ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに地下迷宮の息吹》


第43話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか43

 

朝ご飯を食べて目が覚めた駆逐艦、電なのです。

ところで今朝発覚した問題について考えるのをやめて後回しにしていたのですが食事もひと段落ついたのでいよいよ問題に向き合うことになったのです。

 

「ところでいなづま。」

 

「な、なのです?」

 

妙に緊張感の高まる語り口なお姉ちゃんですが、今回は天災的な要素があったとはいえ問題の発信源というか震源地なのでわざわざ演出しなくてもと思わなくはないのです。察しの良い方はお気づきかと思いますがあれです。

 

「4000万ヴァリスって最短何日引きこもれば稼げると思う?」

 

「最軽量装備で1週間かからないくらい……でしょうか。」

 

連日引きこもると深い階層で狩れるので1日あたりの稼ぎを大きくすることが出来るのです。

当然危険を伴いますが4000万ヴァリスなら30階層前後で70時間くらい集中的に狩ればいけるはずです。ファミリアの遠征は普段行きづらい深層での狩りで低級冒険者の経験値と高級冒険者の食い扶持を確保することにあるので、比較的移動が早いお姉ちゃんなら同じことが出来るのは道理なのです。

 

「え、アイズさんそんなにお金必要なんですか?」

 

となりでご飯を食べてる憧れの先輩が同僚にお金の話をする、という視点のレフィーヤさん的にはかなりカオスな状況なのでは?大変忖度したというわけではなくて……

 

えっとですね、多分龍田さんが新月さんとか早霜さんに同じような話をしていると考えたら今のレフィーヤさんの表情は想像できないと言うほどのことでもないのです。

 

「うん、ゴブニュの代剣壊しちゃったから……。」

 

"まさか5日でこれとは……"なんてぼやくゴブニュさんの姿が思い浮かびますね。さらにその裏側でティオナさん(アマゾン)の大剣を打っている職人さんたちが居ると思うと涙が出ますね。

 

「ああ、そういうことですか。」

 

「やっほーアイズ、いなづま。ダンジョン行こー!ベートも持ってきたよっ。」

 

「人をもの扱いするな。」

 

「騒がしいわね、アイズといなづまは食事中よ?」

 

ここでティオナさんがベートさんを引きずってきて状況がカオス化、フィンさんにさりげなくご飯の殆どを返されて一人で食べることになっていたティオネさんも会話に参加しさらにカオスが広がるのです。

 

「てかティオネ、それ団長のじゃないの?」

 

「団長ったらね、一人で食べきるのは勿体ないからって半分こしてくれたのよ♡ふふっ……これも二人の共同作業ってやつかしら。うふふふ……。」

 

団長とティオネのやりとりを知らないティオナさんが燃料を投下。重度の恋煩いを発症している彼女ですが、ポジティブシンキング自体は見習いたいものです。それ以外については、ノーコメントなのです。

 

「それでティオネ、」

 

「いやよ、一週間も団長から離れるなんて」

 

「フィンも誘おうと思ってるんだけど……。」

 

この短いやりとりのあと一瞬の静寂を挟むと、ティオネさんの方から重機のような激しい音がし、あっという間に彼女のテーブルの上の食べ物は食べられない大きな骨などだけになってしまったのです。訳が分からないのです。あの大きなお魚を食べたのにスタイルが一切変わらないとかさっきの音とか、団長が絡んだときの判断力とか。いや最後のはいつもでしたね。

 

そういえば圧縮して体積を0にすればすればカロリーは0になるっていう持ちネタの芸人さんが居ませんでしたっけ?鎮守府で時々みんなで見たときはすごく面白かったのですがリアルで似たようなことが起こると呆然とするしかないのですね。すこし賢くなった気がするのです。

 

「しょーがないわね、私もついて行ってあげるわ。」

 

「「????」」

 

「やったー、ベートもいこう。」

 

お姉ちゃんとレフィーヤさんが仲良く首をかしげていますが当然の反応なのです。まあそうなりますよね。あ、れ?

 

「ぅっ、」

 

「いなづま?」

 

「……何でも無いのです。」

 

大丈夫、でしょうか。すごく嫌な予感がするのです。この前の遠征の比じゃない、何かが起こる。本当にそれしか分からない今の私を悔やむと同時に、そのまま視える状態だったらどうなっていたのか予想が付かない位の重い感覚に戦慄するしかないのです。

 

「本当に?」

 

「……嫌な予感がする、それだけなのです。大丈夫なので心配しなくても……。」

 

電が言い終わる前にアイズ(お姉ちゃん)は電と視線を合わせるように腰を落とす。

そして妹の両頬に手を当てた姉は、ほどよい力加減で頬をひっぱったり離したりし始める。妹は自身の状況についていけなかったのかしゃべるのも中断して、姉の瞳に映されていることしかできなかった。姉は妹の不思議(いじょう)が妹を喰らってしまうことを恐れていた。強いのに、ともすれば消えてしまいそうな不確かさに気づいていたから。神々と同じ視界を持つ(いなづま)が人並みの感覚であることにーそれがどれだけ奇跡的かには気づいていないがー気づいていたから。視える不幸に気づいていたから。二人で過ごした時間が、まだまだ短いけど濃厚な時間が、それを教えてくれたから。

 

「こんなお姉ちゃんかもしれないけど、出来ればもっといなづまの話、聞きたいかなって。これでもちゃんと心配、してるから。」

 

だからお姉ちゃんはいなづまのことをもっと知りたい。いなづまのところに届くかは分からないけど、もっと近くに、欲を言えばそばに、居てあげたい。

 

「いなづまちゃん、さっき本当に顔色悪かったんですよ?」

 

「面目ない、のです。落ち着いたのでもう大丈夫なのです。弟子に心配を掛けちゃうのは、流石に良くないのです><」

 

そういえば今の状況だけど、いなづまとレフィーヤだと当然レフィーヤの方が身長は高い訳なんだけど、何故か全然レフィーヤの方が年上に見えないというか、師弟関係が正常に見える。なんでだろう。あ、いなづまが戦闘状態になってるからか。艤装(といなづまが呼んでいる背中の固有武装)まで出しちゃって、完全に貫禄がある。レフィーヤは丸腰だし戦闘に入ってもここまでの威厳はないかなぁ。

 

話が逸脱するけど時々、何故かリヴェリアといなづまがダブる瞬間があるんだけど、これは正常な感覚なのかな?寝ぼけてるときに掛け布団を剥がしてくるところとか。うーん、わからない。




最近ちゃんと執筆の時間がとれてないので隙間時間で執筆していますが、なかなかまとまりとテンポのある文章を書けているような気がしません。まとまった時間で文章を書いた方が文のまとまりはいいんですよねぇ。

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