【Lily】
来た道を引き返し、ボックスを素通りして奥へと進む。ゲーム通り、視線の先にはサンズと話し込むパピルスがいた。
「……あ、そうだフリスク」
「?」
「サンズが言ってたんだけどね……」
パピルスは悪いモンスターじゃないこと、人間を初めてみるからはしゃぐかもしれないことをフリスクに話した。
「そうなんだ……」
「うん、だからさ、そこまで警戒しないで大丈夫だと思うよ」
「……そうだね!」
私の言葉に、にっこりと笑ってフリスクは頷いた。かわいい。
さて、パピルスへの警戒心を解いたところで、私は一歩大きく踏み出す。
「それで、アンダインの話なんだが」
ざくっ
私の足が雪を踏みしめた音がして、その音が聞こえたのかパピルスとサンズがこっちをみた。
「やぁ」
手を上げて挨拶しておいた。
二人は何回も顔を見合わせたり私達をみたりした。……最終的に高速回転になった時は目を見張った。
「サンズ!なんてこった!!あれはまさか……人間!?!?!??!?!」
ばっと私達に背を向けてこそこそと会話をする二人。……いや、筒抜けなんですが……つかパピルス凄い嬉しそうだな
そしてこちらをまた見る。
「あー……あれは、ただの岩だと思うぜ」
「そっか」
さっき素通りした岩を見てサンズはそう言った。パピルス超落胆してんな、声のトーンが一気に下がったぞ。
「おい、あの岩の前にあるのはなんだろうな?」
落として上げんなよ、と思いながらはっとこちらに気づいた様子のパピルスに手を振る。
「そ……そんな!!」
嬉しそうに言ってパピルスはサンズとこそこそと話し始める。今度は距離があるから聞こえない。
「なんてこった!!!」
パンナコッタ?と言いかけたがここで言ったらグダグダになると思って言葉を飲み込む。
「サンズ!ついにやったぞ!!アンダインもきっと……」
そこで思わず顔を歪めかけて顔を少し伏せる。……本当に何も知らないんだな、この子は。
「俺様は……ついに……人気者!!!人気者!!!人気者になれるぞ!!!」
嬉しそうにはしゃぐ彼には悪いが、私の心中は複雑だった。……アンダインの前に連れて行かれる、と言うことは即ち私の死だ。私はソウルを差し出す覚悟は出来ているけど、彼はその事を知ったらどうなるのだろう?
心中複雑になりながら、彼が咳をしたのを聞いて顔をあげる。
「やい人間!ここは通さないぞ!このグレートなパピルス様が、お前を止めてみせる!!!」
そして、と彼は言葉を続ける。
「お前を捕まえれば!!お前は都に送り飛ばされ!そして……そして!!!」
一瞬貯めたあと、彼は言葉を続ける。
「その後どうなるのか俺様も知らない」
「知らないんかーい!」
思わず口からツッコミが出た。
「し、仕方ないだろう!!聞いても教えてくれないのだ!」
「あ、それは仕方ないわ。ごめん」
「いいぞ!」
……私今パピルスと会話した?マジかよ。
ちょっと嬉しくなりながら下げた頭をあげる。
「まぁいい!ついて来い……その勇気があるならな!!」
そう言うと彼は彼特有の
「ニェッヘッヘッヘッヘッヘッヘッへ!!!」
という高笑いをあげながら奥へと消えていった。
「ふぅ……上手くいったな」
「なんに対してだ?誤魔化したことに対してか!?」
思わずサンズにツッコミを入れながらサンズに近づく。
「そんな悩むなって。ちゃんと目ん玉ひん剥いて見といてやるからよ」
「スケルトンに目玉ってないよね!?つまりやる気ねーな!?」
ゲームだった時からツッコミたかったことにツッコミを入れると、彼は笑いながら奥へと消えていった。
「お姉ちゃん……」
パーカーの裾を引っ張られ、不安そうに見上げてくるフリスクに気づく。
「……大丈夫、サンズがさっき言ってたろ?兄弟の彼が言うんだからきっと悪い子じゃないよ。それに、何かあったら私が守るよ」
……都に送られて何をされるのか不安になったのだろうと検討をつけ、そう言葉をかける。
「さ、行こう」
「………うん」
リュックを背負いなおし、フリスクの右手を握って雪が積もった道を進んだ。