守りたいもの   作:行方不明者X

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23.ワンボー戦

【Lily】

 

Doggo brocks the way!(Doggoが行く手を阻んでいる)

 

頭の中でアナウンスが流れる。……そういえばこのアナウンスについても一考しなきゃだな、と思いながらカッターとナイフを逆手に構える。

 

*DOGGO- ATK 13 DEF 7

Easily excited by movement.(動くものにすぐ反応する)

Hobbies include:squirrels.(趣味:リス)

 

趣味がリスってどういうことなの。……あ、チョロチョロ動くからか!?というか地下にいるんだね!?

アナウンスにちょっと混乱しながらもワンボーを見据える。

 

『1ミリも動くなよ!』

 

わざわざこうやって警告してくれるのは何故なんだろうな、と余計な事を考えながら彼が引き抜いた青色の刃の双剣を受ける。微動だにしないでいると、刃はすーっと私の体を貫通していった。……なるほど、こんな風になるのね。覚えとかなきゃ。

 

Doggo can't seem to find anything.(Doggoは何も見つけられないようだ)

 

私達微動だにしてないしね、と思いながらカッターとナイフをしまった。このターンで確か終わりだったはず。すると、私の後ろからフリスクが出て、ワンボーの頭をなでた。

 

You pet Doggo.(あなたはDoggoを撫でた)

 

そのアナウンスが流れた瞬間、ワンボーがゲーム通りの狂ったような動きをし始めた。つかこえぇ。狂人みたいでこえぇ。

 

『うわ!!撫でられたぞ!!』

 

私がそう思っていると、ワンボーは双剣を振り回してきた。あー、また動かなければいいのかな、と思っていたその瞬間、風が吹いて私の髪が風に靡いた。

 

 

シャキッ

 

 

ぼすっ、という何かが雪の上に落ちた音がして、私の頭が急に軽くなる。

 

「………え?」

 

嫌な予感がする。フリスクの顔を見ると青くなっていた。

 

「………フリスク、私今どうなってる?」

「……髪の毛……」

 

私の髪を指差してフリスクは私の問いにそう答えた。……髪の毛?と思って髪を触ってみるとポニーテールにしているはずの長い髪がなく、フリスクと同じ長さぐらいの辺りで指が髪から抜ける。

恐る恐る振り返ってみると、私の髪だったものが落ちていた。

 

「………うっそだろお前!?!!?

 

嘘でしょ待って、あれ動いた判定に入るの!!?

 

頭の中が大混乱に陥った。髪を拾い上げて呆然とする。

まさかマジで戦闘に巻き込まれて髪が切れるなんてあるんだ……と呑気に思った。

 

「……………その、すまん………」

 

いつの間にかフリスクが『MERCY』を押して戦闘を終わらせたらしく、まずいことをしたと感じ取ったらしいワンボーが近づいてきて謝った。しゅん、と垂れた耳と尻尾が可愛かった。……つかマジで見えてないのか、距離が近いんだが。

 

「……いいよ、そうやって謝ってくれるだけマシさ。それに、いつか切る予定だったしね」

 

謝られちゃ怒れないと思ってワンボーを許して撫でる。気持ち良さそうに目を細めるワンボーがちょっと可愛かった。

 

………しかし、マジか。Charaちゃんに間違われないようにせめてもの足掻きで髪伸ばしてたのに切られるとか……へこむわー……

 

ワンボーを撫でるのをやめ、髪を捨てる訳にもいかず、リュックの前ポケットに入れて背負いなおす。

 

「それじゃ、通らせてもらうよ」

「あぁ、通っていってくれ」

 

ワンボーに手を振るフリスクの手を取ってざくざくと雪を踏みしめた。吹いた風に短くなった髪が揺れた。




※彼女の髪が短くなる回。
風に靡く髪も多分動く判定に入ると思ったので書かせていただきました。

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