ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに瑠璃溝隠を発見》


第30話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているのだろうか30

 

「……リヴェリア。」

 

リヴェリア・リヨス・アールヴ

 

彼女はロキ・ファミリアのママと呼ばれることがあるほどには面倒見がいい。年齢的にはガレスやフィンと同年代であり母親(ママ)と呼ばれても違和感ない年齢ではあるが、本人の感覚としては長命種のそれも純粋なエルフであるためうら若き乙女の方が正確である。余談だがあまりにもママを多用すると口を尖らせて拗ねるので注意が必要。

 

「はにゃっ。」

 

お姉ちゃんとぶつからないよう気をつけながら電が起き上がる。

そこから最低限の動作でお姉ちゃんの隣に座り、さっきまで自分の頭をなでていたお姉ちゃんの手を確保する。

 

あったかい。電の表情は和らぎ穏やかさに満ちるが直ぐに場の緊張感に適応した。

 

「(はぁ、二人は本当に仲がいいな……)ベートの失言の件だ。その感じだとほぼ解決したように見えるが。」

 

「うん。ただ……」

 

「やらかした相手の主神とロキさんの仲が険悪なのでどうしようかと。」

 

なるほど、先日からファミリア運営にも関わっているとはいえまだ新人であるいなづまと、ロキとは専らステータス更新とセクハラ被害の関係で本人たちが思っているよりも関係が希薄なアイズでは手に負えない内容だろう。関係が浅いわけではないが強い進言が出来るほどではない。アイズをここに繋ぎ止める強くなれる環境(上位ファミリア)といなづまを繋ぎ止めるアイズ自身(お姉ちゃん)はロキと直接結びついているわけではないしな。

 

「そういうことか、わかった。後で部屋にくるといい。ロキを宥め賺す(なだめすかす)ことくらいは手伝える。」

 

「ありがと。」

 

「なのです」

 

一方私はいつもと雰囲気が違ういなづまに庇護の意識が掻き立てられていた。

 

しおらしく姉の腕にすがり、小さな身体に緊張を詰め込んだ彼女は……フィンとの模擬戦でみた強者でもレフィーヤの指導について意見交換したときの魔導学者でもない、

 

普通の女の子になっていた。

 

アイズ自身もフィードバックを受けているようでこの瞬間は冒険者アイズの強者感や凛々しさが隠れ、

妹の不安を引き受ける姉として現前と存在していた。

 

構図的に何かをやらかした姉妹を叱る母親のようになってしまったしお互いその雰囲気に飲まれているところはあった。

思っていたよりもずっと私の方が緊張していたようで雰囲気が妙に堅かったようだ。さっきロキに"誰がママだ。"と言っていたことを思い出し、偶にはそんなこともあるかと思い直す。

 

「それじゃあ私は部屋に戻るから、またあとで。」

 

「ばいばい」

 

「な、なのです」

 

パタパタと手を振る二人を背にファミリアの館内へと続く通路を歩く。途中には今回の問題児(大罪人)ベート・ローガが壁により掛かっていて誰かを待っているようにも見えた。

 

「ベート。」

 

「リヴェリア……お説教か?」

 

とてもではないがお説教を受けるつもりが有る姿勢ではないベートに苦笑を漏らしながら彼の先読みの誤りを指摘してやることにした。

 

「説教しようか迷っていたところだが、いなづまにきっちり絞られたそうだな。一晩吊されたとか。」

 

「……ああ、そうだよ。本当は数時間のつもりだったのに一晩吊したことについて謝られたのは驚きだったがそれ以外は特に言うこともないだろ?」

 

これは初耳だ。ベートにお小言を投げていたいなづまにお預け状態だったアイズが我慢できずに仲良く(・・・)したという話を小耳に挟んだのでそれの絡みかもしれない。

 

「だから今回は私からは何も言わん。だが、これとは関係なく(・・・・)手伝ってもらいたいことがある。手伝ってくれるか?」

 

「……ちっ、仕方ねぇな。」

 

そのまま移動するとちゃんと狼人()がついてくることがわかる。しつけをされてない犬というより酒癖が悪いんだろうな。




次週も短めになります。スローテンポで申し訳有りません。再来週から2000文字以上に復帰します。ご容赦下さい。

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