ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか 作:もんもんぐたーど
ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか48
「どうしたのだ?」
封鎖された街の入り口で、突然殺されると叫んだ獣人の少女が現れて面々が呆気にとられる中、最初に少女に言葉を投げかけたのはロキ・ファミリアのママ リヴェリア・リヨス・アールヴだった。
「あの、冒険者が、あれが、あの。」
「落ち着くんだ、ほら、吸って、吐いて。」
「すぅ~はぁ~すぅ~はぁ~、はいっ。」
「っ!?
気づいたら街の外へ出てきたその少女はリヴェリアに介抱されながらもゆっくりと真実を紡ごうとする。番犬代わりにベートを携えたリヴェリアは警備員に割り込む隙を与えさせずに話を進めていく。ベートは一瞬、警備員の肩越しに一つの影を見た。少女の背後、未だに状況が読めていない警備の冒険者のさらに向こう側。さっきまで人一人として居なかった筈の緩衝の空間に、一人の
「
「……それでさっき、冒険者が、あの受け渡しをした人が、殺されてて、私も……殺されちゃうんじゃないかって。」
……殺される?荷物の受け渡し?地上まで?そんなこぼれ落ちたような荷物の本質からかけ離れていくような情報だけが彼女 "ルルネ・ルーイ" からあふれてくる。まだ繋がらないバラバラの断片で一つ一つが離れてもはや無関係かのように聞こえる。
ギルドを介さない闇の依頼である故直接会っているはずの依頼人は妙に良い金払いに容姿の分からない格好だという。怪しい要素がこんなにあっても引き受けざるを得ない冒険者がいるという事実もロキ・ファミリアの一行には重くのしかかってくるが、今はそんなことを考えている場合ではない。このやりとりをしている間も
「……それで、抜け出そうと?」
「うん…」
「ってことは今お前がいま"例のぶつ"を持ってるんだな?」
「失礼します。ルルネ・ルーイさん、ちょっとこっちへ来てください。今は鞄の中は見ないので。」
「え、ちょっと、えぇ?」
アイズの背に隠れじっと動静を見守っていたいなづまが飛び出し、ルルネと立ち位置を入れ替える。
"失礼します"の時点でルルネの目の前に立ち、言い終わるときには既にいなづまが街の境界線の内側に、ルルネは街の境界線の外側にいた。当事者のルルネも主に尋問に当たっていたベートとリヴェリアもいなづまの突然の行動に呆気にとられる。ただそのなかで、アイズは"何かが起こる"ことだけは認識できた。
「
「え?って、ああ地面がっ?」
その瞬間目の前でいなづまとその奥に見える
「え、街が燃えてる!」
「……今から街に突入する。リヴェリア、できる限り大きな魔法で引き寄せてくれ。ティオナとティオネは町の方へ、アイズとベートは……ルルネとこの場を離れて。取り敢えず君はここにいてくれ。」
「こいつらは、この前の?でも今回は
「急ぐわよティオナ。」
「え、え?」
いなづまの小さすぎる声を聞き逃さなかったアイズは思わず疑問の声を漏らす。見覚えのあるー最近地上で暴れているのを見たばかりの細長い植物系ーモンスターに真っ先に気づいたフィンは団員に指示を飛ばす。魔導師組であるリヴェリアとレフィーヤは驚きはすれども冷静に、アマゾネス姉妹はいつも通りにそれぞれなすべき事を遂行する。巻き込まれた冒険者は混乱していたが、ここが一番の安全地帯なのはフィンやリヴェリアという
「……どうしよう。」
「とにかく地上に出るぞ。お前、負ぶってやるから乗れ。団長命令だから乗せてやるが次はない。」
問題はルルネとアイズ、ベートの3人だった。相変わらず状況に追いつけずぼけっとしているルルネといなづまが気になって仕方ないアイズ、"弱い"冒険者に手を煩わされることが嫌いだと公言してはばからないベート。フィンは何を期待してこの3人で行動させることにしたのか、その意図を真っ先にくみ取ったのはベート・ローガだった。
「アイズも、ってどうしたんだ。」
「……ベート、私が時間を稼ぐから、その子を連れてって。ベートの足なら1日足らずでつくよね?」
「指示を無視してここに残るのか?」
ベートは恐れ縮こまる少女を背中に乗せて、一点を見つめて動かないアイズの背中に視線を注ぐ。なんで自分が想いを寄せている彼女の背中はこんなにも寂しげで、辛そうで、
「多分
覚悟を決めるようにデスペレートに風をまとわせる剣姫に俺はこれ以上何を言えるだろうか。ただ一つだけ、一つだけ気になってしまったことがある。ほんの少しの違和感を。
「分かった。俺一人で連れて行く。だがよ、アイズ。お前には何が見えてるんだ?」
「え、あ……、これは、うん、後で話すから。ごめん。
妙に湿っぽい返事とともにエアリアルを付与されたベートは最速で地面を蹴り出す。背中で震える少女を振り落とさないように。同僚から託された
投稿遅刻奴になってしまいましたが直前の日曜日分です。前回の日曜日に投稿する予定だった分は閑話なので今週の平日に投稿します。よろしくお願いしますね。