ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに瑠璃溝隠を発見》


第25話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているのだろうか25

 

ディアンケヒト・ファミリア

 

オラリオ最大手の医薬系ファミリアで高レベル治療師・調薬師を多数抱える。生産している薬品の中でも手軽にあらゆる場面で利用できる最高品質万能回復薬(エリクサー)は高レベル冒険者に人気であり、その影響で低価格帯の各種回復薬も数多く売れている。

 

「アミッド久し振りー」

 

「本日のご用件は引き受けていただいた冒険者依頼(クエスト)の件でよろしいでしょうか。」

 

「ええ、そうよ。今は大丈夫?」

 

綺麗なお姉さん属性持ちの方ことアミッドさん(仮)はティオナさんの呼びかけに会釈で応じ用件を確認する。こちらから返事をしたのはティオネさんでした。ティオネさんはディアンケヒト・ファミリアとの交渉を任されている立場なので妥当でしょうか。

 

「商談室は空いていないのでカウンターでもよろしいでしょうか?」

 

「構わないわ。」

 

あぁ、早速影響が……。この規模の商談で商談室が使えないのは急な帰還に予定が合わせられ無かったと言うこと。流石に資金的には問題ないでしょうが、負担がかかるのは間違いないのです。ティオネさんがそれを分かって交渉してくだされば良いのですが……。フラグですかね。

 

ーーーー

 

「泉水、確かに確認させていただきました。」

 

やや大きめのー梅酒を作るときに使えそうなサイズ感のーガラス瓶に満たされた透き通った液体は泉水という。

 

地下の深いところまでゆっくりと濾過され、ダンジョンの力場に長時間曝されたその水は普通の水とは一線を画す秘薬そのものであり高品質な治療薬には欠かせない素材の一つ。

 

液体な上に比重が重く、一度に収集できる量は限られているが、直接的な秘薬としての効能は凄まじく即効性も高い。余り知られていないが、天然回復薬(バケツ)の発生条件の内の一つでもある。

 

その貴重な水と各種の薬草を組み合わせることで僅かな材料で最大の効果を引き出すのが治療薬学研究の基本となっている。薬草単体でゆっくりと効果を発揮する薬学も一部に存在するが、泉水を薄めることで即効性を絞る方法が主流なのでオラリオに流通する大半の薬は泉水が含まれている。

 

「こちらが報酬の最高級万能薬(エリクサー)になります。お受け取りください。」

 

実は報酬として最高級万能薬(エリクサー)16本はやや少ない気もするが市場の拮抗額としては妥当なのでおいて置くのです。

 

アイズお姉ちゃんが受け取ったので解析を開始しちゃいます。

 

「一本50万ヴァリス……。」

 

「16本かぁ、うはぁぁ〜。これだけあると豪邸が建っちゃうね。」

 

「きれい……」

 

見た目は泉水の透明さが名残り、各種の薬草を干渉しないように配合して生まれた独特の色合いは液体の宝石と形容することが相応しい。

 

お姉ちゃんがきれいと思わず漏らすのは当然ですが、やはり純粋にかわいいのです。綺麗寄りの見た目に純粋と純粋と戦闘能力を包み込んでちょっと変わったエッセンスを加えたお姉ちゃんなので、お姉ちゃんの方がきれいだと言いたいのです。心の中にしまっておきますが。

 

あとディアンケヒト・ファミリアの皆さんごめんなさい。ここの万能薬(エリクサー)ちょっと誤解してたのです。

 

「これは……殆ど慈善事業なのです。」

 

「ん、どうしたの?」

 

天然系お姉ちゃんの疑問顔は不思議のダブル乗せなので、本当にそそるのです。今すぐ襲いたいくらい好きなのです。って、はわわ。お口ゆるゆるなのです。それよりレフィーヤさん、万能薬(エリクサー)持って震えすぎなのでは?ああ、もう気にしないで話してしまいましょうか。私はティオネさんが冒険者依頼(クエスト)外素材の交渉してるのを確認して話し始める。

 

「エリクサー、思ったより原価率高いなぁと思ったのです。」

 

「げんかりつ?」

 

ティオナさんから疑問の声が上がったので簡単に説明しようと思います。大まかな説明なので細かい不正確さは御免なのです。

 

「ものを売るときの値段のうち、材料や機材、人件費などの生産と開発に掛かるお金のことなのです。残りは貯蓄などの資産として内部に留保されるのです。

 

基本的には値段が高いものほど原価率のうち原材料費が下がりお給料や開発費の部分が高くなるのですが、このエリクサーは製造原価だけで30万ヴァリスから40万ヴァリスになると思うのです。

 

これにより簡単に計算すると原価率60~80%となるのですが、最終的にファミリアの資産として残るのは一本当たり5万ヴァリス程度になるので薬としてはかなり薄利、利益が少ないと思ったのです。」

 

「……半分くらいしかわからなかったけど50万ヴァリスっていうのは安いくらいなんだね。」

 

「なのです。」

 

つい喋りすぎてしまいましたが最後に一つ。製薬はかなり投機的、つまりハイリスク・ハイリターンの分野なので一般には研究開発費が薬の値段の多くを占める事になるので原材料費は高くても20%以内に収まるのですが、ここの万能薬(エリクサー)は珍しく素材が高いようなのです。多分安価な治療薬は原価率1%くらいだと思いますが、それでも万能薬(エリクサー)を看板として推すディアンケヒト・ファミリアにとっては必要十分の余裕しかないのでしょう。すごいのです。

 

自家製万能薬(エリクサー)は泉水をほぼ使わない節約レシピですが効き方に癖があり、対外向けに万能薬として売り出せる代物ではないのであくまでオラリオ(ここ)では予備のお薬として活躍してもらうことに決めたのです。

 

話は変わりますがアイズお姉ちゃん、適度に相づちを打ちながら全部聞き流してましたね。そんなに光り物(エリクサー)が好きなら、魔法を掛けた小瓶に自家製万能薬(エリクサー)を詰めてプレゼントするくらいはやっちゃいますよ?やったら、喜んでくれるでしょうか……?はわわ、はわわ。

 

「カドモスの皮膜よ。」

 

あ、遂に今回の換金の目玉というかヤバいやつが来ましたね。あれ1000万ヴァリスで売れたら十分だと思うのですが、どうなのでしょうか?ってレフィーヤさん、それ(エリクサー)を落として割ったら10年分くらいの手取りお給金が吹き飛びますよ!!!ああ、もう世話が焼ける弟子なのです!

 

(せーふ)

 

ああああ、お姉ちゃんのレベル5の俊敏と動態視力にものを言わせたキャッチで難を逃れたので、ばれないように魔法円と魔法を消す。レフィーヤさんは自分のことで手一杯になっていて魔法には気付かなかったみたいですが……

 

「……700万ヴァリスでお引きt」

 

「1500万ヴァリスよ。」

 

はぁ?こっちはこっちでなにやってるのです?普通にカドモスを討伐してレアドロップしても1200万ヴァリス位から交渉開始ではないのですか?もう提示してしまった以上下手に譲歩すると下を見られるので出来ませんがこれは……。

 

やっと団長さんの言葉の意味がわかったのです。……この駄目お姉ちゃんが。




ここ数週間投稿が不安定になってしまいすいません。
来週は21:30に投稿予定なのです。

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