会った時から変わっていたかと思い、呆れた顔で眉間を押す。仕事に私情は持ち込むな。いつだったか、私が部下に言った言葉であったが、まさか自分がこうなるとは・・・

 

「・・・しっかりしないと。私は帝国宮廷魔導士団特務分室室長、執行官ナンバー1、魔術師のイヴ=イグナイト。貴方は仕事に集中し、あの憎き正義の味方願望に完膚無きまでに差を付ける。私情なんて、仕事にはいらない。」

 

もはや今までに何度も自分に言い聞かせているのだが、効果が薄いという事は本人も分かっているのだが、ついついしてしまう。

 

そうだ、私は部下等気にかけない。それが宮廷魔導士でも。たとえ、家族であったとしても・・・

 

「・・・・・・家族、か・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名前はニュクス=アバター。年は推定16。イヴ=イグナイトに養われている居候だ。イヴと出会ったのは1年前、確か帝都オルランドのとある路地裏。人気の無い場所で俺とイヴは会った。その時のイヴは怖かったね、本当に。ずっと冷徹な表情でこっちを見てた。

 

――貴方が犯人ね。大人しくしなさい。

 

そう言われても俺には意味が分かんなかったし、何より此処何処?俺容姿変わってね?気のせいか俺がやってたゲームの主人公に似てない?と、その時は本当に混乱してた。だから俺は、この人は俺の姿が違う事について何か知ってるのかなと思い、色々と聞いてみようとした。

 

――あn

――喋らないで、詠唱したって無駄よ。

 

いきなり炎が顔の横で小さく爆発したから凄い驚いて、尻餅をついてしまった。もうやだ何コレ?(泣)と思っていた時、それは起きた。

 

――知恵の実を食べた人間は、その瞬間より旅人となった。

 

いきなり俺の周辺が青い炎で燃え始めて、独りでに口が動き始め、俺はニュクス=アバターの言葉を言いながら立ち上がった。もう意味が分からない事だらけで、その時俺は夢なんだコレ、と納得していた。・・・まぁ実際は現実だった訳だが・・・

 

――『永遠なれ』

 

この言葉を喋った時、俺の目の前に居たイヴは口をパクパクさせてて、凄く面白かったな。何かディスペル出来ないとか何とか、まぁ、驚いていた。

そんな驚いてるイヴに追撃で、俺の目の前にゲームのキャラクターが現れたんだ。ペルソナ3というゲームの主人公の使えるペルソナ、『死神』のタナトス。俺はコイツが好きだった。主人公の使う初期ペルソナを差し置いてフィギュア化、そしてパッケージを飾ったペルソナ。何よりも登場シーンが格好良かったのを覚えている。オルフェウス食い破っての初登場と映画での活躍は、是非見て貰いたい。

まぁ、その時のタナトスはアルカナ13と本来存在しないDEATHだとか言われているが・・・まぁそんな事は今は良いだろう。

 

――『グルルルルァァァ』

 

そう、格好良いのだ。いくらムド野郎と言われても俺はコイツが好きだった。だって格好良いから。

でも、一つだけ。一つだけ気にしちゃうんだけどさ――

 

コイツ、全てにおいて燃費が悪くない?

 

――あ、無理、もう無理。倒れる・・・

 

とまぁこんな事があった訳で、名前は皆カタカナだったからパッと思い付いた名前に改名してニュクス=アバターになった。タナトスの呼び出しに力を使い果たして気絶した俺を、イヴが保護してくれた。あの後、犯人は結局捕まったらしく、タナトスは呼べなくなっていた。俺はイヴの部屋で目を覚まし、俺が働き手が無く家も身寄りもないと言うと、イヴは俺を預かってくれた。最初は酷い扱いだったが・・・まぁ預かってくれただけ感謝するべきだろう。本人には絶対に言わないが。

 

「さてと、久し振りの日光だ・・・眩しいねぇ・・・」

 

俺は今、イヴに言われた通りにアルザーノ帝国魔術学院へと足を進める。進めるのだが――

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」

「待て!強盗!」

 

何やら見覚えのある顔が遠くにいる警察に追われていた。見覚えのある男は片手に重そうな何かが入った袋を持って走っている。確かに見るからに強盗しそうな顔をしている。

ここは・・・邪魔した方が面白そうだ。

 

『ちょっと・待て』

「嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

取り敢えず避けれるだろう速度でもの凄く弱いライトニング・ピアスを男に向けて放つ。当たればちょっと足が止まるレベルだ。男はそれをギリギリで避けた。あの避け方、あの死んだ魚のような目、間違いない。俺は男と同じ位の速さで走り、話し掛ける。

 

「あ、やっぱグレンだ。お久しぶり~。」

「お前は・・・!って、今はそれどころじゃねぇぇぇぇ!」

 

あ~あ行ってしまった。どうやら警察に強盗と疑われていると見た。まぁ、グレンだし、問題無いだろうと考え、ニュクスは学院へとまた足をゆっくりと進める。イヴが既に手取り足取りしてあるそうだから、後は俺がそこへ行くだけである。

 

「ふわぁぁぁ・・・眠い・・・早く学院に着いてゆっくりしたい・・・」

 

俺はニュクス=アバター。今日も俺は室内の温もりを追い求める。例え修羅の道があったとしても、地獄に堕ちたとしても――俺は極楽浄土を目指す。働かずして生活する、素晴らしき環境を――




どうでしたか?
作者はこんな小説を書いておいてペルソナ3 についてそこまで知りません。アルカナ繋がりで書こうと思い付いた感じです。

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