ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに地下迷宮の息吹》


第63話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか63

 

「アイズさん、おはようございます。」

 

「おはよう、レフィーヤ。」

 

結局レフィーヤはお姉ちゃん呼びではなく以前のままさん付けで落ち着いちゃった。少し残念な気がするけど、もしレフィーヤまでお姉ちゃん呼びしてくるようになってしまったら本当にどうなっちゃうことやら……。妹の可愛さ属性持ちの後輩という罪な存在が妹という犯罪級の健康になってしまうと私はどうしたらいいのか分からなくなっちゃうまであったかもしれないし。ってすでに思考が滅茶苦茶になってるし……。

 

「あれ、いなづまちゃんはどうしたんですか?」

 

「今ちょっと体調が悪いからもう少し寝てるって」

 

そう!電はどうも体調を崩してしまったらしいので部屋で寝ている。普通に生活するとまず電よりも早く起きることは難しいので、普通におきたら掛け布団から電の寝顔があったのは初めてかもしれない。もっとも原因が原因だけにお姉ちゃん式心配回路がばりばり動作しているけど……。

 

「……いなづまちゃんも体調を崩すんですね。」

 

「電も人の子……らしいからね。」

 

変にぼかしてしまったけど決して間違ってないし。だってなんか電だもん。ロキが言うには神様の端くれ、電が言うには(かみ)との境界線を失った巫女。二人の言うことは矛盾しない。

 

「らしいって何ですか……。」

 

「だって私の同い年の時より強いし。」

 

どうでも良いレベルで思い出してしまって少しすねたように返事してしまったが対外的にもこれは大凡通じるだろう内容だ。私の幼少期を知るリヴェリア達ならなおさら"事実"を知らなくても"らしい"に同意してくれるだろう。

 

「……それはすごいですね。12歳、でしたっけ。」

 

「うん。」

 

まあ、でも可能性だけなら白髪の兎さん……ベル君にも同じくらいのものを感じてるから期待してるんだよね。何か分からないけど、今なら"分かる"かもしれないけど、可能性を感じる。って今は関係ないか。まあ、レフィーヤは間違いなくリヴェリアの後を継ぐものになるだろうね。強いし、向上心も凄いし、ね。

 

「……私も頑張らないといけないですね。」

 

「レフィーヤは冒険者なりたての頃の私みたいな変な無理の仕方をしちゃ駄目だよ。"冒険者は冒険してはいけない"し、強さだけが電の強さじゃないことはレフィーヤも分かってるよね?」

 

隙あらば自分語りのように過去の自分の話をちらつかせてしまったけど、失敗だったかもしれない。輝く可能性に満ちたレフィーヤの瞳が別種の輝きを放っていることに気づいたころには言い切っており、既に軌道修正も難しそうだ。

 

「アイズさんにもそんなことがあったんですね。」

 

まるで私が生まれたときから戦姫(バトルジャンキー的二つ名)だったかのよう思われてしまうのは心外だ。でも、自分も最近までリヴェリアやフィンらレベル6の先人達にも幼少期があったことを全く顧みることはなかったし、むしろレフィーヤよりも偏見が強かったかもしれない。

 

「き、気になる?」

 

「はい!」

 

やぶ蛇だとは思ったけどつい言ってしまった一言に自分の口は塞ぎようがないことを改めて自覚する。それは気になるよね。憧れ、らしいし。ああ、なんか照れくさい。

 

「それじゃ、何から話そうか……。ええと、あれはまだ私が駆け出しで、ロキ・ファミリアもこんなに大きくなかった頃……」

 

目を閉じて脳裏に描かれるダンジョンの壁と床と散らばったモンスターの残骸と……。それはロキ・ファミリア始まりの三人とそれを追いかける戦いと力に背中を追われていた少女の話。私、アイズ・ヴァレンシュタインが一番荒れていたと自覚する黒歴史とも言える記憶だ。

 

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お久しぶりです。しばらく体調が悪く、行事が重なるなどして投稿出来ていませんでした。取り敢えず生存報告的投稿です。

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