ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに瑠璃溝隠を発見》


第34話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか34

 

神の宴(かみのうたげ)

 

その名の通り神々(ひまじん)が時たま好き勝手に集まって騒ぐというただそれだけの集まりである。神しか参加できないという条件を除けば概ね自由だ。

 

開催地は持ち回りであり、その開催規模によるが、概ね主要なファミリアから選ばれている。

 

今日の開催地はガネーシャ・ファミリア。開催費用はガネーシャ持ちだ。こういったところにも神々の(じまんたいかい)としての性質が現れている。

 

「相変わらず奇天烈な形しとるなぁ。」

 

似非関西弁を漏らすロキ(トリックスター)は着飾った貧相な身体を晒しながら額に手の甲を当て門の上の象の像を仰ぐ。相変わらずと言われてももう何年も像は建て替えられていないので当然の象である。

 

『俺がガネーシャだ!!』

 

「盛況やなぁ。」

 

思い思いに騒ぐ神々。今回会場を提供するガネーシャも例外ではない。むしろ全力である。

 

少し離れたところからの視線、ひそひそ声。ロキにとって珍しい事ではない。"断崖絶壁"だの"残念女神"だの"見事な無乳"だの。どうせ似たようなメンバーなのであとで絞ってやると密かに決意。アイズたんの豊かなお胸はどこからきたんやろか。まあ子供に嫉妬する気はあらへんけど、揉みたくなるんは許されるやろ、主神やし。っと今はそれよりも気になることがある。ヘスティア(ドチビ)が来るという噂である。

 

「にしても、ドチビおらへんなぁ~。」

 

目的は二つ。ヘファイストスのところに居候していたのを叩き出された駄女神がどんな貧乏をしているのか確かめること。そして……自分の子供(ベート)が相手の子供(ベル)に粗相をしたことを、謝ること。

 

正直乗り気ではなかった。あのけしからん胸に頭を下げるのは納得できるはずがなかった。相手も弱小ファミリアや。弱小どころか団員一人なんてなぁ。うちだって3人おったんやぞ。あの時はめっちゃ揉めてたんやけどな。でも……

 

「おお、ロキじゃないか」

 

「ん?」

 

目の前に現れたのはディオニュソス。胡散臭い(ブーメラン)優男神で中堅ファミリアの主神。これもやっぱり胡散臭い。

 

「よぉ、ディオニュソス。来とったんか。」

 

「せっかくの宴だし、情報収集もかねてね。私のファミリアはロキ・ファミリア(きみのところ)ほど強くもないし非常識でもないからね。」

 

ほーら、口を開けばこれである。そんなんだから悪い顔してるとか胡散臭いとか言われるんや。しらんけど。

 

「あらぁロキ、お久しぶり。元気にしていた?」

 

ああ、でたぁ。おっぱいお化けや。デメテル。なにが豊穣や。豊胸やろこのぉ。商業系ファミリアはほんま安定感あるから可愛い女の子にも人気やろうしデメテルの雰囲気と合う子も多いやろなぁ。

 

「おおぅ、いたんかデメテル。」

 

あまりの眩しさに嫉妬するを通り越して押されかける。バインバイーンや。どっかのドチビとは違って背も低くないから大人のオンナって感じや。そういえばドチビ、あの極貧でドレス買えるんやろうか。格好次第でなんていってやろうか楽しみやわ。

 

「それにしてもガネーシャの宴は相変わらず豪勢よねぇ。一番集まってるんじゃないかしら。」

 

「生活に困ってる有象無象おるんやろうけどな。」

 

「まあまあ、それに今の時期だとアレがあるから。」

 

うちの吐いた毒をスルーして指摘されたそれに、柱に貼られたポスターを見る。そういえば、そうや。そんな時期や。

 

怪物祭(モンスターフィリア)ね。当日は間違っても邪魔されたくないのね。」

 

「フィリア祭かぁ……。」

 

なにか引っかかる。なんや、これは。

 

「ロキはフィリア祭に来るのかい?」

 

「まあ、行こうとは思ってるんやけど……。」

 

「まさか本当かい?今度こそ何か悪巧みでも企んでいるんじゃないかい?」

 

あぁ、なんかわかった気がするで。

 

「おいコラァ、どういう意味じゃ。」

 

「ごめんごめん。興味がないものだとばかり思っててね。他意はないんだ。」

 

はぁ、ほんまか。プレイヤーが増えてもうた。これはややこしくなるで。

ここでちょうど視界の端にドチビを含む3人が見える。あれドチビがフレイヤに絡まれてるんか?ファイたんもおるしもう行こうか。

 

「あ、このあたりで失礼するで。おーい、ファイたん、フレイヤ、ドチビぃ!」

 

なんかちゃんとドレス着てるし何でいじってやればええかわからんけど、会えただけでも僥倖や。拠点わからんからなぁ。ぱっぱと話し付けて来るで。




どうでも良いですが表記を外伝のソード・オラトリアに準拠しているので神々の会話中では怪物祭(モンスターフィリア)についてフィリア祭とも表記しています。これについて補足説明します。

フィリア(philia)は古代ギリシャにあった4つの愛の概念のうちの一つで、他社とつながる友愛や親愛の事を指します。(因みに愛の概念のうちの一つである恋愛はエロス(eros)といいます。)
フィリアそのものに祭の意味は一切無いです。

つまりモンスターフィリアは怪物友愛(親愛)となり、祭というのは意訳的な表現です。(フィリアは英語でも同単語なので全体を英語として訳すと考えました。ギリシャ語で揃えればテラスフィリア(Teras philia)です。)
一方フィリア祭は友愛(親愛)祭と言い換えられ意味の被りも無いので至って自然であると考えられます。(欲を言えば祭をフェスティバル(festivál)にそろえるとより自然でした。)

こうした事情があるので、ソード・オラトリアにおけるフィリア祭という略称は何ら不自然ではないことを記しておきます。

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