守りたいもの   作:行方不明者X

114 / 158
※大変お待たせいたしました

※物理法則無視のアクロバティック戦闘です

※支離滅裂です


107.フォトショップフラウィー戦

【Lily】

 

FILE1 SAVED.

 

ギラリと色違いの目玉でバケモノがフリスクを睨み付けると、人肌色の造形の目から白い光のような散弾弾幕が展開される。横っ飛びに飛んで避け、攻撃の合間を縫って避ける。それが止むと、今度は先に人間の手がついた茨の蔦が此方に向かって伸ばされる。かなりの速度で迫ってくるそれを回避しながらナイフで切り落とし、捕まらないように立ち回る。

…………今のバケモノはフリスクに完全に狙いを定めてる。フリスクから離れないようにしないと殺されてしまう……!!

腕から生えてきた火炎放射機か火を吹く中、フリスクとの距離を詰め、いつでも庇いにいけるようにする。

本当は私自身がナイフを脳天にぶっ刺したかったが仕方無い。この世界の主人公はフリスク。主な攻撃はフリスクに任せて、私は追撃と庇うのに専念しよう。

 

【潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す】

 

バケモノが歪な手を振り上げ、フリスクを叩き潰そうとする。バックステップで後ろに飛び退いたフリスクが『FIGHT』を押し、ナイフで振り下ろされた手に切りかかった。赤い軌道が走り、蔦の腕に傷がつく。それを見てから、同じく手にナイフを振るう。ナイフが植物の手に食い込み、()()()()と傷をつけた。本来の植物の柔さなら、もっと切れてもいいぐらいの力を込めたにも関わらず、こんなにうっすらとしかつかない。やはり人間のソウルを取り込んだことによるステータス上昇が起きているらしいと思い至る。

攻撃が終わると同時に白い種が周りに展開される。移動する毎に周りを取り囲んで飛んでくるそれをいくつか弾き、回避していく。回避し損ねた種が一つ、腕を抉っていく。痛みで叫んでしまわないように歯を食い縛り、回避を続ける。次の瞬間にはまた此方を貫く、もしくは捕らえようとする目的の蔦が有り得ないスピードで向かってくる。フリスクを狙って飛んできていると判断し、咄嗟に前を走るフリスクを抱き寄せ、一点に集まった所を叩っ切る。

………有り得ないぐらいのスピードだ。これもステータス上昇の賜物だろうな。

そう考えながら次々に飛来する蔦を切り捨て、止んだ一瞬を狙ってフリスクを離し、今度は手を握って走り抜ける。視界の端に、火炎放射機が出てくるのが映ったからだ。

私達が離れると一瞬遅れて、火炎放射機が火を吹いた。両側から吐き出される炎に焼かれないように絶妙な位置を割り出して避難し、それを保って出来るだけ最低限の動きで避ける。

 

【どうしてソイツを庇うのどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして】

 

嫌でも耳に届く譫言を無視し、火炎放射機を避け続ける。じゅっ、と炎が掠めていく音がした。

 

ヴィーッ ヴィーッ ヴィーッ

 

避け続けていると、大きな音が鳴り響いた。警報の音のようなそれにハッとして顔をあげると、バケモノの顔の部分であるテレビの周りのパイプが水色に光り、不気味な色を発していた。そして、テレビの画面が切り替わり、『危険』と書かれた文字の下に水色のハートが描かれた画面になっていた。

 

――――――忍耐のソウル

 

「なんか来るぞ、気を付けろ!!!」

「うん!!」

 

描かれたハートの意味に気付いてフリスクに忠告すると同時にテレビの画面に砂嵐が走り、テレビ以外全て闇に包まれる。次に瞬きして目を開けた時は、何処か見覚えのある巨大なナイフの大群が目の前にあった。

 

「チッ」

 

くるくると不規則に回転しながら迫ってくるナイフの合間に滑り込み、避けていく。

 

「!! お姉ちゃん、あれ!!」

 

ナイフの大群の中でフリスクが何かに気付いたらしく、声を張り上げる。フリスクが一瞬指を指した先を見ると、見慣れた橙色が目についた。

 

「あれ、『ACT』だ!! あれに触れさえすれば、何とかなるかもしれない!! だから、もうちょっと耐えて!!」

 

