ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに地下迷宮の息吹》


第44話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているのだろうか44

 

今回のダンジョンアタックは一週間弱という日程の都合上、遠征ほどではないですがそれなりに準備が必要なのです。準備はバベル正面の広場に正午きっかり。約半日有るのですが、特にティオナさんは大双剣(二代目ウルガ)を受け取って職人からの愚痴も回収しないといけないことには武器もないのでそれなりに忙しいのです。当然私は自前の回復薬いくらかとディアンケヒト・ファミリアでの買い出しメモの作成があって、そして今回はレフィーヤさんの指導組として、リヴェリアさんとレフィーヤさんとで魔導士御用達の魔女の家(?)、魔女の隠れ家に行くことになっているのです。

 

 

魔女の隠れ家には当然魔女さんがいる訳ですが、魔女は、エルフや精霊ら、そして神の恩恵(ファルナ)を受けた冒険者が扱う魔法とは違う種類の魔法を扱う技能集団で種族でその多くは魔法大国 アルテナに居を構えているのです。

 

 

私の感覚で言えば鎮守府付きの妖精さんに近しい存在なのです。お互いの存在がメリットを与え合う、互恵的存在といった感じでしょうか。とにかくほぼ唯一の魔導具供給源である魔女なしにはオラリオの魔導士稼業は成り立ちませんし、おそらく唯一の取引相手である魔導士がいなければ魔女は生活することが出来ません。

 

「レノア、邪魔するぞ。」

 

「……あぁリヴェリア来たか。……小娘と、見慣れない子だね。」

 

「ご……ご無沙汰しています。」

 

「初めまして、いなづまと申します。よろしくお願いしますね。」

 

初めて妖精さんと出会った時を思い出す。初めて艤装を背負おうとしたときに艤装からぴょこぴょこ飛びだしてきて、一瞬自分が静かに暮らしていた小人の家を荒らしてしまったように感じられたのも懐かしい記憶なのです。

 

オラリオに来てからは他の人が見ているところで艤装から出てこなくなってしまいましたが、鎮守府を移ったときと同じ反応なので多分新しい環境に慣れていないだけだと思うのです。

 

と、話がそれてしまいましたね。えっと魔女のレノアさんなのですが、小さな(ルナ)(ステラ)があしらわれたアクセサリーがいくつか垂れる、萎びたとんがり帽子に黒のローブ、二重の属性に対応する首飾り2本、長く垂れた鼻といった容姿で珍しい見た目ですがその雰囲気はとげとげしいものではなく、むしろ温厚な部類なのです。ちゃんと驚いてはいるのですが恐れるものではない気がします。

 

「おや、小さい割には肝が据わってるじゃないか。(それに、いやなんでもないね。)

 

魔女は希少種で長命種でもあるので、この格好は必要なものを端的に身にまとった結果だと思うのですが初見でこの格好だとよく驚かれるのではないでしょうか。

まあ、戦闘向きの職業でもないですし殆ど趣味であってもかまわないですし、この格好(それだけ)で作業が捗る(はかどる)ならそれでいいと思うのです。

 

「それで、魔宝石の交換は終わったか?」

 

「不備はないよ。要望通りの最上位(とくせい)のやつを取り付けてある。まったく、『遠征』だかなんだか知らないが4つも魔宝石を駄目にして……。」

 

目を細めてため息を吐き出すレノアさん。いくら長命種のエルフとはいえ同等以上に長い時を地上に刻んできた魔女さんには子供、いや孫のようなものかもしれないのです。

 

「魔導師の杖は、魔力を高めて魔法の威力を左右する。分かってると思うが魔宝石は希少品なんだよ。」

 

「ああ、無下に扱ったりはしないさ。」

 

魔宝石は魔女しか作り出せない。正確には作り出せはしますが魔女ほどでもなければ実用的な魔宝石にならないのでこの認識は正しいのです。例外は熟練妖精さん達ですが、それでも自分たちで使う用(自給自足)が限界なので魔女という存在の希少性がうかがえる一面なのです。

 

え、あれ?妖精さん達が艤装から出たがっているのです?"魔女さんと話したい"のです?わかりますけど、え、ちょ、ちょっとまってくださいなのです。"くぁwせdrftgyふじこlp"わ、わ、どうしたのです?なのです?

 

レフィーヤさんもそんなきょろきょろしてどうしたので、え?あれは、

 

「あっ、あれって魔導書(グリモア)ですか!?」

 

「はわわ、すごいのです。」

 

「まさかレノア、おまえが作ったのか?」

 

魔導書を見ていたレフィーヤさんとリヴェリアさんの向きが入れ替わり、それぞれレノアさんと魔導書に移る。

 

「いひひっ。あたしがそんな大それた魔術師(メイジ)かい?魔法大国(アルテナ)に知人がいてね、よしみで一冊分けてもらったのさ。」

 

ちなみに魔女の自称は魔術師(メイジ)なのですが、これは謙遜なのでこっちから話しかけるときには使わない方が良いと思うのです。何故かこういう謙遜が好きな魔女さんが多いようなので勘違いしない方が良いとかなんとか。

 

「いま競売中でね、ひひっ、良い具合に競り上がってるだろう?」

 

「と、とんでもない値段ですね。」

 

「読むだけで魔法が使えるようになれるんだ、当然だな。」

 

「一定の確率で魔法枠も拡張できる代物ですしね。えっ、」("装備枠2スロットに)|《『装備』すると消滅せずに読める"のです?》妖精さん?え?

 

「ん……まあ、それも上限の三つまでの話さ……。魔法を4つ以上扱っちまう常識外(おまえたち)には無用の長物だろう?そこの新入りも似たような匂いがするがね。」

 

妖精さん達には今度、今度ここに来たときには、ちゃんと時間をとるので今日は勘弁してください。お願いしますよっ。すると渋々ながらおとなしくなってくれたのでダンジョンアタックが終わったらできる限り早くここに顔を出すことにするのです。

 

「はわわっ、流石魔女さんなのです。」

 

「それにおまえ達、魔法大国の連中に目の敵にされているよ。小娘の方はなんだか大層な二つ名まで付いてるだろう、いひひっ、夜道には気をつけな。」

 

「えっ、それは。」

 

「なのです?」

 

「レノア、余計な脅し文句はよせ。それにレフィーヤも真に受けるんじゃない。」

 

「は、はいっ。」

 

今朝の悪寒、妖精さん達の動揺、魔女の笑み、やっぱりなにか起こってしまうのですか……。




一日遅れの投稿なのです。ごめんなさいなのです。

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