【Lily】
無人の見張り小屋を通りすぎる時、この見張り小屋の裏辺りにカメラが仕掛けられてるんだっけ、と思ってちらりと林を見ると、キラリと何かが光を反射したのが見えた。……あれか。
カメラから視線を外したと同時に、世界が白黒に切り替わる。
戦闘か、スノーディンに来て初戦闘だな。
*
ヒョー坊か。……確か見逃す条件は帽子を褒めつづけるもしくは帽子を取っちゃうんだっけか?
*ICECAP-ATK 11 DEF 4
*|This teen wonders why it isn't named `Ice Hat'.《この若者は自分が`Ice Hat'と呼ばれないことに疑問を持っている》
調べるを押したのか、アナウンスがそう流れた。カッターとナイフを出して構え、フリスクの前に立つ。
『帽子がめっちゃ好きだ。オーケー?』
帽子型の砲台のようなものを召喚すると、そこから氷柱が飛び出した。
バキンッ
当たりそうになる氷柱をカッターとナイフを振るって弾く。……これは弾くよりちょっと当てて軌道反らしたほうがいいな。
そう思って沿わせるようにすると、あまり力を使わずに避けられるようになった。
*
きったね。
ちょっと慄きつつ、いつ氷柱が来てもいいように構える。
*
フリスクはお世辞を押したらしい。
『羨ましいって?残念でした!』
いやいらんわ。あれ全部氷でしょ?被ったら私とフリスクじゃ重すぎて首が折れる。
心の中で思いっきり否定しながら、また飛んできた氷柱をカッターで軌道を反らす。一発捌ききれずに掠めていったけどかすり傷だから無視する。
*It's snowing dandruff.
だから汚えよと思いつつ、ヒョー坊を見据える。
「あ」
「待ってフリスク、何今の『あ』って」
後ろから聞こえた声に振り向くと、フリスクの手には溶け始めているヒョー坊の帽子が握られていた。……選択ミスったのかよ……
前に向き直ると氷の塊になってしまったヒョー坊がいた。
「………」
「………」
フリスクが『MERCY』を無言で押した。
*
*
……結構耐久戦になるかなと思ったんだけど一瞬で終わったわ。
周りの色が戻ってきた所で、私達はまた歩き出す。
「………次は気をつけような」
「………うん」
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次はDoggo……もといワンボー戦だったっけ、と思いながら看板を読む。
『動くなよ!絶対に動くなよ!』
ダ○ョウ倶楽部かな?と思いながらも看板から視線を外し、ざくざくと雪を踏みしめて小屋に近づく。すると、音に反応したのか、にゅっと見張り小屋から口に赤い骨みたいなのをくわえた犬が顔を出した。
「何か動いたか?気のせいかな?」
キョロキョロと辺りを見渡すように目線を動かすワンボー。フリスクが身を強ばらせる。
「おれは動くものしか見えないからな」
それもそれで不自由だよなぁ、と思いながらフリスクの手をワンボーに気づかれないように握る。
「もし何かが動いてたら……もしそれが人間だったら……」
ポケットの中でカッターを握りしめた。
「そいつを二度と動かないようにしてやる!」
そうワンボーが宣言した瞬間、世界が白黒に切り替わった。
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