それだけを捲し立てると、フリスクは『ACT』を目指してナイフの中を進んでいく。それをきっと辿り着けると信じて見送り、自分はナイフを避けるのに専念する。何故此処に奪われた筈の選択肢があるのかとか、色々言いたいことはあるがそれを全て飲み込み、ただひたすら耐える。

 

You called for help(あなたは助けを呼んだ)………

 

不意に、聞き慣れたアナウンスが流れる。進んでいったフリスクを見ると、ナイフが掠めたらしく服や肌が少し切れていながら、何か大きく口を動かしていた。その口が閉ざされた瞬間、周りのナイフがガタガタと震え出す。

 

「………!!!」

 

どうなるかは分かってはいても、警戒をしておく。すると、突如として目の前が一瞬白く包まれ、次の瞬間にはナイフの大群が安らぎを感じるような緑色の、大きな絆創膏に置き換わっていた。

 

「わっ」

 

それは引き寄せられるようにフリスク、そして私へと向かってくる。緑色の弾幕は攻撃ではなく癒しの弾幕だと分かっているため、そのまま立ち続けていると、向かってきた絆創膏が体を包み込んでは消えて、暖かいものが体を包んでいく。絆創膏の名残の緑色の光が舞う度、腕の痛みとじくじくした火傷の痛みが引いていった。フリスクを見ると、フリスクの周りにも緑色の光が舞っていた。テレビには――――オレンジ色のハートが見えた。

それを確認した次の瞬間、またテレビに砂嵐が走った。その途端またテレビ以外が全て闇に包まれる。次にはあのバケモノの姿が目に映った。先程光っていたパイプが、色を失って駆動を停止していることに気付く。

 

「!!!」

 

緩んでいた警戒を張り直して周りを見回すと、バケモノの左腕部分からハエトリグサが生えてくるのを視界の隅に捉える。ブンブンという鬱陶しい羽音も耳に捉え、音の聞こえた方に振り返る。飛んでくるハエの大群を見た。背後のハエトリグサ目掛けて飛んでくるハエどもをフリスクに当たらないようナイフで切り捨てていく。ハエどもを切り捨てる度、ナイフがハエの体液で濡れる。それも今はどうでもいい。

 

ゴッ

 

「………がっ」

 

一瞬の隙を点かれて、腹にハエが突っ込んできた。痛い。

 

………()()()()()()

 

腹に突っ込んできたハエを手で掴んで投げ飛ばし、他のハエに叩き付ける。その場に踏み留まってナイフを振り続け、ハエを切り続ける。邪魔だ。

ハエの大群が消えたのを見て、また索敵を行う。ヒューッ、という何かが落下するような音を聞き、咄嗟に上を見る。ない筈の光を反射する黒いものが落ちてきているのを見て、叫ぶ。

 

「避けろォ!!!」

 

その声を聞くや否や、フリスクが遠ざかった気配がした。私もその場から走り、落下してくるミサイルの爆撃の雨の中を掻い潜る。地面にミサイルが落ちる毎に巻き起こる爆発の光でフリスクが見えなくなる。どうか死なないようにと祈り、回避し続ける。熱いとしか感じられない。

ミサイルの雨が止んだのを見計らってまた周囲に目を走らせると、少し遠くの位置にフリスクとバケモノの腕の付け根辺りがボコボコと盛り上がっていっているのに気付く。何かくる、と察知し、フリスクの傍へと走る。

傍に着いた同時ぐらいに、腕から分離した棘のついた毬藻のようなバケモンが三匹、空間の中を跳ねながら私達を食い殺そうと大口を開けて迫ってくる。だが、私がフリスクを庇う為に前に立つと、そいつらは慌てた様子で方向転換を行い、ぶつかってくることはなかった。

 

【どうして邪魔するのChara邪魔しないで殺せない殺せない殺せない殺せない殺せない殺せない殺せない殺せない殺せない殺さなくちゃ殺さなくちゃ殺さなくちゃ殺さなくちゃ殺さなくちゃ】

 

バケモノが譫言を呟く中、フリスクが反撃に出る。毬藻どもが何処かに消えた瞬間、走り出していく。そして空間を強く踏み込んで本来なら有り得ないぐらいに高く飛び上がった。

 

「…………えっ」

 

一瞬目を見開くが、ハッと我に返り、フリスクが攻撃を終えた後落ちてくるであろう地点に向けて走り出す。ナイフが大きく振られると、赤い軌道が追随する。バーが表示され、また少しだけ削れていく。

