ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか 作:もんもんぐたーど
ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているのだろうか42
「そこー、団長に皿を用意しないの!」
朝食前の忙しい時間帯の食堂だが、その中央には一見奇妙な指示を飛ばす褐色肌の少女がいた。このファミリアにそんなことをし、また出来るのは1人しか居ない。
「ティオネさん……。」
「いなづま、見ちゃだめ。」
アマゾネス姉妹の
「どうして、なのです?」
「もうね、ティオネは助からない。手遅れだから、いなづまに移らないように。」
「団長さんは?」
「……。なんとか生きてる。ラウルが合間を見て胃薬を渡してるみたい。」
お姉ちゃんは人情深いですが結構ドライなところがあって助からないと判断したときの引き方が清々しい位なのです。が、それでもここまではっきり助からないと言い切ったのは知ってる範囲ではじめてなので余程酷い状態なのでしょう。
そしてサラッと管理職ムーブしているラウルさん。意外かもしれませんがちゃんと次期団長の筆頭候補なだけ有ります。まあ団長としての胆力とかはこれからに期待なのです。
「ところで、あの。」
「なに?」
十分に視界が無くとも艦娘に備わった各種の感覚は正確に周りの状況を把握するだけの能力がある。そうでなければ無灯火での戦闘が基本になる夜戦を戦い抜くことは難しい。でも、でも、見えないよりは見えた方がずっと良いのは間違いない。
一般的な少女が暗闇を嫌うのと同程度には暗闇に人間、というか生物的な恐怖を備えている一駆逐艦は足下が頼りなくなる錯誤を覚える。ここは海ではないのに、波に揺られているような気さえしてくる。
「あ」
気の抜けた音ともに少女は後ろの姉にもたれかかる。原始的な恐怖だの何だのは半分くらいは言い訳だったかもしれない。実のところ朝食前に混沌とした食堂が出来上がったおかげで二人がまだ朝食にありつけていないという重要な問題が発生していた。先ほど発生した(正確には発覚した)問題もあってこの姉妹の間で微妙に緊張が生まれていたというのもあるのですが……。それにしても和ませるために同僚を手遅れ扱いするあたりお姉ちゃんはちょっと感覚がずれているというのも分かって貰えるような気がします。
「ぎゅーっ」
え、これ意図的だったんですかそうですか。妹を抱き留めるときに声に出しちゃうお姉ちゃん可愛いって、もう完全にお姉ちゃんにペースを持って行かれているのでなされるがままなのです。お姉ちゃん暖かいですよね。胸部装甲もあるし優しいし髪も綺麗だしちょっと子供っぽいし、不完全な調和のとれた自然の芸術、妖精のいたずらのような、どちらかというと妖精よりは精霊種ですか今回はそういうことじゃないのでおいておくのですが。
「ぐぅ……。」
あああ、おなかの音お代わりは流石にいらないのですぅ。なんでこんな時ばかり自己主張が激しいおなかなのですか?何でなのです?いなづま、何か悪いことしたかなぁ……。
思考が止まっていた時間丸々お姉ちゃんに頭をなでられていたし、ぎゅーってされててやっぱり暖かいままだしなんかもう、どうでもいい気もしてくるのです。なんだかねむくなってきました。
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「……にゃのです。」
朝食前の一悶着もあり微妙な空気を生産し続けていたのに、このいにゃづま。おなかがすいているのを知りながら拘束して姉の体温を与え続けるどうなるかということに関しては結果的に猫化して寝るということがわかった。妹で遊ぶな?私もそう思う。いやでも、いなづまの反応が良すぎてついつい。あとで何を言われるか分からないけど、こうしているうちに朝食の準備が整ったようなので良い感じに二人分の朝食を確保し席を探す。
「あ、アイズさん!」
「レフィーヤ。」
「なんですか?」
サラダをモキュモキュと食べる姿は曲がりなりにも妹属性(?)持ちであることを表してるし、容姿だってかわいい妹系だ。もちろんいなづまと競合するし、どちらかというとレフィーヤの方が関係は深くてもおかしくなかった。どうしてレフィーヤをいなづまみたいに扱わなかったんだろうか。
「レフィーヤは、強い?」
呆気にとられる表情も妹として申し分ない。なんか妹ソムリエみたいだけど断じて違う。なんか
そう、真実に近づきたいだけ、だけなのに。
「え、いやいやそんなことはないですよ。レベルもそうですし技術的にも未熟ですし、それに。」
「……レフィーヤって弟子っぽいよね。」
「へ?」
なんか分かった気がする。レフィーヤは妹だけど、どっちかというと弟子だ。後から追いかけてくる、そんな立場な気がする。
なかなか進捗が出せない日々