守りたいもの   作:行方不明者X

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※明けましておめでとうございます

※今年もよろしくお願いいたします


64.ナップスタブルックとデート

【Lily】

 

水からあがり、道なりに進むと、やがて薄く光が見えてくる。……次のエリアはセーブ部屋と分岐も兼ねてるんだっけな?

そう思いながら進んでいくと、視界が開けた。辺りをキョロキョロと見渡し、道を確認する。……うん、間違いはないっぽい。

 

「ねぇ……」

「ん?」

 

こちらに背を向けて浮遊していたナプスタ君が振り向いて、呼び掛けてくる。それに反応し、ナプスタ君と目を合わせる。

 

「この上に家があるんだ……もし見たいなら……それとも……見たくないなら………」

 

少し坂になっている真ん中の道の上でナプスタ君はそう言って道の奥へとすーっと滑るように奥へと消えていった。

 

「………どうする?先にナプスタ君の家行くか?」

「そうだね、先に行こう!……あ、でもちょっと待って」

 

私がそう訊くと、フリスクは迷わずに頷いた。そして直ぐ目の前にあった光に触れ、手を空中にさ迷わせる。

 

「よし、これで大丈夫!行こう!」

 

たたたっと真ん中の道の坂道を駆け上がって行くフリスクの後を、私も追った。

 

――――――――――――――――――

 

緩やかな坂道を上がって行くと、二つ仲良く並んだ控えめな青が基調な家と鮮やかなピンクが基調の家が見えた。

 

「おぉ、凄い家だね!」

「そうだね……」

 

鏡写しのようなその家に目を輝かせるフリスクに頷きながら、私はピンクの家の方を見る。……こっちが、メタトンのゴーストだった時の家なんだよな。ここの鍵、確かキャシーちゃんとブラッティーちゃんの店で手に入るんだっけか。……お金足りるかなぁ。

 

コン コン コン

 

そんな事を考えながら、青いナプスタ君の家のドアの前に立って、ノックを三回する。……ノック二回はトイレだからね。

 

「お邪魔しまーす」

「お邪魔しまーす!」

 

ドアノブに手をかけ、扉を開けて中に入る。ざっと見た所、中はゲームで見た通りの造りになっていて、やっぱり此所はゲームの世界なのだと思い知らされた。

 

「ああ……本当に来たんだ……」

 

家の中に入ると、黒いヘッドフォンをしたナプスタ君が驚いたようにそう言いながら出迎えてくれた。その言葉に驚いたような顔でフリスクは口をパクパクと動かす。

 

「ごめん、ぼく……それは想定してなくて」

 

本当に来るとは思ってなかったのか、ナプスタ君は申し訳なさそうにそう言った。フリスクはそれを知るとふるふると首を横に振った。

 

「何もないけど、くつろいでいってね」

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

 

私はそう言って部屋の端にリュックを降ろし、その隣に座って家の中を今度はゆっくりと見渡す。……ボロいにはボロいけど、ある程度と掃除はされてるみたいだ。そこまで汚くないな。……あ、CD発見。

そんな事を思いながら壁に寄りかかってぼーっとしていると、ふと立っていたフリスクがテレビへと近付いていった。

 

「あ……それぼくのテレビ………お気に入りのショーを見てるんだ……ときどきね……」

「へぇ……」

 

……メタトンのショーだろうか?

なんとなくそう察しながら頷いておく。……メタトンの正体が行方不明になった従兄弟だって知ったら、どうなるんだろうな。

そう思いながら冷蔵庫の前に立ったフリスクを見る。

 

「あっ……お腹空いてるの……何か食べ物持ってくるね……」

 

そう言ってナプスタ君はすーっと冷蔵庫の前まで移動し、ガチャリと冷蔵庫を開けて、半透明なサンドイッチを取り出した。……あれがゴーストサンドイッチか?

 

「ゴーストサンドイッチだよ……食べてみる……?」

 

サンドイッチを差し出すナプスタ君にフリスクは頷き、サンドイッチを取ろうとする。すると、するっと手が通り抜けてしまった。

 

「あっ……気にしないで……」

 

そう言ってナプスタ君はサンドイッチを冷蔵庫にしまった。

 

「お腹いっぱい食べた後は床に寝転んでゴミのような気分になるのが好きなんだ……」

 

話し出したナプスタ君にゴミのような気分ってなんだと思わず心の中でツッコミを入れる。………一瞬「人がゴミのようだ!」って脳内再生されて笑いそうになったのはナイショ。

 

「我が家の伝統なんだけど……一緒に………やってみるかい……」

 

ナプスタ君にそう訊かれると、フリスクは迷わず頷いて私を見る。

 

「お姉ちゃんもやる?」

「………んー、そうだね。やるよ」

 

私が頷きながらそう言うと、ナプスタ君とフリスクは嬉しそうに顔を綻ばせる。……めっちゃ可愛い。

 

「わかった……ぼくに続いて……」

 

そう言ってナプスタ君はフリスクと一緒に部屋の真ん中辺りにまで移動し、床に寝転んだ。フリスクもそれに習い床に寝転び、楽な体勢になる。私も習って床に寝転び、天井を見る。

 

「いくよ………君が動かないかぎりずっと寝転び続けるよ。だから……起き上がりたい時は動くといい、と思うよ」

 

そんな声を聞きながら、高い天井をぼーっと見つめる。……これ、ゲームだと宇宙空間になってたけど、あれどうなってるんだ……?宇宙の塵的な意味なの……?

どうでもいい事で頭を動かしながら、天井を見つめ続ける。しばらくすると、無限大の宇宙の景色が見えてきた。……これマジでどうなってんの?

 

――――――――――――――――――――――

 

若干混乱しながら宇宙を見つめることしばらく。ふと、フリスクが立ち上がった。

 

「ああ、楽しかった……ありがとう………」

 

フリスクが立ち上がったのを見て、ナプスタ君もそう言いながら体を起こした。私も体を起こし、立ち上がってフリスクを見る。

 

「……行く?」

「うん、行かなきゃ」

 

フリスクが頷いたのを見て、リュックを背負い直し、ナプスタ君に笑顔を向ける。

 

「じゃあ、お暇させてもらうね。ありがとう、誘ってくれて」

「ううん……こっちこそ………」

 

私がお礼を言うと、ナプスタ君は頭をふるふると振る。

 

「あ………隣で………牧場やってるから……良かったら見ていってね……」

「うん、ありがと。じゃあね!」

 

お邪魔しましたー、とフリスクと一緒に言ってナプスタ君の家から出て、扉を閉める。………さてと。

少しソワソワしているフリスクに私は笑いかける。

 

「さてと。フリスク、牧場行く?」

「! うん!」

 

迷わず頷いたフリスクの頭を撫でてから、牧場へと向かって歩き出した。


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