 

「ぐっ」

 

何事もないように落下してきたフリスクをキャッチし、現れたハエの大群の隙間を縫って離脱する。

 

「フリスクあんなに飛べたっけ!?」

「ううん、なんか出来ちゃった……」

 

回避していく中フリスクに問えば、フリスクは困惑したようにそう返してくる。『Player』とフリスク自身の意志が合致したことによるステータス上昇だろうかと見当をつけながら、走り抜ける。

 

「……まあ、今はいい。先にこっち何とかするぞ」

 

ハエの大群が消えたのを見計らってフリスクを降ろし、構えておく。すると、先程よりも量が多くなった手がついた蔦が此方に向かって伸ばされてきた。勢いをつけてまとめて切り捨て、やり過ごす。

 

ヴィーッ ヴィーッ ヴィーッ

 

また、警報が鳴り響いた。バケモノを見ると、パイプがオレンジ色に光り、テレビの画面にオレンジ色のハートが描かれていた。

 

――――――勇気のソウル

 

砂嵐が走り、全て闇に包まれる。次に目を開いた瞬間には、大量の手袋が不規則に向かってくるのが見えた。

此方を捕らえようと迫ってくる手袋と手袋の合間を抜け、避けていく。

 

「!」

 

周りを見渡していたフリスクが一点を見つめ、走っていく。それを見てから、まだ迫る手袋を避け続ける。

 

*You called for help………

 

フリスクは『ACT』に辿り着くことが出来たらしく、アナウンスが流れる。すると手袋達の動きがピタリと止まった。そしてまた一瞬、白い光が走る。眩しさで目を閉じ、次に開いた時には、手袋は白から緑色に変わり、親指を立てたサインになっていた。それに触れていくと、体が暖かいものに包まれ、優しい光が舞う。痛みが引いていった。

テレビを見ると、画面の中に青いハートが浮かんでいた。それを見ると同時に、また砂嵐が走る。全てが闇に包まれ、またバケモノが姿を現した。

 

【………は? なんでお前傷が癒えてんだよォ!!?】

 

先程つけた筈の傷が見当たらないのに気付いたのか、バケモノがヒステリックに叫ぶ。そして癪に触ったのか、蔦を私達に向かって伸ばしてきた。

 

FILE2 SAVED.

 

それを今までと同じように切り捨てていると、

 

【邪魔……】

 

ぼそりと呟かれた瞬間だった。

 

FILLE2 LOADED.

 

()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ!?」

 

フリスクが()()()驚いたように動きを止めてしまう。咄嗟にフリスクと蔦の間に体を滑り込ませ、ナイフを振るって()()()()切り捨てる。

 

「大丈夫か?」

「う、うん! ねぇ、今の、って……」

 

振り返って問えば、戸惑ったようにフリスクが目線を彷徨わせる。

そこで、違和感を覚えた。

 

何故、『もう一度』なんて私は思ったのだろう?

 

「お姉ちゃん!!」

 

FILE2 SAVED.

 

フリスクの呼び掛けにハッと我に返り、迫ってくる蔦を切り捨て続け、攻撃が切り替わる瞬間を狙って離脱する。

 

 

FILE2 LOADED.

 

 

何故、『もう一度』なんて私は思ったのだろう?

 

「!!? また……!!」

 

フリスクが驚愕する声にハッとして、思考を引き上げ迫ってくる蔦を切り捨てる。目の前の蔦を切り捨てたのは、これで三回目だ。

 

「……は?」

 

そこで、気付いた。

 

自分がとんでもなく矛盾した思考をしていることに。

 

「………!!!!」

 

その瞬間、何が起こっているのかを理解する。

 

 

あのバケモノによってセーブとロードが行われている。

 

 

FILE2 SAVED.

 

 

ゾクリ、と、背筋が凍った。

巻き戻されていることに、気付けなかった。

これが、巻き戻される側の恐怖感なのか。

 

…………()()()()()()

 

その恐怖感も振り払い、今は目の前の元凶に集中する。

人肌色の造形の目の部分から放たれる白い光線の中を駆け抜けていく。

 

 

FILE2 SAVED.

