守りたいもの   作:行方不明者X

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※リリーちゃんと同い年の少年の独白


4.俺の友人

あいつは突然やって来た。

 

 

俺の誕生日の翌日、院長が皆を集めて「新しい家族が増えます」と言った。

院長に呼ばれて入ってきたのは、俺と同い年だというポニーテールの女の子と9歳下の女の子の姉妹だった。

 

正直な話、俺は最初そんなにあいつに興味はなかった。

別に誰が増えたって俺には関係ないし、どうでもいいと思っていた。

 

「初めまして、私はLily。この子は妹のFrisk。よろしくしてくれると嬉しいかな」

「よろしくおねがいします!」

 

にっこりという表現が当てはまるような笑顔であいつは簡潔にそういった。

――――――――――――――――――――

 

「Lily、ちょっとこの所がわかんないからちょっと教えてくれない?」

「ん、いいよー。どこ?」

 

あいつはあっという間に馴染んだ。今じゃ勉強教えてもらう奴もいるぐらいに。

 

「あー、これか……ここ私も苦手だったんだよねー」

「えー?そうなの?」

「うん、最近になってようやく解き方が分かってさー」

 

あいつは所々ジョークをいれて場を盛り上げながら勉強を進めていく。……俺も実際に教わった事があるが、本当にあいつの授業は覚えやすい。本人曰く、「勉強でも面白かったりする事は結構覚えられるじゃない?だからちょっとひねってジョークとかにしちゃうと面白いし覚えやすいよ」とのこと。

 

あとあいつはよくふざけている。たまにあいつが持ち込んだジャパニーズマンガのネタを使ったり、他の奴がボケたらツッコミいれたり。多分これがウケたんじゃないかと俺は思う。

 

それに、あいつは結構博識だ。星座の神話の話をしてくれた時は凄く引き込まれた。もっと知りたいと思った。

そう言ったら星座関連の本を何冊かくれた。

 

「君、将来天文学者か考古学者になれそうだね」

 

と笑いながらいった。

天文学者はともかく、考古学者か……悪くはない。

実際俺は無難な職に就こうかと考えていたから、そのアイディアは新鮮だった。

 

あとあいつは妹のFriskに甘い。めちゃくちゃ甘い。

見るからに溺愛してますって分かる。

Friskは下のクラスに入っているが、わざわざ時間まで作って会いにいってる。そのせいで下のクラスの子に顔覚えられてるらしい。一緒に遊んだりしたと聞いた時はこいつコミュ力ヤバくないかと思った。先生、何故止めないんですか……

前に7色のハートがついたお揃いの腕輪プレゼントしてた時は驚いた。手作りらしい。

その日以来ずっと着けているが、ちょっと依存しすぎじゃないかと俺は思う。

 

――――――――――――――――――――――

 

今年で19歳になった。あいつが言った通り、俺は考古学者になるために大学に入った。結局、歴史や神話を知る事が楽しくなってしまったのだ。

 

あいつは、妹が心配だからと孤児院のボランティアになった。最後まで妹離れ出来なかったらしい。いつでも顔を出せと言われた。

 

それから俺は大学で全力で学んだ。時には教授の発掘調査についていったりした。

ふと、部屋に置いてあったあいつからもらった本を見つけて、顔を出してみようかと思いたって孤児院に行って、愕然とした。

 

 

あいつが、エボット山に妹を探しに行ったっきり帰ってこないと聞いた時、俺は膝から崩れ落ちた。


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