ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに瑠璃溝隠を発見》


第31話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているのだろうか31

 

「え?ないよ。」

 

「本当ですか。マジですか。……買い物、行きましょう。」

 

まさかお姉ちゃんがお出かけ用の私服も持ってないなんて……。私服持ってなくて町へ買い物に連れて行くのも何か久し振りな感じがしますね。

 

……あぁ、雷お姉ちゃんですね。思い出しました。割烹着とエプロンと制服と水着しか持ってなかったので響お姉ちゃんと一緒に買い物に連れて行った覚えがあるのです。そのあと偶々遠征に行っていた暁お姉ちゃんが仲間外れにされたと怒ってしまい、後で4姉妹そろってお出かけしたのも良い思い出なのです……。

 

ベンチから立ち、お姉ちゃんの正面から手を取って引っ張るとつられてお姉ちゃんが立ち上がる。思っていたよりも重かった反応にびっくりしたのかビクッとして、それもまたお姉ちゃんなのです。

 

「……うん。私はそういうの疎いから、いなづまがリードして、ね。」

 

「は、はいなのです!」

 

そして私たちは……服屋の並ぶ通りにやってきた。お姉ちゃんはこういう場所に全然来たことないからか若干挙動不審になっている。本当にダンジョンに入り浸っていたのですか……。街中では全然見かけないけどダンジョンには何時も居るという噂が本当だと言うことが示されてしまったのです。

 

「何か欲しいものとか見つかりました?」

 

「えっと、うん。どうしようかなぁって。」

 

頬を掻きながら目をそらすお姉ちゃんに、電は戦慄する。

あぁ、戦闘方面に頑張りすぎてこういう生活面の想像力が……。まあ、(わたし)も人のことを言えるようなものではないのですが何とか最低限はわかるのです。

 

「取りあえず適当なお店に入ってみましょう、ね?」

 

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「お、アイズといなづまはっk、って、ティオネ?」

 

「ねえ、二人とも。今からあの二人をつけてみない?」

 

飛び出していこうとしたティオナを引き留めたティオネは一緒にいたレフィーヤと二人に一見奇妙な提案をする。当然ティオナは不服の表情だが、魔導師故に割と頭の回転が速いほうであるレフィーヤはティオネの意図に気が付いた。

 

「二人だけの時のいなずまさんを観察して弱みを握るんですね!」

 

「弱みを握るまでは行かないけど……、急に出てきてアイズと私たち以上になかを深めてるのは不可解だわ。何か秘密があるかもしれないと思っただけよ。」

 

納得のいったティオナにそこそこ当たっていて安心した様子のレフィーヤ、スペシャル可愛い駄姉ちゃん(おねえちゃん)ドヤ顔を披露するティオネ。

 

「あ、もうどっかいっちゃいそうだよ?」

 

アマゾネス特有の鋭い視力が店に入ろうとする二人を捉える。その店はこの3人にとって馴染みのある店だった。

 

「あの店は……」

 

「私たち行きつけの」

 

「アマゾネス的露出度の服が売ってる店だね。あー、もうそろそろ新作でてないかなぁ?」

 

アマゾネス的露出でアイズのイメージを一気に膨らませて熱暴走したレフィーヤ、あの店に入ったことに嫌な予感めいたものを受けるティオネ、新作に思いを馳せるティオナと既にチーム内の混沌が急上昇する。

 

物陰から物陰へ移動するようにその店の前に進むと正面のガラスから、試着に勤しみ(いなづま)の前で一回転する(アイズ)の姿。ぼんやりとしたイメージだけで熱暴走するレフィーヤには刺激が強すぎたようで顔面崩壊にいたりFXで有り金全部溶かしたかのような表情になる。ティオネはいなづまのアマゾネス的感性の良さに戦慄し、ティオナは新作を発見し自身の財布の軽量化を予見する。

 

「ほんっとに二人の仲良いですね。生き別れの姉妹みたい。」

 

「そうねぇ。髪色も割と近いし本人から何も聞いてないから否定のしようもないわ。逆にそれなら納得できるくらい。」

 

「いなづまちゃん少し顔赤くなってるの可愛い。アイズの照れのなさが清々しいレベル。」

 

レフィーヤの発言に思うところがあるティオネと考えるのは放棄したが観察は続行中のティオナ。当然このメンバーの共通認識としては二人とも大変可愛いのだが、細かいシチュエーションが可愛さにロケットブースターを括り付け加速していく事から目を背けられなかった。

 

それを口に出してしまえば可愛いだけが自分の中に残ってティオナ達を多幸感で蝕んでいった。

 

「あ、ここでは買っていかないんですね。」

 

「流石にちょっと恥ずかしかったんじゃない?私は似合ってると思ったけどね。」

 

「およよ、今度はあそこかぁ。」

 

店から出てくる二人の視線から逃れながら二人の背中を追うとこれまた因縁がある店に入っていく。

 

「あれは……」

 

「うごき辛くて暑苦しい服が売ってる……」

 

「エルフ御用達の……って何ですかその枕。それはティオネさん達が涼し過ぎる格好してるからです。エルフ的には破廉恥なんですよ!?」

 

エルフ怒りの反論も涼しい表情で受け流すアマゾネスが二人。格好が涼しげなだけにって何にもおもしろくないですよ!!

 

熱心に頑張るエルフも暖簾に腕押しでは張り合いがないのか直ぐ冷めて二人の観察に戻る。

 

「あ、あのアイズにフリル付きのロングスカートを、え?」

 

「こ、これは偉業では?偉業なのでは?」

 

「はぁ……可愛い。」

 

歴史が動く瞬間だった。アイズは何でも似合う。いなづまと姉妹可愛い。二人でフリフリ マックスキュート。少しずつ思考が浸食されていた3人はこれだけでもう満足しかけていた。

 

「でも、アイズさんって男装も似合いそうですよね。」

 

「「それだっ!」」

 

レフィーヤの破壊的一言で正気を取り戻した3人。しかし、そんな三人のことを知ってか知らずかいなづまは有る行動にでる。

 

次回アイズ・いなづま追跡隊死す。




次回で分割1話終わりです。あとでいい感じに閑話を挟んで話数調整するのでしばらくお待ちください。

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