 

 

尋常じゃない速さで伸びてくる蔦を切り捨てながら、空間の中を駆け回る。

 

ヴィーッ ヴィーッ ヴィーッ

 

テレビの画面が青いハートを映し出し、警報の音が鳴り響く。足を止め、テレビを見上げる。

 

――――――誠実のソウル

 

砂嵐が走り、テレビ以外の全てが闇に包まれた。次に目を開いた時には、星のレールが横に真っ直ぐ並んでいた。進む以外に避ける道はないようだ、と思っていると、持ち主の居ないバレエシューズらしきものが、此方を踏み潰そうと奥から軽やかにステップを踏みながらやってくる。

 

「突っ込むぞ、いけるか!?」

「勿論!」

 

フリスクに声をかけ、横に並んで同時に走り抜けていく。タイミングを見計らって進み続け、避ける。

 

「あった!」

 

暫く走り続けていると、『ACT』がバレエシューズに混ざってやってきた。目の前にそれが降りてきたところでフリスクはそれを叩き、口を大きく動かした。

 

*You called for help………

 

フリスクが口を閉ざすや否や、アナウンスが流れる。それでも未だに迫ってくるバレエシューズを掻い潜っていくと、突然ガタガタと揺れ出し、バレエシューズがふわりと浮き上がった。

 

「あ……!」

 

フラッシュが走り、瞬きをする。次に目を開けた時には、横を囲っていた星のレールが緑色の音符に変化して規則正しく一列に並び、ふわふわと漂っていた。その星に手を伸ばして触れると、また体が暖かいものに包まれていく。視線を移した先のテレビ画面には、紫色のハートが浮かんでいた。

 

ザーッ

 

砂嵐が走り、全て闇に包まれる。次の瞬間には、またバケモノがいる空間に戻ってきていた。

白い種の弾幕が周りに展開される。弾幕の隙間に滑り込み、フリスクに迫ってきていたものを弾き飛ばす。それが止むと、次にはまたあの毬藻が召喚された。近くにいたフリスクを抱えあげ、逃げ回る。

 

「……」

 

現れた『FIGHT』を押し、フリスクは跳んでいこうとする毬藻の毛を引っ掴み、毬藻が向かう先にいたバケモノへと勢いをつけ突っ込んでいく。

 

「フリスクッ!!?」

 

フリスクの敵の攻撃を利用したアタックに一瞬ぎょっとし、此方を捕まえようと伸びてくる歪な手を一度切りつけ、フリスクが落ちてくるであろう場所へと向かう。赤い軌道が走り、バーが表示され、また少しだけ削れていく。攻撃を終えて落ちてくるフリスクに向けて、そのまま空中で撃ち殺そうとする指先にデイジーみたいな花がついた指鉄砲の弾丸が発射される。それに気付いたフリスクは落下しながらも体を動かし、弾丸の中腹部を蹴ったりして弾幕の雨をすり抜けていく。

 

「は?」

 

狭すぎる筈の弾丸同士の合間を抜けていくフリスクの有り得ない動きに思わず一瞬足が止まった。直ぐに我に返り、無事弾幕を切り抜けて着地したフリスクに駆け寄る。

 

「大丈夫か!?」

「うん、これくらいなら平気」

 

にっと笑って見せたフリスクの体を見ると、流石に全て避けきるのは無理があったのか、服を切って血が少し流れていた。命に関わるような傷はないと判断し、フリスクを貫こうとする蔦どもを切り捨て、受け流していく。蔦が消えると人肌色の造形の目が怪しく光り、光線を発射する。フリスクの手を引いて光線の中を通り抜け、避けていく。

 

ヴィーッ ヴィーッ ヴィーッ

 

四回目の警報の音が鳴り響いた。テレビ画面を見れば、紫色のハートが描かれている。

 

――――――不屈のソウル

 

砂嵐が画面に走り、テレビ以外が闇に包まれた。次の瞬間には、宙に浮かぶテレビと、巨大なノートらしきものが私達を取り囲んでいる空間にいた。

一斉に開かれたノートのパラパラと捲れていくページから、色々な言葉が飛んでくる。それに当たらないように避けながら、余裕があれば読んでみる。

 

『破滅』『破壊』『閉塞』『残酷』『恐怖』『悲哀』『狼狽』『没落』『堕落』『悪夢』『殺人者』『絶命』『憎悪』そして、『殺戮』、『絶望』。

 

全て後ろ向きな、恐ろしいまでに暗い言霊。特に『殺戮』と『絶望』が、私にとっては恐ろしかった。

 

