ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに瑠璃溝隠を発見》
《ここに魑魅魍魎を投下》


番外3

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか 番外3

 

ダンジョン入り口、バベルの正面の広場ではロキ・ファミリアの精鋭が続々と集まっていた。オラリオ屈指のファミリアの一級冒険者7人、二級冒険者1人の超豪華パーティーでのダンジョンアタックがこれから始まろうとしている。

 

そんなバベル前、即ちダンジョン付近に存在するこの広場は新品の重量級武器を携えた大切断(アマゾン)や熱い恋に燃えるアマゾネス、待ち合わせの間服の裾を妹に掴まれっぱなしでどうしたら良いか分からないけどすごくうれしい剣姫、待ち合わせ場所の人の多さに困惑して姉の服の裾をつかんで離さない妹等々多様な人が集まる。そんな多様な人たちもこれからダンジョンの洗礼を受けるかダンジョンのふた(バベル)での休暇を楽しむかの2つにしか分けられない。それで済んでしまう。オラリオはそんな都市だ。そんな中で隠れるように、それでも小柄ながらしっかりとした存在感溢れる存在と糸目がチャームポイントのスレンダーな女神が居た

 

「で、ロキ。何故かレベル6の中で一人だけ置いて行かれてしまったしがないドワーフに何のようじゃ。」

 

「そんなつれないこと言わんといてな。別にガレスのことを忘れておいていった訳やないんやで。ガレスが居らんかったらあの子達ものびのびダンジョンに潜れんかもやしなぁ?それでちいと探し物に付き合ってや。」

 

そんなことを言ってカラカラと笑う主神に、呆れ顔ながらもついていく小さな巨人(ドワーフ)の背中。アンバランスに見えてほどよいバランスが存在する不思議な関係性である。そんな二人は気軽な関係性をそのまま広場の外に持ち出していく。町の中を歩き、少し道をそれたあたりでガレスは現状に念を押すかのように言葉を投げかけた。

 

「それで、わしを連れてここに来た理由はなんじゃ。本当に探し物かのう?流石に"でぇと"というもんでもないじゃろう?」

 

関係性が悪いというわけでもないのにそんなことを言うなんて、というほどガレスの性格が悪いわけではない。むしろかなり温厚なドワーフであり激情を表すことはかなり珍しい。余計な付け足しではあるが冗談を言うのも珍しいしそこまでうまくない。茶目っ気はある。それでで"でぇと"なわけだがそれにしては皮肉が効きすぎている。

 

「この地下水路、妙な気せんか?」

 

そう。ここは地下水路。そんな場所で今から探し物をするという発言。まったく筋が通ってるように思えない。本気で思っているならただの人選ミスだとしかいえないとガレスは思った。本来ベートに頼むような内容である。偏見であるところを否定できないがベートのような獣人は基本的に嗅覚に優れ、探し物に最適ではある。それなのに連れてきたのはガレス。いったいどういう理由だろうか?

 

「妙というのはわからなくはないが……そういうことじゃないのじゃろう?わしにはわからんのう。」

 

前方から視線を逸らすことなく答えるガレス(第一級冒険者)ロキ(トリックスター)は陰湿な笑みを漏らす。いや、陰湿というにはいささかポジティブな意味合いを含みすぎているような、どちらかというと少しばかり気恥ずかしいだけで本当は嫌っているわけではないような間柄の親戚-この世のものとは思えないくらい政策のいい継母か何か-が嫁に与えた難題を嫁が見事に自力で解いて見せた時の表情といえるかもしれない。とにかくまどろっこしいかもしれないが、子供(ガレス)がこの場の"違和感"を認識できているのは(ロキ)にはバレバレだということだけである。

 

「まあ、ええで。それで今日はガレスにあれを()()()()()()()と思ってな。」

 

「はあ、地上(そらのした)でもこの役回りは免れんのかのう。」

 

いつの間にやら主神の手には謎の巾着が、視線のお先には怪物祭の時のあれ(植物型のモンスター)が姿をあらわす。今日一番の呆れ顔とそれに対照的な安定感を見せつけていく凄腕ドワーフ。だからこそロキはこの状況にガレスを連れてきたのだ。

 

「魔石適当に投げるからうまいこと切ってな。よろしゅう頼むで。」

 

「……行くかの。」

 

ガレスの返事を皮切りにロキが魔石を投擲する。それにつられて動きだすモンスター。武器の大斧を片手に踏み出すガレス。それを見守る主神ロキ。まもなく地下水路(そこ)は果てしない戦場になるのは必然だった。

 

「やっぱりガレスの戦いは地味だけど規模がでかいんやなぁ、いや地味というほどでもないか。」

 

高い防御力とパワーに支えられた重量級武器による火力が基本のガレスと"調教師(ティマー)の手から離れた状態の"モンスターが暴れまわるということは、豪雨や洪水による水害を防ぐために広大な地下空間を利用するよう設計されている地下水路とはいえ決して無事では済まないわけで、容赦ない振動と攻撃の()()によって見事なまでに破壊が尽くされていた。保水能力をかろうじて残した床やちょうどよく間引かれたようにも見える柱がその惨状を克明に記憶しているようだった。

 

「ふぅ……(これで、地上の分は)(全部やな。さて、)(答え合わせ)(と行こうか。)お~い、そこらへんで魔石見つけたら拾っておいてな~。」

 

最後のモンスターを借り終えて戻ってくるガレスを見て一瞬一息ついたような気持ちになったロキだが、再度気を入れなおす。ここは地上。正直者(こどもたち)を引き連れた曲者たち(かみがみ)が跋扈する。仕事と退屈に苛まれた天界よりもずっと面白い最高の世界(賭場)であると。




本編仕上がらなかったので番外編だけ投稿です><
しかも番外2ではなく番外3が先にできてしまい時間の都合もあるので投稿しちゃいます。
ちゃんと本編も番外も書いてるので安心していただけると幸いです。

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