ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか 作:もんもんぐたーど
ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているのだろうか4
「わぁ……。」
いなづまは、店員が運んできた料理 ー 自身が注文したパスタ ー にキラキラとした目を向けた。今回ロキはお酒を注文していない。あくまでいなづまの進退を決める為だったのでちゃんと飲酒を控えることにしたのだ。
「……ゴクリ。」
私から見て、地上に出たときの五割増しくらいのキラキラとした何かがいなづまの周りに舞っているように見える。二度目なので幻覚ではない……と思う。ロキも、キラキラが見えているのかーそれとも料理に夢中で言葉数の減ったいなづまをみたいだけなのかー分からないが、時折いなづまの様子をうかがっている。
「……おいしい、のです。」
役目を終えたのか、キラキラが空気に溶けるように見えなくなっていく。小さな口を一生懸命動かして、いなづまがはじめの一口をごくっと飲み込んだあとの一言に私たちは浄化された。
押し黙ったところから笑顔の花が咲き、その口から紡ぎ出された"おいしい"は、お姉ちゃんの心にクリティカルだ。妹ってすごい。
深刻な影響をうけ、私とロキは一時停止していたが私はロキよりも寸分早く再起動して次の言葉を返す。
「それは、よかった。」
「せやろ、ミア母ちゃんの料理は旨いもんなあ。」
「なのです。」
しばらくの間各々が料理を味わう沈黙をはさみ、ロキが話を切り出した。
「そういえばいなづま。ステータス読める理由はわかったんやけど、いなづまにステータスみたいなんはあるんか?今はアイズもいるし大体でええんやけど。」
ステータス、それは
「形式が違いますが海軍規定能力基準……練度があるのです。アイズさんがレベル5とのことなので、換算すると大体私はレベル4から5の間になると思うのです……。魔法とスキルも有りますけどここだといまいちぱっとしないのです。」
"かいぐんきてのーりょくきじゅん"がなにかよくわからなかったけど、いなづまが強いのはわかった。魔法とスキルも気になる。ぱっとしないというのはどういうことなのか。
「やっぱりかなり強いんやな。一応後で魔法とスキルも聞かせてな。」
いなづまの魔法とスキル、気になる。詮索はしないつもりなんだけど、今し方思い出したいなづまの固有武器みたいなものー金属製のリュックっぽいなにかーには興味が膨らんでいた。特に付加効果があったようには見えなかったけど。
「あの、ステータスの詳細はアイズお姉ちゃんに言ってもいいのですか?」
お姉ちゃん、いなづまが悪い人に引っかからないか心配です。もうちょっと様子を見てからでもいいのにね。
「アイズにならまあええんやけど、人を簡単に信じるのはあかんで。話したいなら幹部にとどめとき。」
ロキが代わりに言ってくれたので少し安心。ロキは良くも悪くもいろいろ言ってくれるから私は好き、かな。好きっていうと襲ってきそうだから言わないけど……。いなづまはうんうんと頷き話を進めた。
「分かったのです。えっと、ところでアイズお姉ちゃんは幹部なのでしょうか?」
え……。まあ、言ってなかったけど、ね。うん、わたしがファミリアの幹部に見えないことは自覚してる。
けど、お姉ちゃん的(?)にはもうちょっと格好いい姿を見せたいかなぁなどといろいろ考えてしまう。しゅん……。
なんか、人のことをいえないくらい短い時間でお姉ちゃんになっちゃった気もするけど、たぶん気のせいだ。いなづまの妹力(?)が高すぎて引き吊られているだけだと思う。思いたい。
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「あの、ステータスの詳細はアイズお姉ちゃんに言っても良いのですか?」
本当はスキルとかは秘密にしておいた方が良いのは分かりますが……共有できる人なら共有しておきたいのです。
「アイズにならまあええんやけど、人を簡単に信じるのはあかんで。話したいなら幹部にとどめとき。」
思ったよりも引き留められなかったのです。まあ冒険者なら自己責任と言うところでしょうか。アイズお姉ちゃんも心配そうにこちらを見ているのです。
「分かったのです。えっと、ところでアイズお姉ちゃんは幹部なのでしょうか?」
「せや。本人の自覚がイマイチ足らん気もしなくはないんやけど、まあまあやれてるで。」
しゅんとしたアイズお姉ちゃんかわいいのです。まあ、アイズお姉ちゃんがキッチリ幹部してるところはあまりイメージできないのでイメージ通りで良いのですが、そんなにしょげなくても……あ。俯き加減からアイズお姉ちゃんと目が合う。
……ふふ。お姉ちゃん達って確かにこんな感じだったのです。益々かわいいのです。
この後はアイズお姉ちゃんと同じ部屋で生活することが決まり、後でレベルについてギルドと協議するとかなんとか。取りあえずホームに戻ることになったのです。
なんか半端な気がしますが気のせいです。