「見つけた!」

 

ぱらり、ととある一冊のノートが捲れた瞬間、見慣れたオレンジがするりと出てきた。フリスクが駆け出し、それに触れる。

 

*You called for help……

 

アナウンスが流れてもなお流れる言霊の中を逃げ回っていると、文字がガタガタと震え出す。フラッシュが一瞬走り、次には緑色の文字へと変化していた。

 

『幸運』『創造』『自由』『平穏』『庇護』『幸福』『安堵』『成功』『親切』『吉夢』『空想家』『生命』『愛情』そして、『慈悲』、『希望』。

 

先程の後ろ向きな言葉とは真反対な、前向きな言霊達。その言霊が体に染み渡ると、緑色の光が舞い、暖かいものが体を包む。テレビの画面を見れば、緑色のハートが浮かんでいた。

 

ザーッ

 

砂嵐が走り、バケモノのいる空間に戻ってくる。

 

 

FILE2 SAVED.

 

 

それを理解した瞬間、また人肌色の造形の目が光り、白い光線が此方に向かって飛んでくる。フリスクの手を引いて光線の合間を縫って、避ける。

光線が止んだ次にはまた蔦が伸びてくる。避けながらも避けきれないものを切り捨てていく。

 

 

FILE2 LOADED.

 

 

フリスクの手を引いて光線の合間を縫って、避ける。目の前に突然軌道を変えた光線が迫り、急停止してなんとか避ける。こんな攻撃じゃなかったはずだ、という知らない筈の攻撃を知っているという矛盾した思考が巡り、またロードが行われたのだと気付く。

 

 

FILE2 SAVED.

 

 

目の前に迫る蔦を切りつけ、避けていく。

 

 

FILE2 LOADED.

 

 

目の前に迫る蔦を切りつけ、避けていく。

何故か唐突に増えた蔦が切りきれずに巻き付いてくる。

 

「なっ……ぐぅ!?」

 

そのままぐるぐると私に巻き付き、ギリ、と強く締め上げてくる。蔦の棘がパーカーを通り抜けて肉に突き刺さり、体のあちこちが悲鳴をあげる。

 

「えぇいっ!!!」

 

ふわりとそのまま体が浮き上がりそうになった所で、フリスクがナイフで蔦をぶち切ってくれた。

 

「ありがとう!」

「どーいたしまして!!」

 

短くそう言って、地面に足をつけて突き刺さっている蔦を無理矢理引き剥がし、ナイフを構え直す。血が流れるが、どうでもいい。

 

【邪魔だ退け邪魔をするな殺す殺す殺す殺す殺す殺す】

 

発狂するバケモノの目から白い光線が放出される。

 

 

FILE2 SAVED.

 

 

散弾型ではなくある程度此方を狙って飛んでくるそれの合間の安置を見つけ出し、滑り込む。

 

 

FILE2 SAVED.

 

 

光線が止むと、蔦が伸びてくる。切り捨てて、切り捨てて、切り捨てて進む。

 

 

FILE2 SAVED.

 

 

いい加減、全てが邪魔になってくる。腕を動かして切り捨てる。

 

 

FILE2 LOADED.

 

 

いい加減、全てが邪魔になってくる。腕を動かして切り捨てる。

 

「……!」

 

違和感を感じ、後ろに振り返って瞬時にナイフを下から切り捌く。案の定、蔦が伸びてきていた。

………違和感を感じたし、この攻撃を仕掛けてくるってことは、また……

 

「チッ」

 

苛立ちで思わず舌打ちをもらす。

…………こんなにも、巻き戻されるのが恐いなんて、虚しくなるなんて思わなかった。サンズは、独りでこれに耐えていたのか……?

