【Lily】
フリスクが
「あっ、チーズだ!」
おいフリスクよ、反応するのはそこか。
机の上にあったチーズに向かっていくフリスク。
「……とれない…」
……置いときすぎてへばりついてんだっけ。そりゃネズミも取れないわな。
「…それ取ってどうするの?」
「そこのネズミさんにあげたい……」
んんん、理由が激かわだった。
ふと、ポケットに手を突っ込んだときに当たったカッターで、私は妙案を思い付いた。
……カッターで削ぎ落とせばいいんじゃね?
「フリスク、ちょっとどいて?いいこと思い付いた」
フリスクにどいてもらうと、私はカッターでチーズに机と並行な切れ込みを入れていく。あ、中々切れやすい。
「おー……」
フリスクはそれを私の後ろからじっと見ているみたいだ。
しばらく横に動かしていると、チーズが机から剥がれた。
「うし、取れた!」
「おー!!」
パチパチと拍手するフリスク。かわいい。
カッターの刃を拭いて、フリスクにチーズを手渡すと、ネズミの穴のそばにチーズを置いた。
「ネズミさん、どうぞ!」
……ちょっとしてから、ネズミが穴から顔を出した。
そして、フリスクを見やりお礼を言うように頭をさげ、チーズを持って穴の中に引っ込んでいった。……引っ込もうとした。チーズが大きすぎて入らないらしい。穴に引っかかっている。
「あー……ちょっと借りていい?」
ネズミからチーズを借りると、私は穴に入る大きさにそれを切った。
「これで入る?」
小さくしたチーズを渡すと、ネズミは嬉しそうに引っ込んでいった。……え、余ったこれどうしよう。
「………持ってくか、仕方ない」
なんか包むもの見っけないとな、と思いながらリュックの中にチーズをしまった。
「……そう言えば、お姉ちゃん」
「ん?」
「さっき、何でママにこの光の事言わせてくれなかったの?」
セーブをしたであろうフリスクが振り返ってそう言った。
…あー、来ると思ってた質問がきたか。
「いやね、さっき見た時さ、トリエルさんその光の事無視してたじゃない?だからもしかしたら見えてないのかなって。だったら、私達の秘密にしちゃおうと思ってさ。ダメ?」
適当に言い訳を並べ立てる。
「……そっか、じゃあぼく達のナイショね!」
信じてくれた。純粋かわいい。
「うん。……行こうか」
奥に進む。
―――――――――――――――――――――
次は……ナプスタ戦だったか。
そう思いながら、次の部屋に足を踏み入れる。
一番に目に入ってきたのは、寝たフリをするシーツオバケ。
「……?オバケ?」
「多分ね。……お昼寝中かな?」
というか、グーグーて……寝たフリ下手すぎにも程があるだろ……目思いっきり開いてるし……
「お願いしたらどいてくれるかな?」
「……どうだろ、起こしてみる?」
「うん」
その瞬間、背景が白黒に切り替わった。どうやら戦闘らしい。
*
アナウンスが流れるとともに、体を起こし、目をうるうるさせたナプスタ君がふよふよ浮き始めた。
「初めまして、私リリーって言うんだ。よろしくね!」
「あぁ……うん……よろしく……」
うおっ、可愛い声だな。声量が小さいからちょっと聞きづらかったけど、可愛いわ。
*NAPSTABLOOK-ATK 10 DEF 10
*This monster doesn't seem to have a sence of humor…《このモンスターにユーモアのセンスはないようだ》
『Player』は調べるを押したのか、アナウンスが流れる。
『あぁ、ぼくって本当に面白い…』
彼がそう言った瞬間、彼の目から涙がこぼれる。
……まずい、確か彼の涙って酸じゃなかったっけ。
「フリスク!!」
壁を這い上った涙が、フリスクに雨のように降り始める。
………よかった、なんとか避けれたか。
*
アナウンスが流れ、フリスクの手が『ACT』ボタンに伸びる。 私はフリスクの傍に移動し、いつでも守れるように刃を出さずにカッターを構えた。
*
にっこりと笑うフリスク。…今一瞬とある刀剣思い出した。(オバケ+笑顔っていったらもう……ねぇ?)
『へっ……』
嘲笑ったような笑いかたするな、と思いつつ構える。
……攻撃が来なかった。ちょっと拍子抜け。
*
……これで『FIGHT』は使わないかな?
少し胸を撫で下ろしながら、ナプスタ君を見据える。
「……あの………そんなに見つめられると……」
「えっ」
ナプスタ君は顔辺りを少し赤くして私から目を反らした。…ひょっとして照れてる?かわいすぎかよ。
ふとフリスクに目をやると、口をパクパクと動かしていた。
*You told Napstablook a little joke.《あなたはNapstablookにちょっとしたジョークをかました》
『へっ、へっ……』
励ますを選んだのか、ナプスタ君がまた笑う。……どんなジョークを言ったのだろう?
そして、酸の涙が降ってきた。……かなり手加減されているみたいで、簡単に体を捻って避けれた。
ジュッ
「うっわぁ…」
構えていたカッターに掠り、嫌な音を立てながら先の方の金属がちょっと溶ける。……強酸じゃねーか、当たったらマジでヤバいな。
*Cheering seems to have improved Napstablook's mood again.《励ますとNapstablookの気分がさらに良くなっていくようだ》
フリスクは要領を掴んだのか、にっと笑いながらまた『ACT』を押した。
*
お?来るか?
これ以上は必要ないと判断して、カッターをポケットにしまった。
『やってみるね……』
彼が流した涙が頭上に集まっていき、シルクハットのような帽子を形作っていった。
……リアルで見るとマジックみたいで結構迫力あるな。フリスクなんか目ぇ輝かせてるし。
『おしゃれblook、っていう芸なんです…気に入ってくれたかなぁ……』
*
フリスクは『ACT』を押して精一杯拍手を彼に送った。
私も一緒に拍手を送る。
『わぁ……』
ナプスタ君が嬉しそうにすると、周りの色が戻ってきた。戦闘が終わったらしい。
「RUINSには誰もいないからよく来てたんだ……」
「そうなの?」
語り始めたナプスタ君の隣にしゃがんで話に相槌をうつ。
「でも今日はいい人達に出会えた……」
嬉しそうに口角をあげたナプスタ君。かわいい。
「………うん、そろそろ散歩に戻ろうかな。すぐにどくよ。」
そう言ってナプスタ君はすーっと消えてしまった。
「消えちゃった……」
ちょっと残念そうにするフリスク。その頭を撫でておく。
「まあ、またどっかで会えるさ。へこまないへこまない」
「……うん、そうだね!」
元気を取り戻したフリスクはにこにこしながらまた会えるといいなー、と呟いた。
……まぁ割りとすぐ会えるけどね…。
「先に進もうか」
「うん」
探索は続く。