【Lily】
「………お姉ちゃん、落ち着いた?」
此方を気遣うフリスクの優しい言葉に辛うじて頷き、私はフリスクに手を引かれたまま歩く。そしてショーのセットから少し離れた所で立ち止まって顔をあげ、振り返ったフリスクに苦笑いをする。
「………ごめん、フリスク。フリスクの前であんなに怒って。怖かったろ?」
「ううん、大丈夫。気にしないで」
「でも……」
「あー、もー!」
煮え切らない返事の私に、ぼすっ、とフリスクが抱き付いてくる。それを驚きながら受け止め、私を見上げるフリスクの目を見つめ返す。
「……確かに怖かったよ? でもね、ぼくはお姉ちゃんが好き。だって、お姉ちゃんが怒るのはいつだってちゃんとした理由があるもん。相手が本当に間違ってるときと、我慢して我慢して我慢して堪えられなくなったときしか、お姉ちゃんは怒らないもん。お姉ちゃん自身が間違ってるかもしれないって思ってるときは優しく注意するだけだもん」
真っ直ぐ私を見ながらフリスクから言われた言葉に思わず目を剥いてしまう。そんな風に思われてたのか、と思うと同時に、『自分が間違っているかもしれない時は注意するだけ』と言い当てられ、怒る意味を分かってくれているんだ、とも思った。
「ぼく、どんなに怒ってもお姉ちゃんが大好きだよ。だから、そんな不安そうな顔しないでよ」
にっこりと笑うフリスクにそう言われてしまい、私は、フリスクには敵わないな、と思いながら、フリスクを抱き締め返して頭を撫でる。
「うん、うん……ありがとう、フリスク。元気でたよ」
「! 良かった!」
嬉しそうに笑ったフリスクはぎゅーっと私を抱き締めると、笑いながら離れていった。そして少し先にある光に進んでいった。その背中を追って、私も進んでいく。
「終わったよ!」
そういってフリスクは先を行こうとする。その途端、携帯の着信音が鳴った。
「電話か?」
「みたい」
フリスクは携帯を引っ張り出すと、電話に出た。その間に、私は左横を向き、遠くに見える機械の塊を見る。……あれが、コアか………。あんなのをよく造れたな、博士は。
「お姉ちゃん、終わったよ」
「ん? なんだって?」
「あのね、彼処にお城に直ぐに行けるエレベーターがあるんだって。だから次に行くのは彼処だね!」
アルフィスに言われたことを言いながら、フリスクはコアを指差す。……やっぱ次は彼処か。
「そっか。じゃあ、行こうか」
「うん」
頷いたフリスクの手を握り、向こうに見えるエレベーターに向かって歩いていく。
もう一度、この子を守りきる決意をそっと抱きながら。