 

ヴィーッ ヴィーッ ヴィーッ

 

五回目の警報の音が空間に鳴り響き、ハッとしてテレビを見上げる。画面には緑色のハートが描かれていた。パイプの一部が、緑色に光っている。

 

――――――親切のソウル

 

砂嵐がテレビ画面に走り、テレビ以外全て闇に包まれ、また別の空間に移動させられる。

 

ジュー ジュー

 

何かが焼ける音を耳にし、聞こえた上の方を見る。上を見ると、巨大なフライパンが料理をするように揺れている。そのフライパンが大きく揺らぎ出すと、フライパンから火が零れ落ちてきた。落ちてくる火を被弾しないように避け続けていく。

ふらりと、足元が揺らぐ。

 

「!!!」

 

何とかその場に倒れないように踏み留まり、火を掠めながらもその場が離脱する。血が足りないのだろうか。それでも暫く掻い潜り続けていくと、オレンジ色のものが降ってきた。

 

「! あった!!」

 

フリスクが走り、叩き壊すんじゃないかってぐらいに『ACT』を強く叩いた。

 

*You called for help………

 

アナウンスが流れる。それでも暫く火を避け続けていると、フラッシュが走った。思わず瞑った目を開けて上を見ると、緑色の何かが無尽蔵に降ってきていた。

 

「……おぉ………」

 

それが体に当たる度、また暖かいものが体を駆け巡り、優しい光が舞う。体に抜けていた力が戻り、貧血によって朦朧とし出していた意識がはっきりとした明瞭なものになる。先程開いた穴が塞がっていく感覚を覚えながら、テレビを見上げる。黄色のハートが、画面に浮かんでいた。

 

ザーッ

 

見上げた画面に砂嵐が走り、またバケモノのいる空間に戻ってきた。素早く周りを索敵し、警戒する。パイプの色が、五本色を失い、停止していることに気付く。

 

――――……あと、ひとつだ。

 

握り締めたナイフに力を入れ直し、バケモノを睨み付ける。

 

【どうしてCharaどうしてぼくを選んでくれないのどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!!!!!】

 

火炎放射機がまた腕から生えるのを見て、走り出そうとしたフリスクを引き寄せ、安直を見つけて移動する。じゅわり、と炎が掠めたらしく何処かが焼けた音がした。火炎放射機が引っ込むと、次はまたあの白い種の弾幕が展開される。回避し、弾き飛ばし、モノによっては切り捨てる。

次に、あの毬藻が出てくる。フリスク狙いでやってくるそいつらを切りつけ、軌道を逸らす。フリスクがその中の一匹に掴まり、飛んでいく。

 

【殺してやる殺してやる殺してやる】

 

毬藻に振り払われてもそのまま着地した腕の上をフリスクは疾走する。『FIGHT』を押し、捕らえようと向かってくる蔦を切り捨てながら進み、上へと伸びる太い蔦の棘を掴んでぶら下がる。通常であれば足が竦む程の高さまで来たところで棘を離して蔦を蹴り、バケモノの頭に向かって飛び降りていく。

 

「やぁあああ!!!!」

 

ナイフが振られ、赤い軌道が人肌色の造形部分に走ったのが見えた。バーが表示され、削れる。それを見てから私も捕らえようと迫ってくる蔦どもを切り捨て、体勢を整え、一気に走り出す。落ちてきたフリスクを何とか捕まえ、ハエが飛んでくる中を駆け抜け、散弾型の光線に切り替わってもなお駆け抜け続ける。

 

ヴィーッ ヴィーッ ヴィーッ

 

六回目の、警報の音がなる。テレビ画面に黄色いハートが描かれ、最後のパイプが黄色に光った。

 

――――――正義のソウル

 

ザーッ

 

砂嵐が走り、また全てが闇に包まれる。次の瞬間には、目の前に巨大なリボルバーが此方に銃口を向けていた。

 

「避けて!!」

「分かった!!」

 

タァンッ、という発砲音が空間に連続して響く。此方に狙いを定めて撃ち出される巨大な銃弾を二手に別れて避け、立ち回る。あの大きさの銃弾に掠りでもしたら腕がそのまま回転で引き千切られる。それだけは絶対に避けたい。

絶対に当たらないよう細心の注意を払って避け続けていると、フリスクを狙った銃口から『ACT』が飛び出した。これ幸いと言わんばかりに、フリスクは『ACT』をぶっ叩いた。

 

*You called for help………

 

銃口から飛び出し続ける銃弾を避け続けていると、不意に、銃弾の雨が止んだ。フラッシュが走り、次に目を開けて向き合ったときには、銃弾の代わりに四ツ葉のクローバーが銃口から飛び出してきた。

 

「わっとと!!」

 

あっちこっち手当たり次第にクローバーを撃ち出す銃を見てから水色のハートを映し出したテレビ画面を見て、私は、一つだけ安堵の息を吐いた。

 

―――――……これで、最後だ。あとは、あのバケモノ自身だけ……

 

