【Lily】
ピッ、という音がして、フリスクが『ACT』ボタンを押したのを見た。
話す事を選択したのを見て、私も行動を起こす。
「えーっと、初めまして、ダミー君。一方的に話すけど許してね?私はリリー、この子の姉なの。よろしくね。ほら、自己紹介して?」
一応しゃがんで目を合わせて、ポフン、と出来るだけ優しい言葉と優しい力でダミーの頭を撫でる。そして、フリスクに自己紹介するように促した。……つか、こうやってみると結構愛嬌ある顔してるなこの子。
「………」
何かを言ったのだろうか、フリスクはパクパクと口を動かした。
……どうやらフリスクが誰かに何かアクションするときは、私には声が聞こえなくなるらしい。確かに、ゲームではフリスク喋ってはいてもテキストボックスにフリスクが言ったことは一言も書いてなかったしね。
…『Player』はフリスクの声がどんななのかを知らないと思うと、少し心が落ち着いた。
*
*……
*
うるせぇほっとけ。こちとらぬいぐるみに話しかけてるようなもんだぞ。フリスクはいいけど私は端からみたらヤベェ奴だよ。
*
トリエルさんを見てみる。
……あ、本当だ、嬉しそうにしてる。ゲームでは見れない貴重なシーンだな、これは。
*
*
そうアナウンスが流れた瞬間、白黒から切り替わって色が戻ってくる。私も撫でっぱなしだった手をダミーの頭から降ろした。
「わぁ、いいわね!よくできました。」
トリエルさんはにっこりと笑いながらそう言って、部屋の奥に進む。
「……それじゃあ、いつかまたね、ダミー君」
そう笑いかけてから立ち上がる。すると、フリスクが抱きついてきた。ちょっとよろけそうになりつつ受け止める。
「うおっと、どうした?」
「お姉ちゃん、ぼくもなでて」
「ん?いーよ、頑張ったなー」
要望通り撫でてあげると、えへへ、とフリスクはいいながら破顔した。やだ、うちの妹天使……
……この顔も『Player』は知らないのだと思うと、結構嬉しかった。
「さて、トリエルさん待たすといけないし、行こっか」
「うんっ」
手を繋いで二人でトリエルさんの後を追った。