守りたいもの   作:行方不明者X

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66.Waterfall探索⑭

【Lily】

 

セーブエリアでまたもう一度セーブをして、先に進む。……あー、次のエリアも確か分岐だったっけ。

 

「テミー村って何処にあるんだろうねー」

「さぁ………看板にも書いてなかったしね。見つけられたらラッキーだけどさ」

 

先程見た看板に書いてあったテミー村の話をしながら、道を進んで行くと、道の左端に茶色い箱のような物が見えてきた。

 

「あ、ボックスだ。お姉ちゃん、荷物整理してく?」

「うーん、そうしようかな。ちょっと重くなってきたし」

 

そう言ってボックスに近付いて、ふと左を見るとぽっかりと穴が空いていた。……あ、そっか。ガーソンさんの店も此処だったっけ。

ボックスの蓋を開き、リュックを降ろして真っ先にチュチュとトウシューズを綺麗にしまう。ふと、店の入り口に立っていたフリスクのつけっぱなしだったバンダナと手袋を見て、手袋は外しておくかと思い至る。

 

「フリスク、手袋破くといけないし、しまうから貸して?」

「うん、いいよー」

 

フリスクから手袋を預り、私が着けていたのと一組にしてボックスにしまう。……あとはどうしようかなぁ。回復アイテム…あんま減ってないんだよなぁ……

悩みながらアイテムを出したりしまったりして、整理をようやく終わらせて立ち上がり、リュックを背負い直す。

 

「お待たせ、終わったよ」

「待ってないよー。行こう!」

 

そう言ってフリスクはお店の中に入っていく。私も中に続いて入った。

 

「こんにちはー」

「……おぉ?いらっしゃい!いいガラクタを売っとるぞい」

 

一応声をかけながら店に入ると、私の声に気がついたのか、後ろを向いていた亀のモンスターが此方を向いた。

 

「……王女……?」

「えっ」

 

此方を向いた亀のモンスター、ガーソンさんが私を見て目を見開いて固まった。……『王女』って、まさかCharaちゃんの事か?

 

「……あぁ、すまんの。少し……お前さんが知り合いの子供に似ておってな……」

「はぁ……そうなんですか……」

 

頭を振ってからまた私を見て、懐かしそうに目を細めるガーソンさん。……Charaちゃんに会った事があったのか、この人。長生きしてそうだもんなぁ

 

「すまんな、この年になるとどうも見間違いが多くなってのぉ……ちょっと待っとれ」

 

そう言ってガラクタの山の中を探し出すガーソンさんを見る。……この人、結構優しいモンスターだったはず。が『子供』って言うって事は、やっぱりCharaちゃんはトリエルさん達に大切にされてたのかな?

そんな事を思いつつ、フリスクと一緒にガラクタの山を見渡す。……多すぎだろ。

 

「おぉ、あったあった」

 

あまりの多さに口元が引き吊るのを感じながら、ガラクタの山から何かを持って戻って来たガーソンさんを見る。

 

「これ持ってけ。ちょっとした詫びじゃ」

「………!? え、これ…」

 

ガーソンさんに押し付けられるように手渡されたのは、古びたノートと曇った硝子の黒縁の眼鏡だった。どう考えても人間用のそれは、六人目の子の物だと確信する。

 

「い、いいんですか!?これ……商品じゃ……?」

「ワッハッハ!いいんじゃ!処分に困ってたし、使われないで腐るよりマシだしの」

 

思わず驚いて聞き返してしまう。すると、ゲームで見た通りの豪快な笑みをガーソンさんは浮かべた。そこで、あぁ、この人前王国騎士団団長だったなと思い出した。

 

「……お前さんら、人間じゃろ? きっと地上を目指すんじゃろうが……」

 

私達を人間だと見破った上で、ガーソンさんは私達にこう頼み込んだ。

 

「頼むから、あの子と王……アンダインと、アズゴアを殺さんでくれ」

 

そう言ったガーソンさんに、私とフリスクは顔を見合わせてから頷いた。

 

―――――――――――――――――――

 

その後、ガーソンさんと他愛もない雑談をしてから店を出て、目の前の道を進んですぐに引き返し、すぐに右に曲がって進んで行く。……えっと、次のエリアは石板があるんだっけな?

 

「お姉ちゃん、石板があるよ」

「あ、本当だ」

 

フリスクはそう言って石板へと近付いていく。私も一緒に近付いて石板を読み始める。

 

『傷つき、倒され、怯えきった我々は生き残るために人間に降伏した。

七人の大魔法使いが、魔法の力で我々を地下世界へ封印した。』

 

アンダインに突き落とされる前に読んだ石板の続きで間違いなさそうだと判断し、エコーフラワーが咲き乱れる中にある次の石板に移る。

 

『ひとつだけ封印の魔法を解く方法がある。

七人の人間のソウルに匹敵する強大な力で攻撃すれば……結界は壊れるだろう。』

 

……それが、『七人分の人間のソウルを集める』という事に繋がったのか、と理解した。一応、希望はあったんだと思いながら川を越えて次の石板を読む。……うっ、せっかく乾き始めてたのに……

 

『しかし呪われたこの地には入り口も出口もない。そもそも人間がやってくる術が無いのだ。

我々は永遠に地下世界に囚われるのだろう。』

 

……当時の人は凄い絶望したんだろうな。出口は結界で閉ざされてるし、入り口は人目につかない山の中にしかなかったし。

そんな事を思いながらふと自分の見当違いに気づく。……あれ?じゃあCharaちゃんはニューホームじゃなくてルインズの方に住んでたのか?でも図書館で洞窟の奥まで進んだって書いてあったし、丁度移動する時に此処に来たのか?

頭の中が混乱するのを防ぐため一度思考をストップする。……今の私の計画には関係ないしな。

 

「………行こう、お姉ちゃん」

「おう」

 

じっと石板を見つめてから、フリスクは静かにそう言って、先を進んでいく。……優しいこの子は、一体何を感じたんだろうなぁ。


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