すると、そこでテレビの画面に砂嵐が走り、黄色いハートがまた表示される。そこから重なっていたらしいハートが輪を作り、テレビの中で回る。そして、ゆっくりと此方に近付いてきた。

 

「……え、あ」

 

テレビの画面をすり抜け、うっすらと淡く光るハート―――ソウル達は、私達のところまで降りてくると、周りで円を描き、回り続ける。そして、それぞれのソウルから、淡い緑色のものが送られてくる。それをただじっとして受け入れると、体が暖かいもので満たされ、力がみなぎってくる。

 

……――――――祈ってくれて、ありがとう

 

優しい光が舞う中、そんな声が聞こえた。ハッとしてソウル達を見ると、それぞれのところに微笑んでいる人影が見えた。

 

……――――――ぼく達にまかせて

 

でもそれも一瞬で、ソウル達は出来るだけ回復を与えると、この暗闇の中の何処かへと去っていってしまった。

 

ザーッ

 

耳障りな砂嵐の音が響き、先程の空間に戻ってきた。目の前のバケモノは、未だにそこにいた。

 

Flowey's DEFENSE dropped to 0(Floweyの防御が0に下がった)!

 

敵のステータス減少を告げるアナウンスが流れ、バケモノが弱体化したことを知る。フリスクと瞬時に目線を合わせあう。

 

「あのバケモノの鉄壁はソウル達によって取っ払われたらしい、チャンスだ!! 畳み掛けるぞ、覚悟はいいな!?」

「―――勿論!!!」

「そうか―――――」

 

ナイフを握り直し、バケモノを睨み付ける。

 

「いくぞ!!!」

 

ナイフを振り、白い光線が飛び交う中を突っ切っていく。私を何度も捕らえようと伸びてくる腕に、ナイフを勢いをつけて思いっきり振り下ろす。ギャリリリ、という音を立てて、側面にザックリと深い傷が作られていく。

 

ザシュッ

 

何かが切り裂かれる音が聞こえ、

 

【………ぎゃああああああ!!?!?】

 

バケモノの断末魔が響く。

 

【そんな、さっきまではこんな奴の攻撃なんて効かなかったのに、どうして、どうして……!!?】

 

自分に何か異常が起きているのに気付いたらしいバケモノが焦ったように目を白黒させる。

 

【今までとは違ってソウル達に反逆されないように完全に支配した、だったら、なんで、どうして……!!!??】

 

そこで、バケモノはフリスクを睨んだ。

 

【お前、おまえ、オマエオマエ一体何をしたああああああああああああアアアアァァァァァァァァァ!!?!!?】

 

錯乱状態に陥ってフリスクに完全に狙いを定めたバケモノは、白い光線を撒き散らしながらフリスクに向かって腕を振り下ろした。フリスクはバックステップで後ろに飛び退き、振り下ろされた腕に連続して攻撃を行う。赤い軌道が幾つも走り、バーが削れていく。

そのままフリスクは腕の上を駆け上がり、そんなフリスクを潰そうと伸ばされるもう一方の腕を滅多切りにしながら進み、上へと伸びる大きな蔦の上を疾走する。

フリスクを援護するように、何処からか緑色の光がフリスクを包む。

 

「おっと、懲りない、なぁ!!」

 

意識を目の前の巻き付こうと迫ってくる蔦に移し、切り捨て、一本だけ掴む。蔦の棘が手に刺さるのも今はどうでもいいと切り捨て、それを引っ張ってバケモノ本体から引き離し、鞭代わりにする。

 

「ぜいやぁッ!!!!」

 

バケモノに近付きながら蔦を滅茶苦茶に振り回し、全体攻撃を行う。フリスクによって傷つけられた歪な腕を削り、裂いていく。バケモノの顔が歪み始める。

 

【やめてChara痛いよ痛いよ痛いよ痛いよ痛いよ痛い痛い痛い痛い】

「…………そうかよ。お前が誰かに与えてきた痛みよりはずっとマシだと思うがな?」

 

自分の体を駆け回るフリスクを振り払おうと、バケモノは体を素早く動かしたり、フリスクが乗っている部位を狙って攻撃を行う。それを全てアクロバティックな動きで避け、フリスクは攻撃を続ける。

 

赤い軌道が走る。バーが削れていく。気付けば、あともう半分を切っていた。

 

【邪魔をするなぁああああああああああああ!!!!!】

 

錯乱するバケモノに近付き、蔦をバケモノの腕に巻き付け、引っ張って食い込ませる。思いっきり引っ張ると、ブチブチと何かが引き千切れる感覚が伝わってきた。気持ち悪い感覚を切り捨て、蔦を巻き付けた腕がフリスクに向かって振られるタイミングでそれをきつく握り締め、ターザンロープの要領で空中に浮かぶ。

 

「!」

 

そして振り子の要領を使い、大きく反動をつけ、バケモノに近付いた所で蔦を切って顔面に向かって突っ込む。

 

「でぇりゃぁあああああ!!!!」

 

ぎょっとしたような顔を映し出すデカイ画面にナイフの柄を叩きつけると、

 

バリンッ

 

硝子が割れるような音を立てて、画面に柄が貫通し、亀裂が走った。

 

【アアアアァァァァァァァァァ!!!!???】

 

叫び声をあげるバケモノを無視し、ナイフを引き抜いて素早く落下をする。

フリスクに向かって発射される指鉄砲の弾を一瞬の足場にし、強く踏み込んで飛ぶ。本来の自分の脚力の跳躍では有り得ないほどの飛距離を進むのも今はどうでもいいと切り捨て、微調整を行ってバケモノの腕を切りつけ、突き刺す。

 

ザシュッ

 

そのナイフを深く突き刺したままフリスクを見ると、未だにバケモノに攻撃を行っていた。それを見て、ナイフを引き抜く。赤い軌道が走る中、身を捩って回避しようとするバケモノに滅茶苦茶にナイフを突き刺して突き刺して突き刺して追撃を入れ続ける。

 

【殺す殺す殺す殺す殺す殺すゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!】

 

発狂し続けて矢鱈滅多に蔦や白い種を振り撒くバケモノに、回避不可能の赤い軌道が走る。バーが削れていく。連続でフリスクが攻撃を入れ続けた所為か、バーは、あと少しだった。

 

【ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアァァァァァァァァァ!!!!!!!!!】

 

バケモノの狂気がミサイルや弾丸の雨が激化させていく。それでもフリスクは攻撃を切り抜け、飛び上がり、攻撃を行っていく。赤い軌道が走り、バーが削れていく。

ナイフを引き抜き、私もフリスクの援護に向かう。向かってくる蔦の一本をロープ代わりに腕から飛び、フリスクに飛んでいくハエども達を蹴り殺し、踏み潰し、切り殺す。

人肌色の造形の目から白い光線が放たれる。その中を駆け抜け、フリスクは攻撃を行う。赤い軌道が走り、バーが削れていく。…………あと、少しだ。

ロープを離し、フリスクを撃ち抜こうとする白い種を弾き飛ばす傍ら着地する。振り返ったフリスクの背中に手を当て、

 

 

「…………――――トドメを、さしてこい」

 

 

そっと、耳に囁いた。

 

 

「…………うん!!!」

 

 

私の言葉にフリスクは決意に満ちた目で頷き、駆け出した。

 

ミサイルが降り注ぐ。上がる火柱と本体を避け、飛び上がる。

 

ハエの大群が飛んでいく。切り捨て、バケモノに攻撃を与える。

 

指鉄砲の嵐が起きる。弾を足場にし、回転を加えて切りつける。

 

毬藻のような生き物が飛び出す。掴んで乗って、突っ込んでいく。

 

蔦が伸びる。ロープ代わりにして、振り子の勢いで先程私がつけた画面の亀裂を蹴る。

 

白い種が周りを囲む。何発か掠めながらも、それでもナイフで切りつけ続ける。

 

そして、地面に着地したと同時に、腕がフリスクに振り下ろされる。

 

【シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!】

 

赤い爪が服を切り裂きながらも、フリスクは何とか回避する。そして、爪の先から、また駆け上がっていく。何度もフリスクを阻もうと、集中して攻撃が飛んでいく。それを避け、弾き、切りながら、フリスクは疾走する。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

思わず、叫ぶ。

 

フリスクの、勝利を願って。

 

トンッ

 

腕の先まできたフリスクが、強く踏み込んで、跳んだ。

 

その瞬間が、酷く遅く感じた。

 

「やあああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 

 

 

ザンッ

 

 

 

 

ナイフが、振り下ろされる。

バーが、全て、